ごちうさSS 幼いリゼと優しいメイドさん 第1話「一緒にいて」

 

 

※この物語は、リゼちゃんが高校生になるまでの過去のお話です。

 

幼いココアシリーズのスピンオフ作品となっております。

当作品から正式にシリーズ化が決定したため、ここからでもお楽しみいただけますが、

 

前々作の

『ごちうさSS ここあ「幼いリゼちゃんの思い出」』

 

前作の

『ごちうさSS ここあ「幼いリゼちゃんの思い出」後日談』

 

を先にお読み頂くことでよりいっそう世界観に入り込みやすくなるかと思います。

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

―― 十数年前 天々座家 ダイニング PM6:32――

 

 

りぜ「なにぃ!?」ガタッ ←4歳くらい

 

全「!」

 

リゼ父「どうした、リゼ?」

 

りぜ「あいつがでていくって……ほんとうか!?」

 

メイドD「メイド長のことです?」

 

使用人C「さっきのはあくまで仮定の話しですが」

 

りぜ「かていってなんだ!?」

 

リゼ父「あいつは行く当てがないから俺の家にいるわけだからな。目標や他の居場所が見つかればここから出ていくこともある」ムシャムシャ

 

りぜ「もくひょう?いばしょ?」

 

メイドC「例えば好きな人と一緒に住むことになったり」

 

りぜ「すきなひと……!」

 

使用人D「就職先が遠くならここから離れないとダメですね」

 

りぜ「はなれる……!?」

 

リゼ父「いいか、リゼ?何度も言うように、ここにいる奴らは全員誰がいつ急にいなくなったっておかしくない。みんなの名前をお前に教えていないのも、愛着がわかないようにするためだ」

 

りぜ「ぅ…………」

 

リゼ父「こいつらにはこいつらの人生がある。あいつにはあいつの人生がな。俺たちの勝手な感情で邪魔してはいけない。分かるな?」

 

りぜ「…………」

 

リゼ父「離れても繋がりが消えるわけじゃないだろう」ゴクゴク

 

りぜ「うん……」

 

メイドD「お嬢様……」アセアセ

 

使用人C(相変わらず厳しい……)

 

りぜ「………………」

 

メイドA「遅くなりました~」

 

りぜ「!」

 

使用人D「どうも」ペコリ

 

リゼ父「先に食べてるぞ」

 

メイドA「かまいませんよ~――おや?」

 

メイドA「お嬢様、お箸が進んでいませんね~。もしや嫌いなものでも?」

 

りぜ「ち、ちがう!きょうはおなかがすいてないんだ!」

 

メイドA「おやおや~あんなに遊んだのにお腹すいてないのです?わたしなんて背中とお腹がくっ付きそうですよ~?」

 

りぜ「うるさいっ!もういい、ごちそうさまっ!」ガタッ タタタ

 

メイドA「あっ、お嬢様。待ってください~」

 

リゼ父「遅れてきて早々災難だな」

 

メイドA「大方察せますよ~、旦那様のせいでしょう?」

 

リゼ父「フッ、さぁな」

 

メイドA「いいですよーだ。リゼお嬢様に意地悪するような人とは、金輪際ダーツで遊んだりしませ~ん」

 

リゼ父「なっ!待て、お前に付き合ってもらわないとタカヒロに負けてしまう……!」

 

メイドA「ふふっ、なんて。仕方ないから今夜も勝負してさしあげます」

 

リゼ父「」ホッ

 

メイドA「トレーお借りしますね~。これがわたしの分と、こちらがお嬢様がお残しになられた分」ヒョイ

 

使用人C「?」

 

メイドD「あの、メイド長?」

 

メイドA「食べ終わった食器はそのままにしておいてください~あとで纏めて洗浄機にかけちゃいますので。お風呂沸いていますので順番にどうぞ、では~」タタタ

 

使用人D「あっ……」

 

メイドC(行っちゃいました……)

 

リゼ父「リゼのことはあいつに任せておけばいい。一番風呂貰うぞ」ガタッ

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――

 

 

 

――リゼの部屋――

 

 

りぜ「むぅ…………」グスッ

 

りぜ(おとうさんのばか……あんなかなしいこというから、ついあいつにあたってしまった……)

 

りぜ(でざーともおいてきちゃったし……めろん、たべたかったな……)

 

りぜ「……」シュン

 

 

トントン

 

りぜ「!」

 

メイドA「リゼお嬢様、わたしです~。入ってもいいですか?」

 

りぜ「だ、だめだ!」

 

メイドA「お邪魔しま~す♪」ガチャッ

 

りぜ「だめだっていったろう!?」

 

メイドA「あらまぁ、そうでしたっけ?」

 

りぜ「なにしにきたんだ!」

 

メイドA「お嬢様のお部屋でご飯を食べに来ました~」ニコッ

 

りぜ「『だいにんぐ』でたべろ!なんでわたしのへやなんだ!?」

 

メイドA「お嬢様のお部屋で食べたいからですよ~。それじゃあいただきま~す」

 

りぜ「おいまて!――って……それ」

 

メイドA「先ほどお嬢様がお残しになられた分です。もったいないので一緒にわたしが食べてしまおうと思いまして」

 

りぜ「そ、そうか……」

 

メイドA「メインおかずのお肉やデザートのメロンがほとんど残ってますね~。はぁ~わたし嬉しくてよだれが出そうです」

 

りぜ「…………」ウズウズ

 

メイドA「ではまずはお肉から。いただきまーす」パクッ

 

りぜ「あっ…………」

 

メイドA「ん~……あれ?おかしいですね」モグモグ

 

りぜ「ふぇ……?どうした?」

 

メイドA「お嬢様大変です。このお肉、全然おいしくありません」

 

りぜ「ほんとうか?さっきはすごくおいしかったぞ?」

 

メイドA「召し上がってみてください。あーん」スッ

 

りぜ「あーん……」パクッ

 

メイドA「いかがです?」

 

りぜ「んっ……おいしいぞ?」モグモグ

 

メイドA「……あっ!」

 

りぜ「?」

 

メイドA「ふふ、本当です。わたしもだんだんおいしくなってきました」

 

りぜ「え……」

 

メイドA「どうやらわたし、お嬢様と一緒に夕飯を食べないとおいしく感じられないみたいです」

 

りぜ「そうなのか……?」

 

メイドA「これは困りましたね。お嬢様、わたしと一緒にご飯を食べていただけないでしょうか?」

 

りぜ「……!」

 

りぜ「お、おまえのたのみならしょうがないな!おなかいっぱいだけど、いっしょにたべてやる!//」

 

メイドA「まぁ♪お嬢様はお優しいです」

 

りぜ「……えへへ//」ニコッ

 

メイドA「むむっ、お嬢様のメロンわたしのよりも小さくないですか?」

 

りぜ「ふぇ、そんなことないぞ?」

 

メイドA「いいえ、そんなことあります。わたしこんなに大きなメロン食べられませんし、お嬢様に半分食べてもらいましょう」スッ

 

りぜ「そんなことしたらおまえのめろんが……!」

 

メイドA「そのかわり、パセリ頂きますね」ヒョイ

 

りぜ「ぱせり……」

 

りぜ(たべたくないからどけていただけなのに)

 

メイドA「んっ、おいしいです」

 

りぜ「………………」

 

メイドA「おや、お嬢様?」

 

りぜ「あの……な……」モジモジ

 

メイドA「?」

 

りぜ「……ありがとう//」

 

メイドA「……ふふっ。いえいえ」ニコッ

 

りぜ「♪」モグモグ

 

メイドA(幸せそうに食べているお嬢様の姿を独り占めできて、最高の贅沢です)ニコニコ

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

――夕食後 リゼの部屋――

 

 

りぜ「………………」ベッド ゴロッ

 

りぜ(やっぱりわたし、あいつのことだいすきだ)

 

りぜ(どこにもいってほしくない)

 

りぜ(ずっとここにいてほしい、ずっと……)

 

りぜ(でも、おとうさんやみんなはいつかいなくなるかもしれないっていってたな……)

 

りぜ「…………」グッ

 

りぜ(どうにかしないと……あいつがいなくなるまえに!)

 

りぜ「よし!あしたようちえんでゆらにそうだんするぞ!」ガバッ!

 

メイドA「おや、なにをです~?」

 

りぜ「ひゃあっ!!?」

 

メイドA「ドアが少し開いていましたので~。ところでお嬢様、ユラ様に相談ってなんです?」

 

りぜ「な、ないしょだ!おまえをびっくりさせてやるんだ!」

 

メイドA「サプライズですか~楽しみにしてますね。お風呂入りましょ~」ヒョイ

 

りぜ「だっこするな!//」ジタバタ

 

メイドA「肩車のほうがいいです?」

 

りぜ「そういうことじゃない!」

 

メイドA「びゅ~ん」タタタ

 

りぜ「……!」

 

メイドA「びゅびゅ~ん、急ブレーキ」キキッ

 

りぜ「ぁ……!」パアァ

 

メイドA「お嬢様、行きますよ~!」タタタ

 

りぜ「いけ~!おふろばまでぜんそくりょくだ!」キャッキャッ

 

使用人C(扱いに慣れてる……)

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

――幼稚園 お昼休み――

 

 

りぜ「――ということなんだ、ゆら」

 

ゆら「らぶらぶだね~」

 

りぜ「わたしはあいつがすきだ。ゆらもあいつのことすきだろう?」

 

ゆら「うん、だいすきだよ~」

 

りぜ「だいすき……あっ、わたしはだいだいだいすきなんだ!」

 

ゆら「わたしはだいだいだいだいだいすきだよ~」

 

りぜ「なっ……!それならわたしはだいだいだいだいだいだいだーいすきなんだぞ!」

 

ゆら「かわいいからゆずってあげるね~。それで、あのおねえさんとずっといっしょにいられるほうほうだっけ」

 

りぜ「そうだ、ふたりでかんがえよう!」

 

ゆら「んー、りぜからふつうにおねがいしてみたら?」

 

りぜ「だめだそんなの!」

 

ゆら「どうして?」

 

りぜ「そんなことあいつにいえない……はずかしいし//」プイッ

 

ゆら「りぜってめんどうだよね~」

 

りぜ「う、うるさい!// それいがいでなにかないか?」

 

ゆら「それいがいかぁ~。――そうだ、ひもでしばっちゃうとかは?」

 

りぜ「ひもで?」

 

ゆら「ひもでしばってりぜのへやにくくりつけておけばいいんだよ~。そしたらどこにもいけないよ~?」

 

りぜ「そうか……たしかに!」

 

りぜ「ありがとうゆら、かえったらやってみるぞ」テギュッ

 

ゆら「あした、いいほうこくきかせてね~」ムフフー

 

先生(さっきからなんのはなし……!?)

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――

 

 

 

――りぜちゃん帰宅後…… 天々座家――

 

 

リゼ父「…………」

 

Prrrrrrrrrrrr!

 

リゼ父「んっ……?」

 

 

ツウシン 『リゼオジョウサマノヘヤ』

 

 

リゼ父「リゼか、どうした?」スッ

 

メイドA『すいません旦那様、聞こえるでしょうか~?』

 

リゼ父「お前か」

 

メイドA『実はですね、わたし監禁されちゃいました~助けにきてください』

 

リゼ父「監禁?」

 

メイドA『はい、お嬢様のお部屋です』

 

リゼ父「何かの遊びか?」

 

メイドA『いえ、ほんとうに――あっ、お嬢様が来ました。切りますね~』

 

リゼ父「…………」ツーツー

 

リゼ父「?」

 

 

 

――――――――――――――――――――

 

 

 

――リゼの部屋前――

 

 

リゼ父「」ガチャッ

 

リゼ父「んっ……?」

 

リゼ父(鍵がしまってる……)

 

りぜ「だれだ?」

 

リゼ父「リゼ、俺だ。開けてくれ」トントン

 

りぜ「だめだ!おとうさんでもここはあけられない!」

 

リゼ父「ほう、立て籠もりか」

 

リゼ父「……………………」

 

 

 

――リゼの部屋――

 

 

りぜ「…………」ピトッ

 

りぜ「よし、あきらめたか」

 

メイドA「お嬢様、この縄ほどいてください~」

 

りぜ「ほどいてほしいか?」フフン

 

メイドA「はい、そりゃあもう」

 

りぜ「ならやくそくしろ。きょうからおまえはわたしとずっとここにいるんだ」

 

メイドA「ずっとですか?」

 

りぜ「かいものにもいっちゃだめだ。『といれ』と『おふろ』いがいはずっとここにいろ」

 

メイドA「お仕事もダメですか~」

 

りぜ「だめだ、ここからかってにでたらこわいめにあうぞ」

 

メイドA「怖い目。どんなものでしょう?」

 

りぜ「どんな?ええと……」

 

メイドA(考えてなかったんですね~)ニコニコ

 

りぜ「お、おばけがたくさんいるんだ!」

 

メイドA「おやっ、お嬢様の後ろにもなにかが……」

 

りぜ「ひっ!?」ビクッ

 

メイドA「なーんて♪」

 

りぜ「おどかすなぁ!あと、わたしはおばけなんてこわくないぞ!」

 

メイドA「ふふっ、このままお嬢様にずっと監禁されていても楽しいですけど、夕飯の準備がありますのでそろそろ」スッ

 

りぜ「あっ、こら!いかせないぞ!」

 

リゼ父「まったく、めんどうをかけさすな」マド ガラッ

 

メイドA「旦那様、来てくださいましたか~」

 

りぜ「おとうさん!?」

 

リゼ父「立て籠もるならちゃんと窓も閉めておかないとな」ニヤッ

 

りぜ「ずるいぞ!おとうさんのばか!」

 

リゼ父「団子結びになってるな」チョキ

 

メイドA「助かりました~、ありがとうございます」

 

リゼ父「リゼ、監禁ごっこなら他の奴にしろ。こいつを監禁すると晩御飯のおかずが4品くらい減るぞ、お前の大好きなデザートも食べられなくなる」

 

りぜ「むぅ……」

 

メイドA「待ってください旦那様、きっとお嬢様にも何か理由があったはずです。ねっ?」

 

りぜ「それは……」

 

メイドA「?」

 

りぜ「~~~~っ!なんでもない!もういい、はやくいけ!」

 

メイドA「おやおや、それでは夕飯ができたらお呼びしますね~」

 

リゼ父「今日はなんだ?」

 

メイドA「タラのムニエルとキノコのソテー、アボカドサラダを予定しております」

 

リゼ父「ほう、酒が進みそうだな」

 

ガチャッ バタン

 

りぜ「…………」ポスッ

 

りぜ(かんきんしないで、あいつがいつもどおりにできて、ずっといっしょにいられるほうほう……)ベッド ゴロン

 

りぜ(あした、もういちどゆらにそうだんしてみよう……)

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――

 

 

――PM6:23――

 

 

メイドA(お嬢様のご機嫌、少しは良くなったでしょうか)テクテク

 

メイドA「お嬢様?」コンコン

 

メイドA「夕飯ですよ~今日のデザートはプリンです」

 

シーン

 

メイドA「入りますね~」ガチャッ

 

メイドA「おや?」

 

りぜ「」Zzz

 

メイドA「お嬢様、起きてください」トントン

 

りぜ「んっ……?」ポワポワ

 

メイドA「ご飯ができましたよ~」

 

りぜ「むにゃ……あとでいい」

 

メイドA「みんなで食べたほうがおいしいですよ?」

 

りぜ「ねむたい……」

 

メイドA「クスッ、そうですか。ではお隣失礼します」ポスッ

 

りぜ「ふぇ……?」

 

メイドA「お嬢様が起きるまで本でも読んでいます」

 

りぜ「おなかすいてないのか……?」

 

メイドA「ペコペコですよ~。でもわたし、お嬢様と一緒に夕飯を食べないとおいしく感じられないので」

 

りぜ「あ……」

 

メイドA「ゆっくりお休みください。お嬢様をひとりぼっちになんてさせません」

 

りぜ「……っ!」バッ

 

メイドA「おや?」

 

りぜ「だいにんぐまでいくぞ」

 

メイドA「よろしいのです?」

 

りぜ「わたしもおなかすいたんだ、わるいか?」

 

メイドA「いえ、グッドタイミングです」グッ

 

りぜ「ん……」

 

メイドA「お嬢様とわたし、お揃いですね」

 

りぜ「たまたまだ!だれだっておなかくらいすく!」

 

メイドA「ふふっ、そうですね~♪」テ ギュッ

 

りぜ「//」

 

メイドA「♪~♪♪」

 

りぜ(やっぱり、ずっといっしょにいたい……)

 

 

 

―――――――――――――――――――――――

 

 

 

――幼稚園 お昼休み――

 

 

りぜ「ひもでしばるのはしっぱいしたぞ」

 

ゆら「ほんとにしたんだ?やるね~」

 

りぜ「もっとほかにいいほうほうをかんがえよう」

 

ゆら「うーん、そうだねぇ。こう、ちょくせつてきじゃなく、こころのつながりみたいなものでしばったほうがいいのかも」

 

りぜ「こころのつながり?」

 

ゆら「そうだよ~。たとえば、ずっといっしょにいてくれるやくそくをかたちにしてぷれぜんとするとか」

 

りぜ「やくそくをぷれぜんと、か」

 

ゆら「へあぴんとかどう?」

 

りぜ「へあぴんか、それならあいつもつけられるな」

 

ゆら「かえりにみにいったら?ろてんがいのちかくにちいさな『ざっかや』さんがあるんだけど、そこにたくさんうってたよ~」

 

りぜ「まちかどにたってるきれいなおみせだな。わかった、つぎこそせいこうさせるぞ!」

 

ゆら「ふぁいと~おうえんしてるよ」ムフフー

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――

 

 

――幼稚園から帰宅後 天々座家 リゼの部屋――

 

 

りぜ「100えんが12まいいるから……」

 

りぜ「……あと3まいたりない」

 

りぜ(このかみ【お札】はつかっちゃだめっていわれてるし……)←リゼ父の教育

 

りぜ(おとうさんにそうだんしてみよう)ガチャッ

 

 

 

 

―――――――――――――――――――

 

 

――リゼ父の部屋――

 

 

リゼ父(次の出張は長くなりそうだな)

 

リゼ父(いちおうリゼとあいつにだけは伝えておくか)

 

りぜ「おとうさん?」ガチャッ

 

リゼ父「ん……リゼ、どうしたんだ?」

 

りぜ「えっと……」

 

リゼ父「?」

 

りぜ「おかねがほしいんだ……」

 

リゼ父「お金?」

 

りぜ「おしょうがつにくれるかみじゃなくて、ひゃくえんだまがほしい!」

 

リゼ父「ふっ……なにか欲しいものでもあるのか?」

 

りぜ「うん、だからあとひゃくえんだまが3まいいるんだ」

 

リゼ父「300円か。ならお手伝いでもするか?」

 

りぜ「おてつだい?」

 

リゼ父「今日一日、メイド長のあいつの仕事を手伝えば300円やろう」

 

りぜ「ほんとか!?」

 

リゼ父「ああ、みんなに内緒でな」

 

りぜ「ありがとうおとうさん!わたしがんばるぞ!」

 

リゼ父(本当は買ってやりたいが……やれやれ、親っていうのも大変だ)バサッ

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

――放送室――

 

 

メイドA「虹をむーすんで空のリボン~♪」

 

メイドA「君のえーがおへ贈り物よ~♪」

 

メイドA「願いをかけましょ――」

 

りぜ「ここか!」ガチャッ

 

メイドA「おや~?」

 

りぜ「やっとみつけたぞ!」

 

メイドA「みつかっちゃいました~」

 

りぜ「えっ!わたしがさがしていたりゆうしってるのか?」アセアセ

 

メイドA「いえ、見つけたって言われましたので一応ノリで」クスッ

 

りぜ「ホッ……って、おどろいたじゃないか!」

 

メイドA「ゲームのお誘いです?ちょっと待ってくださいね~」

 

りぜ「ちがう、おまえのおてつだいにきたんだ」

 

メイドA「おてつだい?」

 

りぜ「きょうはわたしがおまえのしごとをてつだってやる」

 

メイドA「まぁまぁ♪それは助かります~」

 

りぜ「なにをすればいい?」

 

メイドA「それでは5時の定時放送をしましょうか」

 

りぜ「おまえがいつもしゃべっているやつだな」

 

メイドA「はい、きょうはおじょうさまとふたりで」

 

りぜ「まかせろ」フフン

 

メイドA「では」カチッ

 

 

―――――――――――――――――――

 

 

――客室――

 

 

ピンポンパン ピポピポポーン♪

 

 

使用人C「おっ……」

 

メイドD「もう5時ですか」

 

 

メイドA『みなさん、5時です。夕飯の支度に洗濯物の取り込みにお掃除、忙しいですけど頑張りましょ~。ちなみに今日のデザートはフルーツゼリーとリンゴのウサギです』

 

りぜ『りんごうさぎ!?ほんとうか!?』

 

メイドA『ええ、ほんとうですよ~』

 

 

使用人C「お嬢の声……?」

 

 

メイドA『今回はお嬢様と二人で放送です。この後もずっとお手伝いしてくださるそうなので、今日一日よろしくお願いします』

 

りぜ『りょうりもそうじもいっぱいするぞ!』

 

 

メイドD「ふふ」ニコニコ

 

 

メイドA『わたしとお嬢様はダイニングで夕飯の準備をしてますので、みなさんは適当に好きなお仕事をしておいてください』

 

りぜ『わたしたちはりょうりだな』

 

メイドA『はい、みんなが驚くようなごちそうを作りましょう』

 

メイドA『それでは放送を終了します』

 

 

ピンポンパン ピポピポポーン♪

 

 

使用人C「我々は掃除にいきましょうか」

 

メイドD「そうですね、夕飯はメイド長とお嬢様にお任せしましょう」

 

 

 

――――――――――――――――――――――

 

 

 

――ダイニング――

 

 

メイドA「♪~♪♪」

 

りぜ「おーい、できたぞ!」

 

メイドA「上手く混ざってますね~さすがはお嬢様です」ナデナデ

 

りぜ「ふふん//」

 

メイドA「では、次はこちらをかき混ぜてください」

 

りぜ「これだな」

 

メイドA(あとはここに塩コショウを入れて)

 

りぜ「ん……よっ……!」

 

メイドA(これでシチューは完成。あとはフランスパンとチーズフォンデュですね)

 

メイドA(チーズフォンデュも混ぜるだけだし、このままお嬢さまにお任せしましょう。いまのうちにフランスパンをカット)ザクッザクッ

 

メイドA(6時には完成しそうですね)

 

 

 

――

――――

――――――

 

 

メイドA「完成です♪」

 

りぜ「おお……!」キラキラ

 

メイドA「お疲れさまでしたお嬢様。わたし、旦那様やみんなを呼んできます。チーズフォンデュの鍋は2つとも熱々なので運んじゃダメですよ?他はお任せしますね」

 

りぜ「わかった」

 

メイドA「それでは~」タタッ

 

りぜ(きょうはたくさんやくにたったぞ。あいつもわたしのことをみなおしたにちがいない)

 

りぜ(さて、みんなのぶんをはこぶか)

 

 

 

 

りぜ「………………」

 

りぜ(おそいな……)

 

りぜ「…………」チラッ

 

チーズフォンデュ

 

りぜ(ぜんぶはこんでいたら、あいつにもっとほめてもらえるかも……)

 

りぜ「………………」

 

りぜ(だいじょうぶだよな……とってをもてばあつくないし)スッ

 

りぜ(いけそうだ……これもはこんでしまおう!)

 

りぜ「よっ……!――っ!?」ズン

 

りぜ「おもっ……うぅ……!」グググ

 

りぜ(どうしよう、もとにもどせない……!)

 

りぜ「あっ……ぐぐっ……!」フラフラ

 

りぜ「うぁ!?」

 

 

――バシャッ!

 

 

りぜ「あ…………」

 

りぜ(チーズフォンデュが……)

 

りぜ「………………」

 

メイドA『チーズフォンデュの鍋は2つとも熱々なので運んじゃダメですよ?』

 

りぜ「……ふぇ」ジワッ

 

メイドA「お嬢様、お待たせしました~――……!」

 

リゼ父「んっ?」

 

使用人C「これは……!」

 

りぜ「わ、わたし……」

 

メイドA「お嬢様っ!」

 

りぜ「ひっ……!」ビクッ

 

メイドA「火傷してませんか!?」ガシッ

 

りぜ「へ……?」

 

メイドA「怪我はありませんか?どこも痛いところは?」

 

りぜ「う、うん……でも……」グスッ

 

メイドA「良かった……」ギュッ

 

りぜ「……!」

 

メイドA「いいんですよ、お嬢様がご無事なら」

 

メイドA「チーズフォンデュ、頑張って運ぼうとしてくださったんですよね」

 

メイドA「お嬢様の気持ち、ちゃんと分かってますよ……」

 

りぜ「ぁ……」

 

メイドA「ありがとうございます、怖い思いさせちゃいましたね」ナデナデ

 

りぜ「ひっく……ううっうぇええぇんっ!!」ポロポロ

 

メイドA「泣かないでくださいお嬢様~誰も怒ってませんよ~」ヨシヨシ

 

りぜ「ごめんなざい……っ!」ポロポロ

 

メイドA「もう一度作り直せばいいだけです、ねっ?」

 

りぜ「うっ……グスッ……!」ギュッ

 

メイドA「よしよし、怖かったですね~」

 

使用人C「フッ……」

 

リゼ父「泣くな、リゼ」ポンッ

 

りぜ「?」

 

リゼ父「さっさと作るぞ、もう一回」

 

メイドA「いえっさー!」

 

リゼ父「リゼがかき混ぜないとあの味は出ないんだろう。なっ?」

 

メイドA「はい、わたしや旦那様では絶対に無理です」

 

リゼ父「リゼ、はやくここにこい」

 

りぜ「おとうさん……」グシグシ

 

リゼ父「これからは言うこと、ちゃんと聞くんだぞ」ニシッ

 

りぜ「……うん!」

 

メイドA「ふふっ」ニコニコ

 

 

 

――

――――

――――――

 

 

――――――――――――――――――――――――

 

 

 

――翌日 天々座家――

 

 

りぜ「ただいま!」ガチャッ

 

メイドC「おかえりなさいませ、お嬢様」

 

りぜ「あいつはどこだ?」ハァハァ

 

メイドC「メイド長でしたら、旦那様のコレクションルームを掃除されているかと」

 

りぜ「あそこか!」タタタ

 

メイドC「あっ、お嬢様……!」

 

メイドC「……?」

 

メイドD「実は帰りに雑貨屋さんに寄りましてね」ニコニコ

 

メイドC「雑貨屋さん?」

 

 

 

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――リゼ父 コレクションルーム――

 

 

メイドA「♪~♪♪」

 

メイドA(おや、また新しい武器が増えてますね)

 

メイドA(旦那様も出張に行かれるようですし、毎日ピカピカにしておかないと)

 

メイドA「♪♪~♪~」

 

りぜ「おい!」ガチャッ

 

メイドA「あらお嬢様~、おかえりなさいませ」

 

りぜ「んっ」バタン

 

メイドA(ドアを閉めた?なにか内緒の頼み事でしょうか)

 

りぜ(おちつけ……ちゃんとれんしゅうしたんだ)

 

りぜ「……!」グッ

 

メイドA「?」

 

りぜ「その……あのな……」モジモジ

 

メイドA「はい、なんでしょう~?」

 

りぜ「……んっ!」バッ

 

メイドA「!」

 

りぜ「これ……ぷれぜんとだ!わたしとおまえの、なかよしのしるし!」

 

りぜ「これからもずっといっしょにいてくれ!わたしのそばにずっと!やくそくしろっ!どこにもいかないって!」

 

りぜ「だからおまえのなまえ……おしえてくれ!」

 

メイドA「……!」

 

りぜ(……しまった。えらそうにいわないってきめてたのに)

 

りぜ「…………ぅ」

 

メイドA「――お嬢様」スッ

 

りぜ「!」

 

メイドA「ありがとうございます。プレゼント、とっても嬉しいです」

 

メイドA「わたしも真剣にお嬢様のお気持ちに応えないとですね」

 

りぜ「……っ」ゴクリ

 

メイドA「リゼお嬢様……――」

 

 

 

メイドA「――約束します」テ ギュッ

 

 

 

りぜ「!」

 

メイドA「お嬢様の側にいます。……いえ、いさせてください」

 

メイドA「どこにもいきません、ずっと」

 

メイドA「だってわたし――お嬢様のこと、世界で一番好きですから」ニコッ

 

りぜ「せかいで、いちばん……?」

 

メイドA「はい、リゼお嬢様が一番です」

 

りぜ「ほんとうか……?ゆらよりもか?おとうさんよりもか?」

 

メイドA「はい、ユラ様よりも旦那様よりもです」

 

りぜ「わたしのことが、いちばん?」

 

メイドA「はい♪」

 

りぜ「ぁ……!//」

 

メイドA「これからもずっとよろしくお願いします。リゼお嬢様」

 

りぜ「まかせろ!ええと……!」

 

メイドA「みんなには内緒ですよ?ここのルールでして」シーッ

 

りぜ「うん、ふたりきりのときだけ……!」

 

メイドA「ふふっ、それでは――」

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

――リゼ父の部屋――

 

 

リゼ父(……よし)

 

リゼ父(出発は明日の朝か……今回は長くなりそうだな)

 

トントン

 

リゼ父「入れ」

 

メイドA「失礼します~」ガチャッ

 

リゼ父「お前か」

 

メイドA「ふふ~旦那様、これ見てください」ドヤッ

 

リゼ父「ふっ……なんだその髪飾りは」

 

メイドA「お嬢様に頂きました~蝙蝠の髪飾りです」

 

リゼ父「割と似合ってるぞ」

 

メイドA「一生懸命お手伝いして買ってくださったものですよ、ダイヤモンドよりも価値があります」フンス

 

リゼ父「そんな大事なもの、頭に付けていいのか?」

 

メイドA「はい。だってこれは、わたしとお嬢様が家族になった証ですから」

 

リゼ父「………………」

 

メイドA「旦那様、わたし決めました。……いえ、ここに来た時から既に決めていたかもしれません」

 

メイドA「これからもずっと、ここでいさせてください」

 

メイドA「ここに……天々座家の家族でいても、いいですか?」

 

リゼ父「…………ふっ」

 

メイドA「旦那様?」

 

リゼ父「好きにしろ」

 

メイドA「では……!」

 

リゼ父「家族なんだろう?家を出ていったら家族じゃなくなるのか?」

 

メイドA「!」

 

リゼ父「ここがお前の帰る場所になった、それだけだ。他は何も変わらん」

 

メイドA「……」ペコリ

 

リゼ父「昨日言ったとおりだ、明日からは家のこと任せるぞ」

 

メイドA「はい、どうかお気をつけて」

 

リゼ父「ああ」バサッ

 

メイドA「失礼します、旦那様」

 

リゼ父「リゼのこと……いつもありがとう」

 

メイドA「クスッ、こちらこそ」

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――

 

 

 

――PM10:11 リゼの部屋 INベット゛――

 

 

りぜ「でんきけすぞ」

 

メイドA「はい」

 

パチッ

 

りぜ「ふへへ~//」ニヘラ

 

メイドA「おやおや~お嬢様、頬がゆるんでいますよ~」

 

りぜ「うれしいからしかたないんだ//」

 

メイドA「何が嬉しいんですか?」ムニー

 

りぜ「うーん……ぜんぶだ!」

 

メイドA「ぜんぶですか~♪」

 

りぜ「うん!」

 

りぜ(もうおまえがいなくなることをしんぱいしなくていいし、ぷれぜんとはせいこうしたし、いちばんすきっていわれたし……それに//)

 

りぜ「む……む……むら//」

 

メイドA「ムラサメですよ~」

 

りぜ「むらさめ……おやすみ//」

 

メイドA「おやすみなさい、お嬢様」ギュッ

 

りぜ「んっ……//」

 

 

――おしまい♪

感想

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