ごちうさSS チノ「ここあさんのお弁当サプライズ」 前編

 

 

 

 

――AM5:30 天々座家――

 

リゼ「すぅ………すぅ…………」Zzz

 

ここあ「ふぉぇ…………」Zzz

 

 

ガチャッ……

 

 

使用人「――ちいせぇお嬢、起きてください」

 

ここあ「むにゃ……」Zzz

 

使用人「お時間ですよ」トントン

 

ここあ「んっ……?」

 

使用人「おはようございます……」ヒソッ

 

ここあ「ゆうしゃさん……?」

 

使用人「約束の時間です、起きて準備しましょう」

 

ここあ「やくそく……」ポワーン

 

使用人「おべんとうの件です……」

 

ここあ「……あっ」

 

ここあ「んっ……」クシクシ

 

使用人「いけますか?」

 

ここあ「うんっ」ピョン

 

使用人「まずは顔を洗って歯磨きしましょう」

 

ここあ「りぜちゃん……まっててね」ナデナデ

 

リゼ「ん…………」Zzz

 

ここあ「――いってきます」

 

 

 

――――――――――――――――――――――

 

 

 

――AM6:00 外――

 

ここあ「だれもいないね……」

 

使用人「まだ明け方ですから」

 

ここあ「…………」ゴシゴシ

 

使用人「眠たいですか?」

 

ここあ「ううん、だいじょーぶ」

 

ここあ「ちのちゃんといっしょに、おいしいのつくるの」ニコッ

 

使用人「ええ、頑張ってください」クスッ

 

ここあ「さぷらいずだから、ないしょにしててね?」

 

使用人「もちろんです、きっと驚きますよ」

 

ここあ「えへへ……♪」

 

 

 

――

――――

――――――

 

―――――――――――――――――――――――

 

 

 

――昨日 天々座家 ガーデン――

 

 

ここあ「ちょくだげき!」ブンッ

 

リゼ「違う!」カンッ!

 

リゼ「ここあ、敵が側面にいる場合は横打撃が有効だ」

 

ここあ「よこだげき?こう?」

 

リゼ「それは防左側撃だ!横打撃で狙うのは相手の肩、この辺りだな」

 

ここあ「ここ?」

 

リゼ「そうだ、直突から間髪なしで繋がるから覚えておくんだぞ」

 

リゼ「よし、もう一度こい」

 

ここあ「うん!いくよ~!」

 

ここあ「えいっ!」ブンッ

 

リゼ「踏み込みが甘い!」カッ!

 

ここあ「たてだげき!」

 

リゼ「おっ」カッ!

 

ここあ「ちょくとつ!よこだげき!」

 

リゼ「いいぞ、今度はこっちの番だ」

 

リゼ「直打撃!」ブンッ

 

ここあ「わわっ」カンッ

 

リゼ「右側撃!」

 

ここあ「やっ!しとつ!」ビュッ

 

リゼ「おっと」カンッ

 

ここあ「あっ」

 

リゼ「弾倉撃!」ブンッ

 

ここあ「ひゃっ……!」

 

リゼ「大丈夫か!?」

 

ここあ「うん、へいきだよ!」

 

リゼ「なかなか良い攻撃だったが、剣先と台尻だけに頼ろうとするな。取り回しの際弾倉で穿つのも有効だ」

 

ここあ「こうだね!」

 

リゼ「ああ。でも、さっきの刺突は良かったぞ。上手になってきたな」

 

ここあ「ほんと!」

 

リゼ「次は防御の練習だ!いくぞ!」

 

ここあ「いえっさー!」ビシッ

 

リゼ「ふふっ」ニコッ

 

リゼ(楽しいな……//)ニヘラ

 

 

使用人「あの、お嬢?」

 

 

リゼ「んっ?」

 

リゼ「ここあ、一旦ストップだ」

 

ここあ「ごはんのじかん?」

 

使用人「夕飯はもう少しです、今夜はシチューですよ」

 

ここあ「やったぁ!」ピョン

 

リゼ「何の用だ?ここあと遊んでるんだから手短に頼む」

 

使用人「では……」

 

使用人「明日のお弁当ですが……確認したところ、やはり早朝は誰もおりませんね」

 

リゼ「そうか、分かった」

 

使用人「あっしでよろしければ簡単なものでしたらなんとか……」

 

リゼ「大丈夫だ、学校の購買でパンでも買うよ」

 

ここあ「おべんとう?」

 

使用人「ええ、明日のお嬢の昼食です」

 

ここあ「がっこうでたべるごはん?りぜちゃん、あしたはおべんとうないの?」

 

リゼ「心配するな、ちゃんと学校で買うから」ナデナデ

 

ここあ「でも……――あっ!」ピコーン

 

使用人(朝一にお店から取り寄せてそれを弁当箱に詰めても――んっ?)

 

ここあ「♪」ヒョイ ピョンピョン

 

使用人(あれは、この前二人で決めたお嬢には『秘密の合図』……可愛い)

 

使用人(……了解です)グッ

 

リゼ「さぁここあ、続きだ。早く遊ぼう」ワクワク

 

使用人「あの、お嬢?少し小さいお嬢をお借りしてもよろしいですか?」

 

リゼ「ダメだ」キッパリ

 

使用人「即答!?」

 

リゼ「いま楽しく遊んでるところなんだ、お前の用件は後にしろ」

 

使用人「遊んでいるって……銃剣術なんてこの子に教えないでくださいよ……」

 

リゼ「良かったら久しぶりにお前もどうだ?」

 

使用人「……そうですね」

 

使用人「なら、あっしが勝ったら10分だけ小さいお嬢を拝借できますか?」

 

リゼ「ほーう、面白いな。いいだろう、受けて立ってやる」

 

使用人「ちいせぇお嬢、少しお下がりを」スッ

 

ここあ「ゆうしゃさん『じゅうけんじゅつ』できるの?りぜちゃんつよいよ?だいじょうぶ?」

 

使用人「心配には及びません、あっしもプロです……それに、お嬢に銃剣を教えたのは他でもない我々ですから」

 

リゼ「ふっ、昔のわたしと思ってかかると痛い目を見るぞ」

 

使用人「一本勝負です。寸止めでも有効、いいですね」

 

リゼ「ああ……こい!」

 

使用人「では……」ジャキ

 

 

使用人「……直突っ!」ブン!

 

リゼ「ふっ!」カン!

 

使用人「はっ!」

 

リゼ「甘い!」ブン!

 

使用人「」ヒュッ!

 

リゼ「なっ……!」

 

使用人「斬撃!」ブン!

 

リゼ「くっ!」ヒョイ

 

リゼ「……危なかった」

 

使用人「やりますね、お嬢」

 

リゼ「ここあの前だ、負けてたまるか」

 

リゼ「いくぞっ!」ブン!

 

使用人「っと」カン!

 

リゼ「そこだ!」

 

使用人「側撃!」バシッ!

 

リゼ「あっ!」

 

使用人「突き!」ピタッ

 

リゼ「うっ……」

 

使用人「勝負あり、ですね」

 

ここあ「すごいゆうしゃさん!りぜちゃんにかったぁ!」ピョンピョン

 

使用人「すいませんお嬢、お怪我はありませんか?」

 

リゼ「ああ……やっぱり強いな、まだ敵わないか」

 

使用人「ですがお嬢も、あの頃より遥かに強くなっていて驚きました」

 

リゼ「……また、時間があったら相手をしてくれ」

 

使用人「ええ、お嬢の頼みでしたら、いつでも」

 

リゼ「ははっ」ニコッ

 

使用人「では約束通り、小さいお嬢は借りていきます」ヒョイ

 

リゼ「あっ!」

 

ここあ「りぜちゃん、すこしだけまってて~」

 

リゼ「あぁ!ここあぁ!!」

 

リゼ「わたしのここあが……うぅ」ズーン

 

使用人(たかだか10分でオーバーすぎる……)

 

 

 

――――――――――――――――――――――――

 

 

――ラビットハウス チノの部屋――

 

 

チノ「ふぅ……」

 

チノ(あともう少し……最後はここを揃えれば完成)パズル

 

チノ「これは……」

 

――トントン

 

チノ「はい?」

 

タカヒロ「チノ、ここあくんから電話だよ」キラン

 

チノ「ここあさんから?」

 

 

 

チノ「はい、もしもし」

 

ここあ「ちのちゃん?わたしだよー!」

 

チノ「ここあさん、今日はおうちにいたんですね」

 

ここあ「うん!おにわでりぜちゃんとあそんでたの、じゅうけんじゅつで」

 

チノ「銃剣術?」

 

ここあ「じゅうでたたきあってたたかうんだよ、こんどちのちゃんもいっしょにやろうね」

 

チノ「は、はい……」

 

チノ(ここあさんが軍事教育を受けてる……大丈夫でしょうか)

 

チノ「リゼさんは?一緒ですか?」

 

ここあ「ううん、りぜちゃんにないしょででんわしてるの」

 

チノ「えっ?」

 

ここあ「あのね、ちのちゃんにおねがいがあるの」

 

ここあ「―――――」

 

 

―――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

――――――

――――

――

 

 

――AM6:16 ラビットハウス――

 

チノ(卵、キャベツ、にんじん、ミンチ肉……これだけあれば大丈夫かな)

 

チノ(なにを作ろう、ここあさんが手伝えるような簡単なメニュー……)

 

チノ(卵焼きは、工夫すればバリエーションを持たせられる……メインディッシュはお肉を使おうかな?副菜はにんじんとキャベツを塩コショウと油で炒めれば……)

 

――ガチャッ

 

チノ「!」

 

ここあ「おじゃましまーす」

 

チノ「ここあさん」

 

ここあ「ちのちゃん!」タタタ

 

チノ「おはようございます。早起きできましたね、偉いです」ナデナデ

 

ここあ「ゆうしゃさんがおこしてくれたんだよ」

 

使用人「こんな早朝に申し訳ありません」ペコリ

 

使用人「これ、食材です。どうぞお使いください」ガサッ

 

チノ「あっ……ありがとうございます――っ!?」ズンッ

 

チノ「あ、あの……これは……」グググ

 

使用人「なにを作るか伺っていなかったので……とりあえず不足のないようにと」

 

チノ(サワラに鶏肉豚肉、かぼちゃが丸ごと……重い……!)

 

使用人「お帰りの際はご一報ください、お迎えに上がります。では……」

 

使用人「お料理、頑張ってください。くれぐれも怪我だけはされないように」

 

ここあ「うん!わたしにまかせなさーい!」

 

使用人「この子のこと、よろしくお願いします」ペコリ

 

チノ「いえ、こちらこそ……」アセアセ

 

 

――ガチャッ バタン

 

 

チノ「さて……ここあさん、厨房にいきましょうか」

 

ここあ「ちのちゃん、よろしくおねがいします」ペコリ

 

ここあ「おべんとうつくり、おしえてください」ニコッ

 

チノ「はい、わたしに任せてください」ガシッ

 

チノ「リゼさんが驚くような、素敵なお弁当を作りましょう」

 

ここあ「お~!」ピョン

 

 

 

―――――――――――――――――――――

 

 

『チノちゃんのお弁当講座その1・お弁当の基本』

 

 

チノ「まずお弁当を作るうえで大切なのは、栄養バランスとカロリー、そして色合いの3です」

 

ここあ「かろりー?いろあい?」

 

チノ「例えばですね、ここあさんの好きなものを言ってみてください」

 

ここあ「えっとね、はんばーぐとからあげと、ウインナーと、あと、とんかつも!」

 

チノ「ハンバーグは茶色っぽいですよね?からあげもウインナーも。トンカツも決して明るい色ではありません」

 

チノ「塗り絵をするとき、ここあさんはチューリップを黒だけで塗ったりしませんよね?どうしてですか?」

 

ここあ「みどりとあかいろもつかわないと、きたなくなるから――あっ」

 

ここあ「わかった!おにくばかりだとみためがわるくなるんだね!」

 

チノ「正解です、良く分かりましたね」ナデナデ

 

ここあ「えへへ♪」

 

チノ「お弁当をよりおいしく見せるには、野菜や色合いの濃い食べ物なども上手く詰め合わせないといけません」

 

チノ「これには栄養バランスとカロリーも関わってきます」

 

チノ「つまりお肉と野菜とご飯、3種類の栄養がバランスよく入っていれば素敵なお弁当が完成します」

 

チノ「野菜がいかに大切なのが分かりましたか?」

 

ここあ「うん!ちのちゃんすごいね!」キラキラ

 

チノ(昨日の夜勉強しておいて良かった……//

 

チノ「あと、なるべく冷えてもおいしく食べられるものを使うのも、お弁当を作るうえでのコツです」

 

チノ「冷えたら油が固まってしまう角煮や、時間が経ったら水分が出てしまう野菜は避けたほうがいいですね」

 

ここあ「じゃあ『みずなす』はだめだね」

 

チノ「水ナスを知ってるんですか?ここあさんも物知りですね」

 

ここあ「りぜちゃんとよんだえほんにのってたの」エッヘン

 

チノ(可愛い……)

 

 

 

『チノちゃんのお弁当講座その2・卵焼き』

 

 

チノ「最初はお弁当に欠かせない、卵焼きから作りましょう」

 

ここあ「たまごやきならしってるよ。たまごをおはしでといで『ふらいぱん』でやくの」

 

チノ「そうですね、でも今回はリゼさんをびっくりさせるため、アレンジを加えましょう」

 

チノ「手順は卵焼きと一緒です。まずは卵を2個割って」

 

チノ「ここあさん、といでもらえますか?」

 

ここあ「いえっさー!」ビシッ

 

チノ(サラダ油を少しひいて、弱火に……)

 

ここあ「ちのちゃん?おしょうゆは?」

 

チノ「醤油ではなく今回はだしつゆを使います」

 

チノ「そうめんのつゆなどでもおいしくできますよ、醤油と違って独特の風味が出るんです」

 

ここあ「へぇ……!」

 

チノ「ここあさん、混ぜ終えたらフライパンに入れてください」

 

ここあ「いっくよ~」

 

ジュウウウゥ!

 

チノ「白い部分が無い、ちゃんとかき混ぜられましたね」

 

ここあ「たくさんまぜたよ、おいしくなるように」

 

チノ「ここあさんのおかげで綺麗な卵焼きができそうです」

 

チノ「……そろそろですね」

 

チノ「ここあさん、そこにスライスチーズが2枚ありますね。卵焼きの上に乗せてくれますか?」

 

ここあ「これ?のせていいの?」

 

チノ「お願いします、火傷しないように気を付けてください」

 

ここあ「うん……――えいっ」

 

チノ「ありがとうございます、これを崩れないように丸めて……」

 

チノ「巻きすの上に乗せて……」

 

チノ「崩れないように、ゆっくりくるみます」クルクル

 

チノ「ここあさん、リゼさんのこと好きですか?」

 

ここあ「うん、りぜちゃんすき//」ニコッ

 

チノ「なら、このカタチですね」ギュッギュッ

 

ここあ「ふぉぇ?」

 

チノ「10分ほど冷まして……今のうちにお米を炊いておきましょう」

 

 

――10分後――

 

チノ「できましたよ、ほら」

 

ここあ「わぁ、すごい!はーとのたまごやき!」

 

チノ「真ん中にはチーズが入っています、あとはこれを太めにカットして」

 

チノ「三つ葉を散りばめて、この上に添えれば完成です」

 

ここあ「ひとつ、もうできちゃった……」

 

チノ「次は……そうですね」

 

ここあ「…………」

 

チノ「……?ここあさん?」

 

ここあ「ちのちゃん……わたし、やくにたててる?」

 

チノ「もちろんです、卵をかき混ぜてくれたのも、チーズを置いてくれたのもここあさんじゃないですか」

 

ここあ「……うん」

 

ここあ「…………」ウツムキ

 

チノ「あ……」

 

チノ(そっか……調理自体にここあさんの手を全く借りてないから……)

 

チノ(危ないと思って安全な作業ばかり頼んでいたけど、それだと疎外感が……)

 

チノ(……やっぱり、まだまだですね……わたしは)

 

チノ「……ここあさん」

 

ここあ「?」

 

 

――ギュッ

 

 

ここあ「ちのちゃん……?」

 

チノ「ごめんなさい。ここあさんのこと、過小評価していましたね」ポンポン

 

チノ「リゼさんにお弁当を作ってあげたいのは、わたしじゃなくてここあさんなのに」

 

チノ「わたし一人で作ったって、何も意味が無い……」

 

ここあ「でも……わたし、なにもできないから……」シュン

 

チノ「そんなことありません、ここあさんにだってできます」ナデナデ

 

チノ「一人じゃダメかもしれないけど、だからこそ二人で作るんです」

 

チノ「手伝います、だから今度は、ここあさんが作ってあげてください」

 

チノ「大丈夫――わたしが付いてます」ニコッ

 

ここあ「……!」

 

チノ「小さいフライパンは――あった」

 

チノ「ここあさん、頑張れますか?」スッ

 

ここあ「……うん」グッ

 

ここあ「ちのちゃんといっしょなら//」ニヘラ

 

チノ「!」

 

ここあ「りぜちゃんのために、がんばるっ!」

 

 

チノ「……偉いですね」ギュッ

 

 

チノ「やっぱり小さくても、暖かくて優しいココアさんのままです……」

 

ここあ「……?」

 

チノ「ここあさん……」ポスッ

 

ここあ「ちのちゃん、おねえちゃんなのにあまえんぼう?」

 

チノ「はい、でもいいんです……」

 

チノ「ここあさんは、わたしの妹で……」

 

 

チノ「――お姉ちゃんだから」

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――

 

 

『チノちゃんのお弁当講座その3・赤ウインナー』

 

 

チノ「赤ウインナーは色合いを兼ねて添えるので、4本でいいです」

 

チノ「こうして切り目を入れて……」

 

ここあ「たこさんういんなー?」

 

チノ「はい。これをタコのカタチになるまで炒めてください」

 

チノ「フライパンは、取っ手のこの部分だけを両手で持ってくださいね。根元は火傷するので触っちゃダメですよ」

 

チノ「風味と焦げ防止に、バターをひいて……火を付けますよ」

 

カチッ!

 

チノ「ここあさん、いけそうですか?」

 

ここあ「うん!」

 

ここあ「♪~♪♪」ジュウウ

 

チノ(楽しそう……任せて正解ですね)

 

チノ「焦げないように時々箸で転がしてあげてください」

 

チノ(野菜は、色合いを考えて使用人さんが持ってきてくれたプチトマトとブロッコリーを使おう)

 

チノ(ヘタを取って、ブロッコリーはゆでた後にマヨネーズであえて……)

 

 

 

ここあ「ちのちゃん、ひらいてきたよ」

 

チノ「あともう少しですね。ここに少しだけ塩をかけます」

 

チノ「お弁当は作ってかなり時間が経ってから食べるので、味付けを濃くするとちょうどよくなりますよ」

 

ここあ「すこしからいとおいしいんだね」

 

チノ「焼けたら、クッキングシートを乗せたこのお皿に移してください」

 

 

 

ここあ(そろそろいいかな……)

 

ここあ「んっしょ……――ぁ!」

 

ここあ「ちのちゃーん!できたよー!」

 

チノ「焦げずにちゃんとタコになっています、上手にできましたね」ナデナデ

 

ここあ「よかった……」

 

チノ「副菜も出来合いですが完成しました、これで色合いはバッチリです」

 

チノ「最後は――メインディッシュの、お肉を焼いていきましょう」

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――

 

 

『チノちゃんのお弁当講座その4・生姜焼き』

 

 

チノ「豚肉を使って、生姜焼きを作ります」

 

チノ「ここあさん、これを半分に切ってもらえますか?」

 

ここあ「はんぶんにするんだね、わかった!」

 

チノ「指を切らないように気を付けてください」

 

チノ「わたしは玉ねぎを切ります、生姜焼きはこの二つだけでできるんですよ」

 

 

ここあ「ちのちゃん、これくらい?」

 

チノ「いいです、次はタレを作りましょう」

 

チノ「生姜は、今回はチューブを使用します」

 

チノ「これに醤油とみりんを加えて、かき混ぜれば完成です」

 

ここあ「それだけでいいの?」

 

チノ「はい、本来は生姜をするのに時間がかかるんですが」

 

チノ「ではお肉を焼いていきましょう。ここあさん、お願いします」

 

ここあ「うん!わたしにまかせなさーい!」

 

 

 

ここあ「いろがかわってきたね」ジュウウ!

 

チノ「ここで玉ねぎを加えます」

 

チノ「全体に火が通ってきたらタレを入れて、タレが無くなるまで炒めれば完成です」

 

ここあ「………………」

 

チノ「ここあさん?」

 

ここあ「ごはんをつくるのって、たいへんなんだね」

 

チノ「……!」

 

ここあ「りぜちゃんも、ちのちゃんも、ちやちゃんも、しゃろちゃんも……こんなにがんばってくれてたんだ」

 

チノ「……ここあさん」

 

ここあ「いつかはみんなに、わたしがつくってあげたいな」

 

ここあ「ちのちゃんみたいに、おいしいごはんをつくれるようになりたい」ニコッ

 

チノ「…………」

 

ここあ「ちのちゃん?」

 

チノ「大丈夫です」

 

チノ「ここあさんは、将来おいしいパンが焼ける素敵なお姉ちゃんになりますよ、必ず」

 

ここあ「ほんと?」

 

チノ「はい」

 

チノ「いつか、ごちそうしてくださいね」

 

ここあ「うん!ちのちゃんのすきなぱんをつくってあげるね!」

 

チノ「楽しみです」クスッ

 

 

 

―――――――――――――――――――

 

 

チノ「そろそろいいでしょう、このお皿に移してください」

 

ここあ「んっしょ……――んっ」

 

チノ「あつっ!?」ビクッ

 

ここあ「っ!ちのちゃん、だいじょうぶ!?」

 

チノ「大丈夫です、すいません……」

 

ここあ「ごめんね……!ゆびみせて?」

 

チノ「人差し指に少し触れただけです、なんともな――」

 

 

ここあ「はむっ……」パクッ

 

 

チノ「!?」

 

ここあ「んっ……ちゅっ……んむっ……」

 

チノ「こ、ここあさん……//

 

ここあ「らい、ひょうぶ……ちのちゃん?」ペロッ

 

チノ「……!//

 

ここあ「れろっ……んっ……」

 

チノ「…………//

 

チノ「……っ//

 

 

チノ「――――」スッ

 

 

ここあ「――!?」

 

チノ「ここあさん……//」クチュクチュ…

 

ここあ「んもっ……んむ……!?//

 

チノ「……//」クチュ…

 

ここあ「んっ……ちの…ひゃん……?//」ジュポ

 

チノ「抜いたらダメですよ、まだ治ってないです……」スッ

 

ここあ「あっ……//

 

チノ「ここあさんの口、暖かいです……もう少しだけ」

 

ここあ「うん……でも、うごかしちゃいやだよ……?//

 

ここあ「はむっ……ん……//」ペロッ

 

チノ(……また動かしたら、怒るかな……泣いちゃうかな……)

 

チノ(…………)

 

チノ(……ここあさんの優しさを、無下にしたらダメですね)

 

チノ(ここあさんが悲しむようなことは……絶対に……)

 

チノ「……ここあさん……ありがとうございます」ナデナデ

 

チノ「変なことしてごめんなさい、おかげさまでもう大丈夫ですよ」

 

ここあ「ぇへへ……よかった//」ジュポ

 

チノ「絆創膏だけ巻いてきますね」

 

ここあ「うんっ」

 

 

ガチャッ バタン

 

 

チノ(ふぅ…………)

 

チノ「………」スッ

 

チノ(ここあさんが舐めた指……)

 

チノ「…………」

 

チノ「……//

 

チノ「――……っ」ブンブン

 

 

 

――――――――――――――――――――

 

 

――ダイニングルーム――

 

ここあ「いただきまーす」

 

チノ「んっ……」モグモグ

 

チノ(良かった、上手くできてる……)

 

チノ「ここあさん、どうですか?」

 

ここあ「おいしいよ、このたまごやき!」

 

ここあ「これならリゼちゃんもびっくりするね」

 

チノ「ここあさんのこと、きっと褒めてくれますよ」

 

ここあ「ちのちゃん、ありがとう。またりょうりおしえてね」

 

チノ「今度は一緒に夕飯を作りましょう。みんなを呼んでサプライズです」

 

ここあ「うん!やくそく」スッ

 

チノ「はい」スッ

 

ここチノ「//」ニコッ

 

 

――ガチャッ

 

 

タカヒロ「チノ……ここあくん?」

 

チノ「お父さん?おはようございます」

 

ここあ「ちのちゃんのおとうさんもいっしょにたべよっ♪」

 

タカヒロ「フッ……上手くできたようだね」

 

タカヒロ「こっそり勉強した甲斐があったかな、チノ」

 

チノ「お父さん、それは秘密で……//

 

タカヒロ「すまない、二人で仲良く朝食を食べているところ悪いが……――チノ?」

 

チノ「?」

 

 

タカヒロ「学校は、いいのかい?」

 

 

チノ「え……」

 

チノ「…………」

 

チノ「」チラッ

 

AM: 8:01

 

チノ「」

 

 

――スイマセン! オジョウ!

 

 

ここあ「あっ……」

 

タカヒロ「ここあくんのお迎えのようだね」

 

 

―――――――――――――――――――――

 

 

――ラビットハウス――

 

 

ここあ「ゆうしゃさん?」タタタ

 

使用人「ちいせぇお嬢、あんまり遅いからお迎えにあがりました」

 

ここあ「ごめんね、ちのちゃんとごはんたべてたの」

 

使用人「お嬢がとても心配されてましたよ」

 

ここあ「りぜちゃんおきちゃった?」

 

使用人「ええ、起きた途端に例の如く過剰に……一応誤魔化しておきましたが」

 

使用人「しかし、もう8時……恐らく学校に行ってしまわれたかと」

 

ここあ「えっ……」

 

使用人「あっ、ご心配なく!お弁当でしたらお昼休みにでも届けましょう」

 

ここあ「よかった……」ホッ

 

使用人「お嬢に渡すお弁当、上手くできましたか?」

 

ここあ「うん!ちのちゃんといっしょにがんばったよ!」

 

使用人「お疲れ様です、これはお礼代わりの菓子折りですが……お友達はどこに?」

 

チノ「お父さん、行ってきますっ」ガチャッ

 

ここあ「ちのちゃん?」

 

チノ「ここあさん、お疲れ様です。あとはリゼさんに渡すだけですね」

 

使用人「あの、こちらは本日のお礼の……」

 

チノ「ここあさんのことよろしくお願いします。では!」タタタ

 

使用人「あっ、お待ちを……!」

 

ここあ「ちのちゃんありがとう!いってらっしゃい!」ブンブン

 

使用人「……仕方ない、親御さんの方に渡してきます。少しお待ちを」

 

 

――ガチャッ バタン

 

 

ここあ「……………」

 

ここあ「……りぜちゃん」

 

ここあ「よろこんでくれるかな……//

 

ここあ「ぇへへ……//」ニヘラ

 

ここあ「……んっ…」クシクシ

 

ここあ「ふぁ……」プワプワ

 

ここあ「………………」

 

ここあ「りぜちゃん……まってて……」

 

ここあ「……すぅ……すぅ…………」Zzz

 

⇒『お弁当

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