(注意!)
このSSは鬱描写満載です。最終的には救われますが、それまでの過程においてはかなりシリアスな問題を含みます。
全ては管理人の想像であり、「こんなことがあったんじゃないか」というフィクションです。
以上のことを踏まえ、以下のストーリーをご覧ください。
――部室――
穂乃果「みんなお疲れ様ー!」
海未「それでは失礼します」
ことり「また明日頑張ろうね」
ガチャッ バタン
凛「かよちん真姫ちゃん、凛たちも帰ろっ!」
真姫「ええ」
花陽「……うん」ニコッ
ガチャッ バタン
にこ「…………ねぇ希、絵里」
にこ「最近の花陽、どこかおかしくない?」
希「にこっちもそう思う?」
絵里「そうね、心ここにあらずって感じかしら」
にこ「今までもふとした時にそんな感じになってることはあったけど、最近はあからさまよね」
希「まぁ、たぶんウチらが口出しできるような悩みじゃないよ」
絵里「先輩として頼られたら力になってあげる。私たちにできるのはそれだけ」
にこ「…………………………」
希「さてと。にこっち、帰ろ?」
にこ「……ええ」
――帰り道――
凛「今日も練習楽しかったにゃー」
真姫「はぁ、疲れたわ。凛は元気ね」
凛「もちろん、それが凛の取り柄だもん!」
花陽「……………………」
コウサテン
凛「♪♪~♪」
真姫「……………………」
真姫「ねぇ、いつも思ってたんだけど」
真姫「この交差点、まっすぐ行った方が近道なんじゃない?」
凛「!」
真姫「わざわざ右に行くこと無いと思うけど……」
花陽「……………………」
凛「……い、いいんだよ!こっちの方が真姫ちゃんやかよちんと少しでも長く一緒にいられるもん!」
真姫「でも……」
凛「真姫ちゃんは凛と一緒にいるの、嫌なの……?」
真姫「なっ!嫌なわけないでしょ//」
真姫「そりゃ私だって凛や花陽と少しでも長く――って、花陽?」
花陽「……はっ!な、なあに真姫ちゃん?」
真姫「ボッーとしてどうしたの?具合悪い?」
花陽「そんなことないよ!ちょっと疲れただけ……」
真姫「顔色も悪いし、今日はもう帰りなさい。家まで送っていくわ」
花陽「う、ううん、いいよ!それじゃあ今日は先に帰らせてもらうね、凛ちゃん真姫ちゃん、またね!」タタタ
真姫「ちょっと花陽――行っちゃった……」
真姫「凛、追いかけなくて……――凛?」
凛「…………………………」ウツムキ
真姫「……凛?」
凛「はっ……な、なに?どうしたの真姫ちゃん」
真姫「花陽、帰っちゃったわよ?」
凛「えっ……あっ、ほんとだ……」
凛「バイバイって言い忘れちゃったにゃ……あはは……」
真姫「……………………」
凛「真姫ちゃん、帰ろ!」ニコッ
真姫「……ええ」
真姫(いつも通りの凛ね……私の思い過ごしかしら……)
真姫(でも、さっきの花陽の態度…………)
真姫(…………………………)
真姫(……いずれにせよ、私が詮索してもしかたがないことね……)
真姫(喧嘩とかじゃなさそうだし、触れないでおきましょ……)
――――花陽――――
もちろん気分が悪かったわけじゃない。ただあれ以上あの場に留まっていれば、きっと私は罪悪感で押しつぶされてしまう。
花陽「………………」
凛ちゃんがどうしてこの道を避けているのか、私にはよくわかっていた。
目前にそびえ立つのは私たちの通っていた中等部と初等部合併の学校。
凛ちゃんや私にとっての、トラウマの原因。
あの時からだった。
凛ちゃんが、今の凛ちゃんになったのは。
私が……卑怯者になったのは――――
――――――――
凛ちゃんが転校してきたのは、小学校3年生になったばかりの4月だった。
凛「星空凛ていいます」
出会った頃の凛ちゃんは今と同じく元気で明るくはあったけど、人より飛びぬけてというほどでもなく、どちらかというと控えめな印象を受ける子だった。
それでも、可愛くて運動もできる凛ちゃんは、あっという間にクラスメイトと打ち解けて男女問わずほとんどの子達と仲良くなっていた。
そう――私を除いて。
小学校1年生の頃からいじめを経験していた私は、いつしか人とかかわることに恐怖を感じるようになっていた。
それは凛ちゃん相手でも例外ではなく。
凛「花陽ちゃーん」
花陽「!」
……違う。たぶん、凛ちゃんだったから。
相手がクラスで人気者だった凛ちゃんだからこそ、必要以上に関わることを避けていたんだと思う。
私はいじめられやすい方だった。
同じおとなしい子という括りでも色々ある。
クラスで気を遣われる子と、虐げられていじめられる子。
私はいつも、後者だったから……。
凛ちゃんと関わればクラスの子たちにきっと言われる。
「お前みたいな暗い奴が入ってくるな」って……。
でもそんな私の杞憂を、小学校という社会は悪い意味で裏切ってくれた。
花陽「ぐすっ…………ひっく…………」
1ヶ月もしない間に、たちまち私は2年の頃のいじめられっ子に戻っていた。
当然といえば当然で、クラス替えといってもクラスメイト全てが総入れ替えされるわけじゃない。
いじめっ子とまた同じクラスになる可能性も、充分にあるわけで。
花陽「…………………………」
クラスメイトの子たちはいじめっ子のリーダーに脅されたのか、私のことを全員で無視し始めた。
話しかけても返事を貰えず、給食の時も体育の時も、ずっと独りぼっち。
いつしか私は、学年全体のいじめの標的となっていた。
モブ「うざい」
モブ「生きてる価値ない」
心無い言葉は、私の弱い心を砕くには十分な威力を持っていた。
きっとまた、2年生や1年生の頃と同じ。
上履きを隠されたり筆箱を捨てられたり……。
神様は、いつだって嘘つきだ。
そんな一日が終わり、担任の先生が来る前のホームルームの出来事だった。
凛ちゃんは、タブーな言葉を平然と口にしたのだ。
凛「ねぇみんな、どうして花陽ちゃんのこといじめるの?」
クラスが凍りついたのは、言うまでもない。
モブ「べ、別にいじめてないし……」
凛「でもみんな花陽ちゃんのこと無視してるよね?凛はみんな仲良しがいいよ」
その時、私に向けられた軽薄な同情や冷たい眼差しがいくつもあった。
明日からどうなるんだろう、いじめられないで済むのかな。
淡い期待は、当たりともはずれともいえなかった。
凛「かよちん!一緒にやろっ!」
体育の時独りぼっちだった私に、凛ちゃんは声をかけてくれた。
凛「かよちん!一緒に食べよ!」
クラスの集まりから遠ざかった私の元へ、凛ちゃんは来てくれた。
最初はからかわれているだけかと思った。
でも次の日も、そのまた次の日も、凛ちゃんは私と一緒にいてくれた。
いじめは一向に病むことは無かったけど、それでも私は嬉しかった。
誰でもそうだと思う。
一人でいるより、二人でいる方が心強い……それだけで満足だった。
私の心は充分に救われていた。
――――なのに。
どうして凛ちゃんは、あんなに優しいんだろう。
自分の心をズタズタに傷つけてまで、人を守るんだろう。
私のトラウマが、始まった。
凛「みんなおはよう!今日も一日がんばるにゃ!」
今と同じぐらい……いつもより数倍明るい凛ちゃんが、意気揚々と教室へと入ってきた。
モブ「星空、お前なにそれ?」(笑)
モブ「可愛いと思ってんの?」(笑)
白い目で見られ、誹謗中傷を受けても、凛ちゃんがその口癖を止めることは無かった。
誰にでも目に見えて分かることなのに。
そんな喋り方してたら、いじめられるってことくらい。
その日から、凛ちゃんはクラスの子から徐々にバカにされるようになっていった。
一般的に言うなら、いじられるようになった。
なにかしらやり玉に挙げられ、クラスの子たちの笑いものにされ……それでも凛ちゃんは笑っていた。
面白みのない私に対するいじめは徐々に無くなり……気が付けば矛先は完全に凛ちゃんに向いていた。
私は『いじる』なんて言葉は、ただの自己正当化だと思う。
その人が嫌な思いをする可能性は充分に考えられるはずなのに、その人を使ってその場限りの満足を得る。
それはどんな綺麗なお題目を掲げても、霧隠れしたただの『いじめ』だ。
ランドセルに砂を詰められるような、私が経験した直接的ないじめとは違い、凛ちゃんは間接的ないじめを被っていた。
私には分かった。
凛ちゃんは私を助けるため、わざと自分を演じてくれたんだ。
自分が何も考えてないような子の振りをして、私に対する矛先を自分に向けてくれたんだ。
自己犠牲という方法で、私を救ってくれたんだって。
……そこまでわかっていたのに……どうして私はあの時、何もできなかったんだろう。
中等部に上がると、凛ちゃんに対する『いじり』という名の『いじめ』はエスカレートしていった。
モブ「星空、早く飲めよ」
凛「にゃ……にゃん」ペロペロ
お皿に移された牛乳を舌で飲まされたり。
凛「…………これ」
モブ「早く食えよ」(笑)
凛「……にゃん」パク
四つん這いでキャットフードを食べさせられたり。
グイッ
凛「いつっ……!」
モブ「おもしろーい!」(笑)
モブ「こいつニャーニャー鳴くからきめぇんだよなぁ」(笑)
凛「…………にゃん」
首にリードをまかれたり、もはや冗談を通り越した熾烈ないじめに。
なのに……なのに私は。
花陽「凛ちゃん……先生に相談しよ?」
凛「ううん、大丈夫だよ!凛、なんとも思ってないにゃ!」
花陽「でも…………」
凛「みんな仲の良い友達にゃ!」
花陽「……………………」
慰めてあげることも愚か、何も言ってあげられなかった。
スカートの時だってそう。
モブ「星空、お前スカート似合わねぇなぁ」(笑)
モブ「女装して学校来んなよ」(笑)
凛「……………………」
あの時、もし私が凛ちゃんをかばっていれば……凛ちゃんはこんなになるまでコンプレックスを引きずることも無かったかもしれない。
凛ちゃんは私を助けてくれたのに、私は凛ちゃんを助けてあげることができなかった。
―――――――――
私にとってのトラウマは小中学校時代の自分で、凛ちゃんのトラウマはきっと、小中学校時代の自己犠牲の代償。
同じトラウマでも、身勝手さが全然違う。
花陽「…………凛ちゃん、ごめんね」
謝りたい……けど。
凛ちゃんは小中学校時代の話しをしようとすると、すぐに話しを逸らそうとする。きっとトラウマが蘇るからだろう。
かと言って無理矢理謝るのは、凛ちゃんの心の傷を掘り返しかねない。
今の私にできるのは、凛ちゃんの『今』を少しでも楽しいものにすること。
小さいため息の後、私は帰路に就いた。
―――――――――
花陽「……………………」トボトボ
花陽「………………!」
花陽(凛ちゃんと……あれは……!)
モブ「お前……星空じゃん」
凛「っ!」ビクッ
凛「……ひ、久しぶりだにゃ~」
モブ「うわっ、お前そのキモい口癖まだ直ってないのかよ。だからいじめられるんだよ」(笑)
凛「………………」ビクビク
モブ「しかもスカートとか!似合わねぇ~!」(笑)
凛「………………っ」
花陽「……っ!」
花陽「凛ちゃんっ!」タタタ
凛「えっ……かよちん……?」
モブ「お前……確か小泉……」
花陽「失礼します!凛ちゃんいこっ!」グイッ
凛「あっ…………」
タッタッタッ
―――――――――
花陽「はぁ……はぁ…………」
凛「かよちん……どうしてあんなところに…………」
花陽「ここまで来ればもう大丈夫だよ」ニコッ
凛「っ!」
凛「……か、かよちん?さっきの話し……聞いてた?」
花陽「……うん」
凛「あ、あのね!凛、いじめられてたわけじゃないよ!あの人が勘違いして――」
花陽「…………凛ちゃん」
ギュッ
凛「えっ…………」
凛「……かよちん…………?」
花陽「ごめんね……凛ちゃん」
花陽「私ね、本当は知ってたよ……凛ちゃんが無理して笑ってることも……強い自分を演じていることも……私をかばうために自己犠牲を選んでくれたことも……全部」
花陽「知ってて目を逸らしてた……凛ちゃんに甘えてた……だから、ごめんね……」ポロポロ
凛「かよちん……そんなことない……凛は――」
花陽「凛ちゃん、もういい……いいんだよ……」ギュッ
花陽「辛いときは泣いたって、無理にカラ元気も振りまかなくったって……」
花陽「凛ちゃんは、誰よりも人の気持ちを考えてあげられるんだから……」
凛「……かよちん……それ以上……優しくしないで…………」
凛「でないと……凛は……」ポロ
凛「凛じゃ……なくなっちゃう……」ポロポロ
花陽「大丈夫……私は、どんな凛ちゃんでも受け止めるから」
凛「――――!」
凛「………………ぐすっ……かよちん……!」ポロポロ
凛「かよちん……かよちん…………ううっうぇぇん!!」ビェー
凛「かよちん……ごめんね……!」
凛「凛……ずっとかよちんを騙してた……」
凛「強いふりして……ごめんね……ごめんね……!」ギュッ
花陽「謝るのは私の方だよ……」
花陽「凛ちゃん……あの時私を助けてくれて、ありがとう……」ギュッ
胸の奥につっかえていたわだかまりが解けて……やっと、私たちの時間が動き始めた。
―――部室―――
凛「今日も疲れたにゃー」
真姫「全然そんな風に見えないんだけど」
花陽「お腹すいたねぇ」
凛「そうだ、久しぶりにみんなで寄り道するにゃ!」
穂乃果「おお、いいね!」
ことり「ことりも賛成!」
海未「まぁ、明日は土曜日ですし、大目に見ましょう」
穂乃果「にこちゃんたちももちろん行くよね!」
にこ「しょうがないわね~」
絵里「みんなで晩御飯……ハラショー」
希「今日はラーメンが食べたいなぁ。凛ちゃん、オススメの店に連れて行ってくれる?」
凛「もちろん、凛に任せるにゃ!」
ことり「ラーメンなんて久しぶりだね」
海未「ふむ、担担麺が食べたいです」
凛「かよちんはご飯?」
花陽「ううん、今日は凛ちゃんと同じラーメンにするよ」
凛「かよちん……えへへ」ギュッ
花陽「凛ちゃん♪」ギュッ
真姫(やっぱり私の気のせいだったのかしら……)
にこ「もう大丈夫そうね、花陽」
希「うん……カードがウチに告げとる。問題は解決したって。なぁえりち?」
絵里「今日は思い切ってチャーシューメンにしようかしら……!」
のぞにこ「」
――おしまい♪
感想
面白かった
グッドエンドで何より
ありがとうございます
さすがにバッドエンドはメンタル的に無理でした;
感動したな〜
ありがとうございます♪
シリアス系のSSだった故に、嬉しい限りです
感動して泣いちゃいました。
もっと凛ちゃんとかよちんのことが好きになりました。
ありがとうございます!
こちらこそご感想ありがとうございます♪
このSSの本質を感じ取っていただき、本当に嬉しい限りです。
これからもその素敵な感性をお大事になさってくださいね。
すごい良かったです!思わず泣いてしまいました!(´;ω;`)
とても繊細で素敵な感性をお持ちですね。
本作のテーマを少しでも感じ取って頂き、ありがとうございます。