――十数年前 AM4:24 天々座家 エントランス――
使用人「………………」
使用人「…………」
使用人「……」
メイドA「…………」ソォー
使用人「………………」
メイドA「…………」ソロリソロリ
使用人「………………」
メイドA「…………」スッ
使用人「おはようございます」
メイドA「ひゃっ!?」
使用人「……?どうしました?」
メイドA「むむっ、またバレちゃいました」
使用人「?」
メイドA「ステルス目隠し攻撃です。旦那様以外の方には通用するのですけど」
使用人「気付かないほうが良かったですか、すいません」
メイドA「いえ、情けは無用です。いつかは気付かれないように忍び寄ってみせます」フンス
使用人「…………」
メイドA「おはようございます。お待たせしました」
使用人「準備はできましたか?」
メイドA「はい、バッチリです」
使用人「それでは行きましょう」
メイドA「今日はよろしくお願いします」ペコリ
使用人「」ペコッ
――――――――――――――――――――――――
――前日 PM4:27 客室――
メイドA「失礼します~――あら?」
メイドC「お嬢様?」
りぜ「……!」キラキラ
メイドD「おいしそうですよね~ここのパン」
メイドA「グルメ雑誌ですか?」ヒョコ
メイドC「あっ、メイド長」
メイドD「お嬢様がずいぶんお気に召したようでして」
メイドA「ふふ。お嬢様、なにか食べたいものでもありました?」
りぜ「むらさめ!これみてくれ!」
メイドA「クロワッサンですか。おいしそうですね~」
りぜ「これがたべたい!あとこれも!」
メイドA「少しお借りしてもよろしいでしょうか?」
りぜ「ここにすわれ」
メイドA「ふむ……ベーカリー保登」ポスッ
メイドC「ここからだとちょっと遠すぎますよね」
メイドD「配達も地区内だけみたいですし」
メイドA「そうですねぇ、電車で行ってもかなり時間がかかりそうです」
りぜ「とおいのか?」
メイドA「車で3時間ちょっとですかね」
りぜ「そんなにとおくにいったらおとうさんにおこられるぞ!?」
メイドA「ですね~。行くとしても旦那様にお願いしてからです」
りぜ「そっか……」シュン
メイドC「お嬢様……」
メイドD「あの、良ければわたしが――」
メイドA「♪」シーッ
メイドD「!」
りぜ「しかたない、おまえたちがつくったぱんでいい」ピョン
りぜ「むらさめ、げーむするぞ。あとできてくれ」
メイドA「承知しました」
――バタン
メイドD「あの、メイド長?」
メイドA「明日こっそりわたしが買ってきます」
メイドC「それならわたしたちが――」
メイドA「大丈夫ですよ~、新人さんに一緒に行ってもらいますので」
メイドD「新人さんてあの人ですか?」
メイドA「はい、早起きも得意そうですし」
メイドC「えっ?明朝に行くんです?」
メイドA「4時半くらいに出発しますよ。明日の昼食は楽しみにしててください」
メイドC「あっ、メイド長……!」
メイドA「♪」フリフリ
バタン
メイドD(大丈夫かな……?)
―――――――――――――――――――
――リゼ父 コレクションルーム――
使用人「…………」ソウジキ
使用人「ふぅ…………」
使用人(こんなものか)
使用人「…………――!」
使用人(この銃、セーフティーが外れてる……)スッ
使用人「……」カチッ
使用人「………………」
――トントン
使用人「!」
メイドA「ここですかね?」ガチャッ
使用人「メイド長」
メイドA「ふふ~発見です。探しましたよ~」
使用人「俺を?」
メイドA「はい、あなたを」
使用人「なにかご用ですか?」
メイドA「実はですね、お嬢様がグルメ雑誌をご覧になられてまして、そこに載ってあったパン屋さんに行きたいのですよ」
使用人「分かりました。荷物持ちでしたら」
メイドA「いえそれが、すっごく遠くなので車で行こうと思います」
使用人「町の外ですか?」
メイドA「ここから車で3時間以上ですね~」
使用人「電車で向かったほうが早いのでは?」
メイドA「できることなら明日の昼食に間に合わせたいのですよ~」
使用人「……そういうことですか」
メイドA「ですのでここを出発するのは4時半くらいになりそうです」
使用人「引き受けます」
メイドA「本当ですか?良かった、ありがとうございます」ペコリ
使用人「店の住所と、なにを買えばいいのかメモだけ描いておいてください」
メイドA「メモ?」
使用人「俺では分かりませんから」
メイドA「心配いりませんよ、わたしがいます」フンス
使用人「……?」
メイドA「一人だと道中寂しいので助かります。明日に備えて今夜は早く寝ましょうね」
使用人「待ってください」
メイドA「?」
使用人「明日はメイド長も一緒に?」
メイドA「もちろんです、わたしのわがままで付き合ってもらうんですから」
使用人「気を遣わなくてもこれくらい――」
メイドA「一人だと道中寂しいですよ~あなたもきっと」
使用人「!」
メイドA「気遣いじゃなくてわたしがあなたを誘いたかっただけです。では」フリフリ
バタン
使用人「………………」
――――――――――――――――――
――AM5:12 車中――
メイドA「偶然ですね~まさか行ったことがあったなんて」
使用人「一度だけですけど」
メイドA「どんな感じでした?」
使用人「森の奥です、電波も繋がらなくて」
メイドA「まさに隠れ家的なパン屋さんですね」
使用人「俺は外で待っていたので店内は知りませんけど、感じの良さそうな店員さんでした」
メイドA「ふふっ、楽しみです」
使用人「………………」
メイドA「どうです?ここの生活には慣れました?」
使用人「おかげさまで」
メイドA「あの子も最近は一緒に夕飯の支度をしてくださったり、積極的にお手伝いしてくださるんですよ」
使用人「メイド長やみんなが優しくしてくださるおかげです」
メイドA「お嬢様もご友人が増えたと喜んでおられますし、良いことばかりです」
使用人「………………」
メイドA「あっ、景色が変わりました。木組みの街から出ましたね」
使用人「……あなたは、何も聞かないんですね」
メイドA「んっ?」
使用人「あの子のこと、俺たちのこと」
メイドA「言いたくないことや思い出したくないことの1つや2つ、誰だってありますから」
使用人「それでも相手が素性を隠していたら気になるのが人間です。一緒に住むならなおのこと」
メイドA「そうですね~確かにあなたたちについてはみんなも陰で色々噂してます」
使用人「……知ってます」
メイドA「受け入れはしたけど気にはなるってところでしょうか」
使用人「………………」
メイドA「車の中で色々聞かれると思ってました?」クスッ
使用人「ええ、そろそろかと」
メイドA「わたしにとって大切なのは今のあなたたちです」
使用人「それでいいんですか?」
メイドA「無理やり聞き出した情報は信憑性に欠ける。腕の立つ尋問官は、捕虜に苦痛を与えるようなことはしない。酔った時に旦那様がおっしゃってました」
使用人「……違いありません」
メイドA「そういえば、あの子を看病してくださった使用人さんに聞きましたよ。あの子喉頭がないって」
使用人「はい、だから声が出せません」
メイドA「身振り手振りで可愛らしいと思ってましたけど、あの子なりに大変なんですね」
使用人「一応メモパッドは渡してあるのですけど、どうも描くのは億劫らしくて」
メイドA「意思疎通ができればなんでも良いですよ~慣れれば意外と分かります」
使用人「そうですね、不思議と」
メイドA「やっぱりわたし、今のあなたたちと仲良くなれれば充分です」
使用人「………………」
メイドA「あっ、次を右です!」
使用人「メイド長……ありがとうございます」
メイドA「いえいえ」ニコッ
――――――――――――――――――――――――
――AM7:46 ベーカリー保登 店前――
メイドA「あっ、あれでは!」
使用人「赤い屋根……間違いないです」
メイドA「8時前、思ったよりも早く着きましたね」
使用人「車がほとんど通ってなかったですから」
メイドA「長時間の運転お疲れさまでした。帰りはわたしに任せてください」
使用人「この辺に止めておきます」
メイドA「いざ突撃です!」ガチャッ
使用人(パンと花の匂い……いい香りだ)
メイドA「うーんいい匂い!綺麗な景色です!お嬢様も連れてきてあげたかったですね」
使用人「4時に起きるのはさすがにお嬢には酷ですから」
メイドA「もうオープンしているみたいですよ」
使用人「あっ、メイド長」
メイドA「?」
使用人「俺はここで待ってます」
メイドA「一緒に入りませんか?」
使用人「人相が悪いので。店員さんも良い気はしないでしょうから」
メイドA「そんなの大丈夫ですよ?おいしそうなパンがいっぱい並んでますよ、きっと」
使用人「そこのオープンスペースで待ってます」
メイドA「残念ですね~それでは行ってきます」フリフリ
使用人「」ペコリ
――――――――――――――――――――――――――
――ベーカリー保登 店内――
メイドA「お邪魔します」ガチャッ
少女「いらっしゃいませ」
メイドA「可愛い店員さんですね~こんにちは」ニコッ
少女「こんにちは。さっき『デニッシュ』が焼けたところですよ」
メイドA「それじゃあそれをいっぱい!」
少女「いっぱい?」
メイドA「はい、いっぱい売ってください」
少女「ちょっと待ってくださいね」
少女「おかあさ~ん」
メイドA(小学生くらいかな?しっかりしてる子ですね)
―――――――――――――――――――――
――オープンスペース――
使用人「………………」
使用人(電波が届かない……市街地まで行けば繋がるか)
使用人「…………」スッ
使用人(のどかな場所だな……)
??「――これあげるっ」スッ
使用人「!」
幼女「おにいちゃん、おなかすいてるんでしょ?」
使用人(……サンドイッチ?)
幼女「わたしがつくったんだよ」エッヘン
使用人「……君は?」
幼女「わたしね、ここ―――」
少女「こらー、お客さんにそんなグチャグチャのパン渡したらダメでしょ~」ガチャ
幼女「おいしいもん!『はむ』と『かつ』と『たまご』がはいってるもん」
使用人「…………」フッ
少女「妹が迷惑かけてすいません。ほら、ごめんなさいして」
幼女「このぱんおいしいもん……」
使用人「それ、貰っていいかな?」
少女「えっ!?」
幼女「いいよ!めしあがれ~」スッ
使用人「…………」モグッ
使用人「おいしい」
幼女「ほんと!?」
使用人「パン作り、上手だね」ナデナデ
幼女「えへへ~//」
少女「おにいさん……ありがとうございます」ペコリ
使用人「」ペコリ
メイドA「あらあら、いいですね~」
使用人「メイド長」
メイドA「モカちゃん、あちらが妹さんですか?」
もか「はい。まだグチャグチャのサンドイッチしか作れなくて」
メイドA「妹ちゃん、わたしにも特製サンドイッチくださ~い」
幼女「おねえちゃんもたべたいの?わたしのサンドイッチ?」
メイドA「はい、そのおいしそうなサンドイッチが食べたいです」
幼女「ぁ……!」パアァ
幼女「うん!いっぱいつくってあげる!まってて~!」トタトタ
もか「あっ、ここあ~!」トタトタ
メイドA「とっても可愛い姉妹ですね」
使用人「ええ、ほんとうに」
――ポンッ
使用人「!」
メイドA「えらーいえらいです」ナデナデ
使用人「どうしました?」
メイドA「さっきのご対応、素敵でしたよ」
使用人「………………」
メイドA「あなたは身長高いですからね。座っている時がチャンスです」
使用人「頭を撫でる、ですか」
メイドA「お嫌いです?」
使用人「……いえ」
メイドA「よくできましたね~、えらいえらい」ナデナデ
使用人「………………」
――――――――――――――――――――――――――
メイドA「お忙しいところすいません、お手数をおかけしました」
店員さん「いえいえ。またぜひお越しください」ニコッ
もか「お代、ほんとうに頂いていいんですか?あんなグチャグチャのサンドイッチで」
メイドA「もちろんです、こんなにいっぱい作ってくださったんですから」
ここあ「おねえちゃん、おにいちゃん、ばいばい!またきてね!」
使用人「…………」ペコリ
メイドA「もかちゃんありがとうございます。妹ちゃん、パン作り頑張ってください」グッ
ここあ「こんどはもっとおいしいさんどいっちつくるよ!わたしにまかせなさーい!」ガシッ
メイドA「ふふ、今度来た時またごちそうしてくださいね」ナデナデ
――――――――――――――――――――――――――
――天々座家 AM11:13――
りぜ「どうだ?いたか?」
メイド「」フルフル
りぜ「かいものにいったのかな?」
メイド「」ムムム
りぜ「あっ!」
メイドC「あらお嬢様、おはようございます」
りぜ「おい、むらさめをしらないか?」
メイドC「メイド長ですか?そういえば朝から見てませんね~」
りぜ「みつけたらわたしにあいにこいっていっておいてくれ」
メイドC「承知しました、しっかりお伝えしておきます」ナデナデ
りぜ「きょうのおひるごはんはなんだ?」
メイドC「まだ未定のようです」
りぜ「むぅ……へやでまってる」
メイドC「準備ができたらお知らせしますね」
メイド「」カクカクシカジカ
メイドC「いえ、実はですね――」
メイド「?」
―――――――――――――――――――――――
――リゼの部屋 PM12:08――
りぜ「ふふん、どうだ」ゲーム
メイド「」パチパチ
りぜ「この『かむふらーじゅ』りつならみつからないぞ」
メイド「」コクリ
りぜ「いざとなったら『すてるすめいさい』もあるしな」
メイド「」フムフム
りぜ「このままいけば『けんきゅうじょ』までみつからずに――」
――トントン
りぜ「はいっていいぞ」
メイドA「お嬢様」ヒョコ
りぜ「!」
メイドA「お待たせしました」ニコッ
りぜ「むらさめっ!」
――ギュッ
メイドA「遅くなっちゃいましたね」ナデナデ
りぜ「どこにもいなくてしんぱいしてたんだぞ」プクー
メイドA「ごめんなさい、朝から出かけておりまして」
りぜ「どこにいってたんだ?」
メイドA「お買い物ですよ~お昼ご飯を買って参りました」
りぜ「おひるごはんおわったらあそべるか?」
メイドA「はい、みんなでたくさんあそびましょう!」
りぜ「ぁ……!」パアァ
りぜ「おなかすいた、はやくいくぞ!」
メイドA「お嬢様、走ると転んじゃいますよ~」
りぜ「……えへへ//」タタタ
メイドA「わたしたちもいきましょう」
メイド「」コクリ
メイドA「お嬢様のお相手、ありがとうございました」ナデナデ
メイド「//」
――――――――――――――――――
――ダイニング――
りぜ「これ……!」
メイドA「ふっふっふ~この雑誌に載っていたパンです!」
りぜ「かってきてくれたのか!?」
メイドA「はい、この方と一緒に」
使用人「俺は付き添っただけですので」
りぜ「ありがとう!//」ダキッ
使用人「!」
りぜ「さすがはわたしのしんゆうだ//」ニヘラ
使用人「……フッ」ナデナデ
りぜ「むらさめも、その……ありがとう//」
メイドA「ちゃんとお礼が言えて偉いですね~お嬢様は」ナデナデ
りぜ「うぅ……//」モジモジ
メイドD「おいしそうなパンですね、どれも」
メイドA「たくさん買ってきましたので好きなだけ食べてください」
リゼ父「確かにどれも見事だが……これはなんだ?」
使用人B「一応サンドイッチ……ですかね?」
メイドD「どうしてこれだけこんなにグチャグチャなのでしょう?」
メイドA「あ、それわたしのおすすめです!」
使用人C「これがですか?」
メイドC「すごくハンドメイド感がありますね……」
メイドA「妹ちゃん特製サンドです」フンス
リゼ父「子供が作ったのか?」
メイドA「お嬢様と同い年くらいの子でした。小さいですけど立派なパン職人でしたよ、味は確かです」
リゼ父「ほう、どれ……」スッ
りぜ「わたしもそれたべたい!」
メイドA「どうぞ、おいしいですよ~」スッ
リゼ父「…………」モグモグ
りぜ「んっ」パクッ
リゼ父「……具が色々入りすぎてて何がなにやら分からんな」
メイドA「ほんとはハムとたまごとカツだけだったんですけど、サービスでいっぱい入れてくれたみたいです」
りぜ「おいしいぞ、これ」
リゼ父「まぁな」モグモグ
メイドD「ではわたしも」
使用人B「俺も一つ貰います」
メイドA(妹ちゃんの特製サンド、好評ですね~)ニコニコ
使用人B「うん、確かに見た目はあれですけど」
メイドD「ボリュームがあっておいしいですね」モグモグ
ガヤガヤ ワイワイ
使用人「………………」
使用人O「遠いところまでわざわざありがとう」ポンッ
使用人「!」
使用人O「みんなが喜んでる。君のおかげだよ」ニコッ
使用人「…………」ペコリ
使用人O「んっ?どうかしたかい?」
使用人「いえ」
使用人O「食べよう、お腹すいただろ?」
使用人「はい。頂きます」
メイドA「はいあーん」
メイド「」アーン
メイドA「おいしいですか?」
メイド「」コクリ
りぜ「むー……わたしも!」
メイドA「お嬢様もですか~はいあーん」
りぜ「あーん」
――
――――
――――――
―――――――――――――――――――――――――
――PM8:43 宿直室――
使用人「…………」
『みんなが喜んでる。君のおかげだよ』
使用人(そうか。メイド長は、お嬢のためだけでなく……みんなのことを)
使用人(俺はただ、お嬢とメイド長のためだけに……)
使用人(………………)
『この家にいる人は、みんなわたしの大切な家族です』
Prrrrrrrrrrr
使用人「!」
【リゼお嬢様の部屋】
使用人「はい」スッ
メイドA『はろはろー、わたしです』
使用人「メイド長」
メイドA『突然すいません。今お手隙ですか?』
使用人「ええ」
りぜ『みんなであそぶぞ!はやくわたしのへやにこい!』
メイドA『よろしいでしょうか?』
使用人「承知しました」
メイドA『ありがとうございます。待ってますよ~』
使用人「すぐに行きます」
使用人(…………家族、か)
――ガチャッ バタン
――――――――――――――――――――――――――――
――――――
――――
――
――PM10:41 IN ベッド――
メイドA「明日はなにして遊びましょうか?」
りぜ「そとであそびたい!みんなで『さばげー』しよう」
メイドA「ふふ、承知しました」
りぜ「えへへ……//」ギュッ
メイドA「最近はご機嫌ですね~」ナデナデ
りぜ「おまえのおかげでたくさんあそびあいてがふえたからな」
メイドA「今度みんなで遠くにお出かけしましょうか、ユラさまもお誘いして」
りぜ「いきたい!やくそくだぞ?」
メイドA「はい、約束です」
りぜ「んっ……」クシクシ
メイドA「明日に備えておやすみしましょう」
りぜ「うん……ねるまでそばにいてくれよ?」
メイドA「承知しました~」ギュッ
りぜ「むらさめ……おやすみ」ウトウト
メイドA「おやすみなさいませ、お嬢様」
リゼ「……すぅ……すぅ…………」Zzz
メイドA(もう寝ちゃいましたか。幸せそうな寝顔)クスッ
メイドA「ごめんなさいお嬢様、おやすみされたので失礼します」スッ
りぜ「ん……」Zzz
メイドA「こんな毎日が、ずっと続けばいいですね」ナデナデ
メイドA「ずっと……――ずっと」ニコッ
―――――――――――――――――――――――――
――――――
――――
――
――現在 PM1:04 玄関――
使用人「ただいま戻りました」ガチャッ
ここあ「おかえりなさい!」トテトテ
使用人「小さいお嬢、お出迎えありがとうございます」
ここあ「ゆうしゃさん、これあげる」スッ
使用人「これは……サンドイッチ?」
ここあ「りぜちゃんとめいどさんにおしえてもらってつくったんだよ」エッヘン
使用人「うまくできてますね」
ここあ「『はむ』と『かつ』と『たまご』がはいってるの」
使用人「食べてもいいですか?」
ここあ「いいよ!めしあがれ~」
使用人「…………」モグモグ
使用人「すごくおいしいです」
ここあ「やったぁ!」
使用人「パン作り、上手ですね」ナデナデ
ここあ「えへへ~//」
リゼ「ここあ~そろそろ次のパンが焼けるぞ」
ここあ「はーい。おひるごはん、もうすぐできるからまってて」
使用人「ええ、楽しみにしています」
ここあ「ゆうしゃさんはなにかってきたの?」
使用人「デザートです、全員分の」ガサッ
ここあ「あいすくりーむ!」
使用人「昼食のあとに食べましょう」
ここあ「うん!りぜちゃんにもおしえてくる!」タタタ
使用人「あ、小さいお嬢。走ると転んでしまいますよ」
使用人「…………」スッ
使用人(このサンドイッチの味……どこかで)
使用人(……そういえば、昔あの人と行ったパン屋の女の子がこんなサンドイッチをくれたっけ……)
使用人(あの子……元気にしてるかな)クスッ
メイドB「おかえりなさいませ」
使用人「!」
メイドB「どうされました?」
使用人「いえ。ただいま帰りました」
メイドB「それサンドイッチです?ダメですよ、昼食前に買い食いは」
使用人「これは今しがた小さいお嬢に渡されたものです」
メイドB「失礼しました。そういえばお昼はお嬢様やメイド長と一緒にパンを作ると張り切っておられましたね」
使用人「これは小さいお嬢のお手製のようです」
メイドB「お味の方はいかがでしたか?」
使用人「昔食べたことのある懐かしい味がしました」
メイドB「懐かしい……。一口頂いてもよろしいです?」
使用人「食べかけですけど大丈夫ですか?」
メイドB「気にしませんよ」
メイドB「はむっ……」モグモグ
使用人「どうです?」
メイドB「おいしいですがすごく複雑な味ですね。中の具が色々混ざりすぎて」
使用人「ははっ」
メイドB「わたしは食べたことのない味です。もしかしたら小さい頃のお嬢様が似たようなものをお作りになられたとかです?」
使用人「いえ、昔に小さいお嬢くらいの女の子が似たものをくれたことがありまして」
メイドB「それではこれで2回目ですね。ところでその袋は?」
使用人「あっ……忘れてました。食後のアイスです、早く冷凍庫に行かないと」
メイドB「ひとつ持ちます。急ぎましょう」
使用人「重いですよ」
メイドB「無理なさらなくてもお嬢様と小さいお嬢様の分だけで良かったのに」
使用人「みんなの喜ぶ顔が見たいので。お嬢や小さいお嬢だけでなく、君やあの子も」
メイドB「お心遣いありがとうございます」ニコッ
使用人「いえ。――大切な家族、ですから」
――おしまい
感想
今までずっと出てきてたメイドさん、所謂文面上のキャラ付け的な物が理由で身振り手振りでしかコミュニケーションが描写されてない(実際には言葉での会話もしてる)んだと思っていました…
改めてメイドさんが出てくる話をいくつか見返して、本当に色々考えて話を作られていたんだな と驚きました。いつか描かれるであろう、現代に至るまでに恐らく何かがあるメイドAさん周りの事がどうなるか楽しみです。
サブキャラゆえにセリフ無しってやつですね。
色々練り込み過ぎてメイドさんのキャラ設定を回収するのに3年近くかかってしまいました。
メイドAさん、現代のココアちゃんシリーズの世界線では一切登場しませんね……お待ちくださいませ、必ずや続編を書かせて頂きます。
いいわねー
まだまだ続きますよ!