ラブライブ SS 真姫「大好きな二人へ」

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ラブライブ SS (後味注意)花陽「わたしの凛ちゃん」の続編及び、その裏テーマへの答え(カタルシス)となっております。

前作をただのヤンデレSSにしておきたい方、独自の解釈で留めておきたい方などはご注意ください。

また、全ては管理人の「こうなんじゃないか」という想像です。

 

 

――帰り道――

 

花陽「真姫ちゃん、凛ちゃん、またね」

 

真姫「ええ」

 

凛「かよちん、ばいばーい」

 

花陽「」ニコッ

 

 

凛「今日も疲れたね」

 

真姫「へぇ、凛に疲れたなんて感覚があったのね」

 

凛「あはは、凛がこんなこと言ってたら変かな」

 

真姫「………………」

 

凛「あと少しでテストだね」

 

真姫「テスト前の3日間はみっちりしごいてあげるから覚悟しなさい」

 

凛「それなら安心だね。真姫ちゃん、頼りにしてるよ」ニコッ

 

真姫「…………ねぇ、凛?」

 

凛「どうしたの?」

 

真姫「夏休み中に……なにかあった?」

 

凛「ううん、別に何も。どうして?」

 

真姫「……いいえ、なんでもないわ、ごめんなさい」

 

凛「変な真姫ちゃん」クスッ

 

真姫(……やっぱりおかしい)

 

――――――

――――

――

 

その子はいつからか、そばにいた。

その子はいつからか、私の親友だった。

その子は事あるごとに、いきなり抱き着いてきては私を困らせる。

猫を真似たような口調が特徴的なくせに、自分は根っからの魚嫌い。

ムードメーカーのくせに、肝心なところではちゃんと空気を読む。

屈託ない笑顔が印象的な、とても明るい女の子。

 

そんなあの子のことが、大好きだった。

――なのに。

 

 

――教室――

 

ワイワイ ガヤガヤ

 

モブA「凛ちゃんはい、お菓子あげる」

 

凛「いいの?わぁ、おいしそう」

 

モブA「この前のライブすごかったね、凛ちゃんかっこ良かったよ」

 

凛「えへへ、ありがとう♪」

 

モブA「これからも応援してるよ、頑張ってね」

 

凛「うん」ニコッ

 

 

花陽「μ’sもだんだん有名になってきたね、嬉しいな」

 

真姫「……ねぇ花陽」

 

花陽「んっ、どうしたの?」

 

真姫「最近の凛、なんだか変だと思わない?」

 

花陽「……そうかな」

 

真姫「なにかこう、別人みたいになっちゃったっていうか……」

 

真姫「μ’sのみんなもクラスメイトも、雰囲気が変わったとか大人になったとか言ってたけど、そんな類じゃないような気がするわ」

 

花陽「……………………」

 

 

その子はいつからか、そばにいた。

その子はいつからか、私の親友だった。

その子は、どんなくだらない話でもいつも笑顔で楽しそうに聞いてくれる。

空気が読めて気遣いもできる完璧人間のくせに、当の自分には全く自信がない。

いつも控えめなくせに、時折り驚くほど大胆な行動に出る。

お米とアイドルが大好きな、とても優しい女の子。

 

そんなあの子のことが、大好きだった。

――なのに。

 

 

真姫「このままだと、凛が凛じゃ無くなっちゃうような気がして」

 

花陽「……でも、凛ちゃんは以前よりずっと笑顔だよ?」

 

真姫「……そうだけど」

 

でも、あの笑顔は……私の知っているあの子の笑顔じゃない。

 

真姫「ほら、あんまり『にゃあ』も言わなくなったし」

 

花陽「………………やっぱり、真姫ちゃんも何もわかってない」ボソッ

 

真姫「えっ?」

 

花陽「……いいんだよ、凛ちゃんはあれで」

 

真姫「そんな……何か悩んでるかもしれないし、聞いてみたほうが――」

 

花陽「……いいの」

 

真姫「花陽…………!」

 

花陽「いいの!」バン!

 

真姫「!」ビクッ

 

ザワザワ ガヤガヤ コイズミサン……?

 

花陽「あっ……ごめんね真姫ちゃん、つい……」

 

真姫「……気にしないでいいわ、こっちこそごめん」

 

凛「かよちん真姫ちゃん、どうしたの?喧嘩でもした……?」

 

花陽「ううん、違うよ」

 

真姫「アイドルの話でつい熱くなっちゃって」

 

凛「そっか……良かった」ニコッ

 

花陽「ふふ」ニコッ

 

真姫「……………………」

 

 

――部室――

 

絵里「凛と花陽のこと?」

 

希「確かに最近気にはなるね」

 

にこ「それで、三年生全員呼び出しってわけね」

 

真姫「……凛も花陽も、様子が変なの」

 

にこ「…………そっか、やっぱりね」

 

真姫「えっ」

 

希「どうやらウチらの勘違いってわけでもなさそうやね」

 

絵里「四六時中一緒にいる真姫がこう言うんだもの、間違いないわ」

 

真姫「!……まさかみんな……」

 

にこ「確証が無かったからね、動くに動けなかったのよ」

 

希「ましてや、ウチらは全員あくまでも上級生……」

 

絵里「どれだけ隔たりを無くそうとも、埋められない溝があるのよね……悲しいけど」

 

真姫「……あなたたち」

 

希「ねぇ真姫ちゃん、そこまで分かってるんならもう答えは出ているはずやん?」

 

絵里「あなたから見て今のあの二人には、どこか綻びがあるはずよ」

 

にこ「そこを紐解いてあげるだけでいいわ……」

 

真姫「っ…………でも」

 

にこ「そうね、簡単なことじゃないと思う」

 

にこ「……でもこのままだと、いずれはあれがほんとの凛と花陽になっちゃうかも」

 

真姫「……!」

 

私の大好きだった二人が、消える?

今の二人が本物になって?

……嫌、それだけは、絶対に。

 

にこ「あの二人はね、きっとお互いに優しすぎて、お互いに苦しんでるの」

 

にこ「その均等を崩してあげられるのは、他でもない真姫ちゃんの立ち位置だけ」

 

にこ「……ごめんね、無責任だけど、真姫ちゃんにしか頼めないこと」

 

真姫「………………」

 

真姫「……ありがとうにこちゃん、希、絵里も」

 

にこ「……やるの?」

 

真姫「ええそうよ」

 

にこ「二人が、大切だから?」

 

真姫「それもあるけど……一番の理由は――」

 

 

真姫「私が大好きだった二人を取り戻したいから」

 

 

真姫「自分のために、やるの」

 

ガチャッ バタン

 

にこ「……驚いたわ」

 

絵里「ええ、まさか真姫の口からあんな言葉が聞けるなんて」

 

希「自分のため……以前の真姫ちゃんでは考えられんセリフやね」

 

にこ「……μ’sに入ってから一番成長したのは、もしかしたらあの子かもね」

 

――――――

――――

――

 

『にこ「あの二人はね、きっとお互いに優しすぎて、お互いに苦しんでるの。その均等を崩してあげられるのは、他でもない真姫ちゃんの立ち位置だけ」』

 

にこちゃんの言うとおりだ。

あの二人のお互いを想う優しさと、それゆえに分かち合うしかない苦しみの均等に、平然と楔を打ち込めるのは、きっと私の立ち位置だけ。

二人の親友でありながら、二人の過去なんて一切知らない。

――部外者である、わたしだけ。

 

 

――帰り道――

 

凛「いい汗かいたね」

 

花陽「帰ったらすぐに寝られそうだよ」

 

真姫「……………………」

 

花陽「あっ、そろそろお別れだね」

 

凛「かよちんばいばい、また明日」

 

真姫「またね、花陽」

 

花陽「うん、さようなら」ニコッ

 

 

凛「さってと、凛たちも帰ろっか」

 

真姫「……………………」

 

凛「あれ……?真姫ちゃん、どうしたの?」

 

真姫「…………ねぇ、凛」

 

真姫「……いったいなにがあったの?」

 

凛「えっ」

 

真姫「どうして前みたいに笑ってくれないの?」

 

凛「何言ってるの真姫ちゃん……凛は笑ってるよ、ほら」ニコッ

 

真姫「違うわ……それじゃない」

 

凛「それじゃない……えっと……」

 

真姫「それじゃないわ……っ」

 

凛「真姫ちゃん、とりあえず落ち着いて」アセアセ

 

凛「なにか悩んでるなら凛が相談に乗るよ?」ニコッ

 

真姫「……やめなさいよ、それ」

 

凛「それって……え……」

 

真姫「その笑顔をやめてって言ってるの!!」

 

凛「!」ビクッ

 

真姫「っ……凛!」

 

真姫「花陽と何かあったんでしょ、私にだけでもいいから話して」

 

凛「……ほんとに、なにもないよ?」ニコッ

 

真姫「……嘘ね」

 

凛「真姫ちゃん、どうしちゃったの?今日何か変だよ?」

 

真姫「変なのはあなたよ」

 

凛「凛はいつもと変わらないよ」

 

真姫「……それじゃあ、どうして……っ」

 

真姫「どうしてあなたはそんなに悲しい笑顔で笑うのよ!」

 

凛「!」

 

真姫「確かに私はまだ凛と知り合ってから間もないわ。あなたのこと、何も知らない」

 

真姫「……でもね」

 

真姫「あなたのその笑顔が作り物ってことくらい、私にだってわかるわ!」

 

凛「…………」

 

真姫「私の知っている凛は、そんなに笑顔ばかりじゃない」

 

真姫「からかったら膨れるし、嫌なことがあったら悲しむし、嬉しいことがあったら笑う……」

 

真姫「私が大好きだった凛は、あなたじゃない!」ジワッ

 

真姫「元気だった凛に戻ってよ……ねぇ!」ポロポロ

 

凛「真姫ちゃん…………」

 

凛「………………………」

 

凛「…………また、『にゃあ』っていえば、凛は真姫ちゃんに好きになってもらえる?」

 

真姫「えっ……」

 

凛「……真姫ちゃん、ほら」スッ

 

凛「……いつもの『元気な』凛だよ」ニコッ

 

真姫「…………!」

 

 

一瞬、目を疑った。

確かに凛はいる、さっきからずっと、私の目の前に。

でも、先ほどまでとは違い、今私の前に立っている凛は、『私の大好きな凛』だ。

 

 

凛「大丈夫、真姫ちゃんが好きって言ってくれる凛も、ちゃんとここにいるよ」

 

真姫「……あなた、まさか……」

 

凛「……うん、ごめんね、真姫ちゃん」

 

凛「凛……ずっとμ’sのみんなや真姫ちゃんを騙してた」

 

 

さっきまでの凛も、『私が大好きだった凛』も――同じ、作り物。

 

 

凛「……嫌われたくなかった、みんなにも、真姫ちゃんにも、かよちんにも」

 

凛「だから、明るい自分を演じてた……」

 

凛「でもね、かよちんは笑顔の凛のほうが好きだって……だから、こうするしかなかった」

 

凛「凛がこうしていないと、かよちんが泣いちゃう。……それだけは、嫌だから」

 

凛「でも、今度は真姫ちゃんを泣かせちゃった……ごめんね」

 

真姫「…………」ジワッ

 

凛「真姫ちゃんほら、いつもの凛だよ。だからお願い……泣き止んで?」

 

真姫「……あなたは、馬鹿よ」ポロポロ

 

凛「…………」

 

真姫「どうしていつもそうやって自己犠牲を選ぶの?」

 

真姫「誰かに笑顔になってもらいたいから?悲しんでほしくないから?」

 

真姫「自分を押し殺してまで、ボロボロに傷ついてまで、人に幸せになってもらいたいから?」

 

真姫「……それじゃあなたは――」

 

真姫「あなたは一体、何のために生きてるのよ……」ポロポロ

 

凛「…………」

 

真姫「あなたの幸せはどこにあるのよ……ねぇ、凛……」ポロポロ

 

凛「……凛の幸せは、もうここにあるよ」

 

凛「作り物の自分でもいい……かよちんや真姫ちゃん、μ’sのみんながずっとそばにいてくれるなら、それが凛の幸せだよ」

 

真姫「…………」

 

凛「でも……こんな大嘘つきな凛を知ったら、きっとみんな悲しむ……」

 

凛「また誰かが悲しんじゃう……それだけは嫌だったのに……」ジワッ

 

真姫「……嘘をついてたのは、あなただけじゃない」

 

真姫「……わたしも、前はそうだったわ」

 

真姫「家族の前では良い子を装って、父親の操り人形を演じて……それでもパパが喜んでくれるなら、それで良かった」

 

真姫「医者になれって言われてるけど、本当は音楽家になりたい……そんな気持ちが無いっていえば嘘になる」

 

真姫「今でも家族の前では偽りの自分を演じてる時だってある……でも」

 

真姫「例え嘘の自分を演じていても、本当の自分がわからなくても、生きていること、幸せだって思いたい!」

 

真姫「偽りのままでも、幸せが掴めるんだって、そう思いたい」

 

真姫「せめて……自分の幸せにくらい貪欲になりなさいよ」

 

真姫「そうでないと、悲しすぎるじゃない……」ジワッ

 

凛「……真姫ちゃん」

 

真姫「どうしてあなたは、そんなに自分に諦めがいいのよ……」ポロポロ

 

真姫「優し過ぎるわよ……ばか……」

 

凛「…………凛は、そんなに良い子じゃない。凛は――」

 

凛「凛は――かよちんのことを――」

 

――

――――

――――――

 

――翌日――

 

花陽「今日は凛ちゃんお休みだったね」

 

真姫「……そうね」

 

花陽「風邪だって言ってたけど、お見舞い行かなくて大丈夫かな」

 

真姫「……その必要は無いわ」

 

花陽「えっ」

 

真姫「……ねぇ、花陽」

 

真姫「あなたも、もうわかってるんでしょ」

 

真姫「――今の凛が、本当の凛で無いことくらい」

 

花陽「……わかってないのは真姫ちゃんのほうだよ」

 

花陽「ほんとの凛ちゃんはあんなに明るい子じゃないし、むやみやたらと人に抱きついたりする子じゃない」

 

花陽「誰より笑顔が似合う……可愛い女の子なの」

 

真姫「……そうね、あなたの言うとおりだわ」

 

真姫「わたしは凛のこと、何も分かってなかった」

 

真姫「あの元気で活発な凛が、ずっと本当のあの子だと思ってた」

 

花陽「……真姫ちゃん、凛ちゃんのこと問い詰めたんだ」

 

真姫「ええ……だからこそこれだけは言える」

 

真姫「花陽……いまあなたの言っていた凛も、本当の凛なんかじゃないわ」

 

真姫「わたしよりずっとあの子のことを知っているあなたなら、言われなくてもとっくに気付いてるはずよ」

 

花陽「……ちがう、凛ちゃんはいつも笑顔なの」

 

花陽「笑顔で、いつもわたしだけを見てくれる……誰よりも優しい笑顔で」

 

花陽「あれが、ほんとの凛ちゃんなの……っ」

 

真姫「花陽!」

 

花陽「どうして……どうして邪魔するの」

 

花陽「真姫ちゃんだけはわかってくれると思ったのに……」

 

花陽「凛ちゃんは……凛ちゃんはあれで幸せなのに!」

 

真姫「……花陽」

 

真姫「わたしはあなたのことが大好き……」

 

真姫「優しくておおらかで、いつも温かいあなたが……」

 

真姫「……だから、あなたにこんなことをする日が来るなんて思ってもいなかった」ギリッ

 

真姫「――花陽!」

 

バシン!

 

花陽「……!」

 

真姫「……ほんとはわかってるんでしょ」ジワッ

 

真姫「誰よりも人に気遣いができるあなたが、気付かないはず無い!」

 

真姫「お願い花陽、ちゃんと前を向いて……いつものあなたに戻ってよ!」ポロポロ

 

花陽「…………………………」

 

花陽「……うん、その通りだよ」

 

花陽「………知ってたよ……凛ちゃんがまた、わたしのために偽りの自分を演じてくれてることくらい」ポロポロ

 

花陽「だって……凛ちゃんがあんな風になったのは、わたしのせいだもん」

 

真姫「花陽の……?」

 

花陽「凛ちゃんはいつもそうだった……わたしが望めば、どんな風にでも変わってくれた」

 

花陽「おとなしかったわたしに合わせてインドアになってくれたり、いじめっ子からわたしを庇うために以前の明るい性格を演じてくれたり」

 

花陽「……わたしが好きだっていえば、ずっと笑顔にもなってくれた」

 

花陽「わたしがいなければ……凛ちゃんが自分を見失うことなんて無かったのに……」

 

花陽「わたしが……わたしのわがままのせいで、凛ちゃんは……」

 

真姫「そんなことないわ……花陽のせいなんかじゃない……!」

 

花陽「わたしのせいだよ……!」

 

花陽「心のどこかで、凛ちゃんがなんでも言うこと聞いてくれることを利用してた」

 

花陽「知ってて、凛ちゃんの優しさに甘えてた」

 

花陽「そんな自分を責めるのが恐くて、ずっと目を逸らしてた……!」

 

真姫「違うわ!花陽、聞いて……凛は――」

 

花陽「わたしが……凛ちゃんを不幸にしてるの……」ポロポロ

 

??「――違う!」

 

花陽「!?」

 

凛「……違うよ、かよちん」スッ

 

花陽「凛ちゃん……!?どうして……!」

 

真姫「……隠れてもらってたの……花陽の本心を聞いてもらうために」

 

凛「……かよちん」

 

花陽「あっ……あぁ…………」ガクガク

 

花陽「凛ちゃんごめん……ごめんなさい……わたし――」

 

――ギュッ

 

花陽「……!」

 

凛「謝るのは凛のほうだよ……」

 

凛「凛……心のどこかでずっとかよちんのことを利用してた」

 

凛「本当の自分が分からない恐さを、かよちんのためって装うことで誤魔化してた」

 

凛「全ての責任をかよちんになすりつけて……心を満たしてた」

 

花陽「……凛ちゃん」

 

凛「かよちん……ごめんね……!」ジワッ

 

凛「かよちんが後ろめたさを感じてくれてること、気付いてたよ……気付いてて目を逸らしてた」

 

凛「凛はかよちんが傷つくこと以上に、自分が傷つくことを恐がってた……」

 

凛「かよちん、ごめん……ごめんなさい……!」ポロポロ

 

花陽「……違う凛ちゃん、わたしは……わたしは――」

 

花陽「―-凛ちゃんのことを……ずっと……」グスッ

 

花陽「っぐ……ごめんね……」ポロポロ

 

 

にこちゃんの言ったとおりだった。

きっと二人は、お互いを想い過ぎているあまり、踏み込めなかっただけ。

だから、お互いにずっと苦しんでいた。

……バカね、ほんと。

しあわせのカタチは見えているのに、どうしてそれを得ようとしないのかしら。

花陽も凛も、他人の幸せには貪欲なくせに、自分の幸せには無欲過ぎるわ。

そんなの……悲しいじゃない。

生きているのは、自分の人生をまっとうする為なんだから。

 

……幸せを得ることに、貪欲にならないと。

 

真姫「……わたしも、ね」

 

 

――

――――

――――――

 

――後日――

 

にこ「はい真姫ちゃん、お疲れ様」ゴトッ

 

真姫「ありがとう……んっ」ゴク

 

希「お手柄やね、さすがは真姫ちゃんや」

 

絵里「おかげさまで元に戻ったわ、花陽も凛も」

 

真姫「……元に戻った、ね」

 

真姫「……違うわ、これから元に戻すのよ。作り物じゃない本当の二人にね」

 

絵里「あら、真姫らしくないアグレッシブな発言ね」

 

真姫「もう躊躇しないわ……欲望に忠実になるって決めたから」

 

希「ふふ……頑張って、真姫ちゃん」

 

にこ「応援してるにこ♪」

 

 

真姫「お待たせ」

 

凛「真姫ちゃん遅いよ~」

 

花陽「それじゃあ帰ろっか」

 

真姫「ええ」ニコッ

 

 

凛「今日は久しぶりにみんなでどこか寄っていかない?」

 

花陽「いいね、わたしチャーハンが食べたいな」

 

真姫「しょうがないわねぇ」

 

凛「にしし~とかなんとか言って真姫ちゃんうれしそうにゃ」

 

真姫「り~ん?久しぶりにげんこつされたいのかしら?」

 

凛「わわっ!かよちん助けて!」

 

花陽「あはは、真姫ちゃん落ちついて」

 

真姫「……なーんて」

 

真姫「……ねぇ、凛、花陽?」

 

まきぱな「?」

 

真姫「わたし、二人のこと好きよ」

 

まきぱな「え……」

 

花陽「!ま、真姫ちゃん!?//」

 

凛「好きって、えっ……!?//」

 

真姫「言葉の通りよ、二人のことが好きなの」

 

花陽「はうぅ……嬉しいけど……そんな急に告白だなんて//」モジモジ

 

凛「凛も真姫ちゃんのこと好きだけど、心の準備がまだ……//」モジモジ

 

真姫「これは宣言よ、いずれは二人に追いつくってことの」

 

凛「宣言……?」

 

真姫「共有してきた時間なんて関係ないくらいに、もっとあなたたちと仲良くなるわ」

 

真姫「花陽にとって凛くらい、凛にとって花陽くらい、あなたたちの中で大切な存在にね」

 

真姫「いつかは追いついて……本当のあなたたちを引きずり出してあげるから」

 

まきぱな「…………!」

 

まきぱな「…………」クスッ

 

凛「真姫ちゃん、ちょっと来て」クイッ

 

真姫「……?」

 

花陽「わたしはこっちからいくね」

 

凛「じゃあ凛は右頬だね……せーの」

 

――チュッ

 

真姫「――!」

 

凛「これが、凛たちの答えだよ」

 

花陽「真姫ちゃんはもう、わたしたちにとって同じくらい大切な存在だよ」

 

花陽「だからね……真姫ちゃんとなら、いつか見つけられるかも……」

 

凛「偽りじゃない……本当の自分」

 

まきぱな「真姫ちゃん……大好き♪//」ニコッ

 

真姫「っ…………!//」

 

真姫「ほにゃぁ………//」プシュー ドタッ

 

りんぱな「真姫ちゃん!?」

 

真姫(もう、思い残すことは無いわ……)ガクッ

 

――おしまい♪

前編の『ラブライブ SS (後味注意)花陽「わたしの凛ちゃん」』で、『泣いてしまった花陽ちゃんに対してまた違う自分を偽ることに決めた凛ちゃん』に気付いてくださったのであれば嬉しいです。

もしよろしければ、上記のテーマに注目した上でもう一度前編を読み返してみてください。

感想

  1. しょな より:

    最高です

    • 砂水クジラ砂水クジラ より:

      ありがとうございます♪
      「シリアス系SS」はいつも上手く書けるかハラハラします。

  2. 雪穂かわいい より:

    真姫ちゃんをきっかけに3人が一段と仲良くなれた所に感動しました!
    こんな友人関係うらやましいです。

  3. にこにー推し より:

    最後のまきりんぱなの部分
    「まきぱな」ではなく「りんぱな」では?

    • 砂水クジラ砂水クジラ より:

      ありがとうございます、直ちに修正いたしました。
      シリアス系SSですので誤字のご指摘は大変助かります。

  4. 匿名 より:

    とても良かった

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