ごちうさSS チノ「ココアさんに抱きつきたい」

 

――ラビットハウス――

 

リゼ「……すまない、もう一度言ってくれ」

 

チノ「ココアさんに抱きつきたいんです」

 

リゼ「……………………」

 

チノ「リゼさん?」

 

リゼ「……ココアって、あのココアだよな?」

 

チノ「はい、あのココアさんです」

 

リゼ「………………」

 

チノ「どうしたんですか?」

 

リゼ「いや……いつも二人で抱きしめあってるじゃないか」

 

チノ「あれはココアさんがわたしに抱きついているカタチです、わたしが抱きついているわけではありません」

 

リゼ「抱きしめられたらチノも抱きかえせばいいだろ?」

 

チノ「受身ではダメです、こちらが攻めでないと」

 

リゼ「どこで覚えたんだそんな言葉……」

 

チノ「その方法を一緒に考えてください」

 

リゼ「考えるも何も……チノがココアに抱きつけばそれで――」

 

チノ「しかし、きっかけがあるかどうか」

 

リゼ「きっかけも何も」

 

チノ「普通に抱きついたらまるでわたしがココアさんのことが好きみたいじゃないですか」

 

リゼ「えっ、違うのか?」

 

チノ「違います、ただわたしはココアさんに抱きつきたいだけです」

 

リゼ「つまり、ココアのことが好きだから抱きつきたいんだろ?」

 

チノ「違います、いつも一方的にやられっぱなしなのが気に入らないだけです」

 

リゼ「そんな今更……素直に好きだからって言えよ」

 

チノ「好きなんかじゃありません!」ダン!

 

リゼ「わっ!?」

 

チノ「いつもやられっぱなしなのが悔しいだけです!ココアさんをモフモフしたいとか、ココアさんの匂いを思う存分嗅ぎたいとか、そんなこと思ってません!」

 

リゼ「本音がだだ漏れだぞ、チノ……」

 

チノ「……こほん、つい熱くなってしまいました」

 

チノ「とにかくそんなわけで、ココアさんに能動的かつ他から見れば受動的に、そして違和感無くわたしから抱きつける方法を考えてください」

 

リゼ「難し過ぎるだろ!海外旅行クイズより難易度高いぞ」

 

チノ「だから困ってるんです」

 

リゼ「……なぁ、チノ?そんな遠まわしなことしなくても、普通にチノから抱きついていけばいいじゃないか」

 

リゼ「ココアは喜ぶだろうしチノは目的を果たせるし、お互いWin-Winだろ?」

 

チノ「……………………」

 

リゼ「わたしも協力してやるからさ、なっ?」

 

チノ「……………………」

 

チノ「」

 

 

――翌日――

 

リゼ「あれ…………?」

 

ガラーン

 

リゼ(九時前……ココアはいつものことながら、チノも起きてないなんて……珍しく寝坊か?)

 

リゼ「んっ……手紙?」

 

『親しい人に見放され、もはや希望を失いました。今後のラビットハウスはTRさんにお任せします 香風智乃』

 

リゼ「………………」

 

リゼ「TR→天々座理世」

 

リゼ「」

 

 

――――――――――――――――――――――

 

――チノの部屋前――

 

リゼ「………………」

 

リゼ「チノ、わたしだ」トントン

 

シーン……

 

リゼ「…………はぁ」

 

リゼ「とりあえずここをあけてくれよ」カチャカチャ

 

リゼ(あれ……開いてる?)ガチャッ

 

リゼ「チノ、入るぞ……?」ソー

 

チノ「……………………」

 

フテネ

 

リゼ「…………」

 

リゼ「おいチノ、起きてくれ」

 

チノ「…………」

 

リゼ「昨日のことは謝る、だから機嫌直せよ」

 

チノ「……別に拗ねてません」

 

リゼ「いや、だって……」

 

チノ「人生に絶望しているだけです、そっとしておいてください」

 

リゼ「あんなことで絶望って……ほら、まずは布団から出ろ」グイッ

 

チノ「嫌です……」コロコロ

 

リゼ「…………」

 

チノ「」スマキ

 

チノ「これなら剥がされません」ババン

 

リゼ(かなりめんどくさいぞこれは……)

 

チノ「いいんです、わたしなんてろくにココアさんに抱きつく勇気も無いような人間なんです………」モゴモゴ

 

リゼ「そんな卑屈にならなくても……」

 

チノ「今後のラビットハウスはリゼさんにお任せします」

 

リゼ「チノはどうするんだ?」

 

チノ「将来の夢は自宅警備員です」

 

リゼ「それただの引きこもりだろ!?」

 

リゼ「はぁ……いいから出てこいよ、今度はちゃんとした方法を考えてやるから」

 

チノ「例えばどんな?」モゴモゴ

 

リゼ「どんな?うーん……」

 

リゼ「事故を装ってココアの胸元に飛び込む、とか?」

 

チノ「……………………」

 

チノ「」ゴロン

 

リゼ「待ってくれチノ!わかった、もっと確実な方法を考えるから!」

 

 

チノ「例えば?」モゴモゴ

 

リゼ「うっ……そ、そうだな……」

 

リゼ「……そうだ!」

 

リゼ「酔ったフリをしてココアに抱きつくとか……」

 

チノ「………………」

 

リゼ「それなら思う存分ココアの匂いも嗅げるし、甘えられる」

 

チノ「………………」

 

リゼ「どうだ……?」

 

チノ「……それです!」ヒョコ

 

リゼ「」ホッ

 

 

―――――――――――――――――――――――

 

ココア「リゼちゃんチノちゃん、おはよー!」

 

リゼ「もうお昼前だぞ」

 

チノ「おはようございます」

 

ココア「えへへ、チノちゃんは今日もモフモフだね」ギュッ

 

チノ「こ、ココアさん、離れてください//」ニヘラ

 

リゼ(すごく嬉しそうだ……)

 

ココア「そろそろお昼かぁ、おなかすいたね」

 

リゼ「お前はいま起きてきたところだろう」

 

チノ「まだお昼まで時間がありますね」チラッ

 

リゼ(んっ、もう実行するのか?)ピクッ

 

チノ(はい、この機を逃がす手はありません)パチッ

 

 

リゼ「……あー、そういえば、今日はお菓子を持ってきたんだ」

 

ココア「えっ、ほんと?」

 

リゼ「ほら、おなか減ってるなら食べてもいいぞ」

 

ココア「わーい、チョコレートだ♪」

 

リゼ「チノもどうだ、一休みしないか」

 

チノ「そうですね、お客さんも来ないことですし」

 

チノ「わたし、飲み物持ってきます」

 

ココア「リゼちゃん、このチョコおいしいね」モグモグ

 

リゼ「もう食べてるのか、早いな」

 

 

チノ「お待たせしました」

 

チノ「ココアさん、リゼさん、どうぞ」トンッ

 

リゼ「ありがとう」

 

ココア「このクッキーもおいしい」モグモグ

 

チノ「ではお先に……」カパッ

 

チノ「ん……」ゴクゴク

 

リゼ(よし、上手くいった)

 

リゼ(この缶、わたしとココアのはチューハイ、チノのだけはジュースになっている)

 

リゼ(これで酔ったフリをしてココアに抱きつく準備は整った、後は……)

 

リゼ「……んっ、チノ、これ――」

 

リゼ「ジュースじゃなくてアルコールだ!」

 

チノ「うぅ…………」ポワン

 

リゼ「チノ、おい、しっかりしろ!」

 

リゼ「さぁチノ、ココアに思い切り抱きついて来い」ヒソヒソ

 

チノ「はい、ありがとうございます」ヒソヒソ

 

チノ(そ、それでは……いきます//)ゴクリ

 

チノ「……こ、ココアおねえ……あ…うぅ……//」

 

リゼ(しらふで酔ったフリって結構恥ずかしいんだよな……)

 

チノ「こ……ココア…ココアお姉ちゃ――!」

 

ココア「リゼちゃん!」ギュッ

 

リゼ「!!?」

 

チノ「!?」

 

ココア「えへへ~、リゼちゃん……//」スリスリ

 

リゼ「なっ、えっ……!?//」

 

ココア「リゼちゃんの匂い、お姉ちゃんそっくり……安心する…//」スリスリ

 

リゼ(一体何がどうなって……!?)

 

リゼ「おいココア……――!」

 

ココア「ふぇへへ……//」ポワーン

 

リゼ(顔が真っ赤だ……それにこの匂い、まさか……」チラッ

 

ココア「リゼちゃんもチノちゃんも食べる?おいしいよ、ウイスキーボンボン♪//」ニコッ

 

リゼ「」

 

ココア「わたしが食べさせてあげるね、はいリゼちゃん、あーん//」

 

リゼ「こ、ココア、ちょっと待て!とりあえず水を――!」

 

リゼ「――はっ!」ビクッ

 

リゼ「……………………」

 

リゼ「………………」チラッ

 

チノ「……………………」

 

リゼ「チノ、違うんだ……これは手違いで……その」

 

チノ「………………」

 

チノ「スマキです……自宅警備員です……では」スタスタ

 

リゼ「チノ!待ってくれぇ!ワンモアチャンスを!チノぉ!」

 

ココア「あれぇ……わたし、なにしてたんだっけ?」キョトン

 

 

――後日――

 

ココア「チノちゃん、昨日はごめんね」ギュッ

 

チノ「別に怒ってません」プクー

 

ココア「今日はお仕事終わったらたくさん遊ぼう♪」スリスリ

 

チノ「し、しかたないですね……//」ギュッ

 

チノ(ココアさんの匂い……ココアさんモフモフ!)

 

リゼ(あの後5時間の説得により、チノの引きこもり化はなんとか食い止めることができた)

 

リゼ(しかし、依然チノの抱きつきたいという願いは叶わず仕舞いだ)

 

リゼ(……でも)

 

ココア「チノちゃーん!抱き返してくれるなんて、おねえちゃん嬉しいよ!」

 

チノ「こ、ココアさん……//」ニヘラ

 

リゼ(結局のところ、ココアとイチャイチャできるなら何でも良かったんだろうな……)

 

リゼ「……はぁ、疲れた」ゲッソリ

 

チノ「まったく……♪」

 

チノ「ココアさんは、本当にしょうがないココアさんです//」ニコッ

 

――おしまい♪

感想

  1. ミジュマル より:

    このシリーズ大好きです!
    今回もチノちゃんがめんどくさかわいかったですw 5時間の説得には笑いましたw

    • 砂水クジラ砂水クジラ より:

      ありがとうございます♪
      当サイトの看板SS、チノちゃん嫉妬シリーズを気に入っていただけてなによりです。

  2. Beyond the Average より:

    題名を見た瞬間、チノがあんなことやこんなことをするのではないかとイケナイ想像をしていたのですが、いつも通りチノがリゼを困らせつつココアに近づこうとしてたので安心しました。
    もしあのタイミングでチノとココアが酔ってイチャイチャしたら…アハハ(笑)
    妄想が止まりませんね!!

    取り乱してしまいましたm(__)m

    • 砂水クジラ砂水クジラ より:

      このシリーズでは、チノちゃんは毎度リゼちゃんを困らせてなんとかココアちゃんとの距離を縮めようとします。
      もし酔ったココアちゃんがチノちゃんに抱きついていたら……チノちゃんの計画は大成功だったでしょうね(笑)

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