ラブライブ SS にこ「μ’sと希の居場所」

 

――3年生 教室――

 

ザワザワ ガヤガヤ

 

にこ「希が欠席?」

 

絵里「ええ、今朝連絡があったわ」

 

絵里「昨日コタツでそのまま寝たら風邪引いたとか」

 

にこ「まったく、一人暮らしとはいえ怠慢過ぎるわね」

 

絵里「微熱だし、うつすといけないからお見舞いは来なくていいって言ってたけど……」

 

にこ「……………………」

 

にこ「…絵里、悪いけど、わたし今日は部活欠席するわね」

 

絵里「希のお見舞いに行くの?ならわたしも――」

 

にこ「お見舞いじゃなくて、説教に行くのよ」

 

絵里「えっ?」

 

にこ「あれだけ言っても、人に頼ることをしない不器用者にね」

 

絵里「にこ…………」

 

絵里「……そうね、なら、わたしは明日にするわ」

 

絵里「あっ、でもあんまりきつく言っちゃダメよ?ああ見えて希、傷つきやすいんだから」

 

にこ「わかってるわよ」

 

 

 

――希のマンション――

 

希「……………………」

 

ゴロン

 

希「……………………」

 

ゴロン

 

希「……………………」

 

ピンポーン

 

希「……?」

 

 

希「はい?」ガチャッ

 

にこ「」ムスッ

 

希「!にこっち……なんでここに」

 

にこ「上がらせてもらうわよ」

 

希「あっ、ちょっと……」

 

にこ「ほら、あんたはベッドで横になってなさい」

 

希「まだ4時やんね……にこっち、部活は?」

 

にこ「誰かさんのせいで欠席したのよ」

 

希「!………ごめんね」

 

にこ「まったくよ」

 

希「でも、ウチえりちにお見舞いに来なくてもいいって伝えたんやけど」

 

にこ「はぁ?何勘違いしてるの、誰もお見舞いになんて来てないわよ?」

 

希「えっ?」

 

にこ「今日はあんたを説教しにきたのよ」

 

 

―――――――――――――――――――――――――

 

にこ「38.7度……高熱じゃない。なにが微熱よ、このバカ希」

 

希「うぅ…………」

 

にこ「何度言えばわかるの、辛いときは人に頼ったっていいっていつも言ってるでしょ?」

 

希「ごめん…………」

 

にこ「あんまり聞き分け悪いと昔の絵里やわたしみたいになっちゃうわよ」

 

希「あはは、それはさすがに嫌かな……」

 

にこ「……今回だけは許してあげるわ、今度こんなことがあったらげんこつだからね」

 

希「うん……気をつけるね」

 

にこ「……………………」

 

希「……………………」

 

にこ「………………」

 

希「にこっち、そんなに見つめられたら反応に困るよ……」

 

にこ「……ねぇ、希?」

 

にこ「あんた、またなにか抱え込んでるでしょ?」

 

希「!」

 

にこ「顔見ればわかるわよ、無理して平然を装ってるあんたはいつもそんな顔してるもの」

 

希「っ……ひどいなぁにこっち、ウチは何も――」

 

にこ「てい」ペシッ

 

希「いつっ」

 

にこ「今度ごまかしたらげんこつだって言ったわよね」

 

希「病人にひどいよ……しかも今のチョップ……」

 

にこ「思った通りね、やっぱりコタツが原因で風邪引いたわけじゃないわ」

 

にこ「きっとメンタル的なものでしょ、違う?」

 

希「……………………」ウツムキ

 

にこ「……素直に話してくれるまで、今日は帰らないから」

 

希「にこっち…………」

 

希「……聞いて、くれるの?」

 

にこ「ええ、そのために来たんだから」

 

希「ふふっ……ありがとう、にこっちは優しいね」

 

にこ(こういうときの希って、いつもよりずっと幼く見えるわ……)

 

 

希「……もうすぐ、卒業やんね」

 

希「ウチも……えりちも、にこっちも……」

 

希「そうなったら、μ’sも解散……少なくともウチら三人は、離ればなれ」

 

にこ「………………」

 

希「えりちは進学かな、にこっちはアイドルに、ウチは……まだ分からないけど」

 

希「いずれにせよそれぞれ道を違えてしまうから、今みたいに毎日会えるわけじゃなくなるよね」

 

にこ「……そうね」

 

希「時間って意外と残酷やん……?最初のころは寂しく感じても、いずれはそれに慣れてしまうと思う」

 

希「μ’sがいないことも、えりちがいないことも、にこっちがいないことも全部……」

 

希「えりちもμ’sのみんなも、にこっちだってきっと……」

 

にこ「……………………」

 

希「ウチね、今すごく幸せなんよ」

 

希「穂乃果ちゃんことりちゃん海未ちゃん、凛ちゃん花陽ちゃん真姫ちゃん、えりちににこっち、みんなに囲まれて……これ以上無いってくらい、今が幸せ」

 

希「この幸せをかみしめているからこそ、みんなと別れるのが辛いし……正直言って、一人になるのが怖い……」

 

にこ「………………」

 

希「……でもね、ほんとに一番怖いのは――」

 

 

希「この幸せを失ったあと、また昔みたいにひとりぼっちに慣れてしまうこと……」

 

 

希「慣れるのが怖くて、この気持ちが薄れていくことが怖くて……そんなこと考えてたら、なんだか辛くなっちゃって……」

 

希「気がついたら顔が蒼白、昨日の夜に体調崩して……ほんと、ダメやね」

 

希「こういう弱いところ、直したいんやけど……」

 

にこ「……………………」

 

希「……ごめんねにこっち、しんみりした話聞かせてしまって」

 

にこ「…………なるほど、ね」

 

にこ「てっきりみんなと離れるのが怖いのかと思ったけど、もっと意外だったわ」

 

にこ「なんていうか、希らしい心配って言うか……」

 

希「そりゃ怖いよ……無意識のうちに幸せがかすんでいくなんて……」

 

にこ「………………」

 

にこ「……そうね、そう考えたら、確かに人って怖いわ」

 

にこ「肉親やペットが亡くなったって、思いだして涙を流せるのはほんの数日だものね」

 

にこ「特に思い出なんてものは、すぐに忘れさられるものよ」

 

希「……………………」

 

にこ「嫌なことは一生記憶にこびりついてくるくせに、楽しいことってすぐに消えちゃうのよね……ほんと、時間は残酷だわ、希の言う通りよ」

 

希「っ…………」

 

にこ「……でもね、希?」

 

にこ「わたしは信じたいの……少なくとも、μ’sのみんなだけはね」

 

希「え……」

 

にこ「信じてるというか……言い表すのは難しいけど」

 

にこ「たぶんわたしたち3人が卒業しても、時間を残酷と思わせないくらいそばにいてくれるって、そう思うの」

 

にこ「ほんと、根拠も何も無いけどね」クスッ

 

希「……!」

 

にこ「時間が空けば、関係も記憶も薄れる……悲しいけど、これはほんと」

 

にこ「でもね……きっと、μ’sは大丈夫」

 

にこ「そもそもあの連中がそんな常識に縛られるはず無いもの」

 

にこ「もちろん、わたしも絵里もね」ニッ

 

希「にこっち……」

 

にこ「大丈夫、たとえ卒業しても、μ’sが解散しても、希の居場所は永遠に無くならないわ」

 

にこ「だってわたしたちはたった9人でここまでやってきたんだもの、楽しかったり、いっぱい傷ついたりしてね」

 

にこ「いまさら希の欠けた穴を誰かが代わりに埋められるとは思わないしね」

 

希「……ほんと?」

 

にこ「ええ、だから希、安心して」

 

にこ「あんたは、みんなの記憶から消えたりしないから……いつでも戻ってきていい」

 

にこ「ひとりぼっちに慣れる前に、μ’sに帰ってくればいいわ」

 

希「!……」

 

にこ「どう……ダメかしら?」

 

希「………ううん」

 

希「……それで、いい」グスッ

 

希「にこっちのいまの言葉が、たぶん正解や……」ホロリ

 

にこ「そう、良かったわ」ポンポン

 

希「にこっち……いつもありがとうね」

 

にこ「なに言ってんのよ、それはこっちのセリフ」

 

のぞにこ「…………♪」ニコッ

 

ドンドン!

 

にこ「!」

 

希「はーい」

 

にこ「わたしが出るからいいわ、希は待ってて」スッ

 

にこ「はい?」ガチャッ

 

穂乃果「希ちゃん!」

 

にこ「っ!穂乃果!?」

 

凛「はいはい!凛もいるよ!」

 

絵里「にこ、ごめんなさい、やっぱり今日来ちゃった」クスッ

 

にこ「絵里……あんたたち……」

 

にこ「…………」クスッ

 

にこ「でかしたわ、絵里」

 

 

――――――――――――――――――――――――――

 

凛「希ちゃんお風邪大丈夫?凛ね、風邪にいいものたくさん持ってきたよ」

 

真姫「なんで梅干とにんにくなのよ、こういうときは民間療法よりもちゃんとした薬を……」

 

花陽「わたしはおかゆ買ってきたよ、これなら食べられると思って」

 

ことり「ことりはプリンだよ、食べさせてあげるね、あーん♪」

 

海未「すいません、突然大人数でお邪魔してしまって」

 

絵里「海未のせいじゃないわ、わたしがいいって言ったのよ」

 

穂乃果「でもお見舞いはみんなで来たほうが効果あるよ!ねっ、希ちゃん?」

 

希「……うん」ウルッ

 

希「これならすぐに、風邪なんて治りそうやね……♪」グスッ

 

凛「希ちゃんどうしたの?どこか痛い?」

 

真姫「こら凛、病人を揺すっちゃダメよ」

 

ガヤガヤ ワイワイ

 

にこ「………………♪」

 

にこ(良かったわね、希)

 

 

希(にこっち……幸せはすぐに忘れてしまうって言ってたよね…?)

 

希(……でもね、ウチは今日のことは、きっと一生忘れないと思う)

 

希(この幸せは、忘れたくても忘れられない……忘れなくてもいいよね、にこっち)

 

希(……だって)

 

希(ウチの居場所は、ずっとここにあるから……♪)

 

――おしまい♪

リクエストで頂いた、か弱い希ちゃんでした。

感想

  1. しょな より:

    リクエストに答えていただきありがとうございます>_<
    リクエストから投稿までが早くてビックリしました。
    繊細で弱々しいのぞみん可愛い…

    μ'sは解散してからも永遠に不滅であって欲しいですね。(時々解散後のμ'sメンバーがどういう関係になっているかとか空想したりしています。)

    • 砂水クジラ砂水クジラ より:

      幸い、リクエストの内容がシリアスでしたのですぐにプロットがあげられました。
      ご満足いただけたのでしたらなによりです、リクエストありがとうございました。

  2. はなまるびぃ より:

    これリクエストだったんですか…純粋に感動しちゃいました(;_;)
    僕ものんたん推しだし、か弱いというか、μ’sのみんなのこと思ってるところに惚れ直しちゃいましたw

    • 砂水クジラ砂水クジラ より:

      少々シリアス過ぎるかと心配しておりましたが、気に入っていただけてなによりです♪
      希ちゃんの魅力は、包容力と儚さという両極端をどちらも持ち合わせているところだと思っています。
      時折りふとこんな話を描きたくなる時があります。

  3. 匿名 より:

    泣けた

  4. あたるんるん より:

    感動しました。μ’sは形だけじゃないですね。μ’sについての事をのんたんにスポットを当てているのも良いと思いました。自分を隠そうとするのんたんだから言えた、響いたことだとおもいます。

    • 砂水クジラ砂水クジラ より:

      ありがとうございます♪
      本作は短編ながら、執筆者としましても満足いく作品に仕上がりました。

  5. にこに~大好き より:

    あの、SSのリクエストなんですけど卒業した3年生組がμ’sの皆と再開する。といった内容のSSを作ってくれませんか?

    • 砂水クジラ砂水クジラ より:

      ラブライブSSは現在休止中とさせて頂いております。
      ご要望に添えず申し訳ありません。

      • にこに~大好き より:

        そうですか…。ではまた、機会が有ればよろしくお願いします。

  6. 匿名 より:

    希は皆の天使やで
    希のお陰でμ’sはここまで大きくなったんや

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