――部室――
希「♪~♪♪」タロット シャッシャッ
にこ「………………」パソコン カチカチ
トントン
のぞにこ「?」
トントン
にこ「入っていいわよ」
ガチャガチャ! ガチャ!
希「んっ?」
ガチャガチャ! ガチャガチャ!
にこ「誰よ……」
絵里「希、にこ、開けて~!」
にこ「」
希「……えりち、押してごらん?」
絵里「押す?――あっ」ガチャッ
絵里「ハラショー!開いたわ」ニヘラ
にこ「初っ端から完全にPKEじゃない……」
絵里「希、にこ、おはよう」フンス
にこ「いや、もう放課後よね」
希「お昼も一緒に食べたやん」
絵里「突然だけど、今日の練習は中止よ」
にこ「最初から今日はミーティングだけなんだけど」
絵里「今日は希とにこに私の特訓に付き合って欲しいの」
希「特訓?」
絵里「ええ、その名も――」
絵里「エリチカクルクル目克服作戦よ!」ドヤッ
にこ「そのままじゃない!」
希「クルクル目って、目が回るのを克服するってこと?」
絵里「さすがは希ね、察しがいいわ」
にこ「いや、誰だってわかるわよ」
絵里「ほら、以前真姫の別荘でことりの特訓があったじゃない?」
希「ああ~……」
にこ「そういえばあったわね、そういうの」
『ことり主催の高速回転グルグル練習でのぞにこえりぱなが犠牲に』
絵里「あの時、悔しくもわたしは穂乃果に敗北を喫したわ」
希「えりちの場合自滅しただけやと思うけど」
にこ「開始早々木にぶつかってリタイアしてたわよね」
絵里「バレエをやってたから三半規管には自信があったのに……やっぱり平和続きで身体がなまってたみたい」
希「そんな戦闘アニメの主人公みたいなこと言わんでよ……」
にこ「で、本題はなに?」
絵里「KKEとして、グルグル目なんて失態は二度と見せられないわ」
絵里「ということで、二人とも」
絵里「目を回らないようにする方法を一緒に考えて?」
希「思い切り丸投げやん……」
にこ「今日はいつも以上にめんどくさいわね」
絵里「意見が出るまで帰れませんよ~」
にこ「ホームルームか!」
希「うーん……ああいうのもやっぱり慣れの問題やないん?」
絵里「慣れ?」
にこ「そうね、何度も目を回してるうちに自然と慣れてくるものじゃないかしら?」
絵里「……なるほど、確かに一理あるわね」
絵里「にこの幼児体型もこうやって見てると素敵に思えてくるし」
にこ「あんたぶん殴られたいわけ?」
希「まぁまぁにこっち」
絵里「よし、そうと決まれば早速特訓開始よ」
絵里「回転する座椅子は――――あっ、あったわ。よいしょっと」
絵里「希、にこ、思いっきり回してみて?」
希「………………」
にこ「とりあえず回しましょう、なに言っても聞かないと思うし」
クルクルクルクル
絵里「ふふん、まだまだよ」
クルクルクルクル!
絵里「楽しくなってきたわ!」
グルグルグルグル!
絵里「ハラショー!希、にこ、もっともっと!」キャッキャッ
のぞにこ(可愛い)
――――――――――――――――――――――――
絵里「はらぁ~しょ~」クルクル
にこ「絵里、大丈夫?」
希「40秒も回転したらそりゃそうなるよ……」
絵里「世界が回ってるわ……」ヘロヘロ
にこ「ほら、とりあえずここに寝転んで」
絵里「あれ、幻影かしら?不思議とにこが優しくみえる……」クルクル
にこ「あんたさっきからひっぱたかれたいわけ?」
絵里「エリチカ撃沈……」ドタッ
希「もうKKEの面影も無いね」
絵里「うぅ……頭がくらくらするわ」
希「いきなりハードル上げすぎたんやない?」
絵里「だって面白かったからつい……」
にこ「ついじゃないわよ、本気でめまいでも起こしたら大変でしょ」
絵里「にこ……!」
絵里「わたし、にこのこと見直したわ!」
絵里「今までずっと自分勝手でわがままだと思ってたけど、本当は違ったのね!」
にこ「よし、そこ動くんじゃないわよ」
希「にこっち!さすがに鉄パイプはあかんて!」
絵里「でも困ったわ……このアイデアは失敗ね」
希「うーん……あっ、そういえば前の特訓では真姫ちゃんが好成績を残してたやん」
希「お医者さん希望だし、真姫ちゃんに聞けば何かいいアイデアをくれるかも――」
絵里「KKEが後輩に頼るなんて認められないわぁ」
にこ「μ’sって後輩先輩無しじゃなかったの?」
絵里「!ハラショー……そういえばそうだったわ……にこ、なんでもっと早く言ってくれないの!」
絵里「そしたらわざわざにこなんかを頼ること無かったのに」
にこ「」ブチッ
にこ「ふぎゃあああっ!」
希「にこっち!?」
―――――――――――――――――――
真姫「三半規管を鍛える方法?」
希「うん、真姫ちゃんなら何か知ってそうやん」
真姫「……その前にひとついいかしら?」
希「ん?」
真姫「どうしてエリーはおでこに湿布を貼ってるの?」
希「ああ、あれは……」
絵里「矢澤チョップをくらったわ……」グスッ
にこ「自業自得よ」
真姫「………………」
希「真姫ちゃん、できればPKEが出来るくらい簡単な方法で……」
真姫「ええ、わかったわ……」
真姫「そうね、一番手っ取り早い方法はコツを掴むことかしら」
希「コツ?」
真姫「回転しても目が回らないようにするには、遠くにあるもの一点に集中するのが効果的よ」
真姫「例えば回転してる間、あのロッカーだけをずっと見つめるようにするとか」
にこ「なるほどね、だからあの時真姫ちゃんは目を回さなかったんだ」
希「それならえりちにもできそうやね」
絵里「早速試しましょう」イス ドンッ
にこ「どこから出したのよ!?」
絵里「希、にこ、グルグル開始よ!」ワクワク
真姫(恥ずかしいから遠くにいよう……)
―――――――――――――――――――――
絵里「はらぁ~しょ~」クルクル
にこ「効果なし、ね」
真姫「おかしいわ、少しはマシになるはずだけど……」
希「えりち、ちゃんと遠く見てた?」
絵里「見てたわぁ……希とにこと真姫を順番で」フラフラ
にこ「近過ぎるわよ!それに順番じゃ意味ないでしょ!」
真姫「ごめんなさい、役に立てなかったみたい……」
希「ううん、真姫ちゃんのせいじゃないよ。100パーセントね」
にこ「むしろ今の絵里に効果的な方法なんて無いわ」
絵里「ううーん……やっぱりクォーターだからかしら」
希「いや、PKEやからやと思うよ」
にこ「もう諦めたほうがいいんじゃない?」
絵里「………………」シュン
絵里「わかった、もういいチカ……エリチカおうち帰る……」トボトボ
のぞにこ(あっ、拗ねた)
花陽「あれ……絵里ちゃん?」
絵里「!……花陽」
花陽「みんなまで……なにかあったの?」
にこ「花陽……実は――」カクカクシカジカ
――
――――
――――――
花陽「なるほどぉ、目が回るのを克服するために」
希「真姫ちゃんに教えてもらった方法を試したんやけど、えりちがどうも一点に集中できないみたいで」
真姫「花陽、なにかいいアイデア無いかしら?」
花陽「うーん…………あっ!」ピコーン
花陽「えっとね……」ガサゴソ
花陽「これを使ってみたらどうかな?」
にこ「これ……ホワイトチョコ?」
絵里「」ピクッ
花陽「うん、絵里ちゃんの好きなものを遠くにおいて回転させれば――」
真姫「それなら自然と一点に集中するわね」
希「えりち、この方法でもう一度やってみいひん?」
絵里「チョコレート……!」キラキラ
にこ「30回転した後10秒以内にチョコを取りにいけたら成功、ってことでどう?」
絵里「いいわ!望むところよ!」
絵里「さぁみんな、思い切り回して!」
のぞにこ(さっきまでとやる気が違う……)
―――――――――――――――――――――――
絵里「はらしょー!」タッタッタ
絵里「取れたわ!」
全「……………………」
絵里「えへへ~いただきます」パクッ
絵里「ほわぁ……最高ね……」ポワーン
全「………………」
にこ「なんなのよあいつ!」
にこ「目を回すどころかフラフラもしてないじゃない!どこまで集中してたのよ!」
希「うーん、完全に意識がチョコのほうに向いてたんかな」
真姫「三半規管にあそこまでダメージが無いなんて……」
花陽「あはは……一応、克服ってことでいいのかな」
にこ「……はぁ、なんだか一気に疲れたわ」ガクッ
希「はは……そうやね。でも――」
希(目を回してるえりち可愛かったし、役得かな♪)
絵里「今日一日苦労した甲斐があったわ♪」モグモグ
――おしまい♪