ごちうさSS 千夜「無窮の夜」 その3 END

 

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ごちうさSS 千夜「無窮の夜」 その2

 

……

…………

………………

 

 

 

千夜「…………」パチッ

 

 

千夜「……?」

 

 

千夜(ここ……どこ?)

 

 

千夜(声が出ない……体も動かない……)

 

 

千夜(でも……なんだか……)

 

 

千夜(…………)

 

 

千夜(………………)スッ

 

 

千夜(瞼が、重い……)

 

 

千夜(そう、きっと夢ね……)

 

 

千夜(夢……ゆめ…………)

 

 

 

―――――――――――――――――――――――

 

 

 

――甘兎庵 千夜の部屋――

 

 

千夜「…………」パチッ

 

シャロ「あ……!」

 

千夜「……シャロちゃん?」

 

シャロ「おはよう。目が覚めた?」

 

千夜「うん……」

 

シャロ「聞いたわよ、買い物途中で倒れたって」

 

千夜「…………」

 

シャロ「病み上がりなのに無理して……おばあちゃんに怒られたでしょ?」

 

千夜「おばあちゃんに?」

 

シャロ「今朝やっと千夜が目を覚ましたって聞いたからお見舞いに来たの」

 

千夜「………………」

 

シャロ「千夜?」

 

千夜「わたし、どうしてここに……?」

 

シャロ「え……昨日の夜、リゼ先輩が車で送り届けてくれたんでしょ?」

 

千夜「………………」

 

シャロ「……千夜?やっぱりまだどこか変じゃない?」

 

千夜「……そうかも」

 

シャロ「しばらくは学校休んで安静にしておきなさいよ」

 

千夜「ええ、そうするわ。ありがとうシャロちゃん」

 

シャロ「今度倒れたりしたら怒るからね」

 

千夜「…………」ニコッ

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――

 

 

――PM4:11――

 

 

千夜「………………」

 

 

『おばあちゃんに……怒られた?』

 

 

千夜「………………」

 

 

『リゼちゃんが車で送り届けてくれた……?』

 

 

千夜(わたし、今朝おばあちゃんと話したの?)

 

千夜「………………」

 

千夜「……っ」

 

千夜(だめ……思い出せない)

 

千夜(記憶までおかしくなっちゃったの……?)

 

千夜「…………」グスッ

 

千夜「っ……ヒック……ぇぅ……」ポロポロ

 

千夜(どうして、こんな風になっちゃったんだろう……)

 

千夜(あんなに幸せで楽しかったのに……)

 

千夜(幻覚が見えて、人も何も分からなくなって、今度は記憶まで……)

 

千夜(こんなに辛いこと……いつから……)

 

 

 

 

千夜「うっ……」ズキッ

 

千夜「………………」ハァハァ

 

千夜(事故で……頭を打って……)

 

千夜(退院してから……)

 

 

 

 

千夜「っ……!」ズキズキ

 

千夜(頭が痛い……っ!)

 

千夜「ハァ……ハァ……!」

 

千夜(……事故?)

 

千夜(あの事故にあったのって、そういえばいつ……?)

 

千夜(1か月前?2か月前だっけ?)

 

千夜「………………」

 

千夜(わたし……いつまで入院してたの?)

 

千夜「………………」

 

千夜(気が付いたら病院にいて……知覚障害になっていて……)

 

千夜「………………」

 

 

 

 

千夜「ぅ……ぁあ……っ!」ガクッ

 

千夜「おぇ……ぅぇ……!」

 

千夜「ハァ……ハァ……!」

 

千夜(なに……さっきの?)

 

千夜(なにか大切なこと―ー……!?)

 

 

 

………………

…………

……

 

 

 

千夜「ここ……どこ?」

 

 

また、幻覚。

 

 

……………………。

 

 

……ちがう。

 

 

わたし……ここを知っている。

 

 

生い茂った森の奥に。

 

 

なにかが、いる。

 

 

なにかが、きこえる。

 

 

悲しい。

 

 

けど、知っているなにか。

 

 

……………………。

 

 

……いかなきゃ。

 

 

そう思った。

 

 

思い出せそうな気がする。

 

 

忘れていること。

 

 

――オモイダセナイコトモ。

 

 

千夜「………………」

 

 

深い霧の中を歩いていく。

 

 

不確かな『何か』へ、ゆっくりと。

 

 

幻覚なら、もう壁にぶつかっているはずなのに。

 

 

この走馬灯のようにぼんやりとした景色は。

 

 

無窮であるかのように、永遠と続く。

 

 

千夜「ぁ…………」

 

 

なにか、いる。

 

 

さっき感じたものとは明らかに違う。

 

 

ただ怖いだけの、異形な『何か』

 

 

 

 

大きな鎌を持った、化物。

 

 

まるで死神のような姿。

 

 

身体が凍り付いて動かない。

 

 

化物はおもむろにこちらへ歩み寄ると。

 

 

千夜「……!」

 

 

わたしの身体へと、勢いよく大鎌を振り下ろした。

 

 

首から血が噴水のように噴き出し、たちまち視界が朱色に染まる。

 

 

不思議と痛みはなかった。

 

 

薄れていく意識の中で。

 

 

『死ぬ』ことを、ただ漠然と感じていた。

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――

 

 

 

千夜「…………?」パチッ

 

リゼ「あ……千夜」

 

千夜「…………」

 

リゼ「わたしだ、リゼだ」

 

千夜「……リゼちゃん?」

 

リゼ「遅くなってすまない」

 

千夜「…………」

 

リゼ「千夜?」

 

千夜「……さっき、鎌で斬られたの」

 

リゼ「えっ……」

 

千夜「首から血が出て、倒れて」

 

リゼ「…………」

 

千夜「でも、死んでなかった」

 

リゼ「……そうか」

 

千夜「………………」

 

リゼ「良かった、千夜が死ななくて」テ ギュッ

 

千夜「…………」

 

リゼ「幻覚で、本当によかった……」

 

千夜「……喜んでいいの?」

 

リゼ「ああ」

 

千夜「………………」

 

リゼ「わたしのこと、なにに見えてる?」

 

千夜「……血だらけの、大きなウサギ」

 

リゼ「……」スッ

 

千夜「リゼちゃん?」

 

リゼ「目、閉じておけ。ずっと側にいるから」

 

千夜「………………」

 

リゼ「辛いな……これくらいしかできなくてごめん」ナデナデ

 

千夜「……昨日も、わざわざリゼちゃんに送ってもらったんでしょう。車で」

 

リゼ「千夜のおばあちゃんが心配するからな」

 

千夜「………………」

 

 

――ギュッ

 

 

リゼ「!」

 

千夜「リゼちゃん、ごめんなさい……」

 

千夜「もうわたし……喜べない……」

 

リゼ「千夜……?」

 

千夜「幻覚が見えて、リゼちゃんやみんなのことが分からなくなってきて……」グスッ

 

 

千夜「記憶まで、おかしくなってきてるの……!」ポロポロ

 

 

リゼ「……!」

 

千夜「きっといつかみんなのことまで忘れちゃう……!」

 

千夜「ココアちゃんのこともチノちゃんのこともシャロちゃんのことも、リゼちゃんのことも……!」

 

千夜「そんなのいやっ……みんなのことを忘れてしまうくらいなら、わたし――!」

 

 

リゼ「千夜っ!!!!」

 

 

千夜「っ!」ビクッ

 

リゼ「……っ!」

 

千夜「……リゼちゃん?」

 

リゼ「頼む……っ」ギュッ

 

 

リゼ「死にたいなんて……言わないでくれ……!」ポロポロ

 

 

千夜「……!」

 

リゼ「ごめん……ずっとお前にそう言われるのが怖かった」

 

リゼ「千夜が生きることを諦めてしまったら、頼られる理由がなくなる……」

 

リゼ「わたしが千夜のためにできることが、本当になくなってしまうから……」ポロポロ

 

千夜「あ………」

 

リゼ「頼られることで、お前の苦しみや自分の不甲斐なさを誤魔化したかっただけなんだ……」

 

リゼ「千夜に、生きててほしいから……」ポロポロ

 

千夜「………………」

 

リゼ「ごめん……こんな卑怯者で」

 

リゼ「千夜は苦しいのに……死にたいくらい辛いのに……わたしは、千夜に……」グスッ

 

千夜「……リゼちゃん」

 

千夜「口……ここ?」

 

リゼ「え?」

 

千夜「んっ……」

 

 

――チュッ

 

 

リゼ「……!?」

 

千夜「ごめんなさい……」ギュッ

 

千夜「わたし、本当にダメね……」

 

リゼ「千夜……?」

 

千夜「みんなのこともリゼちゃんの気持ちも、何もわかってなかった……」

 

千夜「こんなに想ってくれている親友がいるのに、死にたいなんて考えて」

 

千夜「リゼちゃんの気持ちから逃げようとしてた……」

 

千夜「本当に卑怯者だったのは、わたし……」グスッ

 

千夜「辛い思いさせてごめんね、リゼちゃん」

 

リゼ「違う……辛いのは、千夜のほうだ……」

 

千夜「ううん……違うわ」

 

 

千夜「本当に辛いのは、きっとリゼちゃんやみんな……」

 

 

リゼ「……?」

 

千夜「リゼちゃん……わたし、もう逃げないから」

 

千夜「弱音も吐かないから」

 

千夜「だからね……お願いがあるの」

 

リゼ「お願い?」

 

千夜「何もかも見えなくなっちゃう前に、忘れちゃう前に……」

 

 

千夜「頭が狂った人間の戯れに、付き合って?」

 

 

 

―――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

――リゼの部屋――

 

 

リゼ「昨日の記憶がない?」

 

千夜「ううん、正確には今朝の記憶がないの」

 

千夜「この部屋で倒れた後、わたしはリゼちゃんの車に乗せられておうちに戻った」

 

千夜「このことを今朝おばあちゃんから聞いていたらしいわ」

 

リゼ「千夜のおばあちゃんの勘違いってことは無いか?」

 

千夜「それも考えたんだけどたぶん違う」

 

千夜「断片的に記憶が欠けているのは、今朝のことだけじゃないから」

 

リゼ「えっ?」

 

千夜「わたし……『入院していたころ』の記憶はあるけど、『退院したとき』の記憶が全くないの」

 

リゼ「!」

 

千夜「この知覚障害だってそう……入院している頃からなっていたのは覚えているけど」

 

千夜「目が覚めた時に『この状態だった』記憶が無いの」

 

リゼ「………………」

 

千夜「事故に遭ってからの記憶、特に大切な部分だけがすっぽり抜け落ちてるような、そんな気がする」

 

千夜「この2週間のことも、リゼちゃんと過ごした記憶。ココアちゃんやシャロちゃんのこと。チノちゃんのこと。今朝以外のおばあちゃんのこと。みんなと過ごしたことは覚えているけど」

 

千夜「それ以外のことは、あいまいにしか思い出せない」

 

リゼ「確かに不自然だな……記憶喪失が病のせいならもっと不規則に記憶が無くなるはずだ」

 

千夜「たぶん、誰かと『直接触れ合ったこと』だけ鮮明に覚えているんだと思う」

 

リゼ「……どうして?」

 

千夜「………………」

 

リゼ「仮説でもいい、あるなら教えてくれないか?」

 

千夜「…………」ウツムキ

 

リゼ「言っただろ?わたしは千夜のことを信じてる」

 

リゼ「たとえお前が既に死んでいるって言っても信じるさ」

 

リゼ「だから千夜も信じてくれないか?」

 

千夜「……うん」

 

リゼ「話してくれ。力になりたい」

 

千夜「…………」ウルッ

 

リゼ「………………」

 

千夜「さっき……わたしの部屋でしたお話し」

 

リゼ「死んでなかったあれか?」

 

千夜「うん……」コクリ

 

千夜「無理やり記憶を思い出そうとした瞬間、深い霧に包まれて……」

 

千夜「気が付いたら森のような場所にいたわ」

 

リゼ「森……」

 

千夜「最初はいつもの幻覚だと思ったんだけど、歩いてみたらずっと進めるような無窮の道が続いていて」

 

千夜「わたし……なぜかその場所に見覚えがあったの」

 

リゼ「………………」

 

千夜「奥に進んであともう少しで目指していた場所にたどり着くと思ったら、死神のようなお化けが現れて」

 

千夜「大きな鎌で真っ二つにされた後に、目が覚めた」

 

リゼ「……悪夢だな、まるで」

 

千夜「ええ……」

 

千夜「リゼちゃんに知覚障害のことを打ち明けた後も、何度か変な夢を見たわ」

 

千夜「自分の身体が全く動かなくて、傍で誰かの話し声が聞こえたり」

 

千夜「話しかけられて、返事を返そうとしても全く声が出なかったり」

 

千夜「ずっと……その夢の意味が分からなかった」

 

リゼ「悪夢に、意味なんてあるのか?」

 

千夜「……あれはきっと、悪夢なんかじゃないから」

 

リゼ「え……?」

 

千夜「さっきリゼちゃんにキスしたとき、体温が全く感じられなかったの」

 

千夜「手はあんなに暖かかったのに」

 

千夜「……それで、気付いたわ」

 

 

千夜「事故に遭った後の記憶が断片的なこと」

 

千夜「『直接触れ合ったこと』だけを鮮明に覚えている記憶」

 

千夜「記憶を無理やり思い出そうとしてたどり着いた深い霧の森」

 

千夜「それまで何度か見ていた変な夢」

 

千夜「狂った感覚の中、唯一暖かいリゼちゃんの手」

 

千夜「そして……どんどん酷くなっていく知覚障害」

 

千夜「全部、繋がっているような気がする」

 

千夜「まるで、こっちが悪夢になっているような……そんな気がしない?」

 

 

リゼ「……――!」

 

リゼ「千夜……それじゃあお前……」

 

千夜「うん……ただの妄想かもしれない」

 

千夜「でももし、本当にそうだとしたら……」

 

 

 

千夜「わたし――帰らないと……//」ポロポロ

 

 

 

リゼ「…………」

 

リゼ「……そうだな」

 

千夜「リゼちゃん……?」

 

リゼ「きっと今ならもう帰れるさ……化物もいないだろう」

 

リゼ「…………」スッ

 

千夜「あ……」ポロポロ

 

リゼ「手、暖かいといいんだけど」

 

――ギュッ

 

千夜「大丈夫……あったかいわ」

 

リゼ「そうか、良かった」

 

リゼ「千夜……」

 

リゼ「――また、会おうな?」

 

千夜「……っ」ポロポロ

 

リゼ「泣くなよ、すぐに会えるだろ?」

 

千夜「リゼちゃん……もし、わたしが間違っていたら――」

 

リゼ「ずっと支えてやる、安心しろ」

 

リゼ「約束しただろ?なにがあっても千夜の味方だって」ギュッ

 

千夜「グスッ……ヒック……!」ポロポロ

 

リゼ「手、こうして握ってるから」

 

リゼ「もう一度だけ、行ってこい」ニコッ

 

千夜「うん……」

 

千夜「リゼちゃん、ありがとう……」ポロポロ

 

千夜「わたし……このこと、絶対忘れないから」

 

千夜「リゼちゃんが支えてくれたこと……ずっと……!」グスッ

 

リゼ「いいよ、忘れたって」クスッ

 

リゼ「おやすみ、千夜……」スッ

 

千夜「あ…………」

 

リゼ「今度はちゃんと覚めるんだぞ」ナデナデ

 

リゼ「この、『悪夢』から……」

 

 

 

 

………………

…………

……

 

 

 

 

生い茂った森の中。

 

 

深い霧の中を歩いていく。

 

 

不確かな『何か』へ、ゆっくりと。

 

 

走馬灯のようにぼんやりとした景色は。

 

 

無窮ではない。

 

 

永遠ではない。

 

 

千夜「…………」

 

 

さっき血を噴き出して倒れた場所。

 

 

わたしが死んだ場所。

 

 

異形な『何か』は、そこにいなかった。

 

 

生きることを選んだ人間に。

 

 

もうあの化物が、邪魔をする理由は無いのだろう。

 

 

千夜「………………」

 

 

この世に、止まない雨はある。

 

 

悲しいけれど。

 

 

でも。

 

 

傘をさして歩けば。

 

 

いつかは、晴れた場所へとたどり着く。

 

 

左手の温もりが、それを教えてくれた。

 

 

千夜「…………」スゥ

 

 

帰ろう。

 

 

みんなが待ってくれている。

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

――病院――

 

 

千夜「スー……ハー……」

 

リゼ「…………」テ ギュッ

 

千夜「スー……ハー……」

 

リゼ「千夜……今日もいい天気だぞ」

 

千夜「スー……ハー……」

 

リゼ「まだ、眠たいか……?」

 

千夜「スー……ハー……」

 

リゼ「………………」

 

 

リゼ『頭を強く打って意識不明……!?治るんですか!?』

 

ココア『――分からないって……!じゃあ千夜ちゃんは、もしかしたら一生――』

 

チノ『……!』ブルブル

 

リゼ『ココアっ!!』

 

ココア『ぁ……ご、ごめんなさい……』

 

シャロ『そんな……千夜……』ポロポロ

 

 

リゼ「…………っ」

 

リゼ「千夜……」

 

千夜「……ぜ……ちゃん」

 

リゼ「……!」

 

千夜「リゼ……ちゃん」

 

リゼ「千夜……?千夜っ!!」

 

千夜「リゼちゃん……」ニコッ

 

リゼ「ぁ……!」ポロポロ

 

リゼ「先生っ!千夜が!千夜が目を覚ましました!」ダッ

 

 

千夜(帰ってこれた…………)

 

 

千夜(体が動かない……そうよね、ずっと昏睡状態だったから)

 

 

千夜(白いベッド、病室の風景、リゼちゃんの顔……全て、元に戻ってる)

 

 

千夜(良かった……ほんとうに、良かった……)ジワッ

 

 

 

――――――

――――

――

 

 

 

―――――――――――――――――――――

 

 

 

――1週間後――

 

 

リゼ「とうとうこうして病院の近くを散歩できるくらいにまで回復したな」クルマイス

 

千夜「ええ、これも全部みんなのおかげね」

 

リゼ「千夜が頑張ったからだぞ。わたしたちは何もできなかったよ」

 

千夜「ううん、そんなことないわ」

 

千夜「みんなのおかげ……本当に」

 

リゼ「……そうか」

 

千夜「リゼちゃん、ありがとう」

 

リゼ「んっ?」

 

千夜「毎日お見舞いに来て……ずっと手、握ってくれてたでしょ?」

 

リゼ「え……どうして知って……?」

 

千夜「わたし……きっとリゼちゃんがいてくれなかったら、ずっとあのままだったと思う」

 

千夜「ううん、もしかしたら……」

 

リゼ「こらっ」ポンッ

 

千夜「?」

 

リゼ「そんなこと言うな」

 

リゼ「千夜は死ななかった。絶対」

 

リゼ「それにいま、こうして生きてるだろ?それだけでいい」

 

千夜「クスッ……そうね」

 

リゼ「さて、今度は向こうの公園にでも行くか」ガラガラ

 

千夜「ねぇ、リゼちゃん?お願いがあるの」

 

リゼ「なんだ?」

 

千夜「キスさせて、口に」

 

リゼ「っ!?// な、なにを言い出すんだ急に!//」

 

千夜「ダメ?」

 

リゼ「ダメだ、変な関係だと思われるだろ//」

 

千夜「そう、やっぱり不意打ちじゃないとダメね」

 

リゼ「不意打ちでもダメだ!//」

 

千夜「ふふ、冗談よ」

 

リゼ「まったく、千夜は相変わらずだな」

 

千夜「いいわ、確かめなくても大丈夫」スッ

 

リゼ「んっ?」

 

千夜「リゼちゃんの手、あったかいもの」

 

千夜「この手のぬくもりは……嘘じゃないから」

 

リゼ「……?」

 

千夜「リゼちゃん……」

 

 

 

千夜「――ただいま」ニコッ

 

 

 

リゼ「……」フッ

 

リゼ「千夜……」

 

 

 

リゼ「――おかえり」ニコッ

 

 

 

無窮の夜――END

感想

  1. 名有り より:

    誠にお久しぶりではありますが、読了させていただきました。
    私にはもう特に何かを考察するようなスキルなど持ち合わせてはいませんので、本当に単純な感想だけを。

    悪夢だと思い込んでいた向こうこそが、自分の元いた世界。いつのまにか居た場所が、皆の存在する真実の世界だと、私もいつのまにか錯覚しちゃってました(笑)
    あの幻覚は、千夜ちゃんを元の世界に呼び戻すために心の中で生まれたサインだったのかな?その幻覚がなかったら二度と戻ってこれなかったのかもしれないし…

    それと他に思った事は、幻覚を見るのは確かに異常な事だけど、絶えずストレスを生み出す事で人がおかしくなっていくのは別に珍しい事ではないんだよなって事ですね… きっと千夜ちゃんは幻覚を見るようになって、自分の眼に映る世界を信じられなくなったと同時に、自分だけがおかしいのだと思い詰めてしまっていたと思います。自分だけ他の人と違うというのは、本当に胸に引っかかる事ですからね。それでも、心の中でいつもリゼちゃんがついていてくれたのは、それだけ普段から信頼を寄せていた相手だからこそだったのでしょう。そんな頼れる人さえいなかったら本当に…死にますよ←

    これとは関係ないけど、以前も何か表現というか…似たようなものを他のssで見たような覚えがあります。その箇所何処なのか忘れちゃったけど…まあ、それはまた見直してみることにします。

    今回も執筆お疲れ様でした。 此れからは此方に訪れる機会も増やせそうです。

    • 砂水クジラ砂水クジラ より:

      千夜ちゃんが見ていた幻覚の原因は、死んでいるにもかかわらず肉体だけが生きていることで起こるものです。
      向こうの世界でいつもリゼちゃんが側にいてくれたのは、現実世界で毎日お見舞いに来て千夜ちゃんの手を握っていてくれたからです。
      リゼちゃんの手だけが暖かかったのもそのためですね。

      この物語、一見千夜ちゃんが悪夢を見ていたという解釈で終わらせられますが、実はもっと深い真実が隠されています。
      千夜ちゃんの最後のセリフ、霧の中に現れた死神などがヒントになっています。

  2. キャラメル より:

    千夜ちゃんの「妄想」の中にいたリゼさんも千夜ちゃんの妄想だとしたらそこのリゼさんは存在自体していなかったのでしょうか…千夜ちゃんがキスしたリゼさんは本当に存在していたのか…    とても謎が多い長編SSでした…   でも千夜ちゃんが元に戻ってよかったリゼさんの友達に対する愛が感じられました!これからも頑張って下さい!

    • 砂水クジラ砂水クジラ より:

      あれ、実は「妄想」の世界では無いのですよ。
      紐解いていくと恐ろしい真実が隠されていたりします。
      この作品自体がミステリアスなのはそのせいですね。
      最後までお読みいただき、ありがとうございましたm(__)m

  3. キャラメル より:

    いつも砂水クジラさんのごちうさSSを拝見させてもらっています!少しリクエストしたいものがあるのですが…今回は千夜リゼメインだったので今度はリゼちゃんが家出をしてラビットハウスに泊めてもらうストーリーがいいです   長文すみません…できたらでいいので作って貰えれば嬉しいです

    • 砂水クジラ砂水クジラ より:

      ご愛読いただきありがとうございます。
      リクエストの件ですが、申し訳ながら当サイトはリクエストを受け付けておりません。
      以前読者さんのリクエストに応えたせいで2度ほど大きな問題が発生しております故、このようなルールとなりました。
      誠に申し訳ありません。ご了承のほどよろしくお願いします。

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