ラブライブ SS 真姫「さらば、破天荒花陽!」

 

――小泉家 花陽の部屋前――

 

真姫「………………」

 

真姫「」トントン

 

花陽「……誰?」

 

真姫「わたしよ……真姫」

 

花陽「真姫ちゃんか、どうぞ」

 

真姫「…………」ガチャッ

 

花陽「久しぶりだね」

 

真姫「花陽…………」

 

花陽「あっ、真姫ちゃんも良かったら吸う?ココアシガレット」

 

真姫「いいえ、結構よ……」

 

花陽「そっか、こんなにおいしいのに……ぷはぁ」

 

真姫「………………」

 

花陽「」モグモク

 

真姫「……っ」グッ

 

真姫「……花陽!」

 

花陽「んっ……?」

 

真姫「今日はあなたに言いたいことがあってきたの!」

 

花陽「言いたいこと?……ああ、だから真姫ちゃん一人なんだね」

 

花陽「それで、何かな?」ジー

 

真姫「……」ビクッ

 

真姫(ダメ……ここで怖がってちゃあ、一生花陽は戻ってこない)グッ

 

真姫「――元の優しかったあなたに、戻ってほしいの」

 

花陽「……どういう意味かな」

 

真姫「花陽……あなた変わったわ、いいえ、心に嘘をついてまで自分を変えようとしてる」

 

花陽「別にわたしは何も――」

 

真姫「じゃあどうしてやってはいけないことをするの?」

 

真姫「自転車を蹴飛ばしたり、ポスターに落書きしたり……そんなことしちゃダメだってことくらい分かってるでしょ?」

 

花陽「…………」

 

真姫「花陽……あなたは確かに優しすぎるわ」

 

真姫「こんな世の中だもの、あなたのその優しさを利用しようとする人間が現れるかもしれない」

 

真姫「あなたが優しいのを良いことに、見下したり卑下したりする人間に出会うかもしれない」

 

真姫「優しいだなんて……生きていく上では損しかしないかもしれない」

 

花陽「……そうだよ」

 

花陽「優しいなんて何の価値もないし、誰にも評価なんてされない」

 

花陽「人間として素晴らしいとか、そんなものが一体何になるの?」

 

花陽「性格だなんて言って割り切るなら、それこそ卑怯者……偽善者だよ」

 

花陽「だからわたしは変わるの、誰にも馬鹿にされないくらい強くなるの……っ」

 

真姫「でも、だからって言ってあんな花陽……!」

 

花陽「真姫ちゃんにわたしの気持ちが分かるはずない!」ダン

 

真姫「!」ビクッ

 

花陽「……わたしだって、悪いことくらいたまにはするもん」

 

花陽「みんなが思うような良い子じゃない……わたしだって……」ジワッ

 

真姫「……花陽」

 

花陽「ねぇ真姫ちゃん……わたし、そんなに良い子でいなきゃいけないのかな……」

 

花陽「どんな時でも人に優しくして……なにを言われても、笑っていなきゃいけないのかな……」ポロポロ

 

真姫「………………」

 

花陽「どうして、普通に生きていちゃダメなんだろう……」グスッ

 

花陽「ほんとはこんなことしたくないのに……どうして……」

 

真姫「…………っ」

 

真姫「――花陽!」

 

真姫「……っ」ギュッ

 

花陽「……?まき……ちゃん?」

 

真姫「ごめんなさい、あなたの気持ちも考えずに……わたし」

 

花陽「ううん……真姫ちゃんは、悪くない……」

 

真姫「でも、これだけは知っていてほしいの」

 

真姫「……あなたは、普通に生きていていいのよ」

 

真姫「無理しないで花陽らしく……いつもの優しいあなたでいてもいいの」

 

花陽「……でも、それじゃあ」

 

真姫「そうね……優しいだけじゃあダメなんだと思う」

 

真姫「あなたが知らず知らずのうちに人にしてしまっている……『優しさ』じゃない、『甘さ』の部分を捨てなきゃ」

 

花陽「……甘さ?」

 

真姫「ねぇ花陽……親しい人間が犯罪に手を染める瞬間を黙って見過ごす、それって優しさかしら?」

 

花陽「…………」

 

真姫「わたしは違うと思う……本当の優しさはきっと、取り返しのつかなくなる前にその人を止めてあげること、なだめてあげることだと思うわ」

 

真姫「それを見過ごしたり分かって無視したりするのは、優しいんじゃなくきっと甘いだけ」

 

真姫「花陽……あなたは優しい以上に、甘すぎるのよ、誰にでも」

 

花陽「優しさじゃなくて……甘さ……」

 

真姫「あとは花陽の言った通り、自分自身が変ろうとするだけ」

 

真姫「でも今度は自分の心に嘘をついたりしないで、本気で自分の意志で」

 

花陽「………………」

 

真姫「花陽、わたしはあなたのことが好きよ」

 

真姫「優しくて、自分に嘘をつかないあなたが……一番」ナデナデ

 

花陽「あ………」

 

真姫「偉そうなこと言ってごめんなさい……そろそろ行くわね」スッ

 

花陽「真姫ちゃん……待って!わたし……!」

 

真姫「花陽……すっかり戻ってるわよ、元に」

 

花陽「えっ?……あっ」

 

真姫「くすっ……待ってるわ、花陽」

 

真姫「また明日、いつものあなたと会えるのを」

 

真姫「……またね」ニコッ

 

ガチャッ バタン

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――

 

――翌日 放課後 雨――

 

凛「かよちん、今日も休みだったね」

 

真姫「ええ……」

 

凛「やっぱり、まだあのままなのかな……」

 

真姫「………………」

 

凛「……ねぇ、真姫ちゃん?」

 

真姫「?」

 

凛「ダメもとでいいから、神頼みしてみない?」

 

真姫「えっ」

 

凛「ほら、ここ」

 

真姫「この神社って……」

 

凛「凛と真姫ちゃんとかよちん……3人の秘密の特訓場所」

 

凛「ここなら御利益があるかもしれない、二人で一緒にお願いしようよ」

 

凛「かよちんが、元の優しいかよちんに戻ってくれますようにって」

 

真姫「凛…………ええ、そうね」

 

凛「よーし、久しぶりに階段ダッシュにゃ!」

 

真姫「雨ですべるし危ないわ、ゆっくり行きましょ」

 

 

凛「そういえば、この辺って猫がいっぱいいるんだよ」

 

真姫「確か凛は猫アレルギーなのよね」

 

凛「うん、でも遠目で見てるだけなら大丈夫だから」

 

真姫「そう……――あら、人が……」

 

凛「ほんとだ、雨なのに珍しいね」

 

真姫「――?あの傘……どこかで」

 

凛「あれは……もしかして……!」

 

花陽「!……凛ちゃん、真姫ちゃん」

 

凛「かよちん……?かよちん!」

 

真姫「花陽……どうしてこんなところに」

 

花陽「久しぶりの雨だから、猫ちゃんたちにご飯でもあげようかなって」

 

凛「あれ、でも確かこの神社エサやり禁止だったよね?」

 

花陽「うん、だからいつも人通りの少ない雨の日にこっそり……でも、見つかっちゃった」

 

真姫「花陽……」

 

花陽「……ダメかな、やっぱり?」

 

真姫「ううん……そんなことないわ」

 

凛「凛はそんなかよちんも好きにゃ」

 

花陽「二人とも……えへへ、ありがとう」

 

凛「あれ?……かよちん……もとに……」

 

花陽「うん……」ニコッ

 

花陽「凛ちゃん真姫ちゃん、ごめんね。わたし、もう大丈夫だから」

 

花陽「今まで嫌な気持ちにばかりさせてごめんなさい」

 

凛「ふぁ……元のかよちんにゃ!」ダキッ

 

花陽「きゃっ!……ふふっ」

 

花陽「ごめんね凛ちゃん……」ナデナデ

 

凛「かよちん……うぅ、ぐすっ……」ジワッ

 

凛「良かった、良かったよ……」ポロポロ

 

花陽「うん……」ギュッ

 

真姫「花陽……おかえりなさい」

 

花陽「ただいま、真姫ちゃん」

 

真姫「…………」ナデナデ

 

花陽「んっ……」

 

真姫「……心配したわよ、もう」

 

花陽「ごめんね……明日、μ’sのみんなにも謝らなくちゃ」

 

真姫「そうね」

 

花陽「……許してもらえるかな」

 

真姫「当然じゃない」

 

真姫「だってわたしたちは、花陽も入れて9人で『μ’s』なんだから」

 

花陽「!……うん、そうだったね」

 

花陽「遅れていた分、明日から頑張らないと」

 

真姫「しょうがないから付き合うわ、また3人で練習しましょう」

 

凛「神社で秘密特訓にゃ!」

 

 

――――――――――――――――――――――――

 

――5日後――

 

真姫「3限目は英語ね」

 

凛「へっ!?」

 

真姫「凛……あなたまさか」

 

凛「あはは……真姫ちゃん助けて~!」

 

真姫「ダメよ、この前もそうだったでしょ」

 

凛「今度は、今度は絶対にしてくるから!」

 

真姫「それこの間も聞いたわ、とにかくダメ!一度こっぴどく怒られなさい」

 

凛「うぅ~もういいもん!かよち~ん!」

 

真姫「あっ、こら凛」

 

花陽「んっ、どうしたの凛ちゃん?」

 

凛「あのね――」カクカクシカジカ

 

花陽「そっか、宿題忘れちゃったんだね」

 

凛「次は絶対にやってくるから!かよちんお願い!」

 

花陽「もう、しょうがないなぁ凛ちゃんは」

 

凛「かよちん!」パアァ

 

真姫「花陽、また甘やかして……」ハァ

 

凛「それじゃあ早速――」

 

花陽「うん、ここに座って」

 

凛「えっ……」

 

花陽「プリントの宿題はたったの6問、急いでやれば5分でできるよ」

 

花陽「わたしと真姫ちゃんでサポートするから頑張ろっか」

 

凛「ええっと……できればかよちんのプリントを見せてほしいなぁ、なんて」

 

花陽「……凛ちゃん?」ニコッ

 

凛「ひっ!……な、なんて、冗談にゃ~!」

 

花陽「うん、それでこそ凛ちゃんだよ」

 

凛「ま、真姫ちゃん、かよちん破天荒な時より怖くなってる気がするにゃ」コソコソ

 

真姫「そ、そうね……あの笑顔は」

 

花陽「……二人とも?」

 

まきりん「ひっ!?」ビクッ

 

花陽「あと7分しかないから、急ごっか」ニコッ

 

凛「は、はい!凛二等兵やり遂げますにゃ!」

 

真姫「頑張りましょう凛、ヒントくらいなら出すから」

 

花陽「その代わりビシバシ行くよ、時間が無いから」

 

凛「ひぃぃ……」

 

花陽「あっ、あと次の休日はわたしの家で勉強会に変更だよ」

 

凛「ええっ!次の休みはみんなでおいしいラーメン屋探しって……」

 

花陽「それは凛ちゃんが宿題をちゃんとやってくるようになったらね」ニコッ

 

凛「」

 

花陽「真姫ちゃんはどう?」

 

真姫「わ、わたし?えっと……」

 

花陽「」ニコニコ

 

真姫「もちろん勉強会よ、凛のためだもの!」

 

凛「真姫ちゃんの裏切り者~!」

 

花陽「なら決まりだね」

 

花陽「それじゃあ凛ちゃん、まずはこの問題だけど――」

 

凛「うぅ~これならまだ破天荒なかよちんのほうがマシにゃ~!」

 

真姫(なんだか以前と違う気がするけど……花陽が元気になって良かった)

 

花陽「……真姫ちゃん」ヒソッ

 

真姫「?」

 

花陽「勉強会が終わったら、みんなでラーメン屋さんに行こうね」

 

真姫「……花陽」

 

花陽「厳しいだけじゃ凛ちゃんがかわいそうだから」

 

真姫「…………」クスッ

 

真姫「やっぱり花陽は優しいわ」ナデナデ

 

花陽「んっ……えへへ……♪」ニコッ

 

凛「真姫ちゃん、かよちん、ヘルプミー!」

 

――おしまい♪

感想

  1. 匿名 より:

    Good job‼︎
    自分好みの終わり方でした(^_^)

    • 砂水クジラ砂水クジラ より:

      ありがとうございます♪
      今後も当サイトのSSをご愛読のほど、どうぞよろしくお願いします。

  2. はなまるびぃ より:

    道徳が学べる+感動の一石二鳥でした!真姫さんマジカッケー!

    • 砂水クジラ砂水クジラ より:

      途中に中だるみがありながらも、おかげさまで無事完結まで来れました。
      長きにわたって破天荒花陽のご愛読、ありがとうございました。

  3. 匿名 より:

    このまま終わらないよね…?とビクビクしながら全話読みましたが、ハッピーエンドで良かったです…ε-(´∀`*)

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