ごちうさSS 千夜「無窮の夜」 その2

 

 

ごちうさSS 千夜「無窮の夜」 その1(閲覧注意)

 

……

…………

………………

 

 

――AM6:02 リゼの部屋――

 

 

リゼ「幻覚が見える……?」

 

千夜「……うん」

 

リゼ「退院してからか?」

 

千夜「…………入院してる頃から、ずっと」

 

リゼ「!」

 

千夜「………………」

 

リゼ「事故に遭って、回復してからか」

 

千夜「………………」

 

リゼ「どんなのだ?幻覚って」

 

千夜「………………」

 

リゼ「言いにくいか?」

 

千夜「お月様が、口を開けて近づいてくるの……」

 

リゼ「えっ……」

 

千夜「スーパーのお肉に変な虫がたかってたわ……」

 

リゼ「…………」

 

千夜「シャンプーが黒色になってたり、紙の切れ端とか目玉が家の前に落ちてたり」

 

リゼ「目玉……」

 

千夜「…………」

 

リゼ「……そうか」

 

千夜「…………」

 

リゼ「……辛かったな」

 

千夜「!」

 

リゼ「気付いてやれなかった……ごめん」

 

千夜「……信じてくれるの?」

 

リゼ「ああ」

 

千夜「…………」

 

リゼ「目を瞑っててもか?」

 

千夜「ううん、目を瞑っていれば平気。……でも、変な夢を見るの」

 

リゼ「夢?」

 

千夜「うん……不思議な夢」

 

リゼ「………………」

 

千夜「……ごめんなさい」

 

リゼ「どうして謝るんだ。千夜は悪くないだろ」

 

千夜「………………」

 

リゼ(精神的にかなりまいってるな……ずっと一人で抱え込んでたんだ、無理もない)

 

リゼ「千夜……今日、学校行けるか?」

 

千夜「ええ」

 

リゼ「ほんとか?」

 

千夜「お休みしたらココアちゃんが心配するもの。おばあちゃんも」

 

リゼ「人のことじゃない、わたしが聞いてるのは千夜が大丈夫なのかってことだ」

 

千夜「大丈夫よ、ありがとうリゼちゃん」

 

リゼ「……帰ったら連絡してくれ。一度病院に行こう」

 

千夜「病院?」

 

リゼ「ああ、内科に行けば何か分かるかもしれない」

 

千夜「………………」

 

リゼ「千夜?」

 

千夜「もし……何も分からなかったら、どうしようかしら」

 

リゼ「え……」

 

千夜「一生このまま……」ボソッ

 

リゼ「……あ」

 

千夜「………………」

 

リゼ「そうか……そうだよな」

 

リゼ「でもな、千夜?このままだときっと何も解決しないと思う」

 

リゼ「少しでも手掛かりが掴めそうなら、行ってみないか?」

 

千夜「…………」

 

リゼ「わたしも一緒に付いていくから、なっ?」

 

千夜「……うん」

 

リゼ「大丈夫だ、きっと。心配するな」ナデナデ

 

千夜「ん…………」

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

――学校――

 

 

リゼ「……………………」

 

 

 

『もし……何も分からなかったら、どうしようかしら』

 

 

 

リゼ「…………」

 

 

 

『一生このまま……』

 

 

 

リゼ「……」

 

リゼ(病院に匙を投げられたりしたら今度こそ本当にすがる場所が無くなる)

 

リゼ(それを理解しているからこそ、入院中も黙っていたんだろうな)

 

リゼ(わたしやみんなにこのことを言えなかったのも、迷惑をかけたくない気持ち半分、信じてもらえないで孤立するのを恐れる気持ち半分ってところか……)

 

リゼ(千夜がメンタル脆くて臆病なのは前から何となく分かっていたけど)

 

リゼ「………………」チラッ

 

リゼ(……大丈夫かな)

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――

 

 

 

――――――

 

――――

 

――

 

 

 

 

 

 

千夜「…………!」ハッ

 

ココア「千夜ちゃん?」

 

千夜「あ……ごめんなさい」

 

ココア「ふぉぇ?なにが?」

 

千夜「わたし、いま寝てなかった?」

 

ココア「ううん、少しボーっとしてたけど」

 

千夜「……そう」

 

ココア「大丈夫?保健室行く?」

 

千夜「平気よ、ちょっと眠かっただけ」

 

ココア「お昼休みの後の授業って眠たくなるよね」

 

千夜「うん……」

 

千夜「………………」

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――

 

 

 

――リゼの部屋――

 

 

リゼ(……………………)

 

トントン

 

リゼ「?」

 

千夜「リゼちゃん、こんにちは」ガチャッ

 

リゼ「千夜……迎えに行くって言ったのに」

 

千夜「歩けるから大丈夫」

 

リゼ「今は、平気か?」

 

千夜「うん」

 

リゼ「行こうか」

 

千夜「…………リゼちゃん?」

 

リゼ「ん?」

 

千夜「もし、お医者さんにも原因が分からないって言われたら……」

 

 

 

 

千夜「それでも、信じてくれる……?助けてくれる……?」

 

 

 

 

リゼ「………………」

 

 

――ポンッ

 

 

千夜「!」

 

リゼ「当たり前だろ」ナデナデ

 

リゼ「千夜のこと疑ったりしない、見捨てたりもしない」

 

リゼ「わたしはずっと千夜の味方だぞ……だから安心しろ」

 

千夜「……うん」

 

千夜「ありがとう、リゼちゃん……」ギュッ

 

リゼ(誰にも苦しみが分かってもらえないのが、余計につらいよな……)ナデナデ

 

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

――PM6:20  帰り道――

 

 

千夜「………………」

 

リゼ「………………」

 

千夜「…………」

 

リゼ「…………」

 

千夜「…………」ピタッ

 

千夜「リゼちゃん……今日は付き合ってくれてありがとう」ニコ

 

リゼ「千夜……」

 

千夜「お薬貰ったから、これを飲んでゆっくり治していくわ」

 

リゼ「…………ごめん」

 

千夜「ううん、本当は分かってたの。リゼちゃんのせいじゃない」

 

リゼ「………………」

 

千夜「大丈夫よ、きっと症状も良くなってくると思うから」

 

リゼ「っ……千夜――」

 

千夜「またね」フリフリ

 

リゼ「あっ……」

 

リゼ「……………………」

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――

 

 

 

――PM8:22 甘兎庵――

 

 

千夜「…………」スッ

 

千夜「……んっ?」

 

アンコ「」ピョン

 

千夜「アンコ、おかえり」

 

アンコ「」フム

 

千夜「」ヒョイ

 

アンコ「?」

 

千夜「今日ね、病院に行ったの」

 

アンコ「……」

 

千夜「ねぇ、アンコ?」

 

 

 

千夜「この病気、治るかな……」

 

 

 

アンコ「……」

 

お婆「千夜、早く風呂入りな」ガラッ

 

千夜「おばあちゃん」

 

お婆「ん、薬?熱でもあるのかい?」

 

千夜「ううん、ちょっと風邪気味なだけ」

 

千夜「………………」

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――

 

 

――――――

――――

――

 

 

――早朝――

 

 

千夜「……………………」

 

 

 

 

――――――――――――――――――――

 

 

――通学路――

 

 

千夜「……………………」

 

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

――千夜の部屋――

 

 

千夜「……………………」

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

 

――1週間後 甘兎庵――

 

 

ザー ザー

 

千夜「………………」マドノソト

 

アンコ「」ピョンピョン

 

千夜「………………」

 

アンコ「」ピョンピョン

 

千夜「あ…………」

 

千夜「アンコ……?おかえり」

 

アンコ「」

 

千夜「こんな大雨の中外に行ってたの?待ってね、タオル持ってくるわ」

 

アンコ「」フムフム

 

 

 

千夜「…………」フキフキ

 

アンコ「」プルプル

 

お婆「千夜、ちょっと買い物に出てくるよ」

 

千夜「わたしが行ってくる」

 

お婆「いいから部屋にいな」

 

千夜「平気よ、おばあちゃんこそ雨で転んだりしたら大変でしょう」

 

お婆「…………」

 

千夜「綺麗になったわね……たぶん」ボソッ

 

アンコ「」フンス

 

千夜「行ってきます」

 

お婆「待ちな、千夜」

 

千夜「?」

 

お婆「最近何か変じゃないかい?無理なダイエットでもしてるんじゃ無いだろうね?」

 

千夜「してないわ、大丈夫」

 

お婆「……学校で、なにかあったのかい?」

 

千夜「ううん、毎日すごく楽しいもの」

 

お婆「………………」ジッ

 

千夜「おばあちゃん?」

 

お婆「ふん、嘘はついてないね」

 

千夜「うん」

 

お婆「とにかく、ウチは夜更かしも無理なダイエットも禁止だよ」

 

千夜「わかってる。行ってきます」

 

ガラッ バタン

 

お婆「………………」

 

お婆「アンコ、あんた何か知らないかい」ヒョイ

 

アンコ「………………」

 

お婆「まったく……」

 

アンコ「」

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――

 

 

 

ザー ザー

 

 

千夜「………………」

 

 

 

千夜「…………」

 

千夜(あ……車……)スッ

 

 

――バシャッ!

 

 

千夜「きゃっ……」

 

千夜「…………」ポタポタ

 

千夜(かかっちゃったわ……ハンカチ……)スッ

 

千夜「…………」フキフキ

 

千夜(さっきの車、本物だったのね……良かった……)

 

千夜「………………」

 

 

―――――――――――――――――――――

 

 

――スーパーマーケット――

 

 

ガヤガヤ ワイワイ

 

 

千夜「………………」

 

千夜(じゃがいも……どこかしら)

 

千夜(……これ)

 

千夜「…………」

 

千夜「…………真っ黒」

 

 

 

―――――――――――――――――――――

 

 

――帰り道――

 

 

ザー ザー

 

 

千夜「………………」

 

千夜「…………」

 

千夜「……」

 

 

 

千夜「」

 

千夜「ハァ……ハァ……」

 

――ツルッ

 

千夜「ひゃっ……!」バシャッ!

 

千夜「あ…………」

 

バサッ――コロコロ

 

 

千夜「…………」

 

 

ザー ザー

 

 

千夜「…………」

 

 

ザー ザー

 

 

千夜「…………」

 

 

 

―――――――――――――――――――――

 

 

 

 

ザー ザー

 

 

リゼ「………………」

 

リゼ(この1週間、色々と調べてみたが……手がかりも何もない)

 

リゼ(……帰りに千夜のところに寄ってみるか)

 

リゼ「…………――!?」

 

 

 

千夜「…………」ポタ…ポタ…

 

 

 

リゼ「千夜っ!」タタタ

 

千夜「……?」

 

リゼ「大丈夫か!?しっかりしろっ!」

 

千夜「……リゼちゃん?」

 

リゼ「ケガしてないか!?」

 

千夜「………………」

 

リゼ「っ……とりあえずわたしの家に来い!」

 

千夜「でもお買い物……おうちに届けないと」

 

リゼ「あとでいい!早く!」

 

千夜「…………」

 

リゼ「この買い物袋と傘だけ持っていろ」

 

千夜「…………」

 

リゼ「ほら、背中におぶされ」

 

千夜「………………」ギュッ

 

リゼ「寒いだろう……帰ったらすぐにお風呂に入れてやるから」

 

千夜「………………」

 

リゼ(軽い……こんなになって……)

 

千夜「リゼちゃん……」

 

リゼ「?」

 

千夜「ごめんなさい」

 

リゼ「……!」

 

 

千夜「わたし、大丈夫だから……迷惑かけないから……」

 

 

千夜「もう、平気だから……」

 

 

リゼ「……っ」

 

 

千夜「ごめんなさい……」

 

 

千夜「……ごめんなさい」

 

 

千夜「ごめんなさい……ごめんなさい……」

 

 

リゼ「…………」グスッ

 

 

千夜「わたし、大丈夫……平気……」

 

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

――リゼの部屋――

 

 

リゼ「そうか……転んだだけか」

 

千夜「ええ、ありがとう。もう大丈夫」

 

千夜「おばあちゃんが待ってるわ。早く帰らないと」

 

リゼ「…………」

 

千夜「リゼちゃん、迷惑かけてごめんなさい。明日お詫びに好きな和菓子でも持って――」

 

リゼ「迷惑なんてかかってない」

 

千夜「!」

 

リゼ「千夜……前より症状、酷くなってるんじゃないのか?」

 

千夜「ううん、そんなこと――」

 

 

 

リゼ「視線、合ってないぞ」

 

 

 

千夜「え……」

 

リゼ「わたしのこと、見えてるか?」

 

千夜「………………」

 

リゼ「千夜……わたしはお前のことを信じてる。疑ったりしてない」

 

リゼ「お前の目や表情を見ていれば本当かどうかなんてわかる。……どれだけお前が苦しんでいるのかも」

 

リゼ「だから、千夜もこの前言ったわたしの言葉……信じてくれないか?」

 

 

リゼ「わたしはずっと――千夜の味方だから」

 

 

千夜「………………」

 

千夜「…………」

 

千夜「……」

 

千夜「リゼちゃん……――どこ?」

 

リゼ「……ここだぞ」

 

千夜「このぼろぼろのぬいぐるみ?」

 

リゼ「違う、ここだ」スッ

 

千夜「この肉塊?」

 

リゼ「……ああ」

 

千夜「手……握って?」

 

リゼ「…………」ギュッ

 

千夜「ほんとう。暖かい、リゼちゃんの手」

 

リゼ「……千夜」

 

千夜「もう何も分からなくなってきたの……」

 

千夜「みんなのことも、リゼちゃんのことも、声だけでしか分からない……」

 

千夜「世界でひとりぼっちになったみたい……」ポスッ

 

リゼ「側にいるぞ、ちゃんと」

 

千夜「リゼちゃんの顔、もっと見ておけば良かったわ」

 

千夜「ココアちゃんのことも、チノちゃんのことも、シャロちゃんのことも、おばあちゃんも……」

 

リゼ「……っ」

 

千夜「そう……この肉塊が……」スッ

 

千夜「リゼちゃんだけでも、元に戻らないかしら……」

 

リゼ「千夜……っ!」ギュッ

 

千夜「……?」

 

リゼ「っ……!」ポロポロ

 

千夜「リゼちゃん……泣いてるの……?」

 

リゼ「ああ……悲しかったり辛かったりしたら、誰だって泣く……!」

 

リゼ「だから、千夜も泣いていい……!」

 

千夜「…………」

 

リゼ「もう抱え込まなくていいから……!辛いなら、たくさん泣いてくれ……!」

 

千夜「………………」

 

 

――ポスッ

 

 

千夜「…………」ポロポロ

 

リゼ「千夜……?」

 

千夜「…………」ポロポロ

 

リゼ「っ……辛いよな……苦しいよな……」ポロポロ

 

千夜「…………」スッ

 

リゼ「……!千夜……?」

 

千夜「……………………」

 

リゼ「おい……!千夜!おいっ!?」

 

千夜「…………」

 

リゼ「千夜っ!!」

 

 

感想

  1. ごちうさ難民のキャラメルさん より:

    千夜ちゃん…本当に何が見えているのか分からなくなっているんだね…    最後の「この肉塊?」って言った時にかわいそうすぎて仕方がなかったです。これからどんな展開になっていくか楽しみです。

    • 砂水クジラ砂水クジラ より:

      次回で最終話です。
      いったいどんな結末なのか、続編でお楽しみください。

  2. ココリゼは正義 より:

    千夜ちゃんがかわいそすぐる…    どんなに千夜ちゃんが精神的にダメージを受けてもリゼさんが受け止めてあげているのがとても複雑な感情になります…このシリーズ結構好きです          PS.体には気をつけてください

    • 砂水クジラ砂水クジラ より:

      悲しいことに、このお話が終わり次第当シリーズは路線変更となってしまいます。
      ありがとうございますm(__)m

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