ラブライブ SS 絵里「亜里沙、凛とのとある夜」

egbete

 

――PM6:30――

 

絵里「…………」ドキドキ

 

亜里沙「…………」ゴクリ

 

亜里沙「……王手!」

 

絵里「っ!」

 

亜里沙「お姉ちゃん、とうとう追い詰めたよ」

 

絵里「くっ、やるわね亜里沙」

 

亜里沙「毎週ドラえもんと将棋番組は欠かさず見てるからね」フンス

 

絵里(どうしよう、妹の将来が不安に思えてきたわ……)

 

絵里「ふふ、でも甘いわね」

 

亜里沙「?」

 

絵里「これは王手では無いわ」

 

亜里沙「えっ!」

 

絵里「……なぜなら――」

 

絵里「銀は横には進めないもの!」ドヤッ

 

亜里沙「ハラショー……」

 

絵里「ちゃんと成らないとダメよ、ほら」

 

亜里沙「駒の裏に隠れ文字が!?」

 

絵里(ほんとに毎週見てるのかしら?)

 

絵里「これでやっと金と同じ動きができるのよ」

 

絵里「チェスと違ってここが将棋の面白いところね」

 

亜里沙「すごい!お姉ちゃんって将棋マスターだね!」ピョンピョン

 

絵里(わりと常識だと思うんだけど)

 

 

――――――――――――――――――――――

 

絵里「これで詰みよ」

 

亜里沙「そんな……亜里沙流穴倉囲いが破れるなんて」ガクッ

 

絵里(囲い過ぎて逃げ場無くしただけよね……)

 

亜里沙「お姉ちゃん!もう一局、もう一局だけ!」

 

絵里「はいはい、わかったわ」

 

ピンポーン

 

絵里「んっ?」

 

亜里沙「こんな時間に誰かな?」

 

亜里沙「はーい!」ドタドタ

 

絵里(うーん、角落ちでやってあげれば互角くらいかしら)

 

絵里(亜里沙は飛車は得意だけど角は苦手っぽいし)

 

亜里沙「お姉ちゃん、大変だよ!」

 

絵里「!どうしたの、まさか強盗!?」

 

亜里沙「ううん、違うよ」スッ

 

凛「ひっく…………ぐすっ……」ポロポロ

 

絵里「えっ……凛!?」

 

亜里沙「ランナウェイしちゃったんだって」

 

絵里「ランナウェイ?…あ……まさか、家出?」

 

凛「絵里ちゃんお願い、凛のことかくまって……」グスッ

 

絵里「…………」

 

凛「」ウルウル

 

亜里沙「お姉ちゃん、お願い」ウルウル

 

絵里(なんで亜里沙まで涙目なのよ)

 

絵里「……はぁ、わかったわ」

 

絵里「とりあえず話を聞かせて?」

 

 

――――――――――――――――――――――

 

凛「そしたらお母さんが、凛のことなんてもう知らないって……」ポロポロ

 

絵里「……事情はわかったわ」

 

亜里沙「梅昆布茶でもどうぞ」

 

凛「だから凛、家出してきて……こうして絵里ちゃんのところに……」グスッ

 

絵里「……家出、ね」

 

亜里沙「お茶請けのペリメニです」

 

凛「ごめんね……迷惑かけて、ごめんなさい……」ウルウル

 

絵里「いえ、別に迷惑なんかじゃ……」

 

亜里沙「あっ、ご飯でも食べますか?」

 

絵里「…………」

 

亜里沙「お姉ちゃんもご飯食べる?」

 

絵里「亜里沙!ちょっと静かにしてて!」

 

亜里沙「えっ、でもご飯は……」

 

絵里「さっき一緒に食べたじゃない!」

 

亜里沙「もうそろそろお腹空くころかと思って」

 

絵里「1時間足らずで空腹なわけないでしょ!」

 

絵里「それに梅昆布茶とペリメニって一体なに!?」

 

亜里沙「ふふ、お姉ちゃんは素人だね」

 

絵里「?」

 

亜里沙「お客さんが来たらお茶とお茶請けを出すのが日本人の心だよ」ドヤッ

 

絵里「それは分かってるわよ!組み合わせのことを聞いてるの!」

 

亜里沙「亜里沙にとって最高の組み合わせだけど?」

 

絵里「渋っ!亜里沙まだ中学生でしょ!」

 

亜里沙「インターナショナルフードとして流行らないかな?」

 

絵里「UTXが廃校になるくらいの確率ね」

 

亜里沙「お姉ちゃんもどう?梅昆布茶」

 

絵里「わたしが梅干嫌いなの知ってるでしょ!?」

 

凛「…………」キョトン

 

絵里「はっ……!」

 

絵里(ついいつも通りのノリで突っ込んでしまったわ……μ’sのみんなの前ではKKEで通っているというのになんたる不覚。亜里沙の天然ボケ、恐るべしね)

 

絵里「ごほん!とにかく、まずは凛のお家に電話しましょう」

 

凛「!凛のこと、売るの……?」ブルブル

 

亜里沙「ひどいよお姉ちゃん!」

 

絵里「売らないわよ!無事ってことだけでも連絡しとかないと親御さんが心配するじゃない」

 

絵里「大丈夫、住所は秘密にしとくから……花陽のところに行かなかったのは、そういうことでしょ?」

 

凛「絵里ちゃん…………うん、ありがとう」

 

絵里「その代わり、日曜までにはちゃんと仲直りするのよ?」

 

凛「うぅ……頑張る」

 

絵里「いい子ね」ナデナデ

 

亜里沙「ねぇお姉ちゃん、そういうことってどういうこと?」

 

絵里「亜里沙は少しくらい察しなさい!」

 

亜里沙「?」

 

 

―――――――――――――――――――――――――――

 

亜里沙「ふへ、ふへへ、あっはは!」

 

亜里沙「あははっ!はははは!」

 

絵里(ブラック○ャックってあんなに笑うアニメだったかしら……)

 

絵里(あれ、そういえば凛は……?)キョロキョロ

 

凛「………………」ケイタイ

 

絵里(………凛)

 

絵里「誰かに電話?」ヒョイ

 

凛「絵里ちゃん…………」

 

絵里「それとも、携帯見つめたまま考え事かしら?」

 

凛「………………」

 

凛「……こうやって、落ち着いて考えるとね……」

 

凛「あの時、凛にも悪いところあったなって……」

 

凛「お母さんに、ひどいこと言っちゃった……」シュン

 

絵里「…………」

 

ポン……ナデナデ

 

凛「絵里ちゃん?」

 

絵里「偉いわ、凛。そうやって自分を見つめなおせただけでも、あなたは十分立派よ」ニコッ

 

凛「……でも、凛は…」

 

絵里「……人ってね、極力自分を責めないように、自分を正当化して生きているものよ」

 

絵里「相手を一方的に責めなかっただけでも、凛は正しいと思うわ」

 

凛「正しい……?凛、お母さんに悪いことしたのに……」

 

絵里「……私はね、人が人に反省しろなんて言葉を言うのは、思い上がりにも程があると思うの」

 

凛「……!」

 

絵里「例えばね……小さい頃、凛のことをいじめてた子が反省して謝ってきたら、凛はどうする?」

 

凛「……凛は、たぶん…………」

 

絵里「ええ、許すと思うわ。凛は優しいから。でも、教師やみんな……周りで黙ってそれを見ていた子達はどうかしら」

 

絵里「その子達はずっと、見て見ぬふりをしてあなたのことを見捨てておいて……いじめっ子が反省したら、黙認していた自分を一切責めることなく、今更あなたをかばってその子だけを責めるの……もっと反省しろってね」

 

絵里「黙って見ていた子も、いじめていた子もある意味では罪の重さは一緒。なのに、建前上悪い子だけが責められるの……まるで第三者は正義のヒーローね」

 

凛「…………凛は、そんな風になりたくなかった。だから……」

 

絵里「ええ……だからその時、あなたは花陽のことを庇ったんでしょうね」

 

凛「!」

 

絵里「花陽はずっと負い目を感じてるわ……だからきっと、凛が花陽を助けたのは間違いじゃない」

 

絵里「必死で庇った相手がそのことに負い目を感じてくれてる……庇ったほうとして、これ以上の救いは他に無いでしょう?」

 

凛「…………っ」

 

凛「……絵里ちゃん……すごいんだね」

 

凛「……凛の心の中とか、何でもお見通しなんだね」ホロリ

 

絵里「あなたたち二人は、お互いに優し過ぎるから」

 

凛「……お母さんは、分かってくれるかな…………」

 

絵里「どうかしら、でも、少なくとも私は分かるわ」

 

絵里「もし一方的に怒られたとしても……凛の優しさと強さを、私は知ってるから」

 

絵里「だから、ね……勇気を出して、謝ってみない?」

 

凛「…………うん……♪」

 

凛「絵里ちゃん、ベランダ借りるね?凛、お母さんに謝ってくる」

 

凛「たとえ理解されなくても……世界中で一人、絵里ちゃんだけは絶対に分かってくれるから!」

 

絵里「……!」

 

ガラガラ ピシャッ

 

絵里「……凛」

 

絵里「……今まで辛かったでしょうね、あなたも」

 

亜里沙「うぅ…………」ポロポロ

 

絵里「って、亜里沙!?いつからそこに!?」

 

亜里沙「お姉ちゃん、亜里沙感動したよ!」

 

亜里沙「黒い正義と白い悪、悪人の仮面を被った六等星ってことだね」

 

絵里(大体合ってるけど、言葉は間違いなくブラック○ャックの影響ね)

 

亜里沙「亜里沙も六等星になって、将来はブラック○ャック先生みたいになるよ!」

 

絵里「ひねくれないで!亜里沙は純粋なままでいいのよ!」

 

亜里沙「ほぇ?」

 

シリアス×ギャグ×えりありりん――おしまい♪

感想

  1. スピリチュアルビィ! より:

    早速楽しませて頂きました>ω</
    リクエストよろしいでしょうか?
    マキちゃんが間違えてお酒を飲んだ!…みたいなのかけますか?

    • 砂水クジラ砂水クジラ より:

      了解しました。
      ご期待に添えられるかは分かりませんが、リクエストを元に物語を構成させていただきます。

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