――AM9:50 天々座家 ガーデン――
使用人「……ふぅ」
使用人(今日も暑いな……)
使用人(………………)チラッ
使用人(もう1時間か……)
ここあ「うんしょ……!」
ここあ「んっ……」フラフラ
使用人「あっ、あっしは持ちますから」
ここあ「わわっ……!」
使用人「おっと」トンッ
ここあ「ぁ……ありがとう」ニコッ
使用人「無理なさらず、休憩してください」
ここあ「でも、りぜちゃんがもどってくるまでにおわらせないと」
使用人「お手伝いでしたらもう充分です、そろそろお部屋に」
ここあ「ううん、もうすこしだけ」
ここあ「ゆうしゃさん、そっちもって?」
使用人「は、はい……」
ここあ「よいしょ……ん……」
使用人(ここ最近、すごく頑張っていらっしゃるな)
使用人(お嬢と、なにか約束でもしたのか……)
ここあ「ふぅ……!」
使用人「運び終えたら今日はこれくらいにしましょう、続きは明日です」
使用人「飲めますか?」
ここあ「わぁ……!」
使用人「お疲れ様でした。おかげさまで毎日助かります」
ここあ「うん♪」
使用人「膝、痛くないですか?指も怪我されていませんか?」
ここあ「てぶくろしてたからだいじょーぶだよ」
使用人「夏休みももう終わりです、お嬢たちと遊ばれたほうがよろしいのでは?」
ここあ「りぜちゃん、きょうは『らびっとはうす』だから」
ここあ「それに、おとうさんとやくそくしたの」
使用人「?」
ここあ「ひみつのやくそく」ニコッ
―――――――――――――――――――――
ここあ「おとうさん?」ガチャッ
リゼ父「んっ……?終わったか」
ここあ「うん、いつもよりがんばったよ」
リゼ父「ご苦労、メイドとお風呂に入ってこい。それが終わったら次は廊下をハンディクリーナ―で掃除してくれ」
ここあ「いえっさー!」
使用人「っ……あの」
リゼ父「行っていいぞ」
ここあ「おわったらまたくるね」
ガチャッ バタン
使用人「………………」
リゼ父「……?どうした?」
使用人「差し出がましいようですが……その」
リゼ父「なんだ?」
使用人「……少し厳しいのでは?」
リゼ父「いいからやらせてみろ」
使用人「しかし……」
リゼ父「倒れそうになったらお前が助けてやれ」
使用人「はぁ……」
リゼ父「用件は終わりか?早く行け」
使用人「……失礼します」
バタン
リゼ父「………………」バサッ
――
――――
――――――
―――――――――――――――――――
――PM8:16 リゼの部屋――
リゼ「……!」
ここあ「りぜちゃん、どう?」
リゼ「かわ゛いいぞぉここあっ!//」
ここあ「ほんと?」
リゼ「パジャマもいいがネグリジェも似合うなぁ!ここあ~ふへへ//」ジュルリ
ここあ「これ、すこしおおきいね」
リゼ「大きいサイズのほうが着崩れするから触りやす――」
ここあ「ふぉぇ?」
リゼ「ごほん!どうやらサイズを間違えたみたいだな」
ここあ「そっか、でもかわいいからすきだよ。ありがとうりぜちゃん//」ニコッ
リゼ「また買ってくるからな//」ヒョイ
ここあ「りぜちゃんのもあたらしいふく?」
リゼ「ああ、ここあと同じ寝間着だぞ」
ここあ「これも『ねぐりじぇ』なんだね」
ここあ「…………」ポスッ
リゼ「どうしたんだ?」
ここあ「ぱじゃまのときよりもりぜちゃんのからだ、あったかい……」
ここあ「おふろのなかで、くっついてるときみたい//」ニヘラ
リゼ「……!」
ここあ「りぜちゃん……//」スリスリ
リゼ「………………」
リゼ「…………」
リゼ「……」
リゼ「」
リゼ「……」キョロキョロ
リゼ(鍵……閉まってるよな……)
リゼ「…………」
リゼ「……っ//」シュル
リゼ「なぁ、ここあ……少しだけ――」
ここあ「…………」Zzz
リゼ「……?」
ここあ「……すぅ…………」Zzz
リゼ「ここあ……」
リゼ(寝たのか?まだ8時過ぎなのに……)
リゼ「…………」スッ
ここあ「ん…………」Zzz
リゼ「おやすみ」ポンッ
リゼ「ふぅ…………」
リゼ「…………//」
リゼ「っ……//」ブンブン
リゼ(頭を冷やしてこよう……)ガチャッ
――――――――――――――――――
――ダイニングルーム――
リゼ「んっ……?」ゴクゴク
使用人「あっ……お嬢」
リゼ「見回りか?」
使用人「いえ、コーヒーを……それより、小さいお嬢は?」
リゼ「さっき寝たよ」
使用人「こんな時間にもう?」
使用人(やはり、昼間の疲れが……)
リゼ「ガッカリしたような、助かったような……はは」
使用人「?」
リゼ「よっと……」ポチッ
リゼ「ほら、ブラックでいいか?」
使用人「ありがとうございます」
リゼ「………………」ガタッ
使用人「…………」ズズッ
リゼ「前はこうして、たまに話したりしてたよな」
使用人「そうですね、あの子がここに来てからはあまり」
リゼ「………………」
使用人「お嬢?」
リゼ「わたし……ひとりの時、どうやって時間を潰してたんだっけ」
使用人「……?」
リゼ「ここあが来てからは、いつも二人でいるのが当たり前だったからかな……なんだか一人だと時間を持て余してしまって」
使用人「……なるほど」
リゼ「一人でいた時間の方がずっと長かったはずなのに、おかしいな……」
使用人「…………」
リゼ「やっぱり人間、一度幸せを覚えてしまうとダメらしい」
使用人「……お嬢」
リゼ「叶うなら、一生このままがいい……」ボソッ
使用人「っ……」
リゼ「なんて。ダメだよな、そんなこと」ハハッ
使用人「……でも、あっしもお嬢と同じかもしれません」
使用人「少なくともあの子がいなくなるのは、俺も嫌ですので……」ズズッ
リゼ「……そうか」
リゼ「ありがとう……少しホッとしたよ」
使用人「お嬢の幸せが、我々には第一です」
リゼ「……//」ポリポリ
使用人「そういえばお嬢、あの子が早寝のわけですが……少し心当たりが」
リゼ「?」
――――――――――――――――――――
リゼ父「………………」
リゼ父(妙に静かだな……もう寝たのか?)
リゼ父(いや、ゲームで遊んでいるのかもしれん。ここはいつもより高めのテンションで――)
リゼ「こらっ」ドガッ
リゼ父「ぐぉおお!?あ、頭がぁ!」ゴロゴロ
リゼ「なにこっそり部屋を覗いてるんだ、変態め」
リゼ父「マガジンで叩くな!トンカチで殴るのと一緒なんだぞ!」
リゼ「なおさらいい、親父の足りない頭が少しは良くなるかもしれん」
リゼ父「くっ……自分の娘に罵られる、これはこれで――」
リゼ「ほう、殴るだけじゃやっぱり治らないか」ジャキ
リゼ父「冗談だ!冗談だから銃口を向けるな!」
リゼ「まったく……」
リゼ父「」ホッ
リゼ「使用人から聞いたぞ親父、ここあを働かせてどういうつもりだ」
リゼ父「いや、あれはだな」
リゼ「無理して倒れたらどうするんだ。万が一怪我したらどうするんだ。しかもそのせいで今夜ここあと遊べなかったんだぞ」
リゼ父「す、すまなかった、約束だから許してくれ」
リゼ「約束だと?」
リゼ父「この前、みんなで冒険したいと言ってただろう」
リゼ「そういえば言っていたな」
リゼ父「だから、シストの地図を作ってやろうと思ってな」
リゼ「シストを?親父がか?」
リゼ父「ああ、タカヒロや小説家の常連客に協力してもらって、数日前になんとか完成した」
リゼ父「プレゼントしてやろうと思ったんだが、俺の役に立ってからじゃないと受け取らないと言ってな」
リゼ「なるほど、ここあらしいな」
リゼ父「せっかくの機会だから働く苦労を知っておいた方がいいと思って。可哀そうだが、心を鬼にした」
リゼ「…………」クスッ
リゼ父「?」
リゼ「親父、ここあに一杯喰わされたな」
リゼ「ここあはいつもラビットハウスで働いてるぞ。甘兎庵でお手伝いしたこともある」
リゼ父「なっ、そうなのか!?」
リゼ「ただここあなりの、親父に対する感謝のおかえしだったんじゃないか?」
リゼ父「……あいつめ」
リゼ「いい子だろう、ああいう子なんだ」
リゼ父「ほんとうに子供か?4歳くらいのチビがこんな気遣い……」
リゼ父「……いや、そうでもないか」
リゼ「?」
リゼ父「昔のことを思い出した。――お前のな」ポンッ
リゼ「え?」
リゼ父「明日渡すからみんなで取りに来い、できるだけ多く友達を誘ってな」
リゼ父「長丁場の冒険になるぞ、リゼも早く寝ろ」
リゼ「……ああ」
リゼ「親父……――いつも、ありがとう」
リゼ父「……気にするな」
――
――――
――――――
―――――――――――――――――――
――翌日 AM9:37――
リゼ父「………………」
ここあ「……」ワクワク
リゼ父「よく頑張ったな。――約束の、冒険の地図だ」スッ
ここあ「ぁ……!」
ここあ「おとうさん、ありがとうっ!」
リゼ「良かったな、ここあ」
チノ「今回はシストですか」
マヤ「ちぇー、冒険って言うから期待したのに~」
メグ「マヤちゃん、そんな言い方ダメだよぉ」
リゼ父「ふっ……心配するな、期待には充分添えられる」
シャロ「ねぇ、嫌な予感しかしないんだけど」ブルブル
千夜「そうね、今までの統計だと……」
ここあ「こんかいはゆらちゃんもいっしょだね♪」
ユラ「リゼ~?呼ばれたから来たけど、ほんとにわたしが参加してもいいの?」
リゼ「ああ、ここあが一緒にしたいとさ」
ここあ「ゆらちゃん、きてくれてありがとう//」ニコッ
ユラ「ここあちゃんからのご指名か~。ユラちゃんここあちゃんのためならいつでも駆け付けるよ~」ナデナデ
ここあ「ほんと!」
ユラ「ほんとうだよ~、ここあちゃん愛してるからね~」ギュッ
ここあ「んっ//」
リゼ「ここあに気安くハグするなっ!」シャーッ!
ユラ「でたね~親バカリゼ~」
リゼ父「いいか、俺たち大人が作ったのは高難度のシストだ」
リゼ父「生半端な気持ちで挑めば生きては帰ってこれない……わかるな?」
チノ「どんなシストなんですか……!」
マヤ「うお~!おもしろそーっ!」
メグ「サバゲーシストとかかな?」
リゼ父「……そろそろだな」チラッ
バン!
リゼ「!?」
ユラ「敵襲~?」
シャロ「まさかテロリスト!?」
千夜「違うわ、あれは爆竹の音ね」
バンッ! ゾロゾロ
??A「動くなっ!」ガシッ
??B「貴様らを連行する!」ガッ
チノ「ひっ!?」
メグ「わわ~」
マヤ「誘拐犯!?」
??C「おとなしくしろ!」
ここあ「ふぉぇ?」
??D「命まで取る気は――」
リゼ「ふっ!」バシッ
??D「ぐはっ!?」
ユラ「いきなり奇襲~?」ヒュル
??E「っ!?ぐはっ!」ゴキッ
ユラ「武器は持って無いね~。リゼ、ハンドガン」
リゼ「ああ!」ポイッ
ユラ「んふ~」パシッ
リゼ「そこ、わたしのここあに触れるなぁっ!!」バキッ
??C「ぐべっ!!」
ユラ「まずは用件を吐こっか~風穴開いちゃう前にね~?」ジャキ
??E「待ってください!我々は使用人です!」
ユラ「ほんとかな~マスク取るよ~?」ヌギッ
ユラ「あっ、リゼ~ストップ」
ユラ「この覆面、みんなリゼのところの使用人さんだよ~」
リゼ「なんだと?」
使用人「お嬢、あっしですから……!」ヌギッ
リゼ「お前……!」
使用人「お芝居です、シストの始まりの!」
リゼ父「お前たち、やられてどうする。まだまだ修行が足りないな」
使用人「事前にお嬢たちに伝えておいてください!?」
リゼ「すまなかったな、つい」
ユラ「リゼのお父さんは相変わらずお茶目だね~」
千夜「強いわ……リゼちゃんも、吹き矢部の部長さんも」
シャロ(リゼしぇんぱいかっこいい……//)
リゼ父「誘拐されてからが始まりだ、頑張ってこい」
使用人B「どうぞこちらへ」
チノ「最初から既にシストじゃないです……」
メグ「わたしたちどうなっちゃうのかな~」
マヤ「目隠ししろだって~なんだか捕虜みたい」キャハハ
千夜「使用人さん、大丈夫ですか?」
使用人「あっ……ええ、これくらい平気です」
ここあ「わくわくするね」
リゼ「たくさん楽しもうな」ナデナデ
ここあ「うん!//」
ユラ「腕キメちゃったかも~ごめんね~」
使用人E「お気になさらず……いてて」
リゼ父(冒険か……俺も参加したかった……)
――――――――――――――――――――――――
――車内――
チノ「あ、あの……」
メグ「真っ暗で見えないよ~」
マヤ「このまま着いた先が戦場だったりして!」
シャロ「ねぇ千夜、わたしたち無事に帰れるわよね」ガクガク
千夜「大丈夫よ、リゼちゃんのお父さんの催し事だもの」
ユラ「ねぇここあちゃん、目隠しされてどんな気持ち~?」
ここあ「いまからどうなっちゃうのかすごくどきどきしてるよ」
ユラ「そっか~手錠とか首輪とかしたらもっとドキドキするかもよ~?」
ここあ「くびわ?いぬだね!わんわん♪」
リゼ「ユラ!ここあに変なこと教えるな!//」
ユラ「変なこと~?変なことって?」
リゼ「そ、それは……//」
ユラ「本心では首輪ここあちゃん見てみたいくせに~ムッツリゼだね~」
リゼ「っ~!// 着いたら覚えておけよ……!」
ユラ「ここあちゃん、リゼがいじめる~」ギュッ
ここあ「ふぉぇ?」
リゼ「ここあから離れろ!前の席に移れ!」
ユラ「目隠しされてるから無理~」
リゼ「ここあはわたしのものだぁ!」
ギャーギャー ワーワー
使用人「後部座席が揺れてますね……」
千夜「ここあちゃん争奪戦みたいです」クスッ
シャロ「リゼ先輩、落ち着いてください!」
ここあ「あっ、りぜちゃんのおひざ」
リゼ「ここに乗せておけば安心だ」フフン
ユラ「リゼの卑怯者~」
リゼ「なんとでもいえ、わたしのここあだ」
使用人「あと10分です、もう少しの辛抱ですので」
チノ(この車、どこに向かってるんでしょうか……)
―――――――――――――――――――――――――
使用人「着きました。ここです」
使用人「目隠しを取ってください」
チノ「うぅ……眩しいです」
マヤ「ここはどこだ?」
メグ「田舎かな?全然知らないところだね」
シャロ「わたしたちの住んでる街は!?」キョロキョロ
千夜「どこにも見えないわ、ずいぶん離れた場所みたい」
ここあ「きれいなばしょだね!」
リゼ「車が一つも通ってないな」
ユラ「使用人さん、ここはどこ~?」
使用人「どうやら我々は、知らない世界に迷い込んでしまったようです」
ユラ「もう始まってるんだ~」
使用人「まずは生き残るために、探索隊を二つに分けましょう」
使用人「クジです、どうぞ」スッ
リゼ「クジだと?ハズれたらここあと離れ離れになるじゃないか!」
使用人「いやしかし、人数が多いので4人ずつに」
千夜「リゼちゃんどうどう」
シャロ「ゲームですからすぐに再会できますよ」アセアセ
ユラ「リゼは引く前から諦めてるの~?ならここあちゃんはわたしが~」
リゼ「馬鹿を言うな。たかが2分の1、こんなものでわたしとここあの絆を裂けると思ったら大間違いだ」
マヤ「いいからはやくやろう!これだ!」
チノ「では、これを……」
メグ「これかな~?」
――
――――
――――――
『右ルート』
マヤ「メグ!一緒だね!」
メグ「うん!でもチノちゃんと離れちゃったね~」
マヤ「まぁここあがいるからいいんじゃね?」
シャロ「リゼ先輩、しっかりしてくださいっ!」
リゼ「」チーン
『左ルート』
ここあ「ちやちゃんとちのちゃん、ゆらちゃんといっしょ!」ピョン
チノ「はい、一緒にお宝を探しましょう//」ニヘラ
千夜「ユラ先輩、よろしくお願いします」ペコリ
ユラ「こっちこそ~。のんびり楽しもう~」
使用人「では、右ルートの方はこれを。左ルートの方はこれです」
チノ「本の内容が違うみたいですね」
ここあ「さいごはりぜちゃんたちとあえるのかな?」
千夜「たぶんそうね、頑張りましょう」
ユラ「リゼ~?ここあちゃんのためにも、そっちもしっかり進んでよ~」
リゼ「言われなくてもそのつもりだ!」ゴゴゴ
シャロ「ひっ!」
リゼ「待っていろ、すぐにここあを取り返してやる!」
マヤ「これなんだろう?」
メグ「マヤちゃん、まだ開けちゃダメだよぉ」
使用人「携帯電話はこの場で預かります、代わりにこれを」スッ
チノ「お弁当ですか?」
使用人「ちなみに中身はランダムです、誰が作ったかも想像にお任せしますので」
マヤ「ロシアンルーレットかぁ」
シャロ「違うけど、方向性は似ている気がするわね……」
リゼ「食べられないものが入ってないだろうな?」
使用人「全て食べものです、心配なさらず」
ここあ「おべんとう、たのしみだね//」
ユラ「良いの引いたら取り換えてあげるよ~」ナデナデ
メグ「チノちゃんのお父さんが作ってたりするのかなぁ」
マヤ「黒服~もう始めていいの?」
使用人「開始してください。あっしはこれで」
ここあ「ゆうしゃさん、かえっちゃうの?」
使用人「ええ、どうぞ心行くまでお友達と楽しんできてください」
使用人「各ポイントにサポーターが立っています、万が一の時も心配なさらず」
使用人「では」ガチャッ
メグ「いっちゃったねぇ」
シャロ「シストというよりもサバイバルね……」
リゼ「よし、右ルートのやつらは付いてこい!」
マヤ「らじゃーっ!」
チノ「ここあさん、わたしたちもいきましょうか」
ここあ「うん!」
千夜「ユラ先輩、指揮を」
ユラ「リゼたちより早くお宝を見つけよう~ゆっくりね~」
―――――――――――――――――――――――――
○右ルート
メグ「あついね~」
シャロ「紫外線対策してきて良かったわ」
マヤ「なになに。第1章、禁断のシュークリーム。この本を手にした瞬間からお前の戦いは始まっている」
リゼ「プロローグから既にシストじゃないな……」
メグ「最初の運命は、この先にある分かれ道だ」
シャロ「己の力だけを過信すれば、お前の運命はたちまち絶望へと向かう」
マヤ「仲間と共に目の前に立ち塞がる難問を解き、それを乗り越えろ」
メグ「運命と戦え」
リゼ「つまり要は、謎を解いて正解の道を導き出せということか」
シャロ「すごく分かりにくいですね……」
マヤ「うおー!リゼのお父さんが作ったシストすごく面白そうじゃん!」
メグ「本当の冒険みたいだね~」
リゼ「分かれ道か……」
マヤ「あっ!あれだね!」ダダダ
リゼ「見えるのか?」
シャロ「微かにですが、遠くに分かれ道が」
メグ「マヤちゃん待って~」
マヤ「なにこの機械、ゲーセンに置いてあるやつじゃん」
メグ「はぁ……はぁ……勝手にいっちゃダメだよ」
マヤ「ここに説明が書いてあるよ」
メグ「ふぅ……なんだろう?」
マヤ「えーっと……」
マヤ「ここに20個のプチシュークリームがある。お前は相手と共に、交代代わりにこれを食べていかなければならない。ただし、お前も相手も既に気付いている。――20個目のシュークリームだけが、明らかに赤色に染まっていることに」
メグ「えーっ!?」
マヤ「一度で頬張ることが出来るのは3個までだ。最低1個は食べねばならない。20個目を食べた瞬間に、お前の運命は潰える。生き残りたくば、相手に20個目を食べさせてみろ」
メグ「序盤からいきなり難問だね……」
マヤ「何度失敗してもいいんだって!よーし、わたしに任せろ!」
リゼ「マヤ、メグ」タタタ
シャロ「これが最初の謎?」
メグ「リゼさんシャロさん……それが」
マヤ「うわ、負けた~!」
リゼ「苦戦しているな……」
シャロ「まさか機械が設置してあるなんて……」
マヤ「この相手強すぎるよ~!」
リゼ「どういうルールなんだ?」
メグ「えっとね――」
リゼ「なるほど……つまり、こういうことだな」
『お互い、交代ずつ1~3の数字を数えていく。20を数えたほうの負け』
シャロ「こうして要約すると単純なルールですね」
リゼ「親父が変な書き方してるからややこしく聞こえる」
メグ「簡単そうに見えたんだけど……」チラッ
マヤ「20!また負けた~!」
シャロ「難しそうね……」
リゼ「マヤ、大丈夫か?」
マヤ「シャロ、リゼ!この敵どうにかしてよ~!」
リゼ「一度やらせてくれ」
リゼ「これか」ポチッ
『START!!』
リゼ「先攻か後攻か……後攻でいいか」
『MEのターン! 3!』
リゼ「なんだこれは……」
リゼ「3か……なら、4か5か6か……」
リゼ「5だ!」
『7!』
リゼ「10!」
『11!』
リゼ「12!」
『15!』
リゼ「16!」
『19!』
リゼ「なっ……!」
『YOU LOSE! HAHA~!』
リゼ「くっ……やるな」
シャロ「わたしにまかせてくださいリゼ先輩」ポチッ
『START!!』
シャロ「先攻でいくわ」
『YOUのターン!』
シャロ「1!」
『3!』
シャロ「6!」
『7!』
シャロ「8!」
『11!』
シャロ「13!」
『15!』
シャロ「18!」
『19!』
シャロ「うぇえ!?」
『YOU LOSE! HAHA~!』
シャロ「うっ……イラっときますねこれ」
マヤ「負けるかぁ!」
メグ「はうぅ……こんな時チノちゃんがいたら……」
リゼ「待て、マヤ」
マヤ「?」
リゼ「これは謎解き、なにか法則があるはずだ」
シャロ「そうね、例えば相手の数え方に何かヒントがあるのかも」
メグ「運じゃ勝てないってこと?」
リゼ「この本の空白部分に気付いたことを書いてみるか」
マヤ「君も考えてみよう!」
シャロ「マヤちゃん?」
――右ルートの謎 『禁断のシュークリーム』
――――――――――――――――――――――
○左ルート
ここあ「ちのちゃん、よんで、よんで!」
チノ「はい、えーっと……」
チノ「第1章、子猫をすくうには?」
ここあ「こねこ?」
チノ「この本を手にした瞬間からお前の戦いは始まっている。最初の運命は、この先にある一方的な弱者だ」
千夜「なんのことかしら?」
チノ「その弱者を救うか見捨てるかで、お前の運命も変わってゆくことだろう」
チノ「女神に微笑まれたくば、優しさと慈悲の心を持て。そして仲間と共に手を差しのべろ」
チノ「運命と戦え」
ここあ「なんだかすごいね……!」
ユラ「子猫だって~助けてあげなくちゃ~」
千夜「一体どんな謎なのかしら」
チノ「……!あれでしょうか」
ここあ「てれび?」
千夜「横に使用人さんが立っているわ」
ユラ「熱い中大変だね~」
チノ「あの、これが最初の謎ですか?」
使用人A「」コクリ
千夜「テレビを見ればいいんですね」
ユラ「チャンネル発見~再生っと」ポチッ
『捕まえたぞ!』
『ニャアニャア!』
千夜「アニメ?」
ここあ「『ねこ』が『わに』につかまってるよ!」
『へっへっへ、うまそうだ』
チノ「あわわ……」
ユラ「おお~マッドな展開だね~」
ここあ「わにさんだめ!こねこをたべちゃやだ!」
千夜「ここあちゃん落ち着いて、アニメだから」
『なに?お前、こいつを助けようというのか?』
チノ「ボイスセンサー!?」
ユラ「高性能~」
『いいだろう。ならばチャンスをやる』
ここあ「ちゃんす?」
『俺の心の中を読んでみろ。見事当てることが出来たら、この子猫を見逃してやろう』
チノ「心を読む、ですか」
千夜「でも、それって」
『その通り、俺はいくらだって嘘を付ける!例え当てられたとしても、俺が違うと言えばそれまでだ!ぐはははは!』
ユラ「悪役に徹してるね~」
『さぁ読んでみろ!読めるものならなぁ!』
使用人A「どうか子猫を救ってあげてください」
ここあ「……どうしよう」
千夜「つまり、纏めるとこうね」
『ワニの心の中を見事当てることが出来れば子猫を助けられる。ただし、ワニはいくらでも嘘をつくことが出来る』
チノ「困りましたね、嘘をつかれてはどうしようも……」
ユラ「つまり、ワニの矛盾を指摘するしかないってことか~」
ここあ「むじゅん?」
ユラ「相手に嘘をつかれた時点でどんな答えも間違いになるんだよ~。ここを逆に利用できれば子猫を助けられるかも~」
チノ「嘘を利用……心を、読む……」
千夜「………………」
ここあ「うそをつけないようにする……」
ユラ「ふふっ~みんなで考えてみよっか~」
――左ルートの謎 『子猫を救うには?』
―――――――――――――――――――――
『禁断のシュークリーム』――解決編
シャロ「リゼ先輩、それですよ!」
リゼ「謎は解けた!」ポチッ
『START!!』
リゼ「先攻だ」
『YOUのターン!』
リゼ「3!」
『4!』
リゼ「7!」
『9!』
リゼ「11!」
『14!』
リゼ「15!」
『うっ……16』
リゼ「19だ!」
『NO~!!』
『YOU WIN HAHA~!』
マヤ「やったーっ!!」
メグ「リゼさんすごい!」
リゼ「分かってみれば簡単な原理だったわけだ」
マヤ「どういうこと?」
シャロ「20を取ったほうが負け。20を取らないようにするには19を取るしかない」
シャロ「19を取るには15を、15を取るには11を、11を取るには7を、7を取るには3を取ればいいのよ」
リゼ「つまりは、最初に3を取ったほうが絶対に勝つという訳だ」
メグ「なるほど……!」
マヤ「最初から出来レースだったんだぁ」
リゼ「計算式は (取ってはいけない数-1)÷4=取れば勝ちの数字 だな」
シャロ「割り切れる時は、4を取れば勝ちね」
マヤ「謎解きっぽいね!」
メグ「高難度って言ってたけど本当だね~」
リゼ「さぁ解いたぞ!どっちに行けばいい?」
『左に曲がれば新たな道が開けるでしょう、BYE♪』
シャロ「左ですね」カキカキ
マヤ「先に進むよー!」ダダダ
メグ「マヤちゃん待って~」
――――――――――――――――――――
『子猫を救うには?』――解決編
ユラ「答えは纏まったかな~」
チノ「はい、一応」
千夜「チノちゃん大丈夫、きっとそれが正解だわ」
ここあ「??」
ユラ「ここあちゃんには難しかったね~。チノちゃん、ワニに言ってあげて~」
チノ「はい……ごほん」
チノ「ワニさん――あなたはその子猫を食べるつもりですね?」
『違うな!食べるつもりなどな――ハッ!!』
千夜「矛盾したわ」
ユラ「食べるつもりが無いなら、連れて行ってもいいよね~?」
『ダメだ!俺をこの猫を食べるつもりで……!』
ユラ「それだとチノちゃんに心を読まれたことになるよ~?」
『なっ……! ……うっ、うぅ…………』
ここあ「わにさん、やくそくだよ?こねこをかえして?」
『……分かった、負けだ。ほら、連れていけ』
ここあ「ありがとう!」
使用人A「クリアです、おめでとうございます」
千夜「チノちゃんすごいわ!」
ユラ「ファインプレーだね~」パチパチ
ここあ「でもどういうことだったの?」
チノ「ここあさんに分かりやすいように説明しますね」
チノ「ワニは心を読まれたら、子猫を食べることが出来ません。しかし、こちらが『子猫を食べるつもりなんでしょう』と聞くと、違うと答えてしまったらこれも食べることが出来ません」
チノ「どっちにしろ、ワニは子猫を食べることが出来ないんです」
ここあ「そっかぁ……!うそだと、たべるつもりがないってことになるもんね」
千夜「ちゃんと理解できたわね、偉いわ」ナデナデ
ユラ「ここあちゃんて意外と理系派~?」
千夜「はい、算数が得意なんですよ♪」
ユラ「おりこうなんだね~ユラちゃん惚れ直しちゃうよ~」ギュッ
ここあ「つぎはわたしもがんばるね//」ニコッ
『ここから右に歩いて3分。助けてあげた子猫に導かれたあなたは、不思議な宝箱を見つけます』
千夜「右に歩いて3分のところに宝箱ね」メモメモ
チノ「次に進みましょう」
――
――――
――――――
―――――――――――――――――――――
――右ルート AM11:41 広場――
メグ「わぁ~エビフライが6本も乗ってるよ」
マヤ「天丼弁当じゃね?わたしのはカツだけだし」
リゼ「こっちはサケの切り身とちくわの天ぷらだ……まるでのり弁だな」
メグ「ご飯も特盛……栄養が偏っちゃうね~」
リゼ「シャロのはどうだった?」
シャロ「………………」←フォアグラ+キャビア+フカヒレの味噌煮+黒毛和牛の上にトリュフEtc.
リゼ「」
マヤ「すげぇ~豪華絢爛じゃん!」キャハハ
メグ「このお弁当ひとつで1万円は超えそうだね~」
シャロ「こんなの、わたし……」ガクガク
リゼ「たぶん親父の仕業だろう、気にせず食べろって」
シャロ「あっ……あ……」
マヤ「シャロ、箸が震えてるよ?」
リゼ「確かに少し極端すぎるけどな……」
メグ「シャロさん、フォアグラおいしい?」
シャロ「緊張して味なんて分からない……!」モグモグ
――――――――――――――――――――――
――左ルート AM11:43 海岸――
ユラ「ここあちゃん、あーん」
ここあ「あーん♪」
チノ「…………//」
千夜「チノちゃんもここあちゃんにあーんしたい?」クスッ
チノ「あっ、いえ……//」
ユラ「ここあちゃんのおべんとうかわいい~あたりだね~」
ここあ「てぃっぴーのおべんとうだよ」ニコッ
ユラ「いいな~ユラお姉ちゃんのは完全にリゼのお父さん作のお弁当だね~」←揚げ物ぎっしり
ここあ「ゆらちゃんもたべる?」
ユラ「あーんしてくれるの?」
ここあ「うん!」
ユラ「あーん」
チノ「わたしのはどうやら父が作ったお弁当のようです」←色使い+栄養バランス完璧
千夜「さすがはチノちゃんのお父さんね」
チノ「千夜さんのは?」
千夜「スクランブルエッグとから揚げ、レタスとコーンのサラダ。あとシューマイ」
チノ「父が作ったにしてはメニューが簡素ですし、リゼさんのお父さんにしてはまともですね……」
千夜「そうね、もしかしたらメイドさんかしら?」
ここあ「ぼうけん、まだまだつづくかな?」
ユラ「そうだね~あと5時間くらい~」
ユラ「リゼに会う前にここあちゃん補充しとくね~」
ここあ「わわっ……//」
――
――――
――――――
――――――――――――――――――――――
マヤ「順調に解けてきたねー」
メグ「第4章は~えっと」
リゼ「二者択一の鬼門……○×クイズか?」
シャロ「あっ、4章のページが中折れになってます」
マヤ「今度はこの問題を解けばいいのかな」
リゼ「傷口には醤油を塗ると良い……×だな」
メグ「コーヒーの実は甘い……○だね」
シャロ「……?3問目は何かしら?」
リゼ「アルジャーノンに花束を、はハッピーエンドである」
メグ「何かの映画のタイトルかな?」
リゼ「いや、確か書籍だ。読んだことは無いが」
シャロ「調べるにしても携帯は無いし……」
マヤ「×だよ!」
リゼ「!?」
メグ「マヤちゃん、読んだことあるの!?」
マヤ「なんだよ~わたしはそういうの知ってたらおかしいわけ?」
シャロ「驚いたわ、読書とマヤちゃんなんて水の油だと思ってた……」
マヤ「みんなして失礼だぞー!わたしだって本くらい読むし!」
リゼ「とにかくマヤのおかげで助かった」
メグ「4問目は、うさぎは本当に寂しがり屋であるか、だって」
シャロ「これは×ね、なにかで聞いたことあるわ」
リゼ「本当は構ってもらわない方が好きなんだっけ」
マヤ「×○××か、これを表に当てはめると」
メグ「1、6、3、4だね」
リゼ「1634っと」カチッ
シャロ「開きました、何か入ってますよ」
マヤ「おおー無線だ!」
リゼ「繋がるか?」
メグ「もしもし?」
『……暗号を、どうぞ』
メグ「暗号だって~」
シャロ「さっきのこれね」
メグ「二つの冒険者、運命線上で交わりし時、宝への扉開かれん」
『………………』
プチッ
メグ「切れちゃった……」
リゼ「切れただと?何も聞いてないのにか?」
シャロ「もしかして暗号が間違っていたとか……」
マヤ「あっ、なんかきたよ!」
??「……お乗りください」
リゼ「ゴルフカートじゃないか!?」
シャロ「その着ぐるみは……」
マヤ「あははっ、変なコスプレ」
メグ「暑そうだねぇ」
??「最後の場所まで、ご案内します」
リゼ「お宝のありかか」
マヤ「ついに辿り着いたね!」
メグ「どんな所にあるのかな」
シャロ「山の上とかではないですよね……?」
??「……………………」
―――――――――――――――――――――
『問題!ブルーレイと共に企画争いをし、最終的には撤退を余儀なくされた光ディスク媒体と言えば?』
ユラ「エイチディー・ディーブイディー」
ピンポーン
ここあ「ゆらちゃんすごい!」
ユラ「やったよここあちゃん~いえーい」
ここあ「いえーい♪」パチッ
ユラ「次は千夜ちゃんだよ~」
『問題!おはぎと言えば――』
千夜「王道はつぶあんっ!」
ピンポーン
千夜「やったわ♪」
チノ(問題を聞かずに……すごいです)
ここあ「つぎはわたしだよ」
『問題!爆発性反応装甲と呼ばれ、装甲の爆発作用によって敵からの攻撃を最小限に抑える戦車装甲の正式名称は?』
チノ「なんですかそれ……!」
ユラ「ミリタリーかぁ、管轄外かも~」
千夜「リゼちゃんしか分からない問題ね……」
ここあ「りあくてぃぶあーまー!」
ピンポーン
全「」
ここあ「やったぁ!」ピョン
ここあ「つぎ、ちのちゃんだよ」
チノ「あ……は、はい……」
『問題!銃口の先に装着することで発射時の反動を弱める役割を果たす部品の名称は?』
チノ「またミリタリー……!?」
ここあ「まずるぶれーき!」
ピンポーン
『全問正解おめでとう!』パンパカパーン
ここあ「ちのちゃん、やったね」ニコッ
チノ「」
千夜「………………」
ユラ「……リゼ」
ここあ「ふぉぇ?みんなどうしたの?」
千夜「帰ったら、リゼちゃんにきつーく言っておくわ」
チノ「……お願いします」
ユラ「ここあちゃん、やっぱり吹き矢だけにしよ~?」
ここあ「?」
『8問中8問正解、クリア。迎えが来ますのでお待ちください』
チノ「迎え……?」
ユラ「あれかな~?」
??「お乗りください」
ここあ「うさぎのきぐるみだ!」
千夜「お宝のありかまでお願いします」
ユラ「二つの冒険者、運命線上で交わりし時、宝への扉開かれん、か~。この次でラストかも~」
チノ「ここあさん、ついに見つかりますよ」
ここあ「たのしみだね♪」
――
――――
――――――
――――――――――――――――――――
――PM 5:11――
??「到着しました」
リゼ「この森の奥か?」
??「安全は確認済みです、どうぞ」
シャロ「良かった……一本道みたいですね」
マヤ「いったい何があるのかな」ワクワク
メグ「シストなのになんだかドキドキするね」
―――――――――――――――――――――――
リゼ「あんまり虫がいないな」
メグ「やぶ蚊がいたら大変だもんね~」
マヤ「あと少しでエンディングかぁ」
シャロ「……?なにか声が聞こえなかった?」
リゼ「!?」
メグ「お、おばけ?」
マヤ「こんなところで冗談やめようよシャロ……」
リゼ「……いや、たしかに聞こえる」
シャロ「向こうからですね……」
マヤ「に、逃げたほうが良くね?」
メグ「他にも誰かが……?」
チノ「あっ……あれは――」
ここあ「りぜちゃんたちだ!りぜちゃーん」ブンブン
メグ「ここあちゃんだ!」
マヤ「向こう側から来てたんだぁ」ホッ
シャロ「向こうのグループでしたね、リゼせんぱ――」
リゼ「ここあ!」シュバ!
シャロ「!?」
リゼ「ちゃんとここまで来れたんだな、偉いぞ//」スリスリ
ここあ「んにぅ……//」
ユラ「リゼ~、感動の再会はシストが終わってからね~」
千夜「たぶん、ここね」
リゼ「この先か……よし、いくぞ!」
マヤ「チノ、宝物持ってきた?」ヒソッ
チノ「はい、リゼさんのお父さんに言われた通り」
メグ「ここあちゃんとの思い出の品だよね」
シャロ「千夜は何にしたの?わたしはここあと家で遊んだ時に使った色鉛筆」
千夜「わたしは初めて遊んだ時に使った煙玉よ、一個だけ余ってたわ」
マヤ「チマメ探偵団、ダッシュだ!」タタタ
メグ「マヤちゃん走っちゃダメだよ~」
チノ「マヤさんは元気ですね」
――クイクイ
チノ「?」
ここあ「ちのちゃん、わたしたちもいこうっ」
チノ「くすっ……はい」ニコ
リゼ「……ユラは」チラッ
ユラ「わたし?吹き矢対決した時の矢だよ~安全な針抜き~」
リゼ「あの時の、とっておいたのか。お前らしいな」
ユラ「リゼは~?」
リゼ「わたしか?ここあとの写真だ、コピーだけどな」スッ
ユラ「思ってたより普通だね~」
リゼ「二人でクレープを食べた時の……この写真は、特に思い出深いんだ」
ユラ「そっか~……」
ユラ「リゼの部屋の右から2番目の棚に飾ってある写真だよね~それ~」
リゼ「!?」
ユラ「そんな顔しないでよ~この前ここあちゃんを連れだしたときにチラっと見ただけだからさ~」
リゼ「……相変わらず観察眼が鋭いな」
ユラ「リゼのことは常に一番知っておきたいしね~」
ユラ「あっ、今の言葉ここあちゃんには内緒だよ~?」
リゼ「わかってる」
ユラ「ふふ~ユラちゃんとここあちゃんに挟まれて、リゼ幸せでしょ~」
リゼ「ああ……そうだな」
ユラ「ん~ツッコミ入れてくれないとさすがのわたしも困るかな~」
リゼ「本当に幸せだからな、ここあやユラ……――みんなのおかげで」
ユラ「今日のリゼは素直だね~道中で毒キノコでも食べた~?」
リゼ「食べるか!」
ユラ「偽物かも~下着の色確認させてよ~」グイッ
リゼ「おいこら引っ張るな!やめろ!//」
ユラ「リゼのことは全部知っておかないとさ~」
ユラ!// オオ~カワイイシタギダネ~
シャロ「吹き矢部部長って昔からあんな感じなのかしら」
千夜「リゼちゃんが振り回される側なのがわかるわね」クスッ
――――――――――――――――――――――
マヤ「あれ、行き止まり?」
メグ「宝箱がないよ?」キョロキョロ
チノ「どういうことでしょうか……」
ここあ「……――!」ピコーン
ここあ「まやちゃん、そのほんかして」
マヤ「これ?でもここあの持ってるのと違うよ」スッ
ここあ「おしまいのぺーじをはんぶんにおって……」
メグ「ここあちゃん?」
チノ「……――!」
チノ「二つの冒険者、運命線上で交わりし時、宝への扉開かれん……」
ここあ「わたしのぺーじもはんぶんにして、こうしてくっ付ければ――」
チマメ「!」
マヤ「お宝は――眠りの中!」
メグ「土の中ってことだね!」
チノ「マヤさん、メグさん」スッ
マヤ「スコップ!?チノがどうしてこんなアイテムを」
チノ「2番目の謎で獲得したものです、まさかここで使うなんて」
メグ「ありがとうチノちゃん、これで掘り出せるよ」
マヤ「うおぉぉ!」ザクザクッ
メグ「マヤちゃん早すぎだよぉ」
マヤ「あっ!」
メグ「あった……あったよ二人とも!」
チノ「ここあさん、やりましたね//」ニコッ
ここあ「りぜちゃん、みんな!みつけたよ~!」
リゼ「土の中に埋まってたのか?」
マヤ「ここあが最後の謎を解いてくれたんだよ」
千夜「まぁ、すごいわここあちゃん」
シャロ「ここあがいてくれて助かったわね」ナデナデ
ここあ「んっ……//」
ユラ「さすがはわたしのここあちゃん~」ギュッ
リゼ「わたしのここあだ、気安く触るな」パシッ
ユラ「暴力ふるった~鬼リゼ~」
ここあ「りぜちゃん、ちのちゃん」
チノ「はい」
リゼ「開けてみるか」
ここチノリゼ「………………」ドキドキ
――パカッ
リゼ「!」
チノ「これは……」
ここあ「ちけっと?」
千夜「8枚入ってるわ」
シャロ「クエストクリア報酬・パーティーチケットって書いてるわね」
マヤ「持っている無線で裏の番号にかければパーティーに参加できる」
メグ「暗くなるまでにかけてこい?」
ユラ「帰ったらリゼのおうちで打ち上げパーティーってことだね~」
リゼ「ここまで振り回しておいて、結局は親父の思惑通りか……」ハァ
チノ「チケットを取って、ここに宝物をつめましょう」
千夜「この宝箱は持って帰ればいいのかしら?」
シャロ「そうみたいね、側面に書いてあるわ」
リゼ「とりあえず電話するか」ピッ
リゼ「もしもし、謎は解けた。1289だ」
プチツ
リゼ「?」
使用人「お迎えにあがりました」
全「!?」バッ
使用人「」パシャッ
ここあ「ゆうしゃさん、とれた?」
使用人「ええ、ばっちりですよ」ウィン
使用人「ちいせぇお嬢、どうぞ」スッ
リゼ「なんだいきなり?」
チノ「ここあさん、それは……」
ここあ「わたしのたからもの、みんなとのしゃしんだよ」
ここあ「これをたからばこにいれるの」
千夜「そう……ここあちゃんらしいわ、素敵ね」
シャロ「うぅ、不意打ちだったから変な顔しちゃったかも」
マヤ「撮るなら撮るって言ってよ、お嬢様ポーズしたのに~」
メグ「それってお嬢様ポーズなの?」
ユラ「なるほど~ここあちゃんと使用人さんは内通してたんだ~」
使用人「でも勘違いなさらず。写真を撮るとは言っていましたが謎解きの答えは一切教えていませんので」
使用人「お疲れ様です、帰宅しましょう」
マヤ「うーん、疲れたぁ!」
メグ「さすがにヘトヘトだね~」
チノ「ここあさん、楽しかったですか?」
ここあ「うん!またみんなで『なぞとき』したい//」
リゼ「親父に頼めば催してくれるさ、いつでもな」
千夜「帰ったら今度はパーティーみたい、お祭りはこれからね」
シャロ「きっと明日は足腰絶たないわね、これ」
ユラ「元気な人は疲れている人の手をひいてあげて~、とりあえず森の外までいくよ~」
ここあ「りぜちゃん……」ギュッ
リゼ「よっと」ヒョイ
リゼ「ここあ、帰ろうか」
リゼ「――わたしたちの街に」ニコッ
ここあ「……うん//」ポスッ
チノ「………………」クスッ
メグ「チノちゃん、どうしたの?」
チノ「あっ、いえ……」
マヤ「最後のページ?」
チノ「はい、良く見ると裏面にもメッセージが」ピラッ
マヤメグ「!」
最後のページ 裏面 ――絆は何よりの宝物
――おしまい?
―――――――――――――――――――
『帰りの車内』
チマメ「すぅ……すぅ……」Zzz
リゼ「チマメ隊は全滅だな」
ここあ「すぅ…………」Zzz
リゼ「ここあも疲れたか」ナデナデ
ユラ「ぐ~す~ぴ~」
リゼ「お前は寝てないだろ。重いからもたれ掛かってくるな」
ユラ「ここあちゃんとわたしとじゃずいぶん態度が違うね~泣いちゃうよ~?」
リゼ「冗談言ってないでもっとそっちに寄ってくれ、ここあが寝にくい」
ユラ「はーい、ユラちゃんいい子には優しいのさ~」
千夜「シャロちゃん、眠たいなら寝てもいいのよ。起こしてあげるから、ねっ?」ナデナデ
シャロ「ぅ……ほんと……?」
千夜「ええ、ほんとう」ニコッ
シャロ「…………すぅ」Zzz
千夜「おやすみなさい、シャロちゃん」
使用人「…………」フッ
―――――――――――――――――――――――
『帰投待ち』
――天々座家 大広間――
青山「みなさん遅いですねぇ……やはり難しすぎたでしょうか」
タカヒロ「どこぞの奴が変な問題を入れたばかりに」
リゼ父「あれくらい一般常識だろう!?」
青山「でも、最後にお互いの本をくっつけるというアイデアは、とても素敵なものだと思います」
タカヒロ「だが、謎解きにクイズはどうなんだ?」
リゼ父「どっちも同じようなものだろう、楽しければなんだっていい」
青山「確かにそうですねぇ、シストは楽しむためにやるのですから」
タカヒロ「……あの車は」
リゼ父「帰ってきたか」
――ガチャッ
ここあ「ただいま!」
青山「クリア、おめでとうございます」パチパチ
リゼ父「最後まで頑張ったか?」
ここあ「うん!」
リゼ父「偉いな。お腹すいただろう、メシだ」ニヤッ
タカヒロ「チノ、リゼくん。みんな、おかえり」
チノ「ただいまです」
リゼ「すいません、また親父が迷惑を」
タカヒロ「その様子だと無事に楽しめたようだね」
千夜「はい、とっても」ニコッ
シャロ「謎も難しくて、まるで冒険しているみたいでした」
ユラ「起きないとご飯が無くなるよ~?」
メグ「むにゃ……?」
マヤ「いい匂い……もう晩御飯?」
――――――――――――――――――
『お宝の行方』
――PM9:22 客室――
使用人「どうぞ」スッ
ここあ「ぁ……!ありがとう//」ニコッ
使用人「お疲れ様でした」
ここあ「みんなとのたからもの……えへへ//」
使用人「良かったですね」ナデナデ
ここあ「…………」ギュッ
使用人「お嬢のお部屋に飾っておくんですか?」
ここあ「ううん……」
ここあ「これ、あずかっててください」スッ
使用人「あっしが?」
ここあ「みんなとのおもいで……」
ここあ「もし……わたしがいなくなったりしたら、りぜちゃんにわたして?」
使用人「!」
ここあ「これなら、すこしだけでもりぜちゃんたちのきおくにのこれるかなって」
使用人「…………」
ここあ「わすれないでもらいたいから……みんなに……」
使用人「…………」
ここあ「……だめ?」
使用人「…………ええ」
ここあ「!」
使用人「……ダメです」
ここあ「…………」ウツムキ
――ギュッ
ここあ「……!」
使用人「いなくならないでください、絶対」
使用人「お嬢が悲しみますよ。ご友人もみんな」
ここあ「…………」
使用人「宝箱の中身はこれからも増えていきます、ずっと」
使用人「お嬢の部屋に置いておかないと、困りますので……」
ここあ「…………うん」
ここあ「ごめんなさい……」
使用人「お気になさらず。……部屋にお戻りください」
ここあ「うん……でも、もうすこしこうしてるね」
ここあ「いつもありがとう……」スリスリ
使用人「っ……」ギュッ
――――――――――――――――――――――
『夏のおしまい』
――PM10:31 IN ベッド――
リゼ「電気消すぞ~」
ここあ「うんっ」
カチッ
リゼ「ふぅ……」
ここあ「えいっ」ギュッ
リゼ「おっと……」
ここあ「りぜちゃん……えへへ//」ニヘラ
リゼ「疲れただろう」ナデナデ
ここあ「ううん、まだだいじょーぶだよ」
ここあ「……きょう、『しすと』でりぜちゃんとはなればなれになっちゃったから」
リゼ「?」
ここあ「いっしょにいられなかったから……だから、りぜちゃんとたくさんすりすりするの♪」
リゼ「……!」
ここあ「こんどはりぜちゃんといっしょにやりたいな//」
リゼ「……そうか、ここあもわたしと同じ気持ちでいてくれたんだな」
リゼ「やっぱり無理にでも同じグループになれば良かったな……ユラたちなら代わってくれたかもしれないし」ナデナデ
ここあ「ゆらちゃん、すごくやさしかったよ。きょうのおべんとうのときふたりでたべさせあいっこして――」
リゼ「こらっ」ギュッ
ここあ「むぐっ?」
リゼ「今日のことは明日話そう。……いまはわたしだけを見てくれ」
ここあ「……!」
ここあ「……うん――いまは、りぜちゃんだけ//」ニコッ
リゼ「ありがとう」
ここあ「りぜちゃん……//」スリスリ
リゼ「ネグリジェだとくすぐったいな」クスッ
ここあ「あったかいね……//」
リゼ「人肌だからこうしてくっ付いていれば温かいんだ」
リゼ「ここあがいるから、あったかい」ギュッ
ここあ「んっ……//」
リゼ「もう夏も終わりだな」
ここあ「つぎはやきいもだね」
リゼ「ははっ、秋だろ」
ここあ「おとうさんとやくそくしたんだ、りぜちゃんやみんなといっしょにやきいもをやくって」
リゼ「もう次の計画を立てたのか」
ここあ「あとね、めいどさんたちといっしょにおちばのそうじもするよ」
リゼ「お手伝いもか、ここあはおりこうさんだな」
ここあ「ほかにもいっぱいあるよ!またみんなでたくさんたのしいことしようね//」
リゼ「ああ」
リゼ「――これからも、ずっと」
ここあ「うん……//」ポスッ
リゼ「胸元が開いてるぞ」コチョコチョ
ここあ「ひゃっ!だめぇくすぐったいよぉ!//」
リゼ「……っ//」
ここあ「むぅ……りぜちゃんきらい//」プクー
リゼ「ここあが可愛いから意地悪したくなるんだ、ごめんな」ナデナデ
ここあ「りぜちゃん……わたしのこと、すき?//」
リゼ「好きだぞ、ここあのことが一番」
ここあ「ぁ……ぇへへ//」
ここあ「わたしも――りぜちゃんだいすき//」
――おしまい♪
感想
やっぱりリゼ父はやり方が豪快ですね!なんでも本気でやるというか。
でも冒険にクイズマシーンを使うところがおしいですね(笑)。私もタカヒロさんに同感です。
回が進むにつれて深まる、ここあちゃんの謎。まるで彼女だけが結末を知っているような振る舞い…。
一体ここあとは誰なのか?ここあに隠された秘密とは……!
砂水クジラさん、次回も楽しみにしています!!
リゼパパがイベントを開くとみんなが笑顔に……私的にはリゼパパのキャラクター最高にお気に入りだったりします。
愛する娘のためならどんなにお金がかかろうとも!
ここあちゃんの物語が進んでいくにつれ、わたし自身遠からずとも結末が近付いてきているのだと少し寂しい気持ちです。
全ての真実を知ってしまった時、りぜちゃんはここあちゃんとどう向き合うのでしょう。
リゼちゃんにとって、一番の幸せとは……。
拝読ありがとうございます、乞うご期待ください。
最近読めてなかったので読もうとした瞬間に3期決定の知らせを聞いて驚いてしまい、しばらく落ち着いて読むことが出来ませんでした………。はてさて、これからどんな展開になっていくのでしょうか?楽しみですね!砂水さんのssの新作も楽しみにしてます。
ありがとうございます、どうにか3期放送まで当サイトを守らねばなりませんね……!
読ませて頂きました。
最高の一言しかありません
このシリーズにモカを入れてほしいです
モカさんを入れたいのは山々なのですが……一人だけ遠くに住んでいるという設定上、なかなかストーリーに絡ませづらいという難点がございまして。
スムーズなアイデアが閃き次第、ぜひ。