シリアスですが鬱ではないと思います。短めですが『まきぱな』です。
――小泉家 PM10:14 ベランダ――
真姫「……………………」
花陽「なにか見える?」ヒョイ
真姫「花陽…………電話終わったのね」
花陽「うん、凛ちゃん悔しがってたよ。二人だけでズルいって」
真姫「小テストとはいえ、20点なんて点数取った凛が悪いと思うけど」
花陽「あはは、さすがに凛ちゃんのお母さんもカンカンみたいだよ」
真姫「……日にち、ずらしてあげた方が良かったかしら」
花陽「ん~……でも、またいつでもお泊りくらいできるから。……それに」
花陽「真姫ちゃんと二人きりなのも、たまにはいいかなって」ニコッ
真姫「花陽…………」
花陽「なんだか久しぶりだね、こうやってゆっくり話すの」
真姫「そういえば、私たち二人きりって滅多にないわね……最初に会った頃以来かしら」
花陽「それからはずっと三人一緒だったから」
真姫「三人……………………」
花陽「…………?」
真姫「……凛がいないと、静かね」
花陽「あっ、うん、そうだね……」
真姫「……………………」
花陽「…………真姫ちゃん?」
真姫「?」
花陽「……なにか、考え事?」
真姫「……考え事というより……たぶん自己嫌悪」
花陽「自己嫌悪……?」
真姫「私が花陽たちと友達になったのって、高校生になってからじゃない」
真姫「それまではずっと、花陽と凛の二人きりだったから……」
真姫「共有してきた時間が、10年以上も違って……そんな世界に、わたしみたいな部外者が足を踏み入れてもいいのかなって」
花陽「部外者だなんて……そんなこと――!」
真姫「ええ、分かってるわ。凛と花陽がそんな風に考えてないことくらい……」
真姫「……でも」
真姫「心のどこかでそんな風に考えて……二人が話しているのを見て、勝手にモヤモヤして……」
真姫「……花陽と凛、二人に嫉妬してる自分が、すごく嫌……」
花陽「……………………」
真姫「ごめんなさい花陽、突然変なこと言って……」
花陽「ううん……むしろ、なんだかちょっと嬉しいかな」
真姫「嬉しい……?」
花陽「だって、真姫ちゃんが凛ちゃんに嫉妬してくれてるんだもん♪」
真姫「えっ…………あっ!」
真姫「~~~っ!//」カァァ
花陽「なんだか告白されたみたいでドキドキしちゃった」
真姫「ちが……!……わないでもないけど、その…………//」ゴニョゴニョ
花陽「……でもね」
スッ……ギュッ
真姫「……花陽?」
花陽「わたしに嫉妬してるって聞いて、なんだか少しモヤモヤしたよ……」
真姫「えっ…………」
花陽「真姫ちゃん、大丈夫…………わたしも、きっと凛ちゃんも同じだよ」
花陽「わたしも凛ちゃんと真姫ちゃんが仲良く話してるのを見て……嫉妬みたいな感情、抱いてるもん」
花陽「凛ちゃんにも真姫ちゃんにも、どっちにも私の方を向いていてほしいって……」
真姫「…………!」
花陽「どういうことかわかるよね?」
花陽「わたし……凛ちゃんも真姫ちゃんも、同じくらい大切だよ」
真姫「……花陽」
花陽「……わたしはね、こう思うんだ」
花陽「一緒に過ごしてきた時間ていうのは、絆とか友情とかじゃなく、良くも悪くも思い出になっちゃうだけなんだなって……」
花陽「そうでないと、誰も友達や仲間を裏切ったりしないと思うの…………」
真姫「……でも……裏切らない人もいるわ……ほんとに、稀だけど」
花陽「うん…………そういう人達はね、きっと思い出を大切にできるからだよ」
花陽「今を大切にしながら、思い出を大切にして……それを相手への思いやりに変えられる、強い人たち……」
花陽「わたしはそんな風に強くはなれないけど……『今である』真姫ちゃんと、『一緒に思い出を作ってきた』凛ちゃん……わたしはどっちも、大切にしたいな」
真姫「っ…………」
花陽「真姫ちゃんは自分が嫌いかもしれない……でも、私はそんな真姫ちゃんが大好きだよ♪」
真姫「…………花陽は、強いわね」
花陽「ううん……そんなことない」
真姫「……わたしは、『今』である凛と花陽を、大切にしていれば……いつかは、この感情も消えるかしら」
花陽「どうかな……もしかしたら真姫ちゃんが『今』じゃ無くなっても、わたしは二人に嫉妬しちゃってるかも」
真姫「……さっきの、言い間違えたわ」
真姫「」スッ
花陽「……?」
真姫「」ホッペ チュ
花陽「……!」
真姫「花陽は、欲張りね……」
花陽「……真姫ちゃんも、同じだよ//」
真姫「……これからも、三人一緒にいられるといいわね」
花陽「大丈夫、きっといられるよ……この『嫌な』感情がある限り、ずっと……」
花陽「わたしにとって真姫ちゃんが凛ちゃんの代わりにはならないように、凛ちゃんだって真姫ちゃんの代わりにはならないもん」
真姫「わたしも一緒……凛も花陽も……」
真姫「あなたたちの代わりは、だれもいないわ」
花陽「真姫ちゃん……これからも仲良くしてね?」
真姫「それはこっちの台詞よ」
まきぱな「……ふふっ♪」
――おしまい
感想
超感動しましたーーーーーーーーーーーーー
ありがとうございます♪
やばい!感動です(;▽;)
ありがとうございます♪
どうも。2021年からラブライブSSを拝見しております。
今回は比較的短いSSですが、かなり推敲をされたのではないかと思っております。
ふとした場面の中に、大切な気持ちがしっかり表現されているからです。
花陽の「一緒に過ごしてきた時間ていうのは、絆とか友情とかじゃなく、良くも悪くも思い出になっちゃうだけなんだなって……」はファイナルライブ直後の当時には、衝撃の大きいセリフだったのではないかと思います。
また、その次のセリフの「そうでないと、誰も友達や仲間を裏切ったりしないと思うの…」から花陽には暗い過去、経験があるのではないかと想像してしまいます。このセリフに砂水先生の今につながる作風がうかがえますね。