ごちうさSS 千夜「リゼちゃんとヤンデレごっこ」

 

 

 

――夏休み 別荘 コテージ――

 

 

リゼ「んっ……?」パチッ

 

リゼ「………………」

 

リゼ「もう朝か」

 

千夜「リゼちゃん、目が覚めた?」

 

リゼ「千夜……おはよう」

 

千夜「おはよう、いい朝ね」

 

リゼ「……そうだな」

 

千夜「顔洗う?」

 

リゼ「ああ」

 

リゼ「………………」

 

リゼ「……なぁ、千夜?」

 

千夜「?」

 

リゼ「顔を洗いたいんだけど」

 

千夜「ええ、洗いましょう」ニコッ

 

リゼ「………………」

 

リゼ「洗面所に行きたいから……」

 

 

 

リゼ「――この拘束……解いてくれないか?」ジャラ

 

 

 

千夜「………………」

 

千夜「ううん……――だめ」

 

リゼ「……そうか」

 

千夜「洗面器に水を汲んでくるわ、あと歯ブラシも持ってくるわね」

 

千夜「リゼちゃん、いい子で待ってて」ギュッ

 

リゼ「………………」

 

千夜「♪」フリフリ

 

 

ガチャッ バタン……

 

 

リゼ「………はぁ」

 

リゼ(今日で、3日目か)

 

 

 

――

――――

――――――

 

 

―――――――――――――――――――――

 

 

――甘兎庵――

 

 

千夜「夏休みももう少しで終わりね」

 

リゼ「残りあと2週間か、早いな」

 

千夜「花火大会に肝試しに、今年も楽しかったわ」

 

リゼ「……映画鑑賞は、残念だったな」

 

千夜「クスッ、そうね」

 

リゼ「千夜だけ仲間外れにしてすまない」

 

千夜「ううん、わたしが勝手に風邪を引いただけだから」

 

リゼ「………………」

 

千夜「リゼちゃん……」

 

千夜「――てやっ」ギュッ

 

リゼ「おっと……」

 

千夜「そんな顔しないで、リゼちゃんのせいじゃないんだから」

 

リゼ「……でも」

 

千夜「気にしすぎよ、わたしは何も悔やんでないわ」

 

リゼ「…………」

 

千夜「リゼちゃんは優しすぎるのよね……ありがとう、嬉しい」

 

リゼ「……なぁ、千夜?」

 

千夜「ん?」

 

リゼ「ならせめて、何かやり残したこととかないか?わたしでよければ付き合うぞ」

 

千夜「やり残したこと?……そうねぇ」

 

千夜「リゼちゃんと遊ぶことかしら」

 

リゼ「えっ?」

 

千夜「ココアちゃんとは虫取りに行ったし、シャロちゃんとはホラービデオを鑑賞したし、チノちゃんとは二人でコーヒー餡蜜の研究をしたの」

 

千夜「思い返してみたら、リゼちゃんとの思い出が少ない気がして」

 

リゼ「言われてみれば、千夜と二人で遊ぶことはあまり無いな」

 

リゼ「よし、なら明日どこかに行くか」

 

千夜「遊んでくれるの?」

 

リゼ「ああ、千夜の行きたいところに行こう」

 

千夜「………………」

 

千夜「行きたいところ、ひとつだけあるわ」

 

リゼ「どこだ?」

 

千夜「えっとね……」

 

千夜「去年行った、リゼちゃんのおうちの別荘」

 

リゼ「あんなところか?別に構わないが」

 

千夜「5日間、リゼちゃんと二人でお泊りしたい……」

 

リゼ「5日間も?二人でか?」

 

千夜「なんて、ダメよねそんなの」

 

リゼ「……いや、そんなことないぞ」

 

千夜「え……」

 

リゼ「わたしは千夜さえよければ構わない」

 

千夜「……ほんと?」

 

リゼ「ココアがうるさそうだけどな、なんとかしよう」

 

千夜「わたしも、シャロちゃんを説得するのが大変かも」

 

リゼ「まぁ嘘も方便だよな」

 

千夜「リゼちゃんは嘘が下手そうだけど」

 

リゼ「うっ……メールなら大丈夫だ」プイッ

 

リゼ「いつから出発する?明後日でいいか?」

 

千夜「ええ」

 

千夜「――ありがとう、リゼちゃん」ニコッ

 

リゼ「せっかくだし、楽しもうな」

 

千夜「うんっ」

 

 

 

――――――――――――――――

 

――――――

――――

――

 

 

リゼ(千夜と二人きりで5日間宿泊することになって……)

 

千夜「リゼちゃん、お待たせ」タタタ

 

リゼ「…………」

 

千夜「まずはお顔綺麗にしましょうね」

 

リゼ「……千夜」

 

千夜「目を瞑ってて」フキフキ

 

リゼ「うぷっ……」

 

千夜「はい、目が覚めた?」

 

リゼ「………………」

 

千夜「次は歯磨きしましょう」

 

千夜「リゼちゃん、わたしのお膝に寝転んで?」ポンッ

 

リゼ「歯磨きくらいは自分でしたらダメか?」

 

千夜「………………」

 

リゼ「……わかった」ゴロン

 

千夜「リゼちゃん……いい子いい子」ナデナデ

 

千夜「お口あけて、あーん」

 

リゼ「…………」

 

リゼ(千夜……やっぱり、なにか悩んでいたのかな……)

 

千夜「ふふっ……」ゴシゴシ

 

 

――

――――

――――――

 

 

―――――――――――――――――

 

 

――初日目 夜――

 

 

千夜「オムレツにカレーにパルメザンチーズサラダ、豪勢な夕飯になったわね」

 

リゼ「少し作り過ぎたな、さすがに二人だと多いか」

 

千夜「とりあえず食べましょう、残った分は明日の昼食に回せばいいわ」

 

千夜「いただきます」

 

リゼ「おっ、千夜の作ったオムレツおいしいな」

 

千夜「ほんと?良かった」ニコッ

 

リゼ「焼き加減もちょうどいい、中がちゃんと半熟になってる」

 

千夜「ありがとう、まだリゼちゃんには遠く及ばないけど」

 

リゼ「そんなことない、わたしの方が教えて欲しいくらいだ」

 

千夜「手取り足取り教えるわ、明日二人で作りましょう」

 

リゼ「明日もまたオムレツか?おいしいからいいけど」

 

千夜「ここ、素敵なコテージね。この前はテントだったから」

 

リゼ「親父のせいでな、次みんなで来た時はここに泊まってみたいな」

 

リゼ「そういえば、今夜寝る場所はどこにする?上にベッドが置いてあるが押し入れに布団もあるぞ」

 

千夜「そうね、お布団がいいかしら」

 

リゼ「ならわたしがベッドだな」

 

千夜「それならベッドにしましょう」

 

リゼ「えっ?」

 

千夜「?」

 

リゼ「千夜は布団がいいんじゃないのか?」

 

千夜「確かに布団の方が慣れてるけど、でもリゼちゃんがベッドの方がいいっていうならそれでも平気よ」

 

リゼ「……どういうことだ?」

 

千夜「二人で一緒に寝るのに、ベッドとお布団ふたつは使えないから」

 

リゼ「いっしょに寝るのか!?」

 

千夜「せっかくの二人きりでお泊りだもの」

 

リゼ「いや、でも……」

 

千夜「だめ?」

 

リゼ「……っ//

 

千夜「……そう、ごめんなさい」

 

リゼ「あっ……ま、待て千夜」

 

リゼ「……わかった、一緒に寝よう」

 

千夜「いいの?」

 

リゼ「千夜がしたいなら。それに、確かにこんな機会滅多にないもんな」

 

千夜「……うん」

 

千夜「………………」

 

リゼ「……?千夜?」

 

千夜「わたし、卑怯ね」クスッ

 

リゼ「え?」

 

千夜「リゼちゃんが優しいのを分かっててて……ずるいわ」

 

リゼ「どうしたんだ?」

 

千夜「ううん、なんでも」

 

千夜「早く食べないと冷めちゃうわ」ニコ

 

リゼ「あ、ああ」

 

 

 

――――――――――――――――――――――

 

――――――

――――

――

 

 

千夜「リゼちゃん、あーん」

 

リゼ「……」パクッ

 

千夜「おいしい?」

 

リゼ「……おいしいぞ」

 

千夜「ゆっくり味わってね、ふふっ」

 

リゼ「千夜……これ、あと2日間も続けるのか?」

 

千夜「ん?」

 

 

 

リゼ「ヤンデレごっこ、だ」

 

 

 

千夜「…………」

 

千夜「ごっこじゃなかったら、どうする?」

 

リゼ「え……?」

 

千夜「リゼちゃん……『スタンフォード監獄実験』って、知ってる?」

 

リゼ「……?」

 

千夜「昔、人の潜在意識を研究していたジンバルドーっていうアメリカの心理学者が行った実験なの」

 

千夜「何の変哲もない21人の学生を集めたジンバルドーは、半分の11人には刑務官の役を、残りの10人には囚人の役を演じるように命じるのよ」

 

千夜「そして作り物の刑務所に21人を生活させた。いわゆる刑務所ごっこね」

 

リゼ「………………」

 

千夜「でも、この実験は思わぬ方向に進んでいってしまうの」

 

千夜「不思議なことに、刑務官の役を『演じている』だけだったはずの人たちが、囚人役の人たちに懲罰を与えはじめるのよ」

 

千夜「それも本気で……自分が刑務官の『役』であることも忘れて、ね」

 

リゼ「………………」

 

千夜「結局この実験は、6日もしない内に危険と判断され、中止されてしまう」

 

千夜「でも……中止が決まってもなお、刑務官の役を演じていた人たちは、まだまだ物足りないと続行を希望したそうなの」

 

リゼ「………………」

 

千夜「人間って……その役割を演じていたら、いつしか本当に心もそうなってしまうのかしら」

 

リゼ「……千夜のこれは、ごっこじゃないのか」

 

千夜「どっちに見える?」

 

リゼ「……ごっこだ」

 

リゼ「千夜は本気でこんなことしないって信じてるからな」

 

千夜「……そうね」

 

千夜「でも……もし本気でリゼちゃんのことが好きだったら……?」

 

リゼ「…………」

 

千夜「こうして監禁して独り占めしていたいって、本心から思っていたら……?」

 

リゼ「千夜は演技が上手いな」

 

千夜「……ふふっ」

 

千夜「強いわね、リゼちゃんは……」

 

千夜「わたしのこと、信じてくれてるの?」

 

リゼ「ああ」

 

千夜「優しい……」

 

千夜「もっともっと、独り占めしたくなるわ」ギュッ

 

千夜「リゼちゃん……」スリスリ

 

リゼ「…………」

 

 

 

――

――――

――――――

 

 

―――――――――――――――――

 

 

千夜「膝枕、気持ちいい……」

 

リゼ「テレビもないから暇つぶしができないな」ナデナデ

 

千夜「いいわ、こうしてるだけで」

 

リゼ「……千夜?」

 

千夜「?」

 

リゼ「どうして、こんなところに来たかったんだ?」

 

リゼ「二人だけで……それも5日間も」

 

千夜「………………」

 

リゼ「お前のことだ、何か理由があるんだろ」

 

千夜「理由……」

 

リゼ「あっ、言いたくないなら無理には聞かないぞ?ただ少し気になって」

 

千夜「リゼちゃんと長い間二人きりになりたかった、っていう理由はダメかしら?」ゴロン

 

リゼ「ダメというか……冗談だろうし」

 

千夜「…………」プクー

 

リゼ「千夜?」

 

千夜「ココアちゃんが同じこと言ったら、リゼちゃんきっと信じて照れたのに」

 

リゼ「いや、あいつは冗談とか言わないから……」

 

千夜「さっきの言葉、もし本当だったら?」

 

リゼ「………ありがとう、だと思う」

 

千夜「わがままにお礼を言うの?変なリゼちゃん」クスッ

 

リゼ「うっ……嬉しいから仕方ないだろ//

 

千夜「……本当よ」

 

リゼ「え」

 

千夜「さっきの理由。リゼちゃんと二人きりになりたかったっていうの。でもあと一つだけ加わるけど」

 

リゼ「……なんだ?」

 

千夜「……………………」

 

千夜「変に思わない?」

 

リゼ「ああ」

 

千夜「…………」

 

リゼ「言っただろ、千夜のお願いを聞いてあげたいって。そのために来たんだぞ」

 

千夜「……リゼちゃん」

 

 

 

 

千夜「ヤンデレごっこ――しましょう?」

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――

 

――――――

――――

――

 

 

千夜「リゼちゃんの匂いってどうしてこんなに落ち着くのかしら……」スンスン

 

リゼ「…………」

 

千夜「リゼちゃん……んっ……」スンスン

 

リゼ「……嗅ぎたいなら、直接抱き付いてくればいいんじゃないか?」

 

リゼ「わざわざ目の前でわたしの服を嗅がなくても……」

 

千夜「止めてほしい?」

 

リゼ「そうだな……恥ずかしいし」

 

千夜「そう……」

 

千夜「でも――止めない」スンスン

 

リゼ「…………」

 

千夜「リゼちゃんの言うこと、聞かないわ」

 

リゼ「……千夜らしくないな」

 

千夜「意外でしょう?」

 

リゼ「ああ」

 

千夜「嫌いになった?」

 

リゼ「いや」

 

千夜「………………」

 

 

――スッ

 

 

千夜「いまは抵抗できないでしょう」

 

リゼ「そうだな……両手両足縛られたままじゃあ」

 

千夜「……」クビスジ カプッ

 

リゼ「っ……」

 

千夜「リゼちゃんは優しいからイヤ……」

 

リゼ「わたしに嫌われたいのか?」

 

千夜「ううん……」フルフル

 

千夜「……ただ」

 

千夜「リゼちゃんにもっと酷いことしたいだけ、かも」

 

リゼ「………………」

 

千夜「監禁して拘束してるだけで、充分酷いわね」

 

リゼ「……千夜に、自分勝手は無理だ」

 

千夜「そんなことないわ」

 

リゼ「他人を傷つけたり、わたしの気持ちを無視したりできないだろう」

 

千夜「ううん、無視する」

 

千夜「いまは、わたしだけのリゼちゃんだもの」スッ

 

 

千夜「リゼちゃんはわたしだけのもの……わたしだけの……」

 

 

千夜「いつも遠くに感じていたリゼちゃんがこんなに側に……わたしだけを見て……ふふっ」

 

 

千夜「ずっと一緒よ、ずっと……」

 

 

リゼ「………………」

 

千夜「リゼちゃん……」ギュッ

 

リゼ「…………千夜」

 

リゼ(ごっこ、なんだよな……)

 

リゼ「………………」

 

 

――

――――

――――――

 

 

―――――――――――――――――

 

 

千夜「ちょうどいい縄があって良かったわ」

 

リゼ「良く分からないが、これでいいのか?」

 

千夜「どう、リゼちゃん?」

 

リゼ「どうって……見ての通りだ、自由に動けない」

 

千夜「ふふっ、抵抗できないリゼちゃんにえっちなイタズラでもしちゃおうかしら?」

 

リゼ「変なこと言うなよ……//

 

千夜「こうして動けないようにして、あとは監禁」

 

千夜「お手洗いやお風呂以外、ここから一歩も外に出さないの」

 

リゼ「それは道徳的に問題があるんじゃないか?」

 

千夜「野暮ねリゼちゃん、そういうのはご法度よ」

 

千夜「例え常識に否定されても……その愛情を貫くのがヤンデレなの」スッ

 

リゼ「?」

 

 

千夜「リゼちゃんの目……綺麗ね」

 

 

千夜「あと5日間……この目には、わたしだけしか映らない」

 

 

千夜「リゼちゃんの――」

 

 

 

千夜「――特別……」ジッ

 

 

 

リゼ「……!」ゾクッ

 

千夜「……クスッ」

 

リゼ「!」

 

千夜「びっくりした?」ニコッ

 

リゼ「……上手いな千夜は」

 

千夜「…………」ギュッ

 

リゼ「いつまでこうしていればいいんだ?」

 

千夜「……そうね」

 

 

 

千夜「――5日間、ずっと」

 

 

 

リゼ「……!」

 

リゼ「冗談、だよな?」

 

千夜「ううん」

 

リゼ「……最終日まで、このままか」

 

千夜「リゼちゃんの身の回りのお世話は、全部わたしがするわ」

 

千夜「止めるなら今の内だけど」

 

リゼ「……そうだな」

 

千夜「………………

 

リゼ「一瞬でいい、右手だけ解いてくれないか?」

 

千夜「……?」

 

――シュル

 

リゼ「……ふぅ」

 

 

ポンッ ナデナデ

 

 

千夜「……!」

 

リゼ「そんな悲しい顔されたら、付き合うしかないだろ」

 

リゼ「千夜が楽しいならやってみよう」

 

千夜「ほんとう?」

 

リゼ「お手柔らかに頼む」

 

千夜「……ふふっ」

 

千夜「ありがとうリゼちゃん……」

 

 

千夜「5日間だけ……わたしだけのもの」スッ

 

 

リゼ「……!」

 

千夜「お布団持ってくるわ、待ってて」

 

リゼ「……ああ」

 

 

 

――――――――――――――――――――――

 

――――――

――――

――

 

 

――夜――

 

 

千夜「虫の声ね……綺麗だわ」

 

リゼ「…………」

 

千夜「静かな場所ね……」

 

リゼ「……千夜」

 

千夜「んっ……?」

 

リゼ「馬乗りになられてると眠れないんだが……」

 

千夜「身体ごと乗っかったほうがいい?」

 

リゼ「それだとなおさらだ……//

 

千夜「リゼちゃんのほっぺ、柔らかいわ」フニフニ

 

リゼ「こら」

 

千夜「意外と体温高いのね」

 

千夜「わたしが全然知らなかったことばかり……」

 

リゼ「………………」

 

千夜「クスッ……やられたい放題ね、リゼちゃん」

 

千夜「いつもは強いのに……本当に、わたしのものになったみたい」

 

リゼ「……千夜?もしなにか悩んでるなら聞かせてくれ」

 

千夜「ううん、何も悩んでないの」

 

千夜「ただ、リゼちゃんがあまりに遠くにいすぎて……」ボソッ

 

リゼ「遠くに……?どういうことだ?」

 

千夜「ねぇリゼちゃん、知ってる?」

 

 

千夜「人間って……手の届かない存在に憧れや羨望を抱くでしょう?」

 

 

千夜「でも――その存在が、偶然にも自分と同じ立ち位置かもしくは自分より下の立場まで堕ちてしまうとね」

 

 

千夜「――穢したいとか、傷つけたいって思っちゃうそうよ」

 

 

リゼ「………………」

 

千夜「そうやって憧れだったものをあえて穢すことによって……自己の安寧を得たいのかしら」

 

リゼ「……この行為もそれか?」

 

千夜「………………」

 

リゼ「わたしは千夜が思っているほど崇高でもないしそんな存在でもない」

 

リゼ「ただお前が、自分を肯定できてないだけだ」

 

千夜「厚顔無恥よりいいわ、自分を冷静に評価してるもの」

 

リゼ「確かにな。……でも」

 

千夜「一方的な愛情は都合が良いの、相手の気持ちを考えることないもの」

 

千夜「こうやって……」ギュッ

 

リゼ「…………」

 

千夜「ねっ……身勝手でしょう?」

 

リゼ「本当に身勝手なら、自分で身勝手なんて思わないと思うぞ」

 

千夜「………………」

 

千夜「反抗的なリゼちゃんは、優しいけど嫌い……」

 

 

千夜「つい、壊したくなるもの」

 

 

 

――――――――――――――――――――――

 

――――――

――――

――

 

 

――朝――

 

 

リゼ「千夜、せめてジョギングだけでも行かせてくれないか?」

 

千夜「ダメ」ニコッ

 

リゼ「身体がなまりそうなんだが……」

 

千夜「リゼちゃん……なにか勘違いしてる?」

 

リゼ「?」

 

千夜「わたし、リゼちゃんを監禁してるのよ」

 

千夜「自由なんかにしないわ、どこにも行かせない」

 

千夜「今日からずっと二人でいましょう」

 

リゼ「……思った以上にきついな、これは」

 

千夜「止めたいならいつでも言ってね」

 

リゼ「大丈夫だ、心配いらない」

 

リゼ(あと4日……どうにか千夜から本心を聞かないと)

 

千夜「リゼちゃん、朝はベーコンエッグと昨日の残り物でいいかしら?」

 

リゼ「なんでもいいぞ」

 

千夜「すぐにできるから待ってね」

 

リゼ(何か抱えてそうだしな……)ジッ

 

千夜「♪~♪♪」

 

 

 

――――――――――――――――――――――

 

――――――

――――

――

 

 

リゼ「んっ……」パチッ

 

リゼ「ふぁぁ…………」

 

リゼ「千夜、朝だぞ」

 

千夜「……うん」

 

リゼ「おはよう、起きてたのか」

 

千夜「……今日で、最後ね」

 

リゼ「………………」

 

千夜「布団、片づけましょうか」

 

リゼ「……千夜」

 

千夜「おはようリゼちゃん、今日も楽しく過ごしましょう」

 

リゼ「あ、ああ」

 

リゼ(昨日と変わらないか……?)

 

千夜「……………………」

 

 

 

――――――――――――――――――――――

 

――――――

――――

――

 

 

千夜「いい天気ね……」

 

リゼ「そうだな」

 

千夜「二人でお散歩したら気持ちいいでしょうね」

 

リゼ「………………」

 

千夜「でも、こうしてる方がもっといいわ」ポスッ

 

千夜「リゼちゃんのお膝の上」

 

リゼ「手が使えれば撫でてやれるんだがな」

 

千夜「ううん、これで充分よ」

 

千夜「自由に動けないリゼちゃんの膝上に座る……これはこれで」

 

リゼ「背徳感みたいなものか?」

 

千夜「ううん……どちらかというと優越感かしら」

 

リゼ「?」

 

千夜「リゼちゃんを自由に好き放題できるっていう」

 

リゼ「……変な言い方よせ//

 

千夜「監禁っていいわね、ふふっ」

 

リゼ「あんまりこじらせないでくれよ……//

 

千夜「わかってるわ」

 

千夜「――ごっこだものね……」

 

 

 

――――――――――――――――――――――

 

――――――

――――

――

 

 

 

――――――――――――――――――――――

 

 

――深夜――

 

リゼ「――10時ごろか、わかった」

 

リゼ「それまでに用意を済ませておく」

 

リゼ「――よろしく頼む」

 

千夜「終わった?」

 

リゼ「」コクリ

 

千夜「……」ピッ

 

リゼ「明日、迎えは10時ごろらしい」

 

千夜「そう」

 

リゼ「帰る支度といっても何もないし、8時に起床すれば間に合うだろう」

 

千夜「……今夜で、おしまいなのね」

 

リゼ「明日からやっと自由に動けるのか」

 

千夜「………………」

 

リゼ「あまりよく分からなかったが……千夜の満足できるように振舞えてたか?」

 

リゼ「基本的には動けないからどうしようもないんだけど」

 

千夜「……楽しかったわ」

 

千夜「いつも遠くに感じていたリゼちゃんを、こんなに側で感じられて」

 

千夜「暖かくて、優しくて……それも、独り占め」

 

千夜「ずっとこのままでもいいくらい」

 

リゼ「……………………」

 

千夜「……ねぇ、リゼちゃん?」

 

 

 

 

千夜「一生、このままじゃダメ?」

 

 

 

 

リゼ「おいおい、まだ続いてるのか」

 

千夜「………………」

 

リゼ「ヤンデレごっこ、か。ずいぶんリアルだったけど……その、冗談でシャロとやったことあるとか?//

 

千夜「……ごっこじゃ、ないわ」

 

リゼ「えっ……?」

 

千夜「リゼちゃん……」ドンッ

 

リゼ「!」

 

 

――ウマノリ

 

 

リゼ「千夜……?」

 

 

千夜「ずっと……」

 

 

千夜「ずっと二人でいましょう……」

 

 

リゼ「……!」

 

 

千夜「わたしがリゼちゃんのこと、死ぬまでお世話してあげるから……」

 

 

千夜「永遠にこのまま……二人で」

 

 

リゼ「さ、最後のせいか、演技に気合が入ってるな」

 

 

千夜「冗談と思う……?」ニコ

 

 

リゼ「……!?」

 

 

千夜「ふふっ……しあわせ……」

 

 

千夜「わたしだけの、リゼちゃん……」ハイライトオフ

 

 

千夜「服、脱がしましょうか……」スッ

 

 

リゼ「っ……ち、千夜……!冗談でも限度が――」

 

 

 

千夜「」ザクッ!!!!

 

 

 

リゼ「っ!!?」

 

 

千夜「冗談なんかじゃないわ」

 

 

リゼ(包丁……あと数センチずれていたら……)ブルッ

 

 

千夜「言ったでしょう。ごっこなんかじゃないのよこれは」

 

 

千夜「わたしの、本当の気持ち……」

 

 

リゼ「…………」

 

 

千夜「リゼちゃん、わたしのものになって」

 

 

リゼ「……………………」

 

 

 

リゼ「……わかった、って、言えばいいのか?」

 

 

 

千夜「……?」

 

 

リゼ「こういう時に言う言葉ってまったく分からなくてな」

 

 

千夜「クスッ……まだ『ごっこ』だと思ってくれるの?」

 

 

リゼ「思うも何も、ごっこだろ」

 

 

千夜「これ、本物よ」ツー

 

 

リゼ「………………」

 

 

ポタッ……ポタッ……

 

 

千夜「ほら……ね?」

 

 

リゼ「………………」

 

 

千夜「リゼちゃんの綺麗な顔が、わたしの血で汚れていくわ……」

 

 

千夜「素敵……」スッ

 

 

リゼ「あとで止血剤塗ってやる」

 

 

千夜「…………」シャキン            

 

 

リゼ「……次は、わたしか」

 

 

千夜「よく考えて、リゼちゃんは抵抗できないのよ……?」

 

 

リゼ「そうだな」

 

 

リゼ「切られたら、おしまいだ」

 

 

千夜「………………」

 

 

リゼ「……切らないのか?」

 

 

千夜「……………………」

 

 

千夜「………………」

 

 

千夜「…………」

 

 

千夜「……強いのね」

 

 

 

千夜「……本当は、抵抗できるでしょう」

 

 

 

リゼ「…………」

 

 

千夜「……リゼちゃんは、どうしてそんなにわたしを信じられるの?」

 

 

リゼ「千夜だからな」

 

 

千夜「…………」ウツムキ

 

 

リゼ「言っただろ、千夜に自分勝手は無理だって」

 

 

リゼ「……指、大丈夫か?」

 

 

千夜「…………」グスッ

 

 

リゼ「すまない……いったんほどくぞ」シュル

 

リゼ「千夜……」

 

千夜「……ごめんなさい」ポロポロ

 

リゼ「気にするな、指見せてみろ」

 

リゼ「結構深いな……」ガサッ

 

リゼ「――ほら、これで大丈夫だ」

 

リゼ「もう切ったりするなよ」ナデナデ

 

千夜「ぐすっ……ぇっく……」ポロポロ

 

リゼ「泣くなよ、気にしてないって」ギュッ

 

千夜「リゼちゃんに見捨てられちゃう……いやぁ」ポロポロ

 

リゼ「見捨てるはずないだろ、千夜のこと嫌いになんかならない」

 

リゼ「落ち着け……少し気持ちが変になっただけだよな」ナデナデ

 

千夜「っ……」ポロポロ

 

 

 

―――――――――――――――――――――

 

 

 

リゼ「………………」ナデナデ

 

千夜「……ねぇ、りぜちゃん?」

 

リゼ「んっ?」

 

千夜「この前言った、スタンフォード監獄実験……」

 

リゼ「あれか……確か、演技だったはずが本当になってしまうんだよな」

 

千夜「うん……あの実験てね」

 

千夜「今では、そのほとんどが嘘だったことが証明されているらしいわ」

 

リゼ「そうなのか?」

 

千夜「結果の大きな点は全て仕込みだったんですって。あとから同じような実験を行った学者がたくさんいたけど、同じ結果は得られなかったそうよ」

 

リゼ「全て嘘だったわけか」

 

千夜「少しくらいドキドキしてた?」

 

リゼ「正直かなり……千夜の演技が迫真だったから余計にな」

 

千夜「ふふっ、ごめんなさい」

 

千夜「……でも」

 

千夜「あの実験って……もし当人たちにそういう気持ちがあったとしたら、どうなってたのかしら?」

 

千夜「もしかしたら、本当に……」

 

リゼ「どういうことだ?」

 

 

千夜「……ううん、なんでもない」ニコッ

 

 

千夜「ありがとうリゼちゃん、ヤンデレごっこ、楽しかったわ」

 

リゼ「今度二人で来るときは、外で遊んだり散歩とかしたいな」

 

千夜「また連れてきてくれるの?」

 

リゼ「ああ、その時は……できれば、ヤンデレごっこは一日くらいにしてくれると助かる」

 

千夜「…………」クスッ

 

リゼ「千夜?」

 

千夜「一日は付き合ってくれるのね……」

 

千夜「……リゼちゃん」ギュッ

 

リゼ「おっと……」

 

千夜「……あの時」

 

千夜「もし……わたしがリゼちゃんを切ったら、どうしてたの?」

 

千夜「嘘でもわかったって言ってくれた?」

 

リゼ「……さぁな」

 

千夜「本心から……?――それとも」

 

リゼ「……早く寝ろ」スッ

 

千夜「あっ……」

 

リゼ「おやすみ」

 

千夜「……うん」

 

千夜「おやすみなさい」

 

 

リゼ「………………」

 

リゼ「なぁ、千夜?」

 

千夜「ん……?」

 

リゼ「……もし」

 

リゼ「もしわたしが、あの時お前の気持ちを本気で受け入れていたら……どうなってたんだ?」

 

千夜「………………」

 

リゼ「――なんて、演技だから笑っておしまいだよな」ハハッ

 

千夜「…………」

 

リゼ「……千夜?」

 

千夜「……すぅ」Zzz

 

リゼ「寝てたのか……」

 

リゼ「…………」

 

リゼ「この5日間で、わたしも千夜の知らなかった部分をたくさん知れたよ」

 

リゼ「お前だけのものにはなってあげられないけど……」

 

リゼ「これからも、ずっと一緒なのは本当だぞ」ナデナデ

 

千夜「んっ……」Zzz

 

リゼ「おやすみ、千夜」

 

 

 

――おしまい?

 

 

 

―――――――――――――――――――

 

 

――帰宅後 甘兎庵――

 

 

千夜「ただいま」ガラッ

 

シャロ「!」

 

千夜「シャロちゃん……」

 

シャロ「おかえりなさい」ムスッ

 

千夜「もしかして待っててくれたの?」

 

シャロ「待つつもり無かったけど、落ち着かなかったからしょうがないじゃない」

 

千夜「あら、目の下にクマが……」

 

シャロ「誰かさんが一日に一通しかメール寄こさないから気になって眠れなかったのよ」

 

千夜「あんまりメールしてくるなって言ったのはシャロちゃんよ?」

 

シャロ「少なすぎるでしょ!せめて朝昼晩と3通くらい……!」

 

千夜「そんなに送って良かったのね。ごめんなさい、これからはそうするわ」

 

シャロ「……リゼ先輩と一緒とはいえ、あんまり長い間遠くに行かないで」

 

シャロ「心配だから……//」プイッ

 

千夜「……ありがとう。ふふっ、優しいシャロちゃんぎゅー」ギュッ

 

シャロ「きゃっ……もう♪」クスッ

 

 

――おしまい♪

感想

  1. Beyond the Average より:

    結局、千夜はリゼに傷をつけずに自身には傷つけてしまいました。千夜の葛藤がうかがわれます。
    千夜は何かを抱え込んでいるのでしょうが、一体何だったのか…?
    千夜がこれ以上暴走しないか心配です。

    • 砂水クジラ砂水クジラ より:

      千夜ちゃんは、独占欲や愛情からくる焦燥感に対し、他傷ではなく自責に駆られてしまうタイプなのだと思います。
      このシリーズでは、主に心の弱い千夜ちゃんをメインに不思議な世界観を意識した作風を心がけております。

  2. 匿名 より:

    リゼ先輩は今までココアや千夜によるヤンデレの被害者になられたりなど、リゼ先輩も結構思春期なんでしょうかね。

    • 砂水クジラ砂水クジラ より:

      リゼちゃんの出番が極端に多いのは、受けも攻めもデレデレもシリアスもいけるというそのあまりの万能性のせいですね……。
      シリーズSSのほぼ全てでメインを務めておりますので、どうしても出番が多くなってしまうのです。
      ココアちゃんや千夜ちゃんにヤンデレ行為を行われたりしているリゼちゃんですが、別シリーズではロリココアちゃんに対してヤンデレ加害者になっていたりしますよ。(それもかなり重度です)

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