ごちうさSS 千夜「優しいリゼちゃん」

 

 

 

――Sunday――

 

 

………………。

…………。

……。

 

 

 

――あなたは、いつも優しい。

 

 

 

――あなたは、いつもわたしのことを気にかけてくれます。

 

 

 

――――――――――――――――――――――

 

 

「千夜、寒くないか?」

 

たわいもないそんな会話の切り出しに、何の気なく『大丈夫』と返すと。

 

「ちょっと待っててくれ」

 

あなたは忽然と一人でどこかに行ってしまって。

 

「待たせて悪かったな。ほら、カフェオレでいいか?」

 

予見もしない、とても暖かく、優しい心遣いを持ってきてくれます。

 

その突拍子の無い行為は、こちらが求め必ず喜ぶものでありながら。

 

相手に、遠慮や気遣いを与えさせない、とても綿密な配慮で。

 

「リゼちゃん……ありがとう」ニコッ

 

自然と、わたしを笑顔にさせてくれます。

 

 

でも、これは。

 

 

きっとあなたにとっては、何の意図もない至極当たり前な気遣いで。

 

お礼を言われるほどのことでも無ければ、当然見返りを得るためのものでも無いのでしょう。

 

それ故に、あなたは。

 

淀みの無い笑顔で、軽く相槌を打つだけで。

 

しかし、その様はあまりに端麗で美しく、煌びやかで。

 

 

――見る者の心を、ひどく魅了してやまない。

 

 

 

――――――――――――――――――――――

 

 

――Monday――

 

 

………………。

…………。

……。

 

 

あなたの前でわがままを言う人間は、きっとたくさんいるのでしょう。

 

 

「こらココア、にんじんも残さず食べろ」

 

「チノ、せめて一口だけでもいいから。偏食してると大きくなれないぞ」

 

「怖くないって。克服できたらワイルドギースともっと仲良くなれるぞ、ほら」

 

 

気持ちは、分からないでもない。

 

あなたはこちらの気持ちをちゃんと酌みながらも、棘の無い言葉を選び背中を押してくれるから。

 

あなたに注意されたりたしなめられたりするのが好き、という人間がいても、何もおかしくありません。

 

 

わざと困らせて、叱ってほしい。

そんな小さな子供が抱くイタズラな心理を、あなたはとても掻き立ててくるのです。

 

 

だからわたしも、一度たしなめられてみたくて。

 

「千夜、キャベツ残したのか?」

 

悟られないよう、普段通りに装える、軽い抵抗を試みた。

 

……でも。

 

「具合でも、悪いのか?」

 

叱るどころか、あなたの表情は見る間に曇ってしまって。

 

「無理して食べなくて良かったんだぞ?これからは言ってくれ」

 

そんな見当違いな言葉をかけ、普段以上にわたしのことを気にかけてくれるだけで。

 

あなたを困らせるどころか、心配をさせて嫌な気持ちにさせてしまった。

 

結局得られたのは、優しいあなたへの罪悪感と。

 

 

――個々の『違い』という、確かな事実。

 

 

わたしと同い年で、あなたの親友である彼女が、もし同じことをしたら。

 

あなたはきっと。

 

「こら、野菜を残すな。わたしの目の黒いうちは好き嫌いは許さん」

 

そう言いながら、一口食べさせた後は。

 

「お前の頑張りに免じて、今日は見逃してやる」

 

 

飴と鞭の具合を誰よりも上手く使い分けられる、あなたに叱ってもらいたい。

 

彼女もまた、そんな願望を無意識のうちに抱いているのではないでしょうか。

 

あなたからの愛情を、確信をもって味わえる。その行為を理解し、嬉々として。

 

 

同い年でありながら、同じ学校でありながら、同じあなたの友人でありながら。

 

わたしと彼女がかけてもらえる『愛情』は、『叱咤』と『心配』という全く正反対のカタチなのです。

 

 

きっとそれは、贔屓などではなく。

 

あなたの個々に対する、些細な『愛情表現の違い』というだけで。

 

 

各々それぞれが違いを持って生まれた人間は、他人との『ズレ』を羨み、蔑み。

 

それを『才能』と評したり、『人柄』と称したりして、憧れたり羨んだり。

己より『劣っている』と評し、『下等』と判断したり。

 

その『ズレ』には、個性には決して優劣などありはしないのに。

 

 

それでも、なお。

 

あなたに叱ってもらえる彼女を羨み、自分よりも特別な存在なのだと感じてしまうあたり。

 

まぎれもない、わたしも一人の人間である証なのでしょう。

 

 

 

――――――――――――――――――――――

 

 

――Tuesday――

 

 

………………。

…………。

……。

 

 

あなたは優しさを与えることには優れているくせに、人から貰うとなるととことん苦手です。

 

「千夜はお客さんなんだから座っててくれ」

 

二人きりの時は、例えどれだけ大変でも。

 

あなたは絶対、わたしの手を借りようとはしてくれません。

 

勝手に手伝おうとすると、いつも。

 

「いいって、気にしないでゆっくりしてろよ」

 

その言葉に、幾分かの怒気や気疎さが含まれていれば、こちらとしても『手伝わない』という選択を迷うことなく取れるのに。

 

あなたのそれは、いつもただ純真な相手への『思いやり』で。

 

透き通った微笑みと相まって、相手に有無を言わせず抑止させる力を持つ。

 

 

それは一見、とても素敵な風に見えますが。

 

逆の立場になると、あなたはまたその力を使って相手に優しさを与えるから厄介です。

 

 

甘兎庵に遊びに来た時は、何も言わずに手伝ってくれて。

 

いくらわたしが『座っていて』と言っても。

 

 

「気にするな、こうして千夜と働くの好きだし」

 

 

笑顔でそんなことを言われて、無情に断る術を持つ人間がこの世にいるのでしょうか。

 

どうしてあなたはいつも、何の屈託もなく、思惑もなく。

 

相手が喜ぶことや、配慮で断れないようにする言葉を、それ程すんなりと言えるのでしょう。

 

与えるくせに、貰う時はとことん拒んで。

 

あなたは、自らの知らぬうちに相手を袋小路へと彷徨わせる。

 

本当に、卑怯で罪作りで。

 

それでいて、とても優しい人なのです。

 

 

 

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――Wednesday――

 

………………。

…………。

……。

 

 

あなたは鈍感でありながら、そのくせ『負の気持ち』には人一倍勘が鋭いので、時々困ります。

 

「千夜……最近なんだか元気がないけど、なにかあったのか?」

 

常日頃から相手の気持ちを慮っている証拠なのでしょう、それでいながら不躾に踏み込まないのも、あなたらしい。

 

「ううん、なにも」

 

大抵の人は鵜呑みにしてしまうこの言葉も、あなたにはすぐに見透かされてしまう。

 

「……そうか」

 

そう言った後、少し間を置いてから言葉を続ける。

 

「なにかあったら頼れよ?わたしなんかじゃあ、あんまり役に立てないかもしれないけど」

 

当たり障りのない、それでいながら人間が相手の心に踏みこむ一歩手前でできる、最大限の心遣い。

 

「ありがとう、リゼちゃん」

 

……なのに、あなたは、その原因が自分であることを。

 

人を自責の念に駆らせ、罪悪感を募らせ。

 

残酷なまでに相手を傷つける、『優しい心』を持っていることを、自覚すらもしていない。

 

 

――性格が悪いのは、間違いなくわたしのほう。

 

あなたは、何も悪くないのに。

 

 

 

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――Thursday――

 

 

………………。

…………。

……。

 

 

やはり、案の定。

 

あなたは、昨日の会話で原因以外の全てを読み取っていたようです。

 

ラビットハウスでのアルバイトを早々に終え、わざわざ家とは逆方向の、甘兎庵に。

 

わたしを心配して、会いに来てくれた。

 

「お汁粉貰っていいか、外が寒くてな」

 

もちろん、あなたはそんなことは間違っても口にしません。

 

わたしも、いつも通り気丈に振舞ってくれる優しいあなたに、そんなことは聞きません。

 

なぜならあなたは。

 

わたしのために来ているのではなく、自分が来たいから来ている。

 

必ず、そうやって嘘をつくからです。

 

……いえ。

 

 

嘘ではなく、本心からでしょうか。

 

 

「……リゼちゃん?」

 

そんな疑問が少し頭をかすめたせいでしょう。

その勢いに任せて、あなたに、あんなに酷い質問をしてしまったのは。

 

 

「リゼちゃんにとって……わたしって、何番?」

 

「えっ……?」

 

口から出た時には、既に手遅れでした。

縄が千切れた衝動は、もはや止められなかった。

 

「千夜?」

 

「やっぱり、ワースト?」

 

「どうしたんだ急に……。それに何番って、どういう意味だ?」

 

「……ココアちゃんより、大事?」

 

「え」

 

「チノちゃんよりも、シャロちゃんよりも大事……?」

 

「……千夜、落ち着け」

 

「リゼちゃんから一番遠いから……やっぱりわたしがワースト?」

 

「そんなはずないだろう」

 

「………………」

 

 

それからあなたは。

 

わたしが大切な友人であることを、ずっと真剣に教えてくれたけど。

 

先ほどの質問にはまるで。

 

脆くすぐに崩れ去るガラス細工を扱うかのように――触れない。

 

 

テイの良いおべっかを言って八方美人を装ってしまえば、それで一切合切が済む話なのに。

 

本当の意味で強く、優しいあなたはそんな卑怯な選択を取ったりはしないのでしょう。

 

 

――それだからでしょうか。

 

 

あなたの、その気持ちを。

 

あなたの揺るぎないその本心を、確かめたい。

 

そのためには。

 

あなたに嫌われる、最大限のわがままを言ってみれば良い。

 

そんな風に、考えてしまうのは。

 

 

――――――――――――――――――――

 

 

――Friday――

 

………………。

…………。

……。

 

 

冷たく心地よい風が顔を吹き抜け、目下青天井に上昇していた熱を拭い去ってくれる。

 

6時2分……きっと、そろそろだ。

 

 

「――千夜?」

 

ぼんやりと立ち尽くすこと5分。

何の気なしに俯いていると、待ち望んでいた人物に突然声をかけられた。

既に熱を奪われ冷えきっていた身体が、脊髄反射の如くビクリとはずむ。

 

「どうしたんだこんなところで?」

 

……やっぱり、今日も来てくれた。

 

「……リゼちゃん」

 

その時わたしは、どんな思量を通じてこんな言葉を口にしたのだろう

 

「少し、お散歩しない?」

 

「散歩……?」

 

「うん……ダメ?」

 

 

わたしはいま、どんな顔をしているのだろう。

 

あなたの目に、どんな風に映っているのだろう。

 

捨てられた子犬のように、すがりつくような瞳で、目尻に涙の一滴でも浮かべていたのか。

 

はたまた、あなたを凍てつかせるような、思い詰めた表情でもしていたのだろうか。

 

 

「……わかった」

 

一瞬の間のち、おもむろに携帯を取り出してどこかへと連絡をいれる。

 

「遅くなるだろう、一応親父に連絡しとく」

 

……やっぱり、察しが良い。

 

 

全てを分かっていながら、それでもわたしに付き合ってくれるあなたのそれは。

 

哀れみからくるものなのか、思いやりからくるものなのか。

 

ただ――わたしが、大切だからなのか。

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――

 

 

――――――

――――

――

 

延々と耳に流れていたラジオ放送が、DJの合図で音楽へと移り変わる。

イントロを聞いても全く分からない、もはや曲というよりBGMだ。

 

「……………………」

 

目的もなくフラフラと徘徊を続けて一時間。

 

 

さすがに空腹と寒さに耐え切れず、コンビニでカイロと軽食を買って古ぼけたバス停の前に佇む小さな休憩所に二人で避難した。

 

暖房設備はおろか、蛍光灯の淡い光以外は何もない場所だが、やはりドア付きの密閉空間というだけでも極寒の外とは雲泥の差だ。

 

唯一気になっていた音割れスピーカーから漏れてくる不愉快なノイズにも、5分もしないうちに慣れた。

 

「……なぁ、千夜?」

 

まるで根負けしたかのように、長い間保たれていた静寂を壊したのはあなただった。

 

「もう8時だぞ……いつまでこうしてるんだ」

 

耳元で囁くかのように――否、小さい声で言っても自然と相手の耳に届く距離だからこそ。

ベンチに横並びに座ったのもつかの間、現在進行形で1時間ほど前からわたしは彼女の肩に頭を預けている。

 

ずっと同じ姿勢でそろそろ肩も悲鳴をあげているだろうに、相手が望む限りは例え自分の身を粉にしてでもその均等を守ろうとするのがあなたらしい。

 

「……そうね、リゼちゃんが、どこかに行ったらおしまい」

 

「……そうか」

 

 

小さなため息には、幾分の諦観が滲んでいるのが見て取れた。

 

 

「なら、ずっとこのままだ」

 

「………………」

 

「わたしは千夜のこと見捨てないし、怒ったりもしないぞ」

 

「………………」

 

「……寒くないか?」

 

空いている片方の手で、わたしの頭を諭すように撫でてくる。

こうなってしまったあなたは、臆病なこの前とは打って変わり相手が気持ちを吐露するまで頑なに引き下がろうとしないので厄介です。

 

 

「……どうして、怒らないの」

 

「………………」

 

「わたしがわがまま言っても、リゼちゃん全然怒ってくれない……」

 

「……千夜だから」

 

「………………」

 

「あっ、怒りにくいとか、嫌いとかじゃないぞ?」

 

「ただ、千夜が意味もなく自分のワガママを言わないのが分かるから……」

 

「………………」

 

「買い被りだったらすまない」

 

――彼女はわたしを多分に過大評価しながらも、実の根底の部分ではわたしの性格を非常に良く理解しているきらいがある。

 

だからこそ、彼女はどんな人とでも分け隔てなく接することができ、それでいて慕われ。

それでいながら――――心の近しい友が希有なのだろう。

 

 

「……意地悪ね」

 

「……ごめん」

 

「やっぱり、リゼちゃんがどこか行っちゃうまで待つわ」

 

「………………」

 

 

自分の主張をここまで曲げなかったのは、初めてだったかもしれない。

 

あなたに、心を見透かされているのが怖くて。

 

あなたに、全てを悟られているのが悔しくて。

 

せめて表面上だけでも、虚栄を取り繕いたくて。

 

わがままな自分を、見せたくて。

 

 

 

「……やれやれ」

 

 

そんな気持ちを察したのか。

 

 

「よっと……」

 

 

あなたは、おもむろにわたしを抱え上げると。

 

 

「なら、勝手に連れて帰るぞ」

 

 

ワガママを、聞いてくれて。

 

 

「……千夜は、物分かりが良いと思ってた。でも、どうやらわたしの思い込みだったみたいだ」

 

 

見たことも無い、素敵な笑顔と。

 

 

「千夜……一緒に帰ろう」ニコッ

 

 

いちばん欲しい言葉を、くれました。

 

 

 

………………。

…………。

……。

 

 

 

甘兎庵に着くと、あなたは何も言わずにわたしから手を離しました。

 

その後は一言も言葉を発さず、ただひたすらわたしの頭を撫で続け。

 

わたしが顔を上げると、慈愛を込めた、それでいて切なさを感じさせる、吸い込まれるような笑みを浮かべた後。

 

踵を返して、宵闇の向こうへと一歩、また一歩と、歩き出す。

 

遠ざかっていく背中に、最後の足りない言葉を模索するように、わたしが呆然としたまま動けないでいると。

 

視界から見えなくなる、その寸前に足を止め、こちらを振り返り。

 

以前の邂逅で得た、彼女とわたしの、二人だけの秘密の繋がり……『敬礼』だけを残して、姿を消した。

 

 

「リゼちゃん……ありがとう」

 

 

沈黙に包まれた世界に、最後に伝わったはずの言葉を、こっそりと落とした。

 

 

――――――――――――――――――――

 

 

――Saturday――

 

 

………………。

…………。

……。

 

 

今日も変わらず、あなたは優しい。

 

「千夜、風邪ひかなかったか?」

 

休日の早朝、開店したばかりの甘兎庵には彼女とわたしだけ。

 

昨日の徘徊で体調を崩していないか心配してきてくれたらしい。

メールだけで事済むはずのに、相手がより喜ぶ方をわざわざ選ぶ。そこに手間も時間も惜しまない。

 

「ありがとう、大丈夫よ」

 

そんな彼女の心遣いに、ずっとわたしは戸惑っていた。

 

言葉以外に返せる方法が、全く思いつかなかったから。

 

――でも、それは全て誤りだった。

 

 

何も返さなくて、良かったのだ。

 

 

「はい、リゼちゃん、これ」

 

「んっ?」

 

「昨日のお礼。寒かったのにごめんなさい」

 

 

わたしはわたしで、あなたに精一杯の優しさをあげればいい。

 

 

「気にしないでいいのに……すまないな」

 

「寒い時は、やっぱりお汁粉が一番よね」

 

「ああ、ここのは特別おいしいよ」

 

 

思いやりや気遣いは、相手に貰ったから返すのではなく。

相手に優しさをあげたい、そんな損得勘定の無い純粋な気持ちから自然と行動に現れるものなのでしょう。

 

 

今なら例え叱られずとも、気遣われようとも伝わってくる。

 

あなたにとって、自分が『大切』なんだって。

 

 

「……リゼちゃん?」

 

「うん?」

 

「……ありがとう」ニコッ

 

繋がりは求めずとも。

あなたとなら、みんなとならこうして、確かめ合えるのだから。

 

 

――おしまい。

感想

  1. 名有り より:

    卑怯、か… 自分の事には遠慮しがちなのに、他人には世話を焼いて、優しく接してくれる …でもそれは距離が近すぎてはいけない、もしも相手が、その人の優しさが普遍的で、平等的なものである事に気付かれたらきっとあまりいい気はしないから
    それに気付かれてしまうと、大抵人は段々と自分の存在価値を疑い始めますよね…
    このお話の千夜ちゃんも、それが所以で怖くなってしまっているのがよく分かります その理由は、リゼちゃんには分かってはいないけど、それでも千夜ちゃんの側にずっと居続けましたね… リゼちゃんは最初に言ったものとは違って、普遍的に情を注ぎ込んでいるのではなく、誰にでも、それも皆特別扱いをして情を向けているのが単に普遍的に見えるだけだと想うのです。
    …Sundayになる頃には、千夜ちゃんもそれに気付けたのかな…?
    凄く長くなった上にそもそも感想になってない気がしますね…(普遍的という言葉の使い方も色々怪しいし)変な事を語ってしまってすみませんでした

    • 砂水クジラ砂水クジラ より:

      深いご考察、ありがとうございます。
      もちろん感想も嬉しいですが、こうして考察して頂けるのはもっと嬉しいです。作家冥利に尽きます。
      深くシリアスな内容のためか、この作品はあまり触れてもらえませんでしたので;

      名有りさんの考察、とても的確にこの物語のカタルシスを理解されているかと思います。
      『リゼちゃんは普遍的に情を注ぎ込んでいるのではなく、誰にでも、それも皆特別扱いをして情を向けている』まさにその通りです。
      千夜ちゃんはリゼちゃんにとって特別なのですが、それは他の人に対しても同じで、ココアちゃんにチノちゃん、シャロちゃん……と、周りに特別扱いがあまりに多すぎて、自分だけされていない風に錯覚してしまいます。
      また、リゼちゃんは千夜ちゃんに対して意識的に気を遣っているわけではなく、ただ『ココアちゃんたちに対するものとは違うカタチの愛情表現』というだけなんですね。

      千夜ちゃんは最後、そのことに気付いたのでしょうか。はたまた自虐的に諦めてしまったのでしょうか。
      それとも、リゼちゃんが自らそのことを自覚したのでしょうか。
      この辺の答えはあえて明かさず、読み手側にお任せしようかと思っています。

      まさかこの作品に触れて頂けるなんて……ありがとうございます。
      個人的に当作品には思い入れがあったので、すごくうれしかったです。

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