ごちうさSS リゼ「残酷な千夜」

 

――休日 甘兎庵 AM8:04――

 

 

千夜「………………」

 

千夜「アンコ、今日は少し曇りね」

 

アンコ「」コクコク

 

千夜「お昼からいい天気になったりしないかしら」

 

アンコ「………………」

 

千夜「おいで~」

 

アンコ「………………」

 

千夜「ダメ?」

 

アンコ「」ピョンピョン

 

千夜「ありがとう」ギュッ

 

アンコ「」フムフム

 

千夜「…………」

 

千夜「………………」チラッ

 

千夜「頑張らないとね」

 

アンコ「…………」コクリ

 

 

――トントン

 

 

千夜「はーい」

 

チノ「あの……」ガラッ

 

千夜「あらチノちゃん、いらっしゃい」

 

チノ「おはようございます、千夜さん」

 

千夜「遊びに来てくれたの?いまお茶を入れるわね」

 

チノ「あっ、いえ、すぐに帰らないといけませんので」アセアセ

 

千夜「せっかく来てくれたのに何もおもてなししないなんて悲しいわ、少しだけ待ってて」

 

チノ「……ありがとうございます」

 

千夜「ううん」ニコッ

 

 

 

千夜「お待たせしました」コトッ

 

チノ「…………」

 

千夜「ココアちゃんは?」

 

チノ「まだ寝てます、恐らく11時ごろまで起きてこないかと」

 

千夜「ねぼすけさんね、ココアちゃんらしいわ」

 

チノ「…………」ズズッ

 

チノ「……」モグモグ

 

千夜「おいしい?」

 

チノ「はい、とっても」

 

千夜「そう、良かったわ」

 

チノ「………………」

 

千夜「リゼちゃんは今日はお休み?」

 

チノ「はい、甘兎庵に行くと言ってました」

 

千夜「来てくれるのね、楽しみ」

 

チノ「……シャロさんは?」

 

千夜「シャロちゃんならまだおうちで寝てると思うわ、今日はアルバイトが忙しいみたい」

 

チノ「そうですか」

 

千夜「………………」

 

チノ「……えっと」

 

千夜「ありがとうチノちゃん」ナデナデ

 

チノ「ぁ……」

 

千夜「そろそろ時間よね」

 

チノ「……はい」

 

千夜「またゆっくり来てね、待ってるわ」

 

チノ「……千夜さん」

 

チノ「………………っ」

 

 

――ガラッ

 

 

リゼ「あ……チノ」

 

チノ「リゼさん……」

 

千夜「リゼちゃん、おはよう」

 

リゼ「おはよう、千夜」

 

リゼ「…………」

 

チノ「リゼさん、その……」

 

リゼ「チノ、そろそろラビットハウスの時間だろう?」

 

チノ「は、はい……」

 

リゼ「帰らないと遅れるぞ」

 

チノ「……失礼します」

 

チノ「千夜さん、ではまた」

 

千夜「またね、チノちゃん」フリフリ

 

リゼ「………………」

 

 

ガラッ バタン

 

 

リゼ「…………」

 

千夜「お手伝いに来てくれたの?」

 

リゼ「違うよ、わたしはただのお客だ」

 

千夜「すぐに帰っちゃう?」

 

リゼ「いや、千夜さえよかったらずっといてもいいか?混んできたら奥に下がっておくから」

 

千夜「ほんと?嬉しい、ありがとうリゼちゃん」

 

リゼ「なにかあったら、頼れよ……?」

 

千夜「ううん、大丈夫」

 

リゼ「……そうだな」

 

千夜「倒れたりしたら助けてくれる?」

 

リゼ「当たり前だろう!!本当ならもっと……!」

 

千夜「!」

 

リゼ「あっ……いや、なんでもない。……ごめん」

 

千夜「…………」クスッ

 

千夜「リゼちゃんは優しいわね」

 

リゼ「優しくなんか、ない」

 

千夜「ううん、優しい」

 

千夜「……お客さんとして助けに来てくれるところとか」

 

リゼ「!」

 

千夜「今までたくさん損してきたでしょう?」

 

リゼ「…………っ」

 

千夜「冷たいなんて思ってないわ。むしろ……」

 

リゼ「やめろ、千夜」

 

千夜「…………」

 

リゼ「……買い被りだ」

 

千夜「…………」

 

リゼ「お前のこと、特別扱いなんてしてない」

 

千夜「……そう」

 

リゼ「………………」

 

千夜「…………雨、降りそうね」

 

リゼ「……おばあさんは?」

 

千夜「厨房にいるわ」

 

リゼ「そうか……」

 

千夜「おばあちゃんも、リゼちゃんと同じで優しいの」

 

リゼ「わたしは違う」

 

千夜「くすっ……そうね」

 

リゼ「………………」

 

千夜「面倒って思ってる?」

 

リゼ「そんなはずないだろう」

 

千夜「ほんとう?」

 

リゼ「ああ」

 

千夜「…………」ジッ

 

リゼ「…………」

 

千夜「……嘘つきね」

 

リゼ「嘘じゃない」

 

千夜「分かってる。だからね、やっぱり優しいわ」

 

リゼ「………………」

 

千夜「意地悪だった?」クスッ

 

リゼ「……千夜だって、わざと損ばかりしてるじゃないか」

 

リゼ「わたしなんかよりも、ずっと」

 

千夜「ただ性格が悪いだけだったりして」

 

リゼ「千夜っ!」

 

千夜「…………」

 

リゼ「冗談でもやめろ」

 

千夜「……ごめんなさい」

 

リゼ「わたしのほうこそすまない……怒鳴ってばかりだな」

 

リゼ「ちょっと外の空気を吸ってくるよ」ガラッ

 

リゼ「あ、三色団子貰えるか?すぐに戻ってくるから」

 

千夜「うん」

 

ガラッ バタン

 

千夜「…………」スッ

 

千夜「――!?」ガクッ

 

リゼ「どうした!?」ガラッ

 

千夜「あ……」

 

リゼ「千夜、大丈夫か!?」

 

千夜「少しふらついただけよ」

 

千夜「平気だから、ほら」

 

リゼ「………………」

 

千夜「いつもと同じ……ねっ?」

 

リゼ「……千夜」

 

千夜「心配いらないわ、リゼちゃんはゆっくりしてて」

 

リゼ「…………」

 

リゼ「……わかった」

 

リゼ「そうだよな……千夜は、大丈夫だもんな」

 

千夜「ええ、何も変わらないわ」

 

リゼ「……ああ」

 

千夜「リゼちゃん、そんな悲しい顔しないで」

 

リゼ「してない、わたしは普段通りだ」

 

千夜「クスッ……そうね」

 

リゼ「………………」

 

 

 

―――――――――――――――――――――

 

 

 

千夜「雨、止まないわね……」

 

リゼ「結構降り出してきたな……この調子だと、たぶんラビットハウスもガラガラだ」

 

千夜「おばあちゃんはさっき出かけちゃったし」

 

リゼ「買い物だって言ってたな」

 

千夜「……二人きりね」

 

リゼ「そうだな」

 

千夜「座ってもいい?」

 

リゼ「当たり前だろう」

 

千夜「向かいじゃなくて、リゼちゃんの隣に」

 

リゼ「いいぞ、ほら」

 

千夜「…………」スッ

 

リゼ「千夜も何か食べるか?もちろんわたしの奢りだ」

 

千夜「ううん」

 

リゼ「お腹すいてないのか?」

 

千夜「………………」

 

リゼ「ならコーヒーでもどうだ?缶コーヒーだけど」

 

千夜「リゼちゃん、気を遣わないで」

 

リゼ「……気なんか遣ってない」

 

千夜「こうして会いに来てくれただけで充分」

 

リゼ「千夜に会いに来たわけじゃないぞ、何も理由が無い……」

 

千夜「……うん」

 

リゼ「………………」

 

千夜「………………」

 

 

千夜「……心配ないでしょう?」

 

 

リゼ「………………」

 

リゼ「……心配だよ」

 

千夜「えっ?」

 

リゼ「心配だ……でも、千夜がそういうなら……」

 

リゼ「……信じるしか、ないだろう」

 

千夜「……」

 

リゼ「本当は、こんなところに座っていたくなんかない……」

 

リゼ「できることなら、千夜の代わりに全部してあげたい……」ギリッ

 

千夜「……リゼちゃん」

 

リゼ「嘘つきでもいい……なんとでも言え……これがわたしの本心なんだ……」グスッ

 

リゼ「……ごめん」

 

千夜「……………………」

 

 

千夜「リゼちゃん……――おいで」

 

リゼ「え……?」

 

千夜「もたれ掛かって来て」

 

リゼ「…………」

 

――ギュッ

 

リゼ「……!」

 

千夜「……」ナデナデ

 

リゼ「千夜……?」

 

千夜「よしよし……リゼちゃんは優しいわね」

 

千夜「いい子いい子……」

 

リゼ「…………っ」

 

千夜「我慢できなくなっちゃった……?」

 

千夜「わたしの気持ちを尊重して……ずっと嘘を付いてくれてたものね」

 

千夜「ごめんなさい……ありがとう、リゼちゃん」ナデナデ

 

リゼ「……千夜」ポロポロ

 

千夜「でももう大丈夫だから……安心して」

 

リゼ「大丈夫なわけないっ!!」

 

千夜「!」

 

リゼ「……千夜っ」ギュッ

 

千夜「リゼちゃん……」

 

リゼ「もう、無理しないでくれ……!」ポロポロ

 

千夜「ううん……無理なんて」

 

リゼ「じゃあどうして走れない!?」

 

千夜「!」

 

リゼ「どうして転ぶんだっ!?……どうして」

 

 

リゼ「ならどうして……お前はそうやって、ひとりきりで頑張ってるんだ……!」ポロポロ

 

 

千夜「…………」

 

リゼ「千夜……頼む……」

 

リゼ「正直に、言ってくれ……」ポロポロ

 

千夜「…………」

 

千夜「……リゼちゃん、わたしね」

 

千夜「みんなのこと、大切なの」

 

千夜「ココアちゃんのことも、チノちゃんのことも」

 

千夜「リゼちゃんのことも、シャロちゃんのことも、ね」

 

千夜「あの事故以来、シャロちゃん……ずっと笑ってくれないわ」

 

リゼ「それは……!」

 

千夜「気にしてるのずっと……とっても優しいから、シャロちゃんは」

 

千夜「もう一度シャロちゃんに笑ってほしい……前みたいに、仲良しの幼馴染に戻りたい」

 

千夜「またみんなと笑い合いたい……」

 

千夜「だから……早く取り戻さないといけないの」

 

リゼ「……っ」

 

千夜「心配しないでリゼちゃん、もう少しで元通りに――」

 

 

リゼ「いい加減にしろ!!」

 

 

千夜「!」ビクッ

 

リゼ「千夜……よく聞け」

 

リゼ「無くしてしまったものは元に戻せる。でもな、失ってしまったものはもう二度と元には戻らないんだ!」

 

リゼ「どれだけお前が頑張っても、ひとりで全てを背負い込んでも!わたしたちはみんな元のようには戻れない!」

 

リゼ「前と同じようにお前と接することなんて、できない……」ポロポロ

 

千夜「…………」

 

リゼ「運動嫌いだからこれで体育に参加しなくて済むだと……カッコいいから平気だと……」

 

リゼ「嘘を付け!」

 

千夜「――!」

 

リゼ「もう、これ以上……頑張らないでくれ……」

 

リゼ「わたしたちを……シャロを、苦しめないでくれ……っ」

 

千夜「……………………」

 

 

――ストン

 

 

リゼ「千夜!」

 

千夜「イスから落ちちゃったわ……」

 

千夜「……転んだらね、なかなか起き上がれないの」

 

リゼ「……ああ」

 

千夜「夜中にお手洗いに行く時も、すごく大変なの……」

 

リゼ「……ああ」グスッ

 

千夜「御盆三刀流も、できなくなっちゃったの……」

 

リゼ「…………」

 

千夜「……本当は……泣きたいくらい辛い……」グスッ

 

千夜「でも……泣いたら、もう元に戻れないと思って……」ポロポロ

 

千夜「っく……ひっく……!」ポロポロ

 

リゼ「千夜……」ギュッ

 

千夜「ごめんなさい……わたし……」ポロポロ

 

リゼ「誰だって辛い、当たり前だろう」

 

千夜「リゼちゃん……わたし、どうしたらいいの……?」

 

千夜「元に戻れないのなら……わたしはシャロちゃんにどうしてあげたらいいの……?」ポロポロ

 

リゼ「……千夜は、もしシャロが自分と同じ境遇にいたら、どうしてあげたい?」

 

千夜「えっ……?」

 

リゼ「どうにかして力になってあげたい……違うか?」

 

リゼ「元に戻れなくたっていいじゃないか」

 

リゼ「誰も千夜のこと疎ましくなんて思わない……」

 

リゼ「だから、これからはたくさん頼ってくれ」

 

リゼ「千夜のこと、みんなで支えるから……」ナデナデ

 

千夜「…………」ポロポロ

 

リゼ「そうしたら、シャロもきっとまた笑顔になってくれるよ」

 

千夜「……ふふ」

 

千夜「そうね……」グスッ

 

千夜「リゼちゃん……ありがとう」ゴシゴシ

 

リゼ「立てるか?ゆっくりな」

 

千夜「大丈夫……」

 

千夜「リゼちゃんが支えてくれてるから、簡単よ」

 

リゼ「クスッ……ああ」

 

 

ココア「千夜ちゃん……?」ガラッ

 

千夜「ココアちゃん、いらっしゃい」

 

ココア「千夜ちゃん転んだの!?大丈夫!?――あっ、ううん、じゃなくて……その……!」

 

千夜「心配してくれてありがとう」ニコッ

 

ココア「えっ……千夜、ちゃん?」

 

千夜「ココアちゃん……ごめんなさい」

 

千夜「わたし、もう強がったりしないから」

 

千夜「辛い時は素直に言うわ」

 

千夜「――助けてって」

 

ココア「……!」

 

千夜「助けてくれる?」

 

ココア「もちろん!これからは千夜ちゃんもわたしの妹だよーっ!」ギュッ

 

千夜「きゃっ」

 

リゼ「急に飛びつくな、危ないだろ」グイッ

 

ココア「あうぅ、千夜ちゃんモフモフするの2週間ぶりなんだからさせて~!」

 

リゼ「まったく、しょうがないやつめ」

 

千夜「……//」ニコッ

 

 

 

――――――

――――

――

 

 

 

――――――――――――――――

 

 

 

――PM 10:13――

 

 

千夜「……………………」

 

 

――トントン

 

 

千夜「シャロちゃん?」

 

千夜「……聞こえてる?」

 

 

…………………………

 

 

千夜「ありがとう……このままでいいわ」

 

千夜「……あのね、シャロちゃん」

 

千夜「あの日以来、シャロちゃんから笑顔が無くなって……楽しかった毎日が、突然壊れて」

 

千夜「みんなが気を遣ってくれて……シャロちゃんに、何度もごめんなさいって謝られて……」

 

千夜「……わたしね、耐えられなかった」

 

千夜「みんなに申し訳なくて……シャロちゃんの泣いている姿を見るのが嫌で」

 

千夜「もう一度、元の日常に戻りたくて……」

 

 

…………………………

 

 

千夜「だから、わたしが頑張ればいいって思ったの」

 

千夜「前と同じように振舞っていれば……周りに何の不便も感じさせなければ」

 

千夜「もう一度……みんなが、シャロちゃんが笑ってくれるって思った」

 

 

千夜「……でも、間違ってたみたい」

 

 

千夜「そのせいで、みんなを……シャロちゃんを苦しめていたことなんて、今日リゼちゃんに言われるまで全く気付いてなかった」

 

千夜「シャロちゃんの中の罪悪感を膨らませているだけだって……やっとわかったの」

 

千夜「みんなの笑顔を取り戻そうとするために、こともあろうかそれを奪ってて……」

 

千夜「……バカね、わたしって」

 

 

………………………………

 

 

千夜「……シャロちゃん」

 

千夜「わたし……これからもがんばるわ」

 

千夜「でもね、強がりは言わない」

 

千夜「助けてほしい時はちゃんとお願いするから」

 

千夜「元には戻れないけど、でも、今のままでも十分幸せよ」

 

千夜「シャロちゃんやみんなが周りにいてくれれば……これは、本当の気持ち」

 

 

千夜「……わたしがたくさん笑えば、無理せずに生きていれば」

 

 

千夜「また、シャロちゃんも笑ってくれる……?」

 

 

千夜「――幼馴染として、助けてくれる?」

 

 

 

――ギイィ

 

 

 

千夜「……シャロちゃん」

 

 

――ギュッ

 

 

千夜「よしよし……ごめんなさいね」

 

千夜「――ううん、謝るのはわたしよ……」グスッ

 

千夜「優しいシャロちゃんに、ずっと無理させてたわね……」ポロポロ

 

千夜「これからはわたしも無理しない……ちゃんとシャロちゃんのこと、頼りにするから」ポロポロ

 

千夜「――ええ、約束するわ」

 

 

千夜「泣かないで……ごめんなさい……」ナデナデ

 

 

――ピタッ

 

千夜「んっ……?」

 

千夜「ワイルドギース、どうしたの?」ヒョイ

 

千夜「もしかして気にしてる?シャロちゃんとそっくりね」

 

千夜「ワイルドギースのせいじゃないわ、大丈夫」

 

千夜「無事でよかった……」ギュッ

 

千夜「ほら見て、シャロちゃん」

 

千夜「シャロちゃんが支えてくれているおかげで、両手でワイルドギースを抱っこしても転ばないわ」

 

千夜「みんながいれば、シャロちゃんがいてくれれば平気よ」

 

千夜「元には戻れないけど――幸せなまま」

 

千夜「――やっと笑ってくれたわ//」ニコッ

 

千夜「久々に、一緒にお風呂入りましょう」

 

千夜「ううん、ゆっくり歩けば平気よ」

 

千夜「――手?」

 

 

千夜「――ううん……//

 

 

千夜「シャロちゃんの手がいい……//

 

 

千夜「……これからも、よろしくおねがいします」

 

 

千夜「シャロちゃん――だいすき//」 テ ギュッ

 

 

 

………………

…………

……

 

不便・不足・不満は。

 

不幸と、同一の線上には。

 

決して、存在しないものである。

 

自身に足り得ぬものを。

 

不幸と結びつけるのは。

 

常に。

 

己自身に他ならない。

 

 

――おしまい。

感想

  1. SS読むの大好き より:

    久しぶりに返信します。

    これを読んで思った事は、悩み事は一人で抱え込まず誰かに相談する

    泣きたい時は泣き、笑いたい時は笑うということを学びました。

    • 砂水クジラ砂水クジラ より:

      千夜ちゃんのように、優しい人ほど一人で抱え込んでしまうものですからね。

  2. Beyond the Average より:

    病棟の千夜並みに難しい話ですね。(褒めてます)考察意欲が湧きますね!(長~い文章ですみません。)
    まずチノが少しだけ登場する理由が謎だったのですが、「そろそろ時間」=リゼが来る時間から、千夜を交代で見守っていたんだと思いました。ココアが終盤で来たのも交代だから、と読むこともできそうです。
    次にリゼがひたすら千夜の言ったことを打ち消していくので読み迷うことがあったのですが、リゼは面倒だと思ってなくないが、客として来て千夜を助けようとしているので、おばあちゃんと同じで遠回しに優しい人だ、ということだと思いました。
    ということはおばあちゃんが買い物に行ったらしいですが、これも何かの暗示?
    ただリゼがおばあちゃんの所在を気にしていたことから、おばあちゃんが外出して二人だけの空間になるのを期待していたと思えます。
    その後二人は無事に本心を打ち明けました。(おばあちゃんナイス!)
    リゼは「前と同じように千夜に接することはできない」と言いますが、確かにチノもココアも戸惑ってましたね。ここで初めて千夜の後遺症が明らかになり、読み始めからの違和感が理解できるのですが千夜に何があったのか語られないのでさらに不安になりました。
    千夜が独りで頑張り続ける理由がシャロのため、というのは「残酷」だと思いました。(私なら「1人で世界と戦うつもりか!」って言いたくなりますね。)
    みんなで支え合う、という選択肢がもう千夜には見えていなかったのは悲しいです…。ですがリゼがちゃんと気付かせてあげられたのはすごいと思いました。
    元に戻れなくても、笑顔になることが、幸せになることができることを教えてくれるお話でした。

    (余談)千夜の後遺症は残ることが確定していたから仕事を早く再開させていた…?
    あと、病棟の千夜のときのような豪快な考察ができなかったのが申し訳ないし、悔しいです。

    • 砂水クジラ砂水クジラ より:

      考察、誠にありがとうございます。
      みんな千夜ちゃんのことを交代で見守っている、というのはその通りです。
      ですが、リゼちゃんが面倒だと思っているというのは執筆者のわたしの意図したものではありませんね。
      リゼちゃんがあくまで千夜ちゃんを従業員ではなくお客さんとして見守っているのは、千夜ちゃんの一人でも以前と何ら変わりなく動ける、という気持ちを汲んだ上での行為です。
      リゼちゃんは、本当はずっと寄り添って千夜ちゃんのことを助けてあげたいと思っています。
      ですがそれをしてしまうと、千夜ちゃんの頑張りに対して自分が『疑っている・裏切る』ということになってしまうのですよ。
      千夜ちゃんの気持ちを汲むのであれば、何も助けないというのは一番の優しさなのです。
      千夜ちゃんのおばあちゃんもリゼちゃんも、優しいゆえにそれを誰よりも理解しています。
      タイトルの通り、優しさの残酷さというのがテーマですね。

      千夜ちゃんの違和感について作中ではあえて明確に明かしておりませんが。
      後遺症というよりは、実は物理的な部分に問題ができてしまったのですね。
      この辺については、読み手側のご想像に委ねたいと思います。

      長文のご感想、ありがとうございました。
      また、返信が滞ってしまい、申し訳ありませんでしたm(__)m

  3. 虹見だいふく より:

    お久しぶりです。

    私も身体の問題があり、周囲に明るいキャラを演じて現実逃避することがあるので 千夜ちゃんの気持ちが(完璧ではないけど)分かります。

    砂水先生のお話は、ごちうさ(優しい世界)でも、一部現実味があるので共感できる所が多いです。

    • 砂水クジラ砂水クジラ より:

      お久しぶりです、だいふくさん。
      あなたの考察を見る限り、あなたは本作の隠れた真実をご理解されているようですね。
      千夜ちゃんと似た境遇だからでしょうか、カタルシスを汲み取って頂き嬉しい限りです。

      砂水クジラの本来の作風は、現実性と悪い意味で共感できる人間の黒い部分を軸にしたかなり残酷なものでして。
      優しい世界観であるごちうさを描く際にも、本来の作風が上手くマッチングしているのかもしれませんね。
      それ故に賛否両論あるでしょうが、だいふくさんにはお褒めにあずかり、光栄でございます。

  4. ほのうみ より:

    千夜ちゃんは悩みを抱え込み過ぎてるんでしょうね。

    現実味があって、怖いですね。

    僕も千夜ちゃんの気持ちは少なからず、分かります。

    悩みを抱え込まず、周囲の人に相談するのが一番良いですね。

    • 砂水クジラ砂水クジラ より:

      千夜ちゃんの悩みというのは、あえて読者さんのご想像に委ねる描写をいたしております。

  5. つくる より:

    砂水さん、お久しぶりです。
    拝読しまして、思うことがたくさんありました。
    心に傷を負っている千夜に寄り添うリゼの、友人を助けられないジレンマの描写が印象的でした。
    この作品の暗い部屋のドアの隙間から淡い光がにじむような、絶望の淵にも希望が見出せるような雰囲気がとても好きです。
    大切なものが失われてしまっても、全てが手放されたわけではないという事が最後のシーンで書かれていた風に思いました。

    • 砂水クジラ砂水クジラ より:

      千夜ちゃんの気持ちを汲んであげることが、友人として一番してあげるべきこと。
      でも、リゼちゃん自身は千夜ちゃんに無理なんてしないでほしい、弱音を吐いてほしい。
      この二つの矛盾が本作のテーマです。残酷なまでに優しい、というタイトルにはこのテーマの意味を込めました。
      千夜ちゃんがどうして無理をしているのか、という部分はあいまいにしておりますが、本作を読み直していくことでまた答えが見えてくるかと思います。
      失うということはとても悲しいことだけれど、必ずしも不幸につながるわけではない、というのが読み手側に伝わっていると嬉しいですな。

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