――――――
――――
――
――甘兎庵――
リゼ「花火大会?」
千夜「良かったら今年もみんなでどうかしら?」
リゼ(去年はチノが誘ってくれたんだっけ……あれからもう、1年か)
千夜「リゼちゃん?」
リゼ「あっ……ああ、もちろんわたしは賛成だ」
千夜「良かった、ここあちゃんにとって初めてのお祭りだから喜んでくれると思って」ニコッ
リゼ「みんなにはもう話したのか?」
千夜「快くオッケーしてくれたわ。あとはここあちゃんだけ」
リゼ「ここあの答えなんて聞くまでも無いだろう」
千夜「今夜、いちおう電話貰ってもいい?」
リゼ「ここあの喜ぶ反応が知りたいだけじゃないのか?」
千夜「あら、ばれちゃった?」クスッ
リゼ「わかった、夜に聞いてみるよ」
千夜「ありがとう、朗報待ってるわ」
リゼ(みんなで花火大会……か)
リゼ(今年も、楽しいことがいっぱいだな♪)
―――――――――――――――――――――――
――ラビットハウス――
リゼ「ふぅ」ガチャッ
ここあ「りぜちゃん、おかえりなさい♪」タタタ
リゼ「ただいま、待たせたな」ナデナデ
チノ「あの、リゼさん」
リゼ「千夜から聞いたよ。後はわたしに任せろ」
チノ「……!はい、お願いします//」
リゼ「さてここあ、そろそろ帰ろうか」
ここあ「うん!ちのちゃん、またね」ブンブン
チノ「ここあさん、また明日」フリフリ
―――――――――――――――――――――――
――
――――
――――――
――PM8:40 客室――
ここあ「うーん……」トランプ
使用人「どれになさいます?」
ここあ「……これ!」スッ
リゼ父「俺はトランプよりテレビゲームの方がいいんだが」
リゼ「親父がここあをいじめるからダメだ」
リゼ父「あれはかわいい子ほどいじめたくなるという男特有のだな」
リゼ「小学生か!」
リゼ父「おっ、あがりだ」
ここあ「おとうさん、とらんぷもつよいんだね……!」
リゼ父「ふっ」ドヤッ
使用人(トランプでドヤ顔……)
リゼ「さぁ、次はお前だ」
使用人「では……」スッ
使用人「おっ、あがりのようです」
ここあ「りぜちゃんとしょうぶだね!」
リゼ「手加減しないぞ」
リゼ(とはいっても運勝負だが)
リゼ「――これか」スッ
リゼ「ジョーカー……やるな、ここあ」
ここあ「つぎはわたしだね」
リゼ「さぁ、どっちにする?」
ここあ「……これ!」スッ
ここあ「ぁ……やったぁ!」
リゼ「負けたか、ここあは強いな」ナデナデ
ここあ「でも3ばんだよ?」
リゼ「親父は反則でもしたんだ、ここあは2番だぞ」
リゼ父「リゼ!?」
使用人「次はどうします?大富豪でも?」
リゼ「……」チラッ
リゼ(そろそろ8時か……)
リゼ父「……な、なぁ、お前たち?」
使用人「?」
ここあ「ふぉぇ?」
リゼ父「あのな……来週の花火たいか――」
リゼ「ここあ、ちょっといいか?」
ここあ「?」
リゼ「来週――みんなで、お祭りに行かないか?」
リゼ父「!?」
ここあ「おまつり?」
リゼ「ああ、金魚すくいしたり輪投げをしたり、わたがしを食べたり林檎飴を食べたりして屋台を回るんだ」
ここあ「!」
リゼ「みんなで一緒に、浴衣を着てな」
ここあ「わたがし……ふわふわのやつ?」
リゼ「ああ、チノがここあと一緒に食べたいって言ってたぞ」
ここあ「……!」
リゼ「最後はみんなで打ち上げ花火を見よう」
ここあ「ぁ……!」パアァ
リゼ「どうだ?お祭り、一緒に行くか?」
ここあ「いきたいっ!!つれていって!!」ギュッ
リゼ「よし、来週はみんなでお祭りにいこう」ヒョイ
ここあ「わーい!」キャッキャッ
リゼ「ふふっ//」ニコッ
リゼ父「そんな……俺の計画が……」ガクッ
使用人「お嬢たちと行かれるつもりだったんですか……」
リゼ父「まだ諦めん……!タカヒロに相談だ!」ダダッ
使用人「!?お待ちを……!」
ガチャッ バタン!
使用人「」
リゼ「んっ、親父はどこに行ったんだ?」
使用人「えっと……なにやら急用ができたそうです」
リゼ「仕事か?まったく、みんなで遊んでる最中なのに」
ここあ「ゆうしゃさんもいっしょにおまつりいこう!」
使用人「ありがとうございます。ですが今回は遠慮しておきますね」
ここあ「いかない?」
使用人「当日、あっしは用事がありますので」
ここあ「そっか……」
使用人「お友達だけで、楽しんできてください」ナデナデ
ここあ「んっ……♪」
リゼ「いいのか?」
使用人「ええ、用事があるのは事実なので」
リゼ「そうか、お土産だけでも買ってくるよ」
使用人「お気遣いなく。では、あっしもこの辺で」
ここあ「おやすみなさい!」
使用人「良い夜を」ペコリ
ガチャッ バタン
リゼ「さて……」
――ベッド ポスッ
ここあ「りぜちゃん?」
リゼ「お祭りのこと、二人で相談しようか」
リゼ「ここあ――おいで」
ここあ「!――うん//」
――ギュッ
リゼ「おっと……」
ここあ「りぜちゃん、えへへ//」
リゼ「膝に座るんじゃないのか?」
ここあ「ううん、だっこがいい//」
リゼ「この体勢だと話しにくいぞ」
ここあ「いいの~//」スリスリ
リゼ「しょうがないやつめ」ナデナデ
ここあ「おまつり……たのしみだね//」
リゼ「ここあは初めてだもんな」
ここあ「げーむでみたみたいに、たくさんおみせがあるの?」
リゼ「ああ、色んな食べ物が売ってあるぞ」
ここあ「わなげとか、しゃてきとかも?」
リゼ「遊ぶものもいっぱいある。ここあのしたいこと、好きなだけやろうな」
ここあ「うん!//」
リゼ「よし、あと3日間の辛抱だぞ」
ここあ「はやくみんなでいきたいね//」
リゼ(まだこんな時間か……寝かしつけるにしても少し早いな)
Prrrrrrrrrrr――
リゼ「んっ?」
ここあ「でんわ?」ヒョイ
リゼ「チノからだ」
ここあ「ちのちゃん!かして、かして!」
リゼ「ほら」ピッ
チノ「もしもし、リゼさん。夜遅くにすいません」
ここあ「ちのちゃん、わたしだよ!」
チノ「ここあさん?」
ここあ「りぜちゃんからきいたの。おまつり、いっしょにいこうね!」
チノ「……!」
チノ「――はい……よかった//」ニコッ
ここあ「ふぉぇ?」
チノ「何でもないです。ここあさんはお祭りで何がしたいですか?」
ここあ「きんぎょすくい!しゃてきも!あとね――」
リゼ「…………」フッ
リゼ「……」スッ ガチャッ
――バタン
―――――――――――――――――――――――
Prrrrrrrrrrrr――
リゼ「もしもし、千夜」Tell
千夜「リゼちゃん?おうちの電話からかけてるの?」
リゼ「いまわたしの携帯でここあがチノと話しててな」
千夜「チノちゃんから電話?……そう」
千夜「きっと心配だったのね」クスッ
リゼ「そうだろうな、チノらしい」
千夜「それで――……どう?」
リゼ「ああ、千夜のお望み通りだ」
千夜「それじゃあ……!」
リゼ「来週みんなと一緒に行くって、もうはしゃいでるよ」
千夜「ふふっ、可愛いわ。良かったわねシャロちゃん、ここあちゃん一緒に行くって」
シャロ「わ、わたしに振らなくていいから……!」
リゼ「シャロもいるのか?」
千夜「ええ、リゼちゃんからの報告にずっとそわそわして――」
シャロ「いちいち話すなぁっ!//」
リゼ「そうか、遅くなってすまないな」
シャロ「いえ、リゼ先輩のせいじゃありませんから……!」
リゼ「あと三日か、待ち遠しいな」
千夜「用意するものとかない?着物はウチで貸してあげられるけど」
リゼ「ここあの分はいいよ、用意してある」
シャロ(そういえばドレスルームのタンスに……)
千夜「リゼちゃん?」
リゼ「ん?」
千夜「――みんなで、いい思い出にしてあげましょうね」
リゼ「……ああ、もちろんだ」
千夜「クスッ、なんだか去年を思い出すわ」
シャロ「ココアがギリギリ間に合ったんだっけ」
リゼ「……………………」
千夜「リゼちゃん?」
リゼ「あっ……ああ……」
リゼ「…………なぁ、千夜、シャロ?」
千夜「?」
シャロ「どうしたんです?」
リゼ「……このしあわせ……いつまで続くのかな……」
シャロ「リゼ先輩……?」
リゼ「ココアのためにも……本当は永遠なんて望んじゃいけないんだけど……」
千夜「………………」
千夜「……大丈夫、リゼちゃん」
リゼ「え……?」
千夜「続くわ。ずっと、ずっと」
リゼ「千夜……」
千夜「そう信じて、まずは今を大切にしましょう。ねっ?」
リゼ「……そうだな」
リゼ「今は、今しかないよな」
シャロ「元気出してください、ここあが心配しますよ」
リゼ「ありがとう、千夜、シャロ」
リゼ「また明日、ラビットハウスが終わったら寄るよ」
リゼ「――みんなで花火か、それもいいな」
――
――――
――――――
――――――――――――――――――――
リゼ(すっかり話し込んでしまった……)
リゼ(ここあのやつ、もう寝てしまったかな?)ガチャ
ここあ「……ゅぅ…………」コクリ
リゼ「ここあ?」
ここあ「ふぉぇ……?」
ここあ「あっ!…ん……」クシクシ
ここあ「りぜちゃん、おかえりなさい♪」
リゼ「待っててくれたのか」
ここあ「いっしょにねたかったから」
リゼ「ありがとう、優しいなお前は」ナデナデ
ここあ「んっ……//」
リゼ「部屋、片づけてくれたのか」
ここあ「うん、でもあの『えほん』だけとどかなくて……」
リゼ「上の本棚だもんな」スッ
リゼ「よっと……」
ここあ「きれいになったね」ニコッ
リゼ「無理に仕舞おうとしなかったんだな、偉いぞ」
ここあ「このまえりぜちゃんにいわれたから」
リゼ「怪我したら大変だから、ここあにできないことはわたしがするから大丈夫だ」
リゼ「その代わり、わたしにできないことはここあがしてくれ」
ここあ「まかせなさーい!」
リゼ「よし――歯磨きして、寝ようか」
ここあ「……」スッ
リゼ「?」
ここあ「だっこ、して?//」
リゼ「まったく……あまえんぼうめ」クスッ
ヒョイ――ギュッ
ここあ「えへへ……//」
リゼ「お祭り、楽しもうな」
ここあ「うん……//」
ここあ「りぜちゃんやみんなと、たくさんたのしいことするの//」
――――――――――――――――――――――
――夜 ラビットハウス――
リゼ父「タカヒロ、大変だ!」ガチャッ
タカヒロ「なんだ?騒々しい」
リゼ父「俺の娘たちとの花火大会計画が……!」
タカヒロ「今年もみんなで行くらしいな、チノから聞いたよ」
リゼ父「納得している場合か。このままだと、去年の二の舞になる……!」
タカヒロ「今年も手伝ってくれるのか?」
リゼ父「お断りだ!去年はお前に騙されたが、今年はそうはいかん」
タカヒロ「かといって、俺たちが娘たちの輪に入るわけにもいくまい」
リゼ父「ぐっ……それは、そうだが……」
タカヒロ「今年も、俺たちは大人しくしていよう」
リゼ父「……はぁ。また、思い出も無しか」
タカヒロ「………………」
タカヒロ「ほら」ドンッ
リゼ父「んっ……なんだこの段ボールは?」
タカヒロ「開けてみろ」
リゼ父「…………?」ガサッ
リゼ父「!――花火か?」
タカヒロ「お昼に、問屋で買ってきた」
リゼ父「どういうことだ?」
タカヒロ「たくさんあるから、大勢でやらないと無くならない」
リゼ父「……――!」
タカヒロ「あとは広い庭さえあれば、お祭りの後にみんなで楽しめるだろう」
リゼ父「タカヒロ……お前……」ウルウル
タカヒロ「みんなには言っておく、準備のほうは任せる」キラン
リゼ父「待ってる間、二人きりでこっそりお祭り行くか?」
タカヒロ「全力で拒否しよう」フッ
感想
そりゃ可愛い娘たちと一緒に行きたくなるでしょうね、リゼのお父さんだって笑
おっしゃるとおりですな、恐らく金魚すくいや射的でここあちゃんとリゼちゃんに良いとこ見せたかったのでしょう。
去年は花火大会を見に行ったな~と思いながら読みました。
花火大会が楽しみでワクワクして、目を輝かせているここあが頭に浮かびました。
花火大会に行きたいリゼ父の子どもっぽさ(?)もいいですね。
夏ということで特別に描いた、マルチエンディングSSの最初ですね。
この後どういう結末になるのかは、読み進める読者さん次第です。