――部室――
海未「凛たち、ずいぶん遅いですね」
穂乃果「なにかあったのかな?」
ガチャッ!
凛「みんな、大変にゃ!」
μ’s「!?」
真姫「床は……汚れてないわね。後は飲み物とお菓子を……!」
ことり「真姫ちゃん凛ちゃん、落ち着いて」
絵里「どうしたの、まさか抜き打ちで部室検査とか?」
真姫「違うわ、もっと恐ろしいものよ……」
μ’s「?」
凛「……例の、かよちんが」
μ’s「!!」
にこ「……まずいわ」
希「破天荒モードの花陽ちゃんやね……」
海未「し、しかし、どうしてまた……!」
凛「それが……」
真姫「さっき電話で、『μ’sのみんなに言いたいことがある』って……かなり不機嫌そうだったわ……」ブルブル
穂乃果「今回はどうしたんだろう?」
にこ「前回の悩みはもう解決したはずよね?」
ことり「えりぱなの百合SSが出たってご機嫌だったのに……」
絵里「?」
凛「またあのかよちんが……しかも、今回はμ’s全員に怒って……」
μ’s「」ブルブル
真姫「花陽が欠席している時点で警戒しておくべきだったわ……」
凛「かよちん…………」
希「こうならないように、ウチら上級生ももっと日ごろから花陽ちゃんのことを気にかけてあげるべきかも……」
海未「しかし、以前の出来事から私たちなりに花陽の良い子扱いをひかえていたはずです」
にこ「その話は後よ、とりあえず今は花陽対策にお菓子を買って――――」
ドンドン!
μ’s「!」
ドンドン!
穂乃果「もう来たの……!?」
凛「あ…………」ガクガク
海未「うっ……と、トラウマが……」ブルブル
ことり「凛ちゃん海未ちゃん、しっかりして!」
真姫「…………」ゴクリ
絵里「あ、開いてるわよ?」
ドンドン! ガチャガチャ!
希「ドアが…………」
にこ「ちょっと待って、今開けるわ」アセアセ
カチャッ
花陽「みんなお待たせ、遅くなってごめんね」
穂乃果「ううん、そんなことないよ!むしろ早過ぎて――」
ことり「穂乃果ちゃん……!」シッ
花陽「座ってもいいかな?」
絵里「ええ、もちろん……」
花陽「」スッ
真姫「…………」
凛「あ……あの、かよちん……」
花陽「んっ、どうしたの凛ちゃん?」
凛「…そこ……真姫ちゃんの席だよ……?」
花陽「え…………」ピクッ
凛「っ!」
花陽「どういうことかな凛ちゃん?わたしはどこにも座ったらいけないってこと?」
凛「ち、違うよ!ただ、かよちんの席はいつも――」
花陽「それなら凛ちゃんにイスになってもらおうかな」
凛「!……か、かよちん……?」ガクガク
花陽「わたし、凛ちゃんみたいにかわいいイスなら一生座ってたいなぁ……あはは」
凛「ひぃっ!ごめんなさいごめんなさいごめんなさい……!」ポロポロ
花陽「ふふ、ごめんね凛ちゃん、ちょっとした冗談だよ」
花陽「だからそんなに震えないで……ね?」スッ
凛「ひっ……!」ビクッ
花陽「はい、真姫ちゃんの席返すね」
真姫「…………」ビクビク
花陽「みんなも座って」
μ’s「…………」ブルブル
凛「」グスッ
―――――――――――――――――――――
花陽「ここのおにぎりおいしいなぁ」モグモグ
μ’s「……………………」
『コンビニで買ったおにぎりを頬張る花陽』
海未「…………花陽?」
にこ「えっと……わたしたちに言いたいことがあるのよね?」
花陽「…………」モグモグ
希「ウチら、また花陽ちゃんを傷つけるようなことしちゃったん?」
花陽「…………」モグモグ
絵里「花陽、食べ終わったらでいいから、理由だけでも教えて?」
花陽「…………」ゴクン
μ’s「…………」
花陽「……この前100回記念SSが終わったよね」
μ’s「?」
『ラブライブSS100話目を記念してことりがローラー作戦に挑戦』
花陽「せっかくの節目だから今までのSSとかネットに転がっているSSを調査してみたんだ」
花陽「そしたら気付いちゃったの」
花陽「わたしのいじめSSがほとんど無いことに」
μ’s「!」
花陽が破天荒になった原因『自分がいじめられているSSが無い』
花陽「あるのはヤンデレとかちょっと怒って不機嫌になるとか、どちらかというと攻めのSSばかり……わたしが受けのSSが全然無いの」
花陽「きっとわたしはみんなにそんなキャラだと思われてるんだ」
『自身が勘違いされていることに苛立ちを覚えている花陽』
花陽「穂乃果ちゃんと凛ちゃんはもちろんのこと、にこちゃんや希ちゃん、果ては絵里ちゃんや海未ちゃんのいじめSSまであるのに、わたしだけ……」
にこ「な、なるほどね、花陽の言い分は分かったわ。……でも」
穂乃果「う、うん……いじめがほんとはダメなことくらい、花陽ちゃんもわかってるよね……?」
凛「いじめられたら辛いよ?……悲しくて、泣きたくなっちゃうもん」
花陽「……そこだよ」
μ’s「?」
花陽「現実のいじめなら痛々しくて悲惨で、心苦しいことこの上無いけど……」
花陽「SSは二次創作……二次創作というのはフィクション、すなわち原作ではありえないことを演出しつつ、往来では見えにくいそのキャラクターの魅力を引き出してこそだよ」
花陽「つまり、嗜虐性を煽りつつそのキャラの魅力を最大限に引き立たせる……」
花陽「いじめSSの需要があるのはそのせいだと思うなぁ」
『いじめSSの魅力に一石を投じる花陽』
μ’s「」
花陽「もちろんキャラクター愛が無いような、ほんとのいじめSSはわたしも反対だけど……」
花陽「読み手の庇護欲や保護欲を適度に刺激して、守りたいと思わせる演出をたくみに使えば……」
花陽「そのキャラの新しい魅力の誕生だよ!!」バン!
真姫「ひっ!」
花陽「はぁ……はぁ…………!」
穂乃果「花陽ちゃん落ち着いて、どうどう」
ことり「ほうら、マカロンだよ~」
希「花陽ちゃんの主張はよく分かったよ、うん」
絵里「で、でも、やっぱりあんまりひどいのは良くないと思うわ」
花陽「……ほんとにそう思う?」
絵里「……」コクコク
花陽「……絵里ちゃん、凛ちゃん、ちょっとこっちに来て?」
絵里「?」
凛「えっ……凛も?」
花陽「……えい!」
えりりん「!?」
ホッペ ギュゥッ~
絵里「いた!いたたたたっ!」
凛「かよちん離してぇ!痛いよ!」
花陽「ダメだよ、もっともっと」ギュゥッ
絵里「ほっぺた取れちゃう……痛い……!」グスッ
凛「なんでこんなこと……!」グスッ
花陽「そろそろかな」
スッ
絵里「ひっく……ぐすっ……」ポロポロ
凛「かよちん……どうして…………」ポロポロ
のぞえり「…………!」
絵里「もうやだ……エリチカおうちかえる…………のぞみぃ……」ウルウル
凛「真姫ちゃん……ぐすっ……」ウルウル
希「よしよしえりち、痛かったね」ナデナデ
真姫「大丈夫、わたしが直してあげるわ」ナデナデ
えりりん「うぅ…………」ウルウル
のぞまき「」ゾクゾク
ことうみ「!」
ことうみ(……ウルウル目の穂乃果(ちゃん)……見てみたい……)ゾクゾク
花陽「……どうかな」
にこ「どうかなって……特に何も感じなかったけど」
穂乃果「う、うん……みんなもそうだよね?」
のぞまきことうみ「!」
のぞまきことうみ「………………」
穂乃果「あ、あれ…………?」
にこ「ちょっと……ことりと海未はまだしも、真姫ちゃんと希まで!?」
海未「わたしたちってそういうイメージですか!?」
花陽「そう、これがキャライメージだよ」
ことうみ「」
ことり「キャライメージ……恐ろしい子……」ゴクリ
花陽「わたしがいじめSSが増えて欲しい理由を分かってもらえたかな?」
絵里「……こほん、そ、そうね、確かにあなたの言い分は筋が通ってるわ。……でもその、なんていうか……」
にこ「ええ、キャラクターそれぞれのポジションがあるっていうか」
にこ「別にいじめSSを書かれやすい穂乃果や凛が魅力的とか、いじめSSが極端に少ない真姫ちゃんや花陽に魅力が無いとか、そういうんじゃなくて……」
にこ「真姫ちゃんや花陽が泣いていると、保護欲以上に罪悪感が勝るのよね」
希「良い子がいじめられてても、ギャップが生じにくいというか……」
花陽「え……」ピクッ
希「あっ……!」クチオサエ
にこ「の、希……!」
凛「それは禁句だにゃ……!」
花陽「……そっか、やっぱりそうなんだ」
花陽「やっぱりわたしが良い子だから、いじめSSも無いんだ……」
希「ち、違うよ花陽ちゃん!」
穂乃果「今のは言葉のあやで……!」
花陽「」ガタッ
μ’s「ひっ!」
花陽「ポジションかぁ……なら手始めにみんなの奥底に眠っているイメージから払拭しないとね」
花陽「まずはμ’sからかな……わたしの性格を先入観で決め付けるなんて許さない許さない許さない許さない許さない……」
海未「いやあぁぁ!」ブルブル
希「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい……」ブルブル
にこ「ま、待って!分かったわ!」
花陽「」ピタッ
にこ「花陽のいじめSSね、一度だけでいいならなんとかするわ!」
花陽「……ほんと?」
にこ「ええ、ほんとよ。どういう反応が返ってくるかはわからないけど……」
花陽「……わかった、にこちゃんのその言葉、信じるね」
μ’s「」ホッ……
凛「それじゃあ今日は帰ろうかな」
μ’s「!」
凛「か、かよちん……!」
真姫「μ’sの練習は……?」
花陽「うーんと、わたしのいじめSSが出てから参加するよ」
花陽「それじゃあみんな、今日はお騒がせしてごめんね」
穂乃果「花陽ちゃん待って!」
海未「そうです!μ’sは9人揃ってやっと――」
ガチャッ バタン!
μ’s「………………」
凛「ほ、ほっぺたつねられたけど……それでも凛はかよちんのこと好きにゃ~」
真姫「ええ、私もよ。……でも」
にこ「破天荒花陽は、もう勘弁して欲しいわね……」
μ’s「」ガクッ
――おしまい♪
感想
痛いですw
お名前変えられたんですね♪
今後もどうかよろしくお願いいたします。
ご感想の件ですが、申し訳ございません。
意味をわかりかねてしまい、ちゃんとした返事をお返しできません。
ええっと、ピュア×2なかよちんが物凄く闇に染まっているってところが…
なるほど、そうでしたか♪
このシリーズの花陽ちゃんは執筆していて楽しい反面、暴走しすぎていないか心配です。
以前コメントした、「自分の性格を先入観で決めつけられるのを嫌がる花陽」っていう解釈(?)を反映してもらえて嬉しいです♪
破天荒花陽はいろんな意味で愛しいので、個人的には続いて欲しいですね
ありがとうございます♪
以前「しょな」さんがおっしゃってくださった心情表現は個人的にとても興味深く、根底で人間が誰もが持っている者と思い採用させていただきました。
破天荒花陽シリーズを応援してくださり、誠にありがとうございます♪
アイデア切れと良い結末が訪れない限り、これからもぜひ続けさせていただきます。
花陽ちゃんがあの甘い声で威張ったり乱暴になってるというのが想像つきませんね…
執筆者ながら同感です;
ギャップ萌えをお楽しみ頂けたらと思います。
このギャップが何ともぐうかわですね
愛しています
このシリーズ、当時はかなり人気がありました。