ごちうさSS リゼ「ワガママな千夜」

 

若干のヤンデレ要素を含みます、ご了承の上お楽しみください。

 

――早朝 甘兎庵――

 

千夜「………………」

 

リゼ「千夜」

 

千夜「?」

 

リゼ「おはよう」

 

千夜「リゼちゃん……!」

 

リゼ「待たせたな、遅くなってすまない」

 

千夜「ほんとにきてくれたのね、嬉しいわ」

 

リゼ「当たり前だろう、約束したからな」

 

千夜「……」キョロキョロ

 

リゼ「どうしたんだ?」

 

千夜「誰もいないから……いいかしら?」

 

リゼ「……ああ、もちろん」

 

千夜「!……えいっ♪」ポスッ

 

リゼ「おっと」

 

千夜「リゼちゃん、ありがとう……」スリスリ

 

リゼ「先に掃除を終わらせよう、続きは家の中でな」

 

 

千夜「うん……」ギュッ

 

 

―――――――――――――――――――

 

リゼ「おばあちゃん、大丈夫なのか?」

 

千夜「ええ、あと3週間もすれば退院できるみたい」

 

リゼ「そっか、まだ軽症で良かったな」

 

千夜「…………」

 

リゼ「あっ、すまない……良くは無いよな」

 

千夜「ううん、ただ……」

 

――ポスッ

 

リゼ「!」

 

千夜「こうしてリゼちゃんが側にいてくれて、良かった」

 

リゼ「……本気で焦ったよ、甘兎庵に来てみたら千夜が泣いておばあさんが倒れてるんだから」

 

千夜「ごめんなさい……わたし、パニックになって……救急車を呼んでからはもう、何をすればいいか分からなくて」

 

千夜「あの時リゼちゃんが来てくれなかったら、きっと……」キュッ

 

リゼ「無事助かったんだからいいじゃないか」

 

リゼ「パニックになってもちゃんと救急車は呼んでただろ、おばあさんを救ったのは間違いなく千夜だよ」

 

千夜「……リゼちゃん、ごめんなさい」

 

リゼ「ほら、元気出せよ。もう気にするな」ナデナデ

 

千夜「ん…………」

 

千夜「あの時、リゼちゃんに抱きしめてもらった時……暖かった……すごく安心した」

 

リゼ「……そうか」

 

千夜「……ねぇ、リゼちゃん?」

 

リゼ「なんだ?」

 

千夜「……もう一度、抱きしめてもらっていい?」

 

リゼ「……ああ、お安い御用だ」ギュッ

 

千夜「ふふっ、リゼちゃん……」スリスリ

 

リゼ「おばあさんが帰ってくるまで、毎日来るから」

 

リゼ「ひとりで不安だったり寂しかったりしたら、思う存分甘えてこい」ナデナデ

 

千夜「うん……」

 

千夜「リゼちゃん、ありがとう……」

 

 

―――――――――――――――

 

――帰り道 公園――

 

リゼ「ほんとにココアたちには言わなくていいのか?」

 

千夜「うん、みんなに心配かけちゃうから」

 

リゼ「分かった、千夜がそれでいいなら秘密にしとくよ」

 

千夜「ありがとうリゼちゃん」

 

リゼ「シャロにも黙っておくのか?」

 

千夜「ええ、気づかれないうちは」

 

リゼ「そっか」

 

千夜「……今日はラビットハウスは?」

 

リゼ「んっ?……休みだ」

 

千夜「……くすっ、嘘が下手ね、リゼちゃんは」

 

リゼ「…………」

 

千夜「休んでくれたんでしょう、わざわざ」

 

リゼ「なんのことだ」プイッ

 

千夜「ごめんなさい、わたしのせいで」

 

リゼ「………………」

 

千夜「またリゼちゃんに迷惑かけちゃったわ」

 

リゼ「迷惑なんかじゃない、わたしがやりたいからやってるだけだ」

 

リゼ「ただの自己満足だから気にするな」

 

千夜「……自己満足で、リゼちゃんは誰にでもこんなことするの?」

 

リゼ「…………」

 

千夜「『わたしだから』じゃなくて、『わたしにでも』だった?だとしたら残念」

 

リゼ「……千夜、その聞き方はずるい」

 

千夜「なら、教えてくれる?」

 

リゼ「……さぁな」

 

千夜「はぐらかしてばっかり」

 

リゼ「千夜が変なこと聞くからだ」ポンッ ナデナデ

 

千夜「ん……」

 

リゼ「そろそろ帰るか、送っていくよ」

 

千夜「誤魔化すのも下手」クスッ

 

リゼ「うるさい」

 

 

―――――――――――――――――――――

 

――甘兎庵 夕方――

 

リゼ「すまない、遅くなった!」

 

千夜「リゼちゃん、おかえりなさい」

 

リゼ「千夜、待たせたな」

 

千夜「ううん、宿題やってたから大丈夫よ」

 

リゼ「晩御飯食べたか?まだなら材料買ってきたから一緒にカレーでもどうだ?」

 

千夜「まぁ、リゼちゃんが作ってくれるの?」

 

リゼ「ああ、飛び切りおいしいのをごちそうしてやる」

 

千夜「嬉しいわ。まな板や包丁はあっちの台所に――」

 

リゼ「千夜は宿題してくれてていいぞ。ここは私に任せろ」

 

リゼ「エプロンはこれか、あとは手を洗って……」

 

千夜「…………」

 

リゼ「千夜は特に好き嫌いは無いよな?」

 

千夜「……ええ」

 

リゼ「ふむ、偉いな千夜は」

 

リゼ「ココアとチノは偏食でな、この前シチューを作ってやった時なんかも――」

 

千夜「………………」

 

――ギュッ

 

 

リゼ「!」

 

千夜「…………」セナカ ポスッ

 

リゼ「千夜……?どうしたんだ?」

 

 

千夜「リゼちゃん優しい……」

 

 

千夜「……学校からわざわざ走って来てくれたんでしょ」

 

千夜「背中、少し濡れてるわ」

 

リゼ「!」

 

千夜「一人だとわたしが夕飯食べないと思って、帰りにわざわざ買い出しに寄ってくれたのよね」

 

千夜「わたしが甘えやすいように、わざとシャロちゃんやココアちゃん、チノちゃんのことも誘わないで」

 

リゼ「…………」

 

千夜「宿題はいつも夜に終わらせるの?」

 

千夜「……そうよね。いつもリゼちゃんは、みんなのことで忙しいものね」

 

千夜「いまは、わたしのために……」

 

リゼ「………………」

 

 

千夜「リゼちゃんはほんとう、優しすぎるわ」

 

 

リゼ「この前といい……千夜はわたしのことを買い被り過ぎだ」

 

千夜「学校の友達や後輩、みんなにもこんなに優しいの?」

 

リゼ「またそれか。だから、買い被りだって――」

 

千夜「それとも……わたしにだけ?」

 

リゼ「………………」

 

千夜「あら、図星?」クスッ

 

リゼ「……千夜」

 

千夜「今はおばあちゃんがいなくて可哀そうだから?」

 

千夜「心配で放っておけないから?」

 

千夜「毎日会いに来るって約束しちゃったから?」

 

千夜「それとも……わたしがリゼちゃんにとって特別だから?」ニコッ

 

リゼ「千夜!」

 

千夜「…………」

 

リゼ「……料理の邪魔になる、大人しくしててくれ」

 

千夜「……ごめんなさい」

 

リゼ「晩御飯が終わったら、ゆっくり話そう」

 

千夜「うん……」

 

――ポンッ ナデナデ

 

リゼ「怒鳴ったりして済まない」

 

千夜「ううん……ごめんなさい」

 

リゼ「……千夜は特別だ」

 

千夜「!」

 

リゼ「そうでなきゃ、こんな風に心配したりしないよ」

 

千夜「……リゼちゃん」

 

リゼ「きっと疲れてるんだよ、一休みすればまたいつものお前に戻るさ」

 

千夜「…………っ」ギュッ

 

リゼ「よしよし……千夜も辛いよな」

 

千夜「…………」ポスッ

 

 

―――――――――――――――――――

 

――早朝 甘兎庵――

 

千夜「部活の助っ人?」

 

リゼ「ああ、さすがに断り切れなくてな」

 

千夜「そう♪」

 

リゼ「すまないな千夜、部活が終わったらすぐに来るから」

 

千夜「今日はもう大丈夫よ、こうして朝に会えたんだからいいわ」

 

リゼ「わたしが良くない。千夜が迷惑じゃなければ、また夕方ごろに来てもいいか?」

 

リゼ「ただのわがままだから、もし無理なら断ってくれていいぞ」

 

千夜「…………」

 

千夜「……ううん」

 

千夜「来てほしい、リゼちゃんに」

 

リゼ「そうか!ありがとう」

 

リゼ「夕飯は待っててくれよ、今日はミートローフをごちそうしよう」

 

千夜「…………」ニコッ

 

リゼ「んっ、どうした?」

 

千夜「リゼちゃんのわがままや自分勝手は、いつも相手が喜ぶことね」

 

リゼ「偶然だろう」

 

千夜「気遣いや遠慮で断れないように……リゼちゃんの方がよっぽどずるいわ」

 

リゼ「……千夜は、わたしを過大評価しすぎだ」

 

千夜「本当のことは過大評価って言わないと思うけど」

 

リゼ「…………」

 

千夜「でも、それを分かっててリゼちゃんに甘えてるわたしは最低かしら」

 

リゼ「っ……」

 

千夜「確信犯は、性格が悪い証拠って言うわね」

 

リゼ「いい加減にしないか千夜、お前最近おかしいぞ?」

 

千夜「……」ウツムキ

 

リゼ「あっ……ごめん」

 

千夜「……リゼちゃん、ひとつわがまま言っていい?」

 

リゼ「……?なんだ?」

 

千夜「今日の部活、断ってほしいの」

 

リゼ「!」

 

千夜「学校が終わったら、何を置いてもわたしのところに来て……?」

 

リゼ「………………」

 

千夜「リゼちゃんに、会いたいの」

 

リゼ「千夜……」

 

千夜「ダメ?」

 

リゼ「…………」

 

千夜「……ふふっ、なーんて♪」

 

リゼ「え?」

 

千夜「冗談よ、びっくりした?」

 

リゼ「……悪い冗談はやめてくれ」

 

千夜「ごめんなさい。今日の部活、応援してるわ。怪我しないでね?」

 

リゼ「ああ、心配いらない」

 

千夜「…………」

 

 

―――――――――――――――――――

 

――甘兎庵――

 

千夜「……………………」ストンストン

 

千夜「……ねぇ、アンコ?どうすればもっと素直になれるのかしら?」

 

千夜「もっとわがままになれば……」

 

アンコ「…………」

 

千夜「――なんて、ダメよねそんなの」

 

千夜「………………」ザクッザクッ

 

――ピッ

 

千夜「いつっ!……あっ」

 

ポタッ……ポタッ……

 

千夜「やっちゃったわ……」

 

ガラッ

 

リゼ「千夜、待たせたな」

 

千夜「リゼちゃん、おかえりなさい」

 

リゼ「っ!?千夜!その指……」

 

千夜「いまお野菜切ってたら、うっかり」テヘッ

 

リゼ「笑い事じゃない!見せてみろ!」ガシッ

 

千夜「きゃっ……」

 

リゼ「結構深いな……止血剤を……!」ガサゴソ

 

リゼ「少し染みるけど我慢しろ」シュッ

 

千夜「リゼちゃん……」

 

リゼ「絆創膏よりガーゼの方がいいか」ビリッ

 

千夜「……ふふっ」ニコッ

 

リゼ「……?なにを笑ってるんだ?」

 

千夜「指を切っただけなのに、リゼちゃんたらこんなに心配してくれて……」

 

リゼ「当然だろう、友達なんだから」

 

千夜「…………」

 

千夜「……そう、そうよね」

 

リゼ「……?」

 

千夜「でも、それでもいいわ」

 

リゼ「千夜……?」

 

千夜「ありがとう、リゼちゃん」ニコッ

 

リゼ「……なぁ、千夜?最近なにかあったのか?」

 

千夜「ううん、何も」

 

リゼ「ちゃんとわたしの目を見て言え」

 

千夜「…………」

 

リゼ「…………」

 

千夜「………………」

 

千夜「…………」

 

千夜「……」

 

千夜「……嫌いにならない?」

 

リゼ「ああ」

 

千夜「……失望しない?」

 

リゼ「しない」

 

千夜「……絶対?」

 

リゼ「ああ、絶対だ」

 

千夜「……………………」

 

千夜「……そう」

 

リゼ「………………」

 

千夜「……ねぇ、リゼちゃん?」

 

千夜「今日、わたしの家に泊まって」

 

千夜「寂しいから、リゼちゃんと一緒に寝たい」

 

リゼ「……分かった」

 

リゼ「夕飯作ったら支度してくるよ」

 

 

――――――――――――――――――――

 

――夜 甘兎庵――

 

リゼ「あと3日か」

 

千夜「ええ」

 

リゼ「良かったな」ナデナデ

 

千夜「うん」

 

リゼ「嬉しくないのか?おばあさんが戻ってくるのに」

 

千夜「ううん、嬉しいわ」

 

リゼ「なら、どうしてそんなに暗い顔してるんだ?」

 

千夜「………………」

 

リゼ「どんな理由でも、千夜のこと嫌いになんてならないし、失望したりしない」

 

リゼ「だから、何かあるなら教えてほしい」

 

千夜「……リゼちゃん、さっきのリンゴジュースおいしかった?」

 

リゼ「千夜!」

 

千夜「待ってて、おかわり持ってくるから」

 

リゼ「いまはそんなこと……――っ!」

 

千夜「…………」

 

リゼ(なんだ……急に眠気が……)ガクッ

 

千夜「リゼちゃん、ごめんね……」

 

リゼ「千夜……お前まさか……」

 

千夜「…………」ニコッ

 

リゼ「どうしてこんなこと……くっ……」

 

リゼ(ダメだ、意識が……)フラッ

 

バタッ

 

千夜「……リゼちゃん、おやすみなさい」

 

 

―――――――――――――――――

 

――深夜 千夜の部屋――

 

リゼ「……!」ハッ

 

リゼ「ここは……」

 

リゼ(そうだ、確か千夜と喋ってたら急に――)

 

 

千夜「リゼちゃん、おはよう」

 

 

リゼ「!」

 

千夜「目、覚めた?」

 

リゼ「……千夜」

 

千夜「怒ってる……?ふふっ、当然よね」

 

リゼ「怒ってないよ。怒るにしても、ちゃんと理由を聞いてからだ」

 

リゼ「理由もなしに、千夜がこんなことするはずないからな」

 

千夜「……」

 

リゼ「まずはこの拘束、解いてくれないか?」

 

千夜「……リゼちゃんは、どうすればわたしのことを嫌いになってくれるの?」

 

リゼ「え?」

 

千夜「わがままを言ったら?リゼちゃんを傷つけたら?」スッ

 

――ウマノリ

 

リゼ「千夜……」

 

千夜「リゼちゃん……わたし、もうどうすればいいか分からないの」ハイライトオフ

 

千夜「リゼちゃんに嫌われたくないのに、嫌われたい」

 

千夜「傷つけたくないのに、傷つけないといけない」

 

千夜「元に戻りたいのに、戻りたくない」

 

千夜「ねぇリゼちゃん、どうすればいいの……?教えて……」

 

リゼ「………………」

 

千夜「わたしのこと、嫌いって言って?」

 

リゼ「……言わない、千夜のこと好きだから」

 

千夜「……」カプッ

 

リゼ「っ……!」

 

――ポトポト

 

千夜「……これでも?」

 

リゼ「……ああ」

 

千夜「…………」カッター シャキッ

 

リゼ「…………」

 

――ツー

 

リゼ「…………」

 

ポトッ……ポトッ……

 

リゼ「…………」

 

千夜「リゼちゃんの顔、綺麗ね……」

 

千夜「こんなことして、あとで傷になったらどうすればいいのかしら」

 

リゼ「……別に平気だ」

 

千夜「わたしは、壊れるほど辛いわ……」

 

千夜「早く言って……リゼちゃんのこと、傷つけたくないの」

 

リゼ「傷つけるなら好きにしろ」

 

千夜「!」

 

リゼ「これで千夜の気が済むなら、お安い御用だ」

 

リゼ「ただ、わたしは何をされても絶対に千夜のことを嫌いになったりしない」

 

千夜「…………」

 

リゼ「それでもいいなら続けろ」

 

千夜「…………」

 

――ギュッ

 

リゼ「千夜」

 

千夜「わたし、どうすればいいのかしら……」ウルウル

 

リゼ「……素直に聞かせてくれればいいんだよ、お前の気持ちを」

 

リゼ「どうしてこんなことしたんだ?」

 

千夜「………………」

 

リゼ「千夜……大丈夫だから」

 

千夜「…………」

 

 

千夜「――おばあちゃんが帰ってきたら、リゼちゃんはもう来てくれないんでしょ」

 

千夜「もう、リゼちゃんに特別扱いしてもらえる理由が無くなっちゃう」

 

千夜「でも、おばあちゃんにも帰ってきてほしい……」

 

 

リゼ「…………」

 

 

千夜「リゼちゃんのことだからきっと、おばあちゃんが退院してもわたしがお願いすれば来てくれるわ」

 

千夜「自分が来たいから来てるんだって。嫌な顔一つしないで、いつものように」

 

千夜「それが分かるから、言えなかった」

 

千夜「リゼちゃんに負担をかけたくない、でも、リゼちゃんと特別に繋がっていたい……」

 

 

リゼ「…………」

 

 

千夜「嫌われたくない……でも、嫌われないとリゼちゃんに……」グスッ

 

千夜「傷つけたくない……でも、そうでもしないとリゼちゃんは嫌いになってくれないから……」ジワッ

 

千夜「でも嫌われたくない……リゼちゃんに嫌われるのは嫌……」ポロポロ

 

 

リゼ「…………」

 

 

千夜「わたしの悩み、全部矛盾だらけなの……もう、どうしようもなくて……」

 

千夜「リゼちゃん、ごめんなさい……こんなに血が……痛かったわよね」ギュッ

 

千夜「ごめんなさい……ごめんなさい……」ポロポロ

 

リゼ「…………」

 

リゼ「ばかだな、千夜は」

 

リゼ「そんな悩み、たったの一言で解決するじゃないか」

 

 

リゼ「――私に会いたい。電話でもメールでも、そう言ってくれればいいんだよ」

 

 

千夜「……!」

 

リゼ「なぁ千夜、買い被りだって言っただろ?」

 

リゼ「わたしはさ、お前に会いたいから来てたんだよ」

 

リゼ「お前がわたしを必要としてくれるから、それが嬉しいから来てたんだ」

 

千夜「……うそ、また気遣い」

 

リゼ「嘘じゃないぞ。……特別だって言っただろ?」

 

リゼ「二人きりの時だけ、こっそり甘えてくる千夜が可愛かったから」

 

リゼ「ただ、千夜の笑顔が見たかったからだよ」

 

千夜「…………」

 

リゼ「わたしの言い方がまずかったな」

 

リゼ「……なぁ、千夜?」

 

 

リゼ「もっといっぱい、甘えてきてくれ」

 

 

千夜「――!」

 

リゼ「たくさんわがまま言ってくれ、我慢しないで」

 

千夜「……でも」

 

リゼ「嬉しいんだよ、千夜に頼られると」

 

リゼ「なんだか自分が特別みたいに思えてさ」

 

千夜「リゼちゃんが、わたしの特別……?」

 

リゼ「千夜は我慢しないとわたしに迷惑かけるって思ってるだろ?そんなことないんだ」

 

リゼ「わたしは千夜にわがまま言われたり、甘えられたりすると、すごく嬉しい」

 

千夜「…………」

 

リゼ「まだ、信じてもらえないか?」

 

千夜「……リゼちゃん、嘘って言うなら今よ」

 

千夜「でないと、もう……リゼちゃんから離れられなくなるわ」

 

リゼ「それでいい」

 

リゼ「どうせ千夜とは、これからもずっと一緒だからな」

 

千夜「…………」ポロポロ

 

 

――ガチャッ

 

リゼ「ふぅ……腕が痛い」

 

千夜「リゼちゃん、ごめんなさい……」ギュッ

 

リゼ「まったく、なんでも一人で抱え込んで自分を卑下するからだぞ?」

 

リゼ「もっと自信を持って、わたしやみんなを頼ればいいんだよ」

 

リゼ「千夜のわがままを、誰も迷惑だなんて思ったりしないからさ」ナデナデ

 

千夜「うん……」グスッ

 

リゼ「辛かったよな……気付いてあげられなくてごめん」

 

千夜「っ……」ポロポロ

 

リゼ「ほら、もう泣くなよ」

 

リゼ「これからもずっと、わたしにとって千夜は特別だから」

 

千夜「もう、我慢しないでいい?」

 

リゼ「ああ」クスッ

 

千夜「……!」

 

千夜「ふふっ……リゼちゃん……」スリスリ

 

千夜「優しい……いつもあったかい……//

 

千夜「……好き//」ニヘラ

 

リゼ「やっぱり素直な千夜かわいい」ナデナデ

 

千夜「んっ……//

 

 

―――――――――――――――――――

 

――――――

――――

――

 

 

――早朝 ラビットハウス――

 

リゼ「…………暇だな」

 

リゼ(チノは風邪でダウン、ココアは寝坊……)

 

リゼ「ふぁぁ……」プワプワ

 

ガチャッ

 

千夜「こんにちは」

 

リゼ「いらっしゃいませ――って、千夜」

 

千夜「リゼちゃんだけ?」キョロキョロ

 

リゼ「ああ、チノは風邪でココアはいつも通りだ」

 

千夜「そうなの……心配ね、チノちゃん」

 

リゼ「今日はどうしたんだ、遊びに来てくれたのか?」

 

千夜「ううん、リゼちゃんに会いに来たの」ニコッ

 

リゼ「えっ」

 

千夜「リゼちゃんの顔が見たかったから」

 

リゼ「……そうか」

 

千夜「リゼちゃん。顔の傷、大丈夫?」

 

リゼ「心配いらない、もうほとんど治ってるよ」

 

千夜「ごめんなさい……」

 

リゼ「気にするな、あれくらいかすり傷だ」

 

リゼ「何も気にしなくていいんだぞ」ナデナデ

 

千夜「んっ……♪」

 

 

リゼ「わざわざ来なくても、連絡してくれればいいのに」

 

千夜「だってリゼちゃん言ったじゃない、我慢せず自分の気持ちに素直になってもいいって」

 

千夜「だからね……早くリゼちゃんに会いたかったから、待ちきれずに来ちゃった」

 

リゼ「……千夜」

 

千夜「ふふっ、リゼちゃん」ギュッ

 

リゼ「おいおい……//

 

千夜「リゼちゃんの匂い、落ち着くわ……」スリスリ

 

リゼ「千夜、お客さんが来るかもしれないから……//

 

千夜「いや、離れない」ギュッ

 

リゼ「!」

 

千夜「わがまま言ってもいいのよね」

 

リゼ「……!」

 

千夜「リゼちゃんのことたくさんモフモフしたいの。……だめ?」

 

リゼ「………………」

 

千夜「リゼちゃん?」

 

リゼ「……しょうがないな♪」ギュッ

 

千夜「!……ふふ」ニコッ

 

千夜「わたしが欲しかった幸せ……こうすれば手に入ったのね」

 

リゼ「ん……?」

 

千夜「ううん、なんでもない」クスッ

 

千夜「リゼちゃん、だい好き」

 

――ギュッ

 

――おしまい♪

感想

  1. 匿名 より:

    リゼは誰とカップリングしても合いますねぇ
    それにしてもヤンデレおそロシア

    • 砂水クジラ砂水クジラ より:

      そうなんです。
      リゼちゃんは可愛くて優しくてかっこいいと3拍子揃っているから、わたしにとってはSSの救世主なのです。

  2. はにすけ より:

    最初はリゼちゃんの前で弱った姿を見せる千夜ちゃんと、優しく接するリゼちゃんで、
    良い話だな~と思ってたら、段々千夜ちゃんが依存性?独占欲?みたいのが現れ始めて
    ゾクゾクしました。その、”徐々に露出していく” 描写がほんとお見事です!

    そして、その後の急展開は驚きです…カッターが出てきたことろでは、このままどうなるのかと…。

    普段は本心をあまり見せず、むしろバランスよく皆と接する千夜ちゃんだからこそ、
    秘めたる欲求が爆発するときの威力は凄まじいですね…。
    だけどそこはやっぱり千夜ちゃん。そこまで追い詰められても、気持ちを押し付けてる
    かに見えて、やっぱり相手のことをちゃんと考えてる。そのシーンは感動しました。

    冒頭で本当のことをなかなか言ってくれないリゼんちゃんを促す千夜ちゃんだけど、
    千夜ちゃんも同じく本音を言えないタイプなんですね。最後に報われてよかったです。

    読み応えがありました!ヤンデレシリーズ、ぜひ他のキャラでも読んでみたいです!
    最近、あのあどけないメグちゃんがヤンデレたらどうなるか妄想したりします(笑)

    • 砂水クジラ砂水クジラ より:

      ちゃんと段階を踏んで、依存性が高まっていく描写になっていたでしょうか?
      はにすけさんがそう言ってくださるのであれば、ひと安心ですね。

      カッターでリゼちゃんの頬を切るシーン、本作でわたしの一番お気に入りだったりします。
      恐怖と緊迫感で、ゾクゾクしていただけたのでしたら大成功です。

      リゼちゃんの優しさに対し、我慢と幸福の板挟みで徐々にヤンデレ化してしまう千夜ちゃんが書きたかったのですが、おっしゃいます通り千夜ちゃんって相手に自分の気持ちを押し付けるタイプでもないのでハイライトオフに持っていくまでにとても苦労しました。
      ちなみに本作の千夜ちゃんのヤンデレは欲求型ではなく、我慢型の心内はとても優しいタイプのヤンデレです。

      このシリーズ、わたしも描いていて大好きなのですが、好きすぎて妥協できないのでどうしても書き上げるのに時間がかかってしまうのです。
      そのうえ上層部からは怒られ……ゴニョゴニョ
      メグちゃんのヤンデレ……砂水クジラに悪魔のアイデアを埋め込んではいけません!;

  3. 名有り より:

    今更ですがすべて読ませていただきました!大体の感想や印象に残ったシーンについては、驚くほど他の読者の方々のものと被ってしまうので、それらの点は割愛させていただき、私がただ個人的に思ったことを書かせていただきます。
    というのも、今回の作品を読んで、千夜ちゃんはリゼちゃんに対して「優しすぎる」と言っていましたけど、年下の子たち(チマメ隊)の相談に乗ったりして面倒を見たり、今回のようにリゼちゃんのことを傷つけたくないから自分の感情をとにかく押し殺して挙句には自分のことを嫌わせようとしてしまうあたりなど、千夜ちゃん個人の願望(我ながら微妙なワードチョイスだと思いますが)もあるとは思うのですが、私としては千夜ちゃんも「優しすぎる」性格と言えるのではと思いました。
    暫くの間コメントするのが遅れてしまいすみませんでした。とても長くなってしまいましたが、どうかこのような稚拙なコメントでも、砂水さんの励ましになればと思います。数々の作品の執筆、お疲れ様です♪

    • 砂水クジラ砂水クジラ より:

      励みになります、とても♪
      ブログ、ツイッター、現実、色んな人に頂ける感想は全て私の原動力です。
      ただ『面白かった』という結論ではなく、特にこういった考察を頂けるとよりいっそう嬉しいです。
      一応作家として一作品の中に様々なテーマを散りばめておりますので、それを汲み取って頂けた今回のような感想は、もはや天にも昇る気持ちです。

      名有りさんのおっしゃるとおりです。
      リゼちゃんも優しすぎるのですが、気遣いからその優しさを素直に受け入れようとしない千夜ちゃんも同じく優しすぎるのです。
      本作は、お互いに優しすぎる上に起こりうる問題をテーマに執筆しました。
      故にかなりの執筆難易度を誇りまして……千夜ちゃんのヤンデレ化は一筋縄ではいきませんでした;
      お互いに気遣いができる『千夜リゼ』のカップリングは、まだまだ色んな可能性がありそうです。
      また近いうちに必ずや『千夜リゼ+ヤンデレ』に挑戦しますので、とうご期待ください。

  4. ぬまっち より:

    こんばんはぬまっちですー
    夜勤終わりに読むとハマるわねん笑(^ー^)
    全然関係ないけど砂水さん年上だったと最近きずきました笑(自分19です)ツイッタもときどき見させてもらっています頑張ってください( ´ ▽ ` )失礼しますおやすみなさい(z_z)

    • 砂水クジラ砂水クジラ より:

      お久しぶりです♪
      当サイトは、一応ギリギリお酒の飲めるなんちゃって社会人が執筆しております。
      今後もよろしければ、ご愛読のほどよろしくお願いいたします。

  5. 匿名 より:

    最近このサイトを見つけ、数々のss楽しく読ませて頂いてます。
    お互いが優しいゆえにすれ違いながらも最後にはわかり合えるのは、読み終わると途中のモヤモヤが解消されて好きな展開です。
    話は変わりますが、気になったのが千夜の最後から二番目のセリフですが不自然ではないのですが、仮面ライダーOOOの主人公の終盤のセリフに似ているのは意識してなさったことですか?

    • 砂水クジラ砂水クジラ より:

      初めまして、になるでしょうか。
      当サイトにご来訪いただき誠にありがとうございます。
      この作品は私自身かなりお気に入りのものですので、お褒めにあずかり光栄でございます。
      リゼちゃんと千夜ちゃんの優しい部分を上手く表現できていますと幸いです。

      まさか、このセリフのパロディにお気づき下さるなんて……。
      実はわたくし、仮面ライダーオタクでして、中でもクウガとアギトとオーズが特に大好きなのです。
      映司君の最終話のセリフをついお遊び要素として含めてしまいました;

  6. ライダーオタ より:

    最後の千夜ちょっとオーズっぽいな

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