ごちうさSS 幼いココア、リゼシックになる

 

 

リゼが帰ってくるまで、あと2日。

 

――夕方 甘兎庵――

 

ガラッ

 

千夜「いらっしゃいませ――あら、シャロちゃん」

 

シャロ「ただいま」

 

千夜「おかえりなさい、今日はバイトはお休み?」

 

シャロ「4時半からよ、仮眠するほどの時間も無いから寄ってみたの」

 

千夜「そう、栗羊羹でもサービスするわ。ゆっくりしていってね」

 

シャロ「あれ……千夜?ここあは?」

 

千夜「ここあちゃんならわたしの部屋にいるわ。今日は気分が乗らないみたい」

 

シャロ「珍しいわね、いつもお手伝いするって張り切ってるのに」

 

千夜「……それが、ちょっと」

 

シャロ「?」

 

 

――――――――――――――――

 

ここあ「りぜちゃん、この『ぼす』やっとたおしたよ!ほら」ゲーム

 

ここあ「…………」

 

ここあ「あとね、ちやちゃんとよんだこの『えほん』おもしろかったよ。こんどはりぜちゃんといっしょに読みたいな」

 

ここあ「………………」

 

ここあ「……りぜちゃん」

 

ここあ「しゃしんのりぜちゃん、おはなししてくれないからさびしいよ……」シュン

 

ここあ「…………」ゴロン

 

ここあ「わいるどぎーす?りぜちゃん、まだかえってこないの……?」ギュッ

 

――フスマ

 

シャロ「……こういうことだったのね」

 

千夜「ここあちゃん、とうとうリゼちゃんシックにかかっちゃったみたいなの」

 

シャロ「もう5日間も離れ離れだものね、無理もないわ」

 

千夜「この前リゼちゃんのおうちでみんなで遊んだ時くらいからかしら、少しづつ元気が無くなってきてて」

 

千夜「昨日は練習が立て込んだせいでリゼちゃんからメールしかこなかったから、今日は特に……ね」

 

シャロ「ここあ……」

 

千夜「昨夜も布団の中でずっとリゼちゃんの枕を抱きしめてたわ……見てるだけで胸が張り裂けそうなくらい辛かった」キュッ

 

シャロ「ここあのこと、リゼ先輩には?」

 

千夜「ううん、リゼちゃんが心配しちゃうから」

 

シャロ「そうよね……でも」チラッ

 

 

ここあ「りぜちゃん……あいたいよ……」グスッ

 

 

シャロ「……っ」

 

千夜「悔しいわ……ここあちゃんが悲しんでるのに、なにもしてあげられないなんて」

 

シャロ「……待ってて」スッ

 

千夜「シャロちゃん?」

 

ガラッ

 

シャロ「ここあ」

 

ここあ「しゃろちゃん……?おかえりなさい」ニコッ

 

シャロ(あんなに落ち込んでたのにちゃんと笑顔で……まだこんなに小さいのに)

 

シャロ「っ……」グッ

 

ここあ「?」

 

シャロ「ここあ、今日の晩御飯はなにがいい?」

 

ここあ「ばんごはん?あんまりおなかすいてないからなんでもいいよ~」

 

シャロ「そう、ならここあの好きなものを全部揃えてみようかしら」

 

ここあ「しゃろちゃんがつくってくれるの?」

 

シャロ「ええ、ちょっと遅くなるけど待っててくれる?」

 

ここあ「うん!たのしみにしてるね♪」パアァ

 

シャロ「…………」

 

――ギュッ

 

ここあ「ふぉぇ?しゃろちゃん?」

 

シャロ「ここあは、おりこうね……」ウルウル

 

ここあ「どうしたの?」

 

シャロ「ううん、なんでもない。ここあがいつも優しくていい子だから抱きしめたくなっただけ」ナデナデ

 

ここあ「えへへ、しゃろちゃんもやさしいよ」ギュッ

 

シャロ「…………」グスッ

 

シャロ「ここあ……」ギュッ

 

 

千夜「…………」

 

千夜(リゼちゃん……ごめんなさい。今までの言葉、全部撤回)

 

千夜(リゼちゃんはいつも、ちゃんと我慢してるのね)

 

千夜(わたしがリゼちゃんだったら……もう、ここあちゃんから離れられないわ)

 

千夜「…………」スッ

 

千夜「あらここあちゃん、シャロちゃんとぎゅーってしてるの?」

 

ここあ「うん、ちやちゃんもいっしょにしよ」

 

千夜「ここあちゃん、ぎゅーっ」ギュッ

 

ここあ「♪」キャッキャッ

 

千夜(やっと笑ってくれた……良かった)ホッ

 

千夜「シャロちゃんありがとう、おかげで助かったわ」

 

シャロ「んっ……バイト終わりまで任せたわよ」

 

千夜「がってん!」

 

千夜シャロ「」ニコッ

 

 

―――――――――――――――――

 

――

――――

――――――

 

――夜 甘兎庵――

 

ここあ「わぁ……!」キラキラ

 

ここあ「はんばーぐ!ころっけ!えびふらい!いちごとぷりんもある!」

 

千夜「よかったわねぇここあちゃん」

 

シャロ「千夜……その、ごめん」

 

千夜「?」

 

シャロ「材料費……ジャガイモくらいしか出せなくて」

 

千夜「気にしなくていいわ、代わりにこんなにごちそう作ってくれたんだもの」

 

千夜「バイトで疲れているのにごめんなさい、お疲れ様シャロちゃん」

 

シャロ「ん……ありがとう//

 

ここあ「ちやちゃんしゃろちゃん、はやくたべよう♪」

 

千夜「ふふっ、待ってね、いまご飯よそうから」

 

シャロ「その間にお風呂わかしてきていいかしら?」

 

千夜「助かるわ。――あら、シャロちゃん、それ……」

 

シャロ「ん……着替えよ」

 

シャロ「明日はバイト午後からだし……それに、千夜一人だと心配だから」

 

千夜「……!」

 

シャロ「おばあちゃんにはもう許可取ってあるから大丈夫」

 

千夜「シャロちゃん……」

 

シャロ「そ、それに『バイト終わり』まで任せるっていう約束だったし!」

 

千夜「……♪」クスッ

 

千夜「ありがとう、嬉しいわ」

 

シャロ「別にお礼言われることじゃないし……//

 

千夜「わたし一人だと心配だった?ここあちゃんが?」

 

シャロ「……ここあも千夜も、どっちも」プイッ

 

千夜「」ニコッ

 

ここあ「いちご、つまみぐいしちゃだめ……?」

 

千夜「あっ、ごめんなさいここあちゃん、すぐに食べましょうね」

 

シャロ「ここあ?」

 

ここあ「?」

 

シャロ「このイチゴ、さっき一個だけ余ったの。あーんは?」

 

ここあ「……!あーん♪」

 

シャロ「どう、おいしい?」

 

ここあ「うん!」モグモグ

 

シャロ「くすっ、いっぱい食べるのよ」ナデナデ

 

千夜(シャロちゃんも甘々ね)ニコニコ

 

 

――

――――

――――――

 

――――――――――――――――――

 

――お風呂上り 洗面所――

 

シャロ「熱くない?」ドライヤー

 

ここあ「だいじょうぶだよ~」

 

シャロ「熱かったら我慢せずに言うのよ」

 

ここあ「うん」

 

シャロ「よし、後ろはこれでいいわ。あとは前だけね」

 

千夜「ここあちゃん、リゼちゃんから電話よー」

 

ここあ「!」

 

ここあ「りぜちゃん……!」タタタ

 

シャロ「あっ、ここあ……!」

 

 

千夜「はい」スッ

 

ここあ「もしもしりぜちゃん?おかえりなさい」

 

リゼ「ただいま。ここあ、昨日はごめんな」

 

ここあ「ううん……」

 

リゼ「お詫びに今日はたくさんお話しよう、なっ?」

 

ここあ「うん」

 

リゼ「今日はなにがあったんだ?ちゃんといい子にしてたか?」

 

ここあ「……あのね、りぜちゃん?」

 

リゼ「んっ、どうした?」

 

ここあ「りぜちゃん……あしたかえってくる?」

 

 

千夜シャロ「!」

 

 

リゼ「……いや、明後日だ。明日の明日だから、あと2日だな」

 

ここあ「…………」ウツムキ

 

リゼ「すまないここあ。あともう少しだから」

 

ここあ「…………」グッ

 

 

千夜シャロ「………………」

 

 

リゼ「今日のこと、聞かせてくれるか?」

 

ここあ「……いい子に、してない」

 

リゼ「え?」

 

ここあ「ちやちゃんに、めいわくかけちゃった」

 

 

千夜シャロ「!」

 

 

リゼ「なにかしたのか?」

 

ここあ「あまうさあんのおてつだい、しなかったの」

 

ここあ「ねむたいから、わがままいっちゃった」

 

千夜「ちがうわ、ここあちゃんはただ――」

 

シャロ「千夜……!」サッ

 

千夜「あっ……」

 

 

リゼ「……そうか」

 

ここあ「………………」

 

リゼ「お泊まりさせてもらってるんだから、ちゃんとお手伝いしないとダメだろ?」

 

ここあ「………………」

 

リゼ「千夜にごめんなさいしたか?」

 

ここあ「まだ……」

 

リゼ「ちゃんと謝りなさい」

 

ここあ「……いや」

 

リゼ「……!」

 

ここあ「あやまらない、りぜちゃんのいうことなんかきかない……」

 

ここあ「あしたもわるいことする」

 

 

千夜シャロ「……!?」

 

 

リゼ「ここあ……?」

 

ここあ「『ごめんなさい』なんていわないもん……」

 

 

千夜「ここあちゃん……」

 

シャロ「落ちついてここあ、どうしてそんなこと……」

 

 

リゼ「ここあ……どうしたんだ?」

 

ここあ「…………」

 

リゼ「悪いことはしちゃいけないだろ?」

 

ここあ「いや……する……」フルフル

 

リゼ「お利口にしてなきゃ……なんでいうこと聞けないんだ?」

 

ここあ「りぜちゃんいないから、おこられないから」

 

リゼ「帰ったらお説教だぞ?」

 

ここあ「いいもん……こわくないもん……っ」

 

リゼ「ここあ!」

 

ここあ「いや!りぜちゃんのいうことなんてきかない!」

 

 

シャロ「ここあ、やめなさい!」

 

千夜「リゼちゃんごめんなさい、いったん切るわね」

 

 

ここあ「ぐすっ…ひっく……うぇえええぇん…!」ポロポロ

 

シャロ「よしよし……泣かないで」ナデナデ

 

千夜「ここあちゃん……っ」ギュッ

 

ここあ「っ……!」ポロポロ

 

ココア…… シャロチャントオヘヤニモドリマショウ?

 

リゼ「…………」

 

リゼ「ここあ……」

 

リゼ「……っ」

 

 

―――――――――――――――――

 

リゼ「そうか、そんなことが……」

 

千夜「ごめんなさい黙ってて……わたしのせいだわ」

 

リゼ「いや、わたしの方こそ気付くべきだった……ここあの気持ちも考えずに怒鳴ったりして、最低だ……」

 

千夜「ここあちゃん、きっとリゼちゃんに帰ってきてほしくてあんなこと言ったのね」

 

千夜「たとえ怒られても嫌われても、1日でも早くリゼちゃんに会いたかったんでしょうね……」

 

リゼ「…………」

 

千夜「ここあちゃん、もう完全にリゼちゃんシックよ」

 

リゼ「……すまない。千夜にもシャロにも、みんなにもまた迷惑かけてしまったな」

 

千夜「リゼちゃん、先に謝るのはわたしたちにじゃないと思うわ」

 

リゼ「え?」

 

千夜「ここあちゃんに、ちゃんと謝ってあげて?」

 

リゼ「!」

 

千夜「リゼちゃん……一昨日も言ったでしょ?」

 

千夜「リゼちゃんがここあちゃんを想っている以上に、ここあちゃんはリゼちゃんのことが好きなの」

 

千夜「ここあちゃんにとってリゼちゃんの代わりは、どこにもいないのよ」

 

リゼ「……」

 

千夜「リゼちゃんは自己評価が低いから、たぶん自分がここあちゃんへの想いを我慢すれば大丈夫って思ってたんじゃない?」

 

千夜「ここあちゃんからリゼちゃんに対する気持ちは、ちゃんと考えてあげてた?」

 

千夜「リゼちゃんのここあちゃんシック以上に、ここあちゃんのリゼちゃんシックは難病よ」

 

リゼ「………………」

 

千夜「このままだとここあちゃん、明後日までずっとあのままだと思うわ」

 

リゼ「……どうすれば、いいんだろう」

 

千夜「?」

 

リゼ「わたしだって早く帰ってあげたい……ここあを笑顔にするためなら、どんなことだってしてあげたい」

 

リゼ「でも、いまはできないんだ……」ウルウル

 

千夜「!」

 

リゼ「ここあが泣いてるのに……謝っても電話で話しても、結局あいつに我慢を強いるしかない……っ」

 

千夜「リゼちゃん……」

 

リゼ「側にいないわたしは、ここあのために何もしてあげられない……」グスッ

 

千夜「…………」

 

リゼ「……っ」ジワッ

 

千夜「……そうかしら」

 

リゼ「え……?」

 

千夜「わたしは、逆だと思う」

 

千夜「例え離れていても側にいても、ここあちゃんを一番元気にしてあげられるのはリゼちゃんだけ……そう思うけど」

 

リゼ「……!」

 

千夜「リゼちゃんは、やっぱりまだ何もわかってないわ」

 

千夜「知ってる?リゼちゃんと電話でお話しているときのここあちゃんの表情」

 

千夜「わたしたちが一日かけてやっと引き出した最高の笑顔も、リゼちゃんの電話一本で簡単に塗り替えられちゃうの」

 

千夜「今朝だって、ここあちゃんが元気が無かった時……もしわたしがリゼちゃんだったら、きっと笑顔にできたんだろうなって、そんな風に思った」

 

千夜「嫉妬しちゃうくらい、リゼちゃんが羨ましかったわ」

 

リゼ「……千夜」

 

千夜「リゼちゃんは贅沢よ」

 

千夜「わたしはリゼちゃんだったら、何もしてあげられないなんて絶対に思わない……自分がいまできること、ここあちゃんに精一杯してあげるわ」

 

千夜「だって、笑顔にできるんだもの」ニコ

 

リゼ「…………!」

 

千夜「ごめんなさい、またお説教みたいになっちゃった。ほんとはリゼちゃんは何も悪くないのにね」

 

リゼ「……そんなことない」

 

千夜「そろそろ戻るわ、ここあちゃんが泣いてるでしょうし」

 

リゼ「千夜……待ってくれ、ここあに代わって――」

 

千夜「リゼちゃん」

 

リゼ「!」

 

千夜「……わたしとシャロちゃんね、今日一日すごく疲れちゃった」

 

千夜「だから、布団に入ったらすぐに寝ちゃうと思うの」

 

リゼ「……?」

 

千夜「うっかり携帯電話、マナーモードにしてないかもしれないわ」

 

リゼ「――!」

 

千夜「かけてこられても気付かないかもしれないから……それじゃあ、おやすみなさい」

 

リゼ「千夜!」

 

千夜「ん……?」

 

リゼ「おやすみ……ありがとう、いつも」

 

千夜「後はがんばって、リゼちゃん」

 

――プチッ

 

 

―――――――――――――――――

 

ここあ「…………」ギュッ

 

シャロ「…………」ナデナデ

 

――ガラッ

 

千夜「ただいま」

 

ここあ「!」

 

シャロ「千夜……リゼ先輩は?」

 

ここあ「…………」チラッ

 

千夜「また明日かけるって」

 

シャロ「それだけ……?」

 

千夜「ええ」

 

ここあ「…………」ウツムキ

 

ここあ「ひっく……」グスッ

 

シャロ「ここあのことは……?」

 

千夜「……何も」

 

ここあ「…ううっ……うぇえぇ……」ポロポロ

 

シャロ「ここあ……」ナデナデ

 

シャロ(リゼ先輩、どうして……)

 

千夜「シャロちゃん、メール来てるわよ」

 

シャロ「えっ?」

 

千夜「わたしが代わるわ。ここあちゃん、おいで」

 

ここあ「ぐすっ……ぇぅ……」ポロポロ

 

千夜「よしよし……」ギュッ

 

ここあ「ちやちゃんごめんね……ごめんなさい……」ポロポロ

 

千夜「あやまらなくていいのよ、ここあちゃんはなにも悪いことなんてしてないわ」

 

千夜「ただ……寂しかっただけよね」

 

ここあ「……っ」ポロポロ

 

千夜「リゼちゃんのこと……嫌いになった?」

 

ここあ「…………」フルフル

 

千夜「言うこときいてくれなかったのに?」

 

ここあ「…………」コクリ

 

千夜「好き?」

 

ここあ「……うん」

 

千夜「そう、やっぱりそうよね」

 

ここあ「りぜちゃん……」ジワッ

 

千夜「お別れの時にリゼちゃんと約束したものね、いい子にしてるって」

 

千夜「ずっと我慢して、頑張ってたのよね……」

 

ここあ「でも、やくそくやぶっちゃった……だからりぜちゃん、おこって……」ポロポロ

 

千夜「……っ」ギュッ

 

シャロ「……千夜」

 

千夜「……ダメよ、まだ」

 

シャロ「……」コクリ

 

千夜「……そろそろ寝ましょうか」

 

シャロ「電気消すわ」

 

シャロ「……ここあ」スッ

 

ここあ「いいこにしてないと、むかえにきてもらえないよ……」ポロポロ

 

シャロ「っ……」

 

ここあ「りぜちゃんにきらわれちゃう……」ポロポロ

 

シャロ「……っ!」ギュッ

 

千夜「シャロちゃん、ここあちゃん……早く寝ましょう」

 

シャロ「ええ……おやすみ、ここあ」ナデナデ

 

千夜「ここあちゃん……大丈夫、大丈夫よ」ギュッ

 

 

 

―――――――――――――――――

 

ここあ「………………」

 

 

リゼ『終わったら、すぐ迎えにいくよ』

 

リゼ『ここあと離れ離れになるの寂しいぞ……』

 

リゼ『おりこうさんだな、帰ったらご褒美にたくさんナデナデだ』

 

 

ここあ「……りぜちゃん」

 

――Prrrrrrrrrrrrr

 

ここあ「!」

 

ここあ「ちやちゃんのけいたい……」

 

ここあ「ちやちゃん、おきて?」ユサユサ

 

千夜「………………」

 

ここあ「しゃろちゃん?」ユサユサ

 

シャロ「………………」

 

ここあ(ねちゃってる……どうしよう)

 

Prrrrrrrrrrrrr

 

ここあ「……」パカッ

 

ここあ「――!」

 

ここあ「………………」

 

――タタタ ガラッ バタン

 

千夜「うまくいったわ、大成功ね」クスッ

 

シャロ「もう少しでつい口から出ちゃうところだったわ、かわいそうで……」

 

千夜「一人でゆっくり考える時間も、二人だけで話す時間も大切なの……お互いに」

 

シャロ「結局は千夜の思惑通りね」

 

千夜「」ニコッ

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――

 

 

ここあ「……もしもし」スッ

 

リゼ「……ここあか?」

 

ここあ「りぜちゃん……」

 

リゼ「千夜とシャロは?」

 

ここあ「ふたりともねちゃった……」

 

リゼ「そうか……」

 

ここあ「………………」

 

リゼ「……ここあ?」

 

ここあ「……」ビクッ

 

リゼ「さっきはごめんな」

 

ここあ「!」

 

リゼ「怒鳴ったりして、ごめん」

 

ここあ「……ううん」

 

ここあ「……りぜちゃん?」

 

リゼ「んっ?」

 

ここあ「あのね……ごめんなさい」

 

ここあ「さっきちやちゃんにあやまったよ?もうわるいことしないよ……」

 

ここあ「りぜちゃんがかえってくるまで、ちゃんといいこにしてるから」

 

ここあ「……もう、わがままいわないから」ウルウル

 

リゼ「……!」

 

ここあ「だから、むかえにきてね。わたしのこときらいになっちゃやだ……」グスッ

 

ここあ「りぜちゃん、ごめんなさい……ゆるして……」ジワッ

 

リゼ「………………」

 

リゼ「……ここあ?」

 

ここあ「……?」

 

 

リゼ「――わがまま言いたい時は、素直に言ってもいいんだぞ」

 

 

ここあ「えっ……」

 

リゼ「無理に、いい子であろうとしなくてもいいんだ」

 

リゼ「わがまま言っていいし、たくさん泣いたり怒ったりしていいんだぞ」

 

ここあ「りぜちゃん……?」

 

リゼ「いつもわたしが『いい子』にしていろっていうから必死に頑張ってくれてたんだよな?さっき考えて、やっとそれに気づいたよ」

 

ここあ「……!」

 

リゼ「ごめんなここあ。でもな、そういう意味じゃないんだ」

 

リゼ「ここあにはいい子でいてほしい、でも、素直にわがままも言ってほしい」

 

リゼ「一人で貯めこんで、なんでも無理して飲み込まなくていいんだぞ」

 

リゼ「我慢しなくていい、嫌だったら受け入れなくてもいい」

 

リゼ「あんな風に、悪い子のふりをしなくたっていい」

 

リゼ「わたしは『いい子のここあ』じゃなくて、ただ『ここあ』のことが好きなんだ」

 

リゼ「だから……わたしのために、みんなのために、無理していい子でいなくてもいい」

 

リゼ「みんな、ここあのことが好きなんだから……な?」

 

ここあ「…………」

 

リゼ「さっき言えなかったわがまま……言ってくれ。わたしも、ちゃんと向き合うから」

 

ここあ「……っ」グッ

 

ここあ「きらいに……ならない?」

 

リゼ「ああ」

 

ここあ「わたし、ほんとはりぜちゃんがおもってるほどいいこじゃないよ……?」

 

リゼ「それでもいいよ」

 

ここあ「ほんと……?うそつかない?」

 

リゼ「やくそくだ」

 

ここあ「すきでいてくれる……?」

 

リゼ「ここあの全部、受け入れるから」

 

ここあ「……!」

 

ここあ「………っ」グスッ

 

リゼ「ここあ……」

 

ここあ「りぜちゃん、はやくかえってきて……さみしいよ」ジワッ

 

ここあ「りぜちゃんにあいたい、りぜちゃんといっしょにいたい」ポロポロ

 

ここあ「またいっしょにごはんたべたり、えほんよんだり、あそんだりしたいよ」ポロポロ

 

ここあ「ううっ……ぐすっぅえぇぇ……」ポロポロ

 

リゼ「ここあ……素直に言ってくれてありがとう」

 

リゼ「わたしも一緒だよ、早くここあに会いたい」

 

リゼ「ここあに会って、たくさん撫でたり抱きしめたりしたい」

 

リゼ「でもな……それも明後日までは無理なんだ」

 

リゼ「合宿が終わるまで、どうしても帰れそうにない」

 

ここあ「うん……わかってる」グスッ

 

リゼ「だから、わたしも必死で我慢する。ここあに会いたいっていう気持ちと、あと2日間戦う」

 

リゼ「……でも」

 

リゼ「もし、どうしてもここあが我慢できないなら……辛くて、また泣いてしまうんなら……」

 

リゼ「なにをおいても、今すぐお前の側に戻るよ」

 

ここあ「……!」

 

リゼ「ここあのこと絶対に嫌いになったりしない……だから、素直に教えてくれ」

 

リゼ「ここあは、どうしたい?」

 

ここあ「……わたしは」

 

ここあ「…………」

 

リゼ「…………」

 

ここあ「――わたしも、りぜちゃんといっしょにがんばりたい」

 

リゼ「……!ここあ」

 

ここあ「りぜちゃんががんばってるならわたしもがんばる!さみしいけどがまんする!」

 

リゼ「無理してないか?」

 

ここあ「うん!だいじょーぶ、もうなかないよ!」

 

リゼ「……!」

 

リゼ「……そうか」ウルッ

 

リゼ「やっぱりここあはおりこうさんだな……強くて、優しくて、いい子だ」グスッ

 

ここあ「りぜちゃん。かわりにひとつだけ、わがままいってもいい?」

 

リゼ「んっ、なんだ?」

 

ここあ「……もういっかい、すきっていって?//

 

リゼ「……ああ」

 

リゼ「ここあ、すきだぞ。だいすきだ。素直なここあも、わがままなここあも、優しいここあも全部好きだ」

 

リゼ「わたしだけじゃない、みんなここあのこと大好きだぞ」

 

ここあ「えへへ……//」ニコッ

 

リゼ「ここあ、眠たくないか?」

 

ここあ「りぜちゃんとおはなししてたらぜんぜん」

 

リゼ「そうか、ならもう少しだけお話しよう」

 

ここあ「うん♪」

 

ここあ「あのね、きょうはしゃろちゃんがばんごはんを――」

 

リゼ「ちゃんといっぱい食べたか?」

 

ここあ「おかわりしたよ!」

 

リゼ「そうか」クスッ

 

 

 

千夜シャロ「……♪」

 

シャロ「よかった……」

 

千夜「あと二日間、みんなでここあちゃんをサポートしましょう」

 

シャロ「もちろんよ。チノちゃんにもメールで知らせておく?」

 

千夜「助かるわ、明日は午後まで甘兎庵の営業があるから」

 

シャロ「わかったわ。……ねぇ千夜?」

 

千夜「?」

 

シャロ「もしかして最初からこうなること、全部分かってた?」

 

千夜「ここあちゃんとリゼちゃんだもの♪」

 

シャロ「千夜には一生敵わないわね……」ハァ

 

千夜「みんなのこと、だいすきだから」ニコッ

 

――続編→『 幼いココア、リゼ帰宅!

感想

  1. はなまるびぃ より:

    …読んだ後、気付いたら慈愛の微笑みを浮かべている自分がいますw

    リゼちゃんとここあちゃん。お互いがお互いを想い合うが故、見えなくなる物がある。それを見つけられた時、さらなる愛を感じ合えるのかなぁと思います。自分なりに。

    • 砂水クジラ砂水クジラ より:

      とても素敵なご感想、ありがとうございます♪
      好き同士なのに喧嘩しちゃうのは、お互いがちゃんと相手のことを想っていた証です。
      リゼちゃんも優しいですが、ここあちゃんも健気なのです。
      このシリーズの二人には執筆者ながら愛着湧きまくりです。

  2. はにすけ より:

    リゼちゃんのように、想いは一方通行なんだと思い込み、自分が一歩下がってしまう
    ことってありますよね。実は互いに想い合っているのに、結果的に相手がもっと
    踏み込まなくいけなくなってしまう。押してダメなら引いてみな、みたいな策略的な
    こともありますが、リゼちゃんの場合は純粋に自分を過小評価してのことなんだと
    伝わります。

    でも、相手の気持ちなんてそう簡単にはわかんないですもんね。小さい子なら特に。
    だからこそ、第三者の助けが必要にもなりますが、そこに人の関係性を見抜くのに
    長けていそうな千夜ちゃんが導いてくれてとても良かったです。
    千夜シャロの優しさや幼馴染的な連携も素敵でした(千夜シャロが見たくなった!)。

    • 砂水クジラ砂水クジラ より:

      リゼちゃんって、とても自己評価が低そうなイメージですよね。
      原作でもかわいい服は似合わないって思ってたり、流行を人一倍気にしたり……本SSではそんなリゼちゃんと、リゼちゃんを誰よりも大好きなここあちゃんの心のすれ違いを描いてみました。
      『想いは一方通行だと思い込んで勘違いしている』、はにすけさんのおっしゃったこの一言に本SSのハイライトの大半が詰まっています。
      むしろ、執筆者としてこれほどまで的確にテーマをご理解いただけたことにただ驚きです。
      大変光栄かつ、とても嬉しく思います。

      シャロちゃんは千夜ちゃんと絡ますとなぜこんなに描きやすいのでしょう;
      千夜シャロは描いていて楽しい、味が出やすい、執筆しやすいとわたしとしましても良いことづくめですのでアイデアが閃きましたらぜひ♪
      本シリーズの千夜ちゃんが天使すぎて、最近はテーマずれを起こしそうでひやひやしております、自重せねば。

  3. taku より:

    ココアもどうしていいかわからなくなってたんだろうな…(ノェ・、`)
    悪い子になってまでリゼを戻って来させようとした…
    ココアは相手を優先してばかりで自分のことは後回し…優しすぎるよ、ほんと…
    あとここあは『他人又は友人に嫌われることをいちばん恐れてる』らしいね
    色んな回でここあはよく「私の事嫌いになってない?」って言ってるんだ…
    もしいつか嫌われる又は見放された日が来てしまったなら…ここあはもう立ち直れないだろうな…(ノェ・、`)

  4. みー より:

    こうしてコメントさせて頂くのは誠にお久しぶりですね!もう1年ほど前の作品だとは承知しておりましたが、閲覧できていない作品も多かったので少しずつ読み進めてみようと思った次第です!
    リゼちゃんに嫌われないよう、無理していい子になろうと我慢するここあちゃん、少しいい子すぎるなあと思いましたけど、リゼちゃんとの電話で少し気を抜けるようになったかな?
    それとシャロちゃん千夜ちゃんの思い遣りが、読んでいて心に沁みました…… シャロちゃんは御両親と離れて暮らしてる分、寂しくも健気に我慢するここあちゃんを見て、自分事のように辛く思えてしまったのでしょうか。 千夜ちゃんはリゼちゃんとのやり取りで、厳しくも優しく、リゼちゃんを宥めようとしているのが伝わってきます。千夜さんだなあ(?)
    途中から私もおもわずハラハラしてしまいましたが、無事解決したようでホッとしました。もう1年ほど離れていた気がしますが、改めて、砂水さんの作品を好きになれたとおもいます!
    最近もきっとお忙しい事でしょうが、どうか程々に気を緩められるといいですね。いつもお仕事、お疲れ様です!

    • 砂水クジラ砂水クジラ より:

      ありがとうございます。
      わたしも一度自分の作品を読み返し、初心に戻ってもう一度執筆に励もうと思います。
      長期にわたる休載、ご心配をおかけしました。

      • みー より:

        どうかお気になさらず! いくらお休みになられても覚えてるファンは必ずいますし、誰にだって事情がありますから。 どうかご自愛なさってくださいね!

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