ごちうさSS ここあ「幼いリゼちゃんの思い出」後日談

 

 

――甘兎庵 PM5:21――

 

 

千夜「♪~♪♪」

 

千夜(……よし、完成!)

 

千夜「リゼちゃん、これ新作なんだけど良かったら――……あら?」

 

リゼ「スゥ……スゥ……」Zzz

 

千夜(寝ちゃってる……リゼちゃんが珍しいわ)

 

千夜(風邪ひいちゃうといけないし、毛布だけでも掛けてあげましょう)

 

 

千夜「おやすみなさい」バサッ

 

リゼ「んっ……」Zzz

 

千夜(確か6時にラビットハウスだったわね、時間が来たら起こしてあげないと)

 

リゼ「……ふふっ」Zzz

 

千夜(笑ってるわ……夢でも見てるのかな)クスッ

 

 

 

 

――――――

――――

――

 

 

――――――――――――――――――――――

 

 

―― 十数年前 天々座家 ダイニング PM6:13――

 

 

 

メイドA「いい感じですよ~」

 

メイド「」ジュー ←※少女 14歳くらい

 

メイドA「はい~それくらいでオッケーです」

 

メイド「」スッ

 

メイドA「とってもお上手ですね、わたしが教えてほしいくらいです」

 

メイド「」ペコリ

 

メイドA「礼儀正しいですし、立派なメイドさんになれますよ~」ナデナデ

 

メイド「」アセアセ

 

メイドA「お料理、誰かに教わったんですか?」

 

メイド「」コクリ

 

メイドA「素敵な方に教えていただいたんですね」

 

メイド「?」

 

メイドA「この野菜の盛り付け、目で見て楽しめるようになっています」

 

メイドA「高級感や見た目の様式美よりも、楽しくおいしそうに見える家庭的な盛り付けをされていますから」

 

メイドA「きっとあなたに料理を教えてくださった方も、人を喜ばせるのが大好きな人だったのかと思いまして」ニコッ

 

メイド「」コクリ

 

メイドA「良い人に学びましたね~」

 

メイド「」テレテレ

 

りぜ「おーい、まだか?」トコトコ

 

メイドA「おやおや~お嬢様、待ちきれずに来ちゃいましたか」

 

りぜ「おなかすいたぞ」

 

メイドA「もう少しでできますよ~。今日はこの子のメイド就任祝いで、なんとシャトーブリアンステーキです」

 

りぜ「なんでもいいからはやくたべたい」プクー

 

メイドA「それじゃあお嬢様にだけ先に、この余った部分を」スッ

 

りぜ「ふぇ……いいのか?つまみぐいしたらだめだっておとうさんが……」

 

メイドA「だからこっそりです、内緒」シーッ

 

りぜ「……!」

 

メイドA「はいあーん♪」

 

りぜ「あーん……」

 

メイドA「おいしいですか?」

 

りぜ「うん//」モグモグ

 

メイドA「ふふっ、もうちょっとでご飯が炊けますからね」ナデナデ

 

 

 

――――――――――――――――――――――

 

 

 

――PM7:31 リゼの部屋――

 

 

りぜ「はやくこないとしまっちゃうぞ!」※ゲーム中

 

使用人「待ってください。△でジャンプ……」

 

りぜ「そこをとぶだけだ」

 

使用人「あっ……」

 

りぜ「またさいしょからか!」

 

使用人「すいません……」

 

りぜ「よし、こんどこそクリアするぞ!」

 

使用人「お嬢?」

 

りぜ「んっ?」

 

使用人「ほかにゲームが上手な方がいると思うんですが」

 

りぜ「……たのしくないのか?」シュン

 

使用人「いえ、そういうわけでは。ただお嬢が楽しめているかが心配で」

 

りぜ「たのしい!だからいっしょにやろう!」

 

使用人「……承知しました」

 

りぜ「ここはこうやって、はしりながらとべばいいんだ」

 

使用人「こうですか?」

 

トントン

 

りぜ「だれだ?」

 

メイドA「お嬢様、二人でゲームですか?」ガチャッ

 

りぜ「ああ、まだ2すてーじめなんだ」

 

メイドA「わたしも横で見ててもいいです?」

 

りぜ「いいぞ、ここにすわれ」

 

メイドA「おじゃましまーす」

 

使用人「あの」

 

メイドA「ゲーム、慣れました?」クスッ

 

使用人「それが全く」

 

メイドA「お嬢様の親友になった以上ゲームは必須スキルですよ。ファイトです」フンス

 

使用人「俺がしなくても、あなたや他の人が代わりに――」

 

メイドA「絶対零度~♪」ピタッ

 

使用人「!」ビクッ

 

メイドA「さっき手を洗ったばかりなので冷たいでしょ~?」

 

使用人「……?」

 

メイドA「お嬢様はあなたと一緒にゲームがしたいんです。その気持ちに応えてあげなきゃですよ」

 

メイドA「自分の代わりがいるなんて、絶対に考えちゃダメです」

 

使用人「……すいません」

 

メイドA「もう少しであの子も来ますよ、良い所見せてあげましょう」ニコッ

 

使用人「えっ……」

 

トントン

 

メイドA「どうぞ~♪」

 

メイド「」ガチャッ

 

メイドA「もう一人増えますけどよろしいですか?」

 

りぜ「いいぞ、ふたりでみておけ」

 

メイドA「どうぞこちらに」

 

メイド「」スッ

 

使用人「お疲れ様です」

 

メイド「」ペコリ

 

メイドA「お嬢様、また友達が増えましたね~」ナデナデ

 

りぜ「ふふん」エッヘン ※外での友達がユラちゃん以外にいないのでとっても嬉しい

 

メイドA「これからはパーティーゲームもできますよ」

 

りぜ「ほんとだ……!4にんでできるぞ!」

 

りぜ&メイドA「いえい♪」パチッ

 

使用人&メイド「?」

 

 

 

 

――――――――――――――――――――

 

 

 

 

――PM10:14 宿直室――

 

 

トントン

 

メイドA「おじゃまします~」ガチャッ

 

メイドA「――おや?」

 

使用人「」Zzz

 

メイドA(眠ってる……慣れないゲームで疲れたのでしょうか)

 

使用人「」Zzz

 

メイドA(こうして寝顔だけ見ていると普通の人なのに)

 

使用人「」Zzz

 

メイドA「ふふっ」ニコッ

 

メイドA(でもこんなところで座って寝てたら風邪ひいちゃいますね、とりあえず起こして――)スッ

 

使用人「っ!?」

 

メイドA「!」

 

使用人「っ!!」クビ ガシッ!

 

メイドA「きゃっ……!」

 

使用人「……っ!」ジャキ

 

メイドA「……!」

 

使用人「ハッ!」

 

メイドA「わたしですよ~、おはようございます」

 

使用人「すいません……」スッ

 

メイドA「せっかく寝ていたのにごめんなさい」

 

使用人「いえ、あなたのせいでは……」

 

メイドA「…………」

 

使用人「っ……」

 

メイドA「えいっ♪」ムニュー

 

使用人「?」

 

メイドA「そんな顔しないでください、平気ですから」プニプニ

 

使用人「…………」

 

メイドA「お風呂空いてますよ、よかったら今のうちに」

 

使用人「……ええ」

 

メイドA「大丈夫、ここはあなたの居場所です」ピトッ

 

使用人「……!」

 

メイドA「んー、ちょっとおでこが熱いですね~。体温高めです?」

 

使用人「どうなんでしょう……」

 

メイドA「なーんて、わたしが高いだけかもです。体温36.8度もあるので」フンス

 

使用人「そうですか」

 

メイドA「お風呂に入ったらちゃんとベッドで寝てくださいね~。湯冷めしちゃいますから」

 

使用人「――あの」

 

メイドA「んっ?」

 

使用人「いつもありがとうございます。あの子のことも」

 

メイドA「家族だから当然ですよ~」

 

使用人「家族?」

 

メイドA「はい。この家にいる人は、みんなわたしの大切な家族です」

 

メイドA「あなたもあの子も、リゼお嬢様も旦那様も。みんなのこと大好きですから」ニコッ

 

使用人「…………」

 

メイドA「クスッ、ダメです?」

 

使用人「いえ……――あなたは」

 

りぜ「ここか?」ガチャッ

 

使用人「!」

 

メイドA「おやおや、お嬢様~。もしや迎えに来てくれました?」

 

りぜ「おまえがいつまでまってもこないからだ」プクー

 

メイドA「すいません、でもほんの少しですよ?」ヒョイ

 

りぜ「はやくきてくれ。いっしょにねたい……」ギュッ

 

メイドA「ふふっ、甘えんぼうですね~」スリスリ

 

りぜ「んっ……//」

 

メイドA「♪」フリフリ

 

使用人「」ペコリ

 

バタン

 

使用人「………………」

 

 

 

――――――――――――――――――――――――

 

 

 

――リゼの部屋――

 

 

りぜ「……」ギュッ

 

メイドA「お嬢様、苦しいです~」

 

りぜ「わたしがねたらまたどこかいくきだろう」ギュー

 

メイドA(この前のことまだ根に持たれてる……)←大泣きされた挙句ポカポカパンチを食らった人

 

りぜ「どこにもいけないようにこうしてねるんだ」

 

メイドA「屋敷の中にはいますよ~、呼び出し放送を聞けばすぐに駆け付けますから」ナデナデ

 

りぜ「うぅ~いっしょにこうしていないといやだ!」

 

メイドA「わがままですね~お嬢様は」ホッペ フニフニ

 

りぜ「だって……」

 

メイドA「そうですね、ひとりは寂しいですもん」ギュッ

 

りぜ「うん……でも」

 

メイドA「ん?」

 

りぜ「どうしてもいそがしいなら……さみしいけど、がまんする」

 

メイドA「まぁ……!」

 

りぜ「おまえはだいじなしんゆうだから」

 

メイドA「お嬢様~♪」ギュッ

 

りぜ「わわっ……//」

 

メイドA「優しいですね~、それにとっても可愛いです」スリスリ

 

りぜ「これからも、ねむるときだけはいっしょにいてくれるか?」

 

メイドA「もちろんです。ずっと一緒に寝ましょうね~」

 

りぜ「うん……//」

 

メイドA「お嬢様、大好きです」

 

りぜ「わたしも……す……うぅ~……//」

 

メイドA「♪」ホッペ チュ

 

りぜ「ぁ……ぇへへ//」ニヘラ

 

 

 

――

――――

――――――

 

 

 

――――――――――――――――――――――

 

 

 

――甘兎庵 PM5:48――

 

 

リゼ「ん……すぅ……」Zzz

 

千夜(幸せそうな寝顔、ほほえま~)ニコニコ

 

ガラッ

 

シャロ「千夜~、いる?」

 

千夜「あらシャロちゃん、いらっしゃい」

 

シャロ「って、リゼ先輩!」

 

千夜「♪」シーッ

 

シャロ「あっ……」サッ

 

千夜「ずいぶん疲れがたまってたみたい」

 

シャロ「リゼ先輩が珍しいわね」

 

シャロ(先輩の寝顔かわいい……)

 

千夜「小さい頃の夢でも見てたりして」

 

シャロ「そういえば、リゼ先輩の小さい頃の話しってあまり聞かないわね」

 

千夜「きっと幸せいっぱいだったんじゃないかしら」

 

シャロ「どうして?」

 

千夜「リゼちゃん、とっても心があたたかいもの。それに、ここあちゃんに対する愛情を見ていれば分かるわ」

 

シャロ「……確かにそうね」

 

千夜「大事な思い出がたくさんあるんだと思う」

 

シャロ(小さい頃の思い出……リゼ先輩の)

 

リゼ「」Zzz

 

 

 

――――――

――――

――

 

 

――――――――――――――――――――――

 

 

 

―― 十数年前 天々座家 リゼの部屋――

 

 

りぜ「よし!そのままはしれ!」※ゲーム中

 

メイド「」コクリ

 

りぜ「くりあだ!よくやったぞ!」

 

メイド「」グッ

 

りぜ「あいつよりぜんぜんじょうずだな、おまえは」

 

メイド「」テレテレ

 

りぜ「つぎはもりのなかみたいだ。てきがみえにくいからきをつけろ」

 

メイド「」コクコク

 

 

タイリョクカイフクシタカ? ブキヲカエテオケヨ

 

 

使用人「………………」ドアノソト

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――

 

 

 

――リゼ父の部屋――

 

 

リゼ父「どうだ?あいつの様子は?」

 

使用人「お嬢やみなさんのおかげで上手くいっているようです」

 

リゼ父「そうか、リゼの目に狂いはなかったわけだ」シンブン バサッ

 

使用人「あの」

 

リゼ父「なんだ?」

 

使用人「メイド長のあの方なんですが」

 

リゼ父「あいつに惚れたか?」

 

使用人「…………」

 

リゼ父「冗談だ、そんな怖い顔するな。で、あいつがどうした?」

 

使用人「いえ……いつからここにいらっしゃるのか気になって」

 

リゼ父「プライバシーのことは答えられん」

 

使用人「ですね、失礼しました」

 

リゼ父「……5年前」

 

使用人「?」

 

リゼ父「遠くのある地域でテロがあってな」

 

使用人「テロ……」

 

リゼ父「ケミカルウエポンが使われた厄介なものだった」

 

使用人「5年前なら既にCWCが敷かれていたはずでは?」

 

リゼ父「そんな大規模なものじゃない」

 

使用人「…………」

 

リゼ父「小規模のテロがどれほどタチが悪いのかはお前も知ってるだろう。生物兵器はことさらな」

 

使用人「施設事故で片付けられたわけですか」

 

リゼ父「ああ。俺が駆け付けた頃には手遅れだった」

 

使用人「鎮圧はできても犠牲は戻らない……」

 

リゼ父「あいつの父親はその小規模な争いに巻き込まれた」

 

使用人「…………」

 

リゼ父「まだ小さい妹もいたらしいが、そちらも行方知れずだ」

 

使用人「そうですか……」

 

リゼ父「それからずっとこの家の家族だ。これくらいでいいか?」

 

使用人「充分です。しかし……良かったのです?」

 

リゼ父「お前はこんな話くらい慣れているだろう」

 

使用人「いえ、そういう意味では」

 

リゼ父「知ってよそよそしくなるような気の弱いやつには教えん。たとえ公にしてもかまわないと本人に言われててもな」

 

使用人「なるほど。賢明な判断ですね、では」

 

リゼ父「ああ」バサッ

 

ガチャッ バタン

 

リゼ父「………………」

 

リゼ父(喋ったらのどが渇いた)スッ

 

ピッ

 

リゼ父「聞こえるか?」

 

メイドA『はい旦那様、いかがされました?』

 

リゼ父「飲み物を持ってきてくれ」

 

メイドA『ナイスタイミングです、たったいま買い物ついでにみんなのドリンクを買ってきたところですよ~』

 

リゼ父「ほう、気が利くな」

 

メイドA『どれになさいます?』

 

リゼ父「なんでもあるのか?」

 

メイドA『ざっと30種類です』フンス

 

リゼ父「メロンソーダはあるか?」

 

メイドA『はい、すぐにお持ちしますね~』

 

リゼ父「ああ」ピッ

 

 

 

 

メイドA「旦那様?」トントン

 

リゼ父「入れ」

 

メイドA「お待ちかねのメロンソーダです」ドヤッ

 

リゼ父「ごくろう」

 

メイドA「ボトルのままだと味気ないのでグラスに移してみました」

 

リゼ父「ほう、いいな」

 

メイドA「バニラアイスも浮かべてみました」

 

リゼ父「さすがだ」

 

メイドA「溶けないうちにどうぞ~」ゴトッ

 

リゼ父「今日は休暇をやる。どこかに行ってこい」

 

メイドA「あら、いいんですか?それではお嬢様をお借りしますね~」

 

リゼ父「ふっ……休暇か?」

 

メイドA「はい、一番贅沢な」

 

リゼ父「好きにしろ」

 

メイドA「ありがとうございます」

 

 

 

―――――――――――――――――――――――

 

 

 

――リゼの部屋――

 

 

りぜ「いまだ!」

 

メイド「!」ポチポチ

 

りぜ「いいえんごだぞ!」

 

メイド「」グッ

 

りぜ「やった!くりあだ!」

 

メイド「♪」パチパチ

 

トントン

 

りぜ「ん?」

 

メイドA「お嬢様?」ガチャッ

 

りぜ「おまえか!きいてくれ、こいつすごくげーむがじょうずなんだぞ」

 

メイドA「まぁ、いい親友ができましたね~」

 

りぜ「おまえもいっしょにげーむしよう。はやくこい」グイッ

 

メイドA「ふふ~お嬢様、今日はアウトドアを楽しみませんか?」

 

りぜ「あうとどあ?」

 

メイドA「遠くまでお出かけしません?お嬢様のお友達みんなで」

 

りぜ「!」

 

メイドA「ユラ様も誘って、目指すは幻のケーキ屋さんです!」

 

りぜ「けーきやさん……!いきたい!みんなでいこうっ!」ピョンピョン

 

メイドA「そうと決まれば仲間集めです」

 

りぜ「いっしょにいくぞ!」ガシッ

 

メイド「!」

 

メイドA「まずは一人目ですね」

 

りぜ「あいつもさそおう!おとうさんはむりかな?」

 

メイドA「旦那様はさっき断られちゃいました~」

 

りぜ「それじゃあ5にんでいこう!はやく!」

 

メイドA「はい、お嬢様はあの方を誘ってきてください。わたしたちは用意をしておきますね」

 

りぜ「まかせろ!」タタタ

 

 

メイドA「ふふっ、お嬢様はいつ見ても可愛いです」

 

メイド「…………」

 

メイドA「さて、わたしたちもいきましょう」スッ

 

メイド「!」

 

メイドA「楽しいですから、ねっ?」

 

メイド「…………」

 

――スッ

 

メイドA「手、やっとつないでくれましたね」ニコッ

 

メイド「//」

 

 

 

――

――――

――――――

 

 

 

――――――――――――――――――――――

 

 

 

――甘兎庵 PM5:52――

 

 

リゼ「…………」Zzz

 

千夜「――ちゃん、起きて」

 

リゼ「んっ……?」

 

シャロ「リゼ先輩、そろそろここあを迎えに行く時間ですよ」

 

リゼ「千夜、シャロ……」

 

千夜「おはよう、よく眠れた?」

 

リゼ「そうか……わたし、寝てしまってたのか」

 

千夜「もうすぐ6時よ、ここあちゃんが待ってるわ」

 

リゼ「そんな時間か。すまない千夜、迷惑かけたな」ガタッ

 

千夜「ううん、またいつでも来て」

 

リゼ「シャロも、じゃあな」

 

シャロ「あ……リゼ先輩」

 

リゼ「?」

 

シャロ「楽しい夢でも見てました?」

 

リゼ「えっ?」

 

千夜「リゼちゃん、すごく幸せそうな顔してたから」

 

リゼ「……そうだな」

 

リゼ「ここあと同じ歳くらいの頃の夢だ」

 

シャロ「ここあと……」

 

千夜「リゼちゃんの小さい頃のお話、今度聞かせてもらえる?」

 

リゼ「ああ、いいぞ。それじゃあな」

 

ガラッ バタン

 

 

シャロ「ここあと同じ年くらいってことは、13年くらい前よね」

 

千夜「まだシャロちゃんが純真で可愛かったころね、懐かしいわ」

 

シャロ「ひねくれたのは千夜のせいでしょ!?」

 

 

 

――――――

――――

――

 

 

 

――――――――――――――――――――――

 

 

 

―― 十数年前 帰り道――

 

 

りぜ「…………」Zzz

 

メイドA「♪~♪♪」

 

りぜ「……?」

 

メイドA「おや~?お嬢様、目が覚めましたか」

 

りぜ「わたし……ねてたのか?」ゴシゴシ

 

メイドA「はい、ケーキを食べた後ぐっすりと」

 

りぜ「あいつらは?ゆらは?」

 

メイドA「お二人はユラ様を家まで送り届けてくださってます」

 

りぜ「そっか……もっとあそびたかったのに」

 

メイドA「またいつでもあそべますよ~気を落とさないでくださいな」

 

りぜ「…………」ギュッ

 

メイドA「ん……?どうされました?」

 

りぜ「ずっと……いっしょだよな……?」

 

メイドA「はい、ずっと一緒です」

 

りぜ「おとなになっても、ずっと?」

 

メイドA「ずーっとずーっと一緒です」

 

りぜ「やめたりしない?いなくなったりしないか?」

 

メイドA「しませんよ~、ずっとお傍にいます」

 

りぜ「うん……」

 

メイドA「クスッ、お嬢様は心細くなるといつもそれを訊きますね」

 

りぜ「だって……ずっといっしょじゃなきゃ、いやだ」

 

りぜ「おまえはわたしの、かぞくでしんゆうだから……」ギュッ

 

メイドA「ふふっ♪……お嬢様」

 

りぜ「なんだ?」

 

メイドA「わたし、なんとなく分かるんです」

 

メイドA「お嬢様は大きくなったら、きっとたくさんご友人.ができますよ」

 

メイドA「友人だけじゃなく、大事な家族も。今よりもっとたくさんの幸せが、お嬢様には必ず訪れます」

 

メイドA「だって、わたしのお嬢様は世界一ですから」

 

りぜ「………………」

 

りぜ「いらない……いい」ギュッ

 

メイドA「?」

 

りぜ「おまえたちみんなが……おまえがずっとそばにいてくれたら、それで」

 

りぜ「おまえといれたら、いちばんしあわせだから……」グッ

 

メイドA「お嬢様……ありがとうございます」

 

メイドA「わたしもですよ」

 

メイドA「これから先、ずっと。お嬢様のことをこうして支えてあげたい」

 

メイドA「ずっと側にいれたら、これ以上ない幸せです」

 

りぜ「…………//」ギュッ

 

 

メイドA「――帰りましょう、わたしたちの家に」ニコッ

 

 

 

 

――

――――

――――――

 

 

 

――――――――――――――――――――――

 

 

 

――帰り道――

 

 

ここあ「…………」Zzz

 

リゼ「………………」

 

ここあ「ふぉぇ……?」

 

リゼ「ここあ、おはよう。目が覚めたか」

 

ここあ「んっ……りぜちゃん?」

 

リゼ「今日はチノとたくさん遊んだんだな」

 

ここあ「うん……」クシクシ

 

リゼ「帰ったらお風呂に入って、そのあとご飯にしよう」

 

ここあ「りぜちゃんもいっしょ?」

 

リゼ「ああ、一緒だぞ」

 

ここあ「ん……//」ギュッ

 

リゼ「………………」

 

ここあ「りぜちゃん……ずっと」

 

ここあ「ずっと一緒だよ……//」ポスッ

 

リゼ「当たり前だろ」

 

リゼ「ずっと一緒だ……――ずっと」

 

ここあ「……りぜちゃん?」

 

リゼ「…………」

 

ここあ「りぜちゃん……?だいじょうぶ?」

 

リゼ「あ……なんでもないぞ、平気だ」

 

リゼ「さてここあ、帰るか」

 

ここあ「うん!」

 

 

リゼ「――わたしたちの家に」ニコッ

 

 

――おしまい♪

感想

  1. Beyond the Average より:

    今回も天々座家の過去が少し明らかになりましたね!私はメイドAさんがメイドBさんの姉なのかと思っていたので、メイドAさんの妹が消息不明なのは驚きました。
    あと、使用人さんが起こされてメイドAさんに威嚇(?)したのはまるで獣のようで怖かったです。よほど暗い過去をお持ちなのかと…。
    お話の終盤でメイドAさんがずっと一緒だと言っているシーンが気になりました。(←最新話「一緒にいて」を先日読んだのでさらに引っかかるのです)
    現在の世界にメイドAさんが出ていないので「ずっと一緒」は成されなかったわけですが、さらにこのお話の最後にリゼがここあにずっと一緒だと言っているのが重なって見えるんですよね。これはリゼとここあの別れを暗示しているのだとしたら悲しいお話だと思いました。

    • 砂水クジラ砂水クジラ より:

      メイドAさんと幼いリゼちゃんの物語、ついにシリーズ化されちゃいました。
      メイドBさんは一体何者で、どのタイミングで天々座家へとやってくるのでしょうね。
      恐らく使用人さん、寝ている時に触れられると警戒心から敵だと錯覚してしまうのでしょうね。過去に辛い経験をしているのだと思います。

      Beyondさん、なかなか鋭いですね。
      そうなんです。このシリーズの未来であるここあちゃんシリーズでは、メイドAさんはどこにもいないのですよ。
      つまり、メイドAさんとりぜちゃんの約束は守られなかったということなんです。
      未来のリゼちゃんがここあちゃんとの約束に対してどことなく悲しい雰囲気を醸し出しているのは、きっと過去に自分がメイドAさんと同じような約束をして、それがなんらかの理由で守れなかったことを思い出しているのだと思います。
      過去の天々座家にいったい何があったのか、今後も続編でお楽しみください。

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