ごちうさSS 千夜「38.6度……」

 

――

――――

――――――

 

 

――AM7:47 甘兎庵――

 

 

千夜「けほっ……こほっ!」

 

千夜「うぅ……」ズルッ

 

千夜(風邪ひいちゃった……昨日クーラー付けたまま寝たのがまずかったのかしら)

 

千夜(頭もフラフラして咳も酷いし……)

 

――ガラッ

 

千夜「?」

 

シャロ「千夜、おばあちゃんから聞いたわよ。大丈夫?」

 

千夜「シャロちゃん、おはよう」

 

千夜「今朝は起こしに行けなくてごめんなさいね」スッ

 

シャロ「横になったままでいいわよ。そんなことよりどうなの?」

 

千夜「平気よ、このくらいの風邪何ともないわ」

 

シャロ「…………」ジー

 

千夜「シャロちゃん?」

 

シャロ「本当?」

 

千夜「ええ、ほんとよ」

 

シャロ「……熱、何度あるのよ」

 

千夜「!えっと……」

 

シャロ「千夜?」

 

千夜「……38.6度」

 

シャロ「高熱じゃない!」

 

千夜「でも大丈夫、熱が高いだけでわたしは全然元気だから」

 

シャロ「…………」

 

――トンッ

 

千夜「きゃっ……」ポスッ

 

シャロ「平気なわけないでしょう、嘘ばっかり言って」

 

千夜「ひどいわシャロちゃん……急に押すなんて」

 

シャロ「風邪薬は飲んだの?冷えピタはどこ?」

 

千夜「自分でできるから気にしないで。早く学校に行かないと遅れるわ」

 

シャロ「まだ20分も余裕あるわよ、いいから大人しく寝てて」

 

千夜「シャロちゃん……」

 

シャロ「確かこの辺よね」ガラッ

 

シャロ「あったこれだわ、はい」

 

千夜「クスッ……ありがとう」

 

シャロ「お水持ってくるわね、どうせ朝ごはんも食べてないだろうしおかゆでも作ってくるから待ってて」

 

千夜「いまはあんまり食欲良くないからご飯は――」

 

シャロ「ダメ、少しでも食べられるなら食べておかないと身体に悪いでしょ」

 

シャロ「様子見に来たりしないで安静にしてなさいよ」

 

千夜「あっ……」

 

千夜「………………」

 

アンコ「」ヒョコ

 

千夜「アンコ…………おいで」

 

アンコ「」ピョンピョン

 

千夜「こういう時のシャロちゃんてね、普段と違ってすごく強情になるの」ナデナデ

 

アンコ「」フムフム

 

千夜「とっても優しくて……いつも申し訳なくなっちゃうわ」

 

アンコ「」コクコク

 

千夜「あんまり、迷惑かけないようにしなきゃね」

 

アンコ「…………」

 

 

 

シャロ「はい、梅干しの種は取ってあるから」

 

千夜「ありがとうシャロちゃん。おいしそうね」

 

シャロ「食事が終わったらちゃんと薬飲みなさいよ、あと今日一日は絶対動いちゃダメだからね」

 

千夜「何から何まで、ごめんなさい」

 

シャロ「ん……それじゃあわたし、学校行ってくるから」

 

千夜「ええ、いってらっしゃい」

 

シャロ「……千夜、今日はおばあちゃんも留守にするみたいだけど……本当に一人で大丈夫?」

 

千夜「ただの風邪だもの、アンコもいるし寂しくないわ」

 

シャロ「……そう」

 

千夜「おかげさまですぐに良くなると思うわ、安心して」

 

シャロ「……行ってきます」

 

千夜「♪」フリフリ

 

――バタン

 

千夜「ふぅ……――!げほっ、ごほっ!」

 

千夜(せっかくシャロちゃんの作ってくれたおかゆ、残さず食べないと……)

 

千夜「フゥ……フゥ……」

 

千夜「薬も、飲まなきゃ……」

 

 

ゲホッ! ゴホッ!

 

シャロ「!」

 

シャロ「………………」

 

シャロ「…………」

 

シャロ「……っ」

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

千夜「………………」

 

千夜(座っているとフラフラするわ……いよいよピークね)

 

千夜(アンコ……外に出かけちゃったのかしら)

 

千夜(テレビのリモコンも遠いし……)

 

千夜「……頭、痛い」

 

千夜「…………」

 

千夜(小さい頃は、シャロちゃんが付きっ切りで看病してくれたっけ)

 

千夜(わたしが体調を崩したりすると不安で泣きそうな顔になって……)

 

千夜「……ふふっ」

 

千夜「千夜……わたしがいるから大丈夫だよ……」

 

千夜「……懐かしいわ」

 

シャロ「――そうね」

 

千夜「えっ……」

 

シャロ「その言葉、まだ覚えてくれてたんだ」

 

千夜「シャロちゃん……!どうして、学校は?」

 

シャロ「欠席したわよ。学校行ったって誰かさんのことが心配で勉強なんてできそうにないし」

 

千夜「!」

 

シャロ「薬はもう飲んだの?おかゆもほとんど食べてないじゃない」

 

千夜「シャロちゃん、あの……」

 

シャロ「まだ温かいわね。食べさせてあげるから、あと少しでも食べられる?」

 

千夜「…………」コクリ

 

シャロ「ほら口あけて、あーん」

 

千夜「…………」モグモグ

 

シャロ「ゆっくり食べてよ、喉詰まらせないように」

 

千夜「シャロちゃん」

 

シャロ「んっ?」

 

千夜「……ごめんなさい、わたしのせいで」

 

シャロ「……『せい』じゃなくて、千夜の『ため』」

 

千夜「……うん」

 

シャロ「千夜はすぐに無理するから。やっぱりわたしが側にいてあげないとダメね」

 

千夜「……そうね」グスッ

 

シャロ「!千夜……どうしたの?」

 

千夜「ひっく……なんでもないわ……」グスグス

 

千夜「ありがとう……シャロちゃん//」ニコッ

 

シャロ「……っ//

 

シャロ「いいからほら……口開けなさいよ//

 

千夜「ん……♪」

 

 

 

―――――――――――――――――――

 

 

シャロ「どう、少しはマシになってきた?」

 

千夜「ええ、薬が効いてきたみたい」

 

シャロ「そう……よかった」ホッ

 

千夜「シャロちゃんが付きっきりで看病してくれてるから、きっと明日には治るわね」

 

シャロ「もし熱が下がっても学校は休みなさいよ、またぶり返すといけないし」

 

千夜「心配性ね、ただの風邪よ」

 

シャロ「高熱で頭がフラフラするほどのね」

 

千夜「うぅ……反省してるわ、だからそろそろご機嫌治して?」

 

シャロ「別に怒ってないし……ただ、もう少し甘えることを覚えてほしいってだけで」

 

千夜「迷惑、かけたくないから」

 

シャロ「無理して危なっかしい方が余程心配で迷惑なんだけど」

 

千夜「…………」シュン

 

シャロ「あっ……ご、ごめん、そういう意味じゃなくて……」

 

千夜「ううん、分かってる」

 

千夜「そうよね……これからは、辛かったらシャロちゃんに甘えるわ」

 

シャロ「……約束だから」プイッ

 

千夜「ふふっ、優しいわねシャロちゃんは」

 

シャロ「ほら、冷えピタ張り替えるから動かないで」

 

千夜「はーい//

 

 

 

―――――――――――――――――――――――

 

 

千夜「すぅ……すぅ…………」Zzz

 

シャロ「…………」ピタッ

 

シャロ(熱、下がってきたかしら)

 

――ガラッ

 

シャロ「!」

 

ココア「千夜ちゃん!」

 

シャロ「ココア、しーっ……」

 

ココア「あっ……」サッ

 

シャロ「ついさっき寝ついたばかりなのよ」

 

ココア「シャロちゃんも今来たところ?」ヒソッ

 

シャロ「違うわ、わたしは――」カクカクシカジカ

 

 

ココア「そっか、学校お休みして付きっきりで看病してたんだ」

 

シャロ「一人だと心配で放っておけなくて」

 

ココア「さすがは幼馴染だね」フンス

 

シャロ「ココアはお見舞いに来たの?」

 

ココア「もちろん!プリンとかヨーグルトとかたくさん買ってきたよ~」ドサドサ

 

シャロ「だから静かにしなさいって」

 

ココア「………………」

 

シャロ「ココア?」

 

ココア「こんなに弱った姿の千夜ちゃん見るの初めてかも」

 

シャロ「小さい頃から滅多に体調崩したりはしないけど」

 

ココア「その時はいつもこうやってシャロちゃんが側についてあげてたんだね」

 

シャロ「まぁ、お互いさまだから//

 

ココア「……ふふ~♪」

 

シャロ「?」

 

ココア「わたしはここいらでおいとまさせてもらおっかな」スッ

 

シャロ「どうして、今来たばかりでしょう?」

 

ココア「いいからいいから、わたしが水を差すことも無いよ」

 

シャロ「?」

 

ココア「また後でねシャロちゃん、リゼちゃんとチノちゃんにはわたしから伝えておくから」

 

シャロ「あっ、ちょっと……」

 

バタン

 

シャロ「……?変なココア……」

 

 

 

――――――――――――――――――――

 

 

シャロ「………………」

 

シャロ「」チラッ

 

シャロ(そろそろ5時……バイトの時間)

 

シャロ(どうしよう、このままだと千夜が一人になっちゃうし……)

 

ガラッ

 

リゼ「お邪魔します」

 

シャロ「!」

 

リゼ「シャロ、千夜の様子はどうだ?」

 

シャロ「リゼ先輩、ナイスタイミングです」

 

リゼ「?」

 

シャロ「わたしこれからアルバイトなんです、しばらくの間千夜のことお願いできますか?」

 

リゼ「なるほど、了解だ」ビシッ

 

シャロ「ありがとうございます、それではまた8時頃に」

 

リゼ「シャロ、例の準備だが……どうする?」

 

シャロ「はい、先にお願いします」

 

リゼ「いいのか?」

 

シャロ「熱も下がってきてるようなので」

 

リゼ「分かった、後はわたしたちに任せろ」

 

シャロ「」ペコリ

 

 

――バタン

 

 

千夜「ふぇ……?」

 

リゼ「千夜、おはよう」

 

千夜「あれ……シャロちゃんがリゼちゃんに見えるわ……」

 

リゼ「わたしだぞ」

 

千夜「リゼちゃん?本物?」

 

リゼ「ああ、どうだ調子の方は?」

 

千夜「シャロちゃんのおかげでだいぶ楽になったわ」

 

リゼ「熱を計ってみるか、ほら体温計」

 

千夜「37度くらいになってるといいけど」モゾモゾ

 

リゼ「どれ……」ピタッ

 

リゼ「うーん、頬だと良く分からないが、37度くらいにはなってるんじゃないか?」

 

千夜「頭痛もマシになってるし、これならすぐに良くなりそう」

 

千夜「そういえばシャロちゃんは?」

 

リゼ「シャロならアルバイトに行ったぞ」

 

千夜「バイト?今日お休みじゃなかったのね……」

 

リゼ「8時頃には帰ってくるだろう、それまではわたしが代わりだ」

 

千夜「リゼちゃん、わざわざお見舞いに来てくれたの?」

 

リゼ「ああ、ココアに教えてもらってな」

 

千夜「ココアちゃんが……そう、ありがとう」

 

リゼ「ヨーグルトでも食べるか?プリンもあるぞ」

 

千夜「リゼちゃんが食べさせてくれるの?」

 

リゼ「ああ、寝ころんだままでいいぞ」

 

千夜「//」ニコッ

 

 

 

―――――――――――――――――――――――

 

 

リゼ「37.7度か……まだ高熱だな」

 

リゼ「今日はお風呂はダメだぞ、濡れタオルで身体を拭くだけにしておけ」

 

千夜「完治は無理ね……残念だわ」

 

リゼ「たまにはゆっくりしろよ、いつも頑張ってるんだから」ナデナデ

 

千夜「んっ……//

 

リゼ「とはいえ辛いよな、早く良くなるといいけど」スッ

 

千夜「あ……」

 

リゼ「どうしたんだ?」

 

千夜「………………」

 

リゼ「……?」

 

千夜「撫でるの……もう少しだけ」

 

リゼ「……なんだ、そんなことか」

 

 

――ポンッ ナデナデ

 

 

千夜「……!」

 

リゼ「目、瞑れよ」

 

リゼ「寝るまでずっとこうしてるから」

 

千夜「………………」

 

千夜「うん……おやすみなさい」

 

千夜「リゼちゃん――ありがとう//

 

リゼ「早く元気になれよ、千夜」

 

 

――――――

――――

――

 

 

 

――――――――――――――――――――

 

 

千夜「…………」Zzz

 

千夜「…………ん……」パチッ

 

千夜(また寝ちゃった……いま何時かな?)

 

ココア「あっ、千夜ちゃん起きたよ!」

 

千夜「ココアちゃん……?」

 

リゼ「しょうがない、始めるか」

 

チノ「このクラッカー、紙吹雪が出ないタイプですよね」

 

千夜「リゼちゃん……チノちゃん……?」

 

ココア「いっくよー!せーの――」

 

パンッ! パンッ!

 

千夜「!」

 

ココア「千夜ちゃん、お誕生日おめでとうっ!」

 

千夜「え……」

 

リゼ「919日、確か今日だよな」

 

チノ「以前から秘密に計画していたんですよ」

 

千夜「……!」

 

ココア「本当はラビットハウスに呼んでサプライズするつもりだったんだけど」

 

リゼ「今は辛いだろうし、布団の上で勘弁してくれよ」

 

チノ「これ、わたしたちからのプレゼントです。千夜さん、おめでとうございます」

 

千夜「……みんな」

 

――ガラッ

 

シャロ「ただいま……!遅くなっちゃって」

 

ココア「シャロちゃん!」

 

リゼ「ギリギリ間に合ったな」

 

チノ「たったいま始めたところです」

 

千夜「シャロちゃん……」

 

シャロ「千夜、これわたしから」

 

シャロ「ケーキくらい食べられる?さすがにホールのは買えなかったけど」

 

千夜「わたしの誕生日、覚えててくれたの……」

 

シャロ「当たり前でしょ、忘れるわけないじゃない」

 

シャロ「あっ、でもこの計画を言い出したのはわたしじゃないから」

 

ココア「ふふーん、わたしだよ」ドヤッ

 

チノ「どうしてココアさんがドヤ顔なんですか」

 

リゼ「この前話題に出るまですっかり忘れてたくせに」

 

ココア「あぁ!ダメだよそれは内緒にしてて!」

 

千夜「…………」

 

シャロ「結局こんな形でのお祝いになっちゃったけど……」

 

シャロ「千夜――おめでとう」

 

千夜「………………」

 

千夜「」ジワッ

 

チノ「千夜さん?」

 

千夜「嬉しい……ぐすっ、今までで一番嬉しい誕生日よ……//」ポロポロ

 

千夜「みんな、ありがとう……――だいすき//

 

ココア「わたしも千夜ちゃんのこと大好きだよーっ!」ギュッ

 

千夜「きゃっ……ふふっ//

 

リゼ「こら、自重しろ」ベシッ

 

チノ「千夜さんの病気が重くなります」グイッ

 

ココア「うえーん!少しくらいモフモフさせて~!」

 

 

ガヤガヤ ワイワイ

 

 

シャロ「千夜、良かったわね」

 

千夜「シャロちゃん……わたし、こんな幸せでいいのかしら」

 

シャロ「いいに決まってるでしょ。でも、来年は風邪なんてひかないで。やっぱり見てて可哀そうだし」

 

千夜「ううん、こんなの全然辛くないわ。……今度は本当よ?」

 

シャロ「分かってるわよ、いつもの無理してない顔だし」

 

千夜「シャロちゃんはなんでもお見通しね」

 

シャロ「ずっと一緒にいたから、千夜のことなら大抵はね」

 

千夜「…………」グスッ

 

シャロ「今日は珍しく泣き虫ね……まぁいいけど」

 

シャロ「千夜――早く元気になって」ナデナデ

 

千夜「うん……//

 

 

シャロ「お誕生日、おめでとう」ニコッ

 

 

――おしまい♪

感想

  1. ほのうみ より:

    お久し振りです。

    高熱の時は、無理せず寝てるのが一番ですね。

    僕も最近はかかって無いのですが、嘔吐下痢症の時は物凄い最悪でしたよ。

    素晴らしかったです。

    • 砂水クジラ砂水クジラ より:

      お久しぶりです。ほのうみさん、ごちうさをご覧になられたのでしょうか?
      でしたらこれからは一緒に楽しめますね。

  2. ラビットタンク より:

    38,6度と見たとき何故か複雑な角度だな~と思った俺は一体…
    にしてもみんな優しいよな~。友達を思いやれる心が持てるのって本当にいいことだと思います。こういった思いやりってなかなか持てないんですよね…

    • 砂水クジラ砂水クジラ より:

      ごちうさの世界は、みんなが優しいのです。
      とはいえ、誕生日の日に風邪を引かせてしまった千夜ちゃんには少し申し訳なさが……。

  3. まり より:

    砂水クジラさんだいすきです!

    • 砂水クジラ砂水クジラ より:

      作品では無くわたし……!?
      照れてしまいますな//デレデレ

      冗談はさておき、ありがとうございますm(__)m

  4. Beyond the Average より:

    やっぱり幼馴染みっていいですね~!羨ましい!
    千夜の誕生日だからシャロはさらに千夜のことを考えてしまったんでしょうね。風邪が治ったら改めてお祝いとかしてそうですね!2回お祝いできるからまあいっか(笑)

    • 砂水クジラ砂水クジラ より:

      千夜シャロの信頼関係って良いですよね。
      百合でもなく友情でもなく、もっと固い絆のようなものを感じます。
      千夜ちゃんも風邪が辛いでしょうが、温かいみんなに囲まれてとても幸せでしょうね。

      ※誤字のご指摘ありがとうございます、修正いたしました。

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