――お昼 リゼの部屋――
千夜「ココアちゃんたちまだかしら……」
リゼ「いや、千夜が早すぎただけだと思うぞ」
千夜「待ち合わせには10分前に行かなきゃいけないって、おばあちゃんが言ってたわ」
リゼ「時間間違えて1時間前に来ちゃっただけだろお前の場合」
千夜「ねぇリゼちゃん、時間はお金よりも貴重だと思わない?」
リゼ「どうしたんだいきなり……」
千夜「だから、絶対に無駄にしちゃいけないと思うの」
リゼ「まぁ、そうだろうな」
千夜「だから残りの時間で普段できないようなことをするわ」
リゼ「できないこと?」
千夜「――えいっ」ゴロン
リゼ「!」
リゼ「……膝枕?」
千夜「一度されてみたかったの」ニコッ
千夜「リゼちゃん、お膝借りてもいいかしら?」
リゼ「ああ、別に構わないが」
千夜「ありがとう、くるしゅうないわ♪」
千夜「ふぅ~…………」
リゼ「………………」
千夜「ふふっ……いい気分」
リゼ「こんなのでよければいつでもいいぞ」
千夜「ううん、こういうのは毎日やると魅力が薄れちゃうから」
千夜「こうしてリゼちゃんと二人きりになった時だけにしておくわ」
リゼ「そっか、そんなものか」
千夜「でもいいわこれ……リゼちゃんの膝枕ってどこかに売ってないかしら」
リゼ「さっきと言ってることが逆だぞ」ナデナデ
千夜「んっ……♪」
リゼ「髪の毛サラサラだな」ナデナデ
千夜「しあわせぇ~……」ニヘラ
リゼ(可愛い……)
千夜「……眠たくなってきたわ」ウトウト
リゼ「……そうか」
千夜「リゼちゃんの手あったかい……ポカポカね」
リゼ「…………」
千夜「このまま、ココアちゃんたちが来るまで寝ちゃおうかしら……」
リゼ「……なぁ、千夜?」
千夜「……?」
リゼ「その、すごく言い辛いんだが……」
千夜「どうしたの?」
リゼ「――ココアとチノが、もう来てるんだけど」
千夜「」
千夜「………………」
千夜「」チラッ
ココア「千夜ちゃんの意外な一面……!」キラキラ
チノ「千夜さんおはようございます、気持ちよかったですか?」クスッ
千夜「………………」
千夜「~~//」プシュー
リゼ(あの千夜が照れた……)
――甘兎庵――
千夜「はいリゼちゃん、おまちどうさま」コトン
リゼ「ありがとう、閉店時間ギリギリにすまないな」
千夜「ううん、来てくれて嬉しいわ。店番の時はほとんどシャロちゃんにしか会えないから」
リゼ「千夜とシャロは毎日ひとりだもんな」
千夜「この前みたいにリゼちゃんが一緒に働いてくれればいいんだけど」
リゼ「あれは短期のバイトで……まぁ、今日みたいに時々掃除くらいなら手伝いに来るよ」
千夜「ふふっ、ありがとう♪」
千夜「向かいの席、お邪魔するわ」コトン
リゼ「んっ……それ、栗羊羹か?」
千夜「ええ、友達想いの優しいリゼちゃんにサービスよ」
リゼ「気持ちは嬉しいけど、でも、これ以上食べたら後が怖いし……」
千夜「そうね、だから一口だけあげちゃう」
リゼ「えっ?」
千夜「はいリゼちゃん、あーん」ニコッ
リゼ「い、いや、自分で食べられるから……//」
千夜「早くしないと落ちちゃうわ~」
リゼ「おい千夜……くっ……//」
――パクッ
千夜「一度やってみたかったの、これ」
リゼ「……千夜って時々暴走するよな、誰かと二人きりだと特に」モグモグ
千夜「そうね、みんなといる時よりも素が出せるからかしら」
千夜「リゼちゃんはなんでも受け入れてくれるから特に……ね」
リゼ「んっ?」
千夜「ううん、なんでもないわ」クスッ
リゼ「そろそろ夏も終わりだな」
千夜「名残惜しいわ、やり残したことはまた来年ね」
リゼ「やり残したこと?」
千夜「ええ、ほんとはリゼちゃんと一緒にやりたいことがあったんだけど」
リゼ「みずくさいな、言ってくれれば一緒にやるぞ?」
千夜「でも、わたしのわがままだし……」
リゼ「千夜はいつも我慢してるんだし遠慮するな、わたしにできる範囲なら応えるから」
千夜「……いいの?」
リゼ「もちろん、何がしたいんだ?」
千夜「えっとね……リゼちゃんと一緒に――」
――山奥 別荘――
千夜「」ニコニコ
リゼ「……………………」
千夜「♪~♪♪」
リゼ「……………………」
千夜「あっ、飛び跳ねたわ」
リゼ「……………………」
千夜「ふふっ、なかなか釣れないわね」
リゼ「……驚いたよ、まさか千夜の口から釣りがしたいだなんて」
千夜「去年みんなと来た時はメグちゃんと一緒に山菜探しに行ってたから」
千夜「わたしも一度やってみたいと思ってたの」ニコッ
リゼ「……すまないな、いつも損な役回りばかりさせて」
千夜「そんなことないわ、むしろみんなにはわがままを聞いてもらってばかりよ」
千夜「ココアちゃんにもチノちゃんにも、シャロちゃんにも……こうしてリゼちゃんにも」
リゼ「こんなのはわがままって言わないよ」
千夜「……リゼちゃん、人に甘えたこととかないでしょ」
リゼ「どうしたんだいきなり?」
千夜「ううん、リゼちゃんはいつになったら私たちにわがまま言ってくれるのかなって」
リゼ「……そうだな、わがままが思いついたら……かな」
千夜「待ってるわ、ずっと」
リゼ「……ああ」
千夜「♪~♪♪~」
リゼ「いい天気だな、今日は」
千夜「ええ、釣り日和よね」
千夜「ああっ……また逃げられちゃった」
リゼ「針が上手くかかってないんだろうな」
千夜「まだ諦めないわ、えいっ」ビュッ
リゼ「うーん、1時間経つのにわたしの方はまるっきりだな」
千夜「釣りって意外と釣れないものね」
リゼ「どうだ、思っていたよりずっと地味な作業だろ」
千夜「そうね、でもなんだか楽しい」クスッ
リゼ「……そうか、良かった。がっかりしてるかと思ってたよ」
千夜「そんなことない、むしろ想像していたよりずっと楽しいわ」
千夜「連れてきてもらって、ほんとに良かった」
リゼ「わたしも、千夜と一緒にまた来れて良かったよ」
千夜「……ほんとはみんなで、来たかった?」
リゼ「そうだな……でも今は偶然とはいえ、二人きりで良かったと思ってる」
千夜「ふふっ、わたしも」ニコッ
千夜「……ねぇ、リゼちゃん?」
リゼ「んっ?」
千夜「また時々、こうして二人でデートしましょうね」
リゼ「デートって……まぁ、千夜がわたしなんかでいいなら」
千夜「あっ、くれぐれもシャロちゃんには秘密でお願いするわ」
リゼ「シャロに……?良く分からんが、了解だ」
千夜「ありがとう、リゼちゃんだーいすき♪」ギュッ
リゼ「おいおい」クスッ
千夜「無理やりにでもラビットハウスさんから頂いちゃおうかしら」スリスリ
リゼ「いや、さすがにそれは――って!おい千夜、竿ひいてるぞ!」
千夜「えっ!?あっ……!これは大物ね!」
ヤマメカシラ? ソレトモニジマス? イイカラハヤクマケ!
――キノカゲ
リゼ父(あの女……まさか、娘とそういう関係なのか!?)←運転手に頼んでこっそりトランクに入ってた人
千夜「やった!釣れたわ!リゼちゃん、わたしやったわ!」キャッキャッ
リゼ「すごいぞ千夜!大物じゃないか!」
リゼ父(ハグだと!?挙句にリゼのあの笑顔……!)
リゼ父「ああ……あ…………」ガクガク
――おしまい?
――翌日 夕方――
リゼ父「甘兎庵……ここか!」
リゼ父(俺の娘をたぶらかしたんだ、きっちり落とし前はつけてもらうぞ……!)
リゼ「久しぶりの、戦争だ」ゴキゴキ
リゼ父「……邪魔するぞ」ガチャッ
お婆「いらっしゃい」ムスッ
リゼ父「おい婆さん、あんたのところにロングヘアの女が――」
お婆「初対面で目上に向かって婆さんとはなんだい!!」
リゼ父「!?」ビクッ
お婆「ここは甘兎庵、甘味処だよ!和菓子を食べないなら出ていく、食べるならお客として礼儀正しく振舞う!どっちだい!?」
リゼ父「えっと……!」アセアセ
お婆「ご注文は!?」
リゼ父「ひっ!?よ、羊羹でももらおうかな」
お婆「千夜月かい?全く、血圧を上げさせんじゃないよ」
リゼ父(なんだあの軍人よりおっかない婆さんは……!?タカヒロの言う通りやめとけばよかった……)
リゼ父(リゼ、すまない……弱い俺を許してくれ)グスッ
リゼ「――親父?」
リゼ父「えっ……?」
リゼ「こんなところで何やってるんだ?甘いもの苦手じゃなかったっけ?」
リゼ父「リゼ……?」
千夜「まぁ、リゼちゃんのお父さん?いらっしゃいませ」ニコッ
リゼ父「リゼ、どうしてお前がここに……?」
リゼ「い、いや……その……」
リゼ父「まさか……同棲か!?」
リゼ「違う!……えっと」ゴニョゴニョ
千夜「リゼちゃん、お父さんのお誕生日に高級なワインオープナーを贈るためにここでバイト中なんです」
リゼ「千夜っ!?」
リゼ父「……!!」
リゼ「~~~っ//」
リゼ父「リゼ……本当なのか?」
リゼ「……ほら、注文の千夜月だ。糖尿病には気を付けてくれよ//」
リゼ父「……っ!リゼ!リゼぇ~~!!」ギュッ
リゼ「なっ!?ばかっ、やめろセクハラ親父!//」
リゼ父「大好きだ!愛してるぞぉ~!」スリスリ
リゼ「わかったから離れろ!」
千夜(ほほえまぁ~♪)ニコニコ
お婆「………………」
お婆「」モクトウ ブンッ!
――深夜 ラビットハウス――
リゼ父「今日は気分がいい、一番高い酒を開けてくれ」フッ
タカヒロ「どうでもいいが、どうしてそんなに傷だらけなんだ?」
――おしまい♪
感想
甘えん坊の千夜ちゃん、照れてる千夜ちゃん、本当に可愛いですね〜!それとリゼパパのキャラが本当に面白くてたまりません!
それにしても、数日間ですぐにssを作れる砂水さんの才能が羨ましいです。
ありがとうございます♪
リゼ父オチはお気に入りながらも苦情がこないか、いつも内心ハラハラです。
名有りさんにご支援の言葉を頂くたび、ホッとしております。
才能だなんて、とんでもない;
プロットが纏まればすぐに執筆に移ればいいのに、数日間もサボってしまうダメ人間ですよ。
ご期待に沿えるべく、本来ならば最低2日間で完成させたいのですが。
リゼ千夜SS、3作とも最高でした!
原作でこの二人のお話を見てから、この組合せもいいなと思っていたので、
SSを読むことができてとても良かったです♪
なんとなくこの二人って、精神年齢が近い印象があります。
みんなと一緒にワイワイやるけど、頼られることもあるような。
そんな二人が素になった時、お互い分かり合える部分があると思います。
それでも一気に近づくのではなく、ちょっと遠慮も入りながら、徐々に
仲良くなって行くような。
リゼちゃんはまだしも、千夜ちゃんはまだまだわからないところが多いです(笑)
ココアちゃんといると、二人ならなんでもできちゃう感じですけど、千夜ちゃんは
意外にも奥手な所を見せることがあるので。仕事服の件ではシャロちゃんにさえも
遠慮してましたしね!
そんなリゼ千夜の関係をイメージしてSSを読んでました。
(意図が違っていたらスミマセン><)
釣りに苦戦する千夜ちゃんの様子が、もっとリゼちゃんとお近づきになりたいけど、
一気には進まないもどかしさを代弁しているようで(笑)
…思うところが一杯あって、長くなり過ぎました^^;
砂水クジラさんの手にかかると、情報量の少ないリゼ千夜でもこんなに原作の
雰囲気を残した素敵なストーリーになるんですね!
またリゼ千夜SS読んでみたいです!ココリゼ、ココチノも楽しみにしてます♪
トランクの中のリゼ父には爆笑しましたw
はにすけさんこんにちは、いつもご愛読ありがとうございます♪
ご感想を拝見させていただきましたが、とても的確に千夜ちゃんのキャラクター性を考察されていて感激しました。
はにすけさんのおっしゃる通り、わたしもこの二人の精神年齢は近いように思います。
リゼちゃんと千夜ちゃんは、踏み込んではいけない心のラインがどこまでなのかをちゃんと分かっているような、そんなイメージがあります。
二人が他の3人に比べて幾分大人びて見えるのはその影響なのかもしれませんね。
お互いに人一倍気遣いができる二人が徐々に心を開いて打ち解けていく、千夜リゼはそんな関係を表現することが出来ればと思い、毎度執筆に望んでいます。
故に心理描写が他のカップリングに比べるとやや困難なのですが;
二次創作とはいえ、少しでも原作の雰囲気を楽しんでいただけたのでしたら本SSは成功したといえるでしょう。
細かい描写にまで目を配って下さり、ありがとうございます。
SS作家、冥利に尽きます。
よろしければまた素敵な感想、お聞かせください。
ツイッターでもブログでも、心よりお待ちしております。
BY 砂水クジラ
毎度毎度オチがwしっかし千夜リゼいいですなぁ〜(^〜^)
嗚呼、真より我が心身の跳躍かな!
千夜リゼのお互いにくっ付き過ぎない関係って素敵ですよね♪
どんだけおばあさん怖いのww
ロリ千夜「ウチのおばあちゃんなんて、鬼ばばぁよ」
傷だらけで気分が良いとか言ってきたらある意味怖いなぁw(^_^;)
リゼのお父さんの、リゼにさらっと聞いてしまえばいいことをきけなくて後をつけたり甘兎庵に突撃するところが遠回り過ぎて面白かったです!
リゼ父「俺をトランクに入れさせてくれ」
運転手「………。(親バカだなんて口が裂けても言えないな)」
というやり取りが頭に浮かんで笑ってしまいました。
ところで、千夜が最後にリゼのバイトする理由を暴露していましたが、千夜はリゼ父がその後どうするかわかっていたのでしょうか?わかってるはずがないと私は思いますが、それならリゼ父がおばあちゃんに退治されるのを見て「あんなこと言わなければよかった」と後悔するのでしょうか…。(それとも千夜は全部想定済みだったのでしょうか…?)
この場合、完全にリゼ父の自業自得ですので千夜ちゃんが後悔することはないと思います。
むしろ真実が知れてリゼ父も嬉しかったでしょうし。