ごちうさSS チノ「怒っている理由を言葉ではなく行動で察してもらいます」

 

――土曜日 ラビットハウス――

 

 

リゼ「声が出せないだと?」

 

チノ「」コクコク

 

リゼ「喉でもいためたのか?チノらしくないな」

 

リゼ「まぁ、今日はわたしとココアに任せてゆっくり休んでろよ」

 

チノ「」フルフル

 

リゼ「でも、声が出せないんじゃ接客も……」

 

チノ「」ササッ グイッ

 

リゼ「んっ?」

 

チノ「」ササッ グイッ

 

リゼ「コーヒーくらいだったら淹れられる、か?」

 

チノ「」コクコク

 

チノ「」カキカキ

 

リゼ「?」

 

チノ『回復するまで、わたしの気持ちは見振りや素振りで伝えますので』

 

リゼ「つまり、ジェスチャーか」

 

チノ「」コクコク

 

リゼ「分かった、任せろ」

 

チノ「」ペコッ

 

 

―――――――――――――――――――――

 

 

ココア「チノちゃんが!?」

 

リゼ「ああ、喉が痛くてしばらく話せないらしい」

 

ココア「お薬買ってこなきゃ!」

 

リゼ「朝に飲んだらしいから大丈夫だ」

 

リゼ「しばらくはあんまりチノに絡むなよ」

 

ココア「モフモフもダメ?」

 

リゼ「ダメだ」

 

ココア「そんな!」

 

リゼ「チノの容態が悪くなってもいいのか?」

 

ココア「うぅ~……」

 

リゼ「当分は安静だ、不自由な分お前が支えてやってくれよ」

 

ココア「任せて!わたしの高いお姉ちゃんスキルでチノちゃんをサポートするから!」

 

リゼ「ああ、頼んだぞ。わたしはバイト中しか面倒見てあげられないからな」

 

ココア「ならしばらくリゼちゃんも一緒にお泊りしない?」

 

リゼ「え?」

 

ココア「二人でサポートすれば完璧だよ!」

 

リゼ「いや、でもチノが辛いだろうし」

 

ココア「わたしの部屋で寝ればいいよ、ねっ?」

 

リゼ「……そうだな」

 

リゼ(楽しそう……チノが許してくれるなら、悪くない)

 

リゼ「チノ、少し相談したいことが――……?」

 

 

チノ「」ムスッ

 

 

リゼ「チノ?」

 

チノ「………………」

 

リゼ「あのな、さっきココアと話していたんだけど――」

 

チノ「」プクー

 

リゼ「?」

 

チノ「」プクー

 

リゼ「どうしたんだよ?怒ってるのか?」

 

チノ「」プクー!

 

リゼ「さらに膨らんだ!?ごめん、わたし何か……――ハッ!

 

リゼ「すまない仲間外れにして!今度からは会話に混ぜるから!」

 

チノ「……」シュウウゥ

 

リゼ「正解……か?」

 

チノ「」コクコク

 

リゼ「混ざりたいならこっちに来れば……」

 

チノ「」プクー!

 

リゼ「わぁぁ冗談だ!」

 

チノ「」シュウウゥ

 

リゼ「…………」

 

リゼ(これは、いつも以上にめんどくさいぞ……)

 

リゼ「あのな、チノ?聞こえていたと思うが、しばらくの間はわたしとココアで――」

 

チノ「」プクー!!

 

リゼ「うわぁ!?分かった!泊まったりしないから安心しろ!!」

 

チノ「…………」

 

リゼ「あれ、しぼまない……?まだ何かあるのか?」

 

チノ「」サッ

 

リゼ「ココアとチノの人形!?」

 

チノ「」スッ ギュッ

 

リゼ「くっついて……添い寝か?」

 

チノ「」コクコク

 

リゼ「はぁ……分かった、治るまでチノの部屋で寝るように言っておいてやるから」

 

チノ「♪」シュウウゥ

 

リゼ「」ホッ

 

ココア「リゼちゃん、今夜はわたしのパジャマ使う?」

 

チノ「」ピクッ

 

リゼ「こ、ココア!えっとだな、今夜はやめとくよ!チノの容態も良くなさそうだし――」

 

チノ「」フンス

 

 

 

―――――――――――――――――――――――

 

 

――翌日――

 

 

リゼ「どうだ、チノの容態は?」

 

ココア「うん、やっぱりまだ上手く話せないみたい。だから昨日はぬいぐるみでお喋りしたんだよ、こうやって」

 

リゼ(なんだかんだ楽しんでるみたいだな……)

 

ココア「リゼちゃんも入れて3人でしたかったのに」

 

リゼ「いや、わたしはいいよ」

 

ココア「そうだ!昨日はリゼちゃんの言いつけ通り、チノちゃんにモフモフしなかったよ」

 

リゼ「そうか、偉いな」

 

ココア「代わりにリゼちゃんもふもふっ♪」ギュッ

 

リゼ「お、おい」

 

ココア「えへへ~」

 

リゼ「ココア、そろそろチノが来るから……」

 

ココア「?」

 

リゼ「あっ、いやその――ハッ……!!

 

リゼ「…………」

 

リゼ「……」ググッ

 

 

チノ「」ゴゴゴ!

 

 

リゼ「」

 

ココア「あっ、チノちゃん!」

 

チノ「」ダダッ

 

リゼ「チノ!待ってくれぇ!!」

 

 

 

 

――チノの部屋――

 

 

リゼ「チノ!おい!」ガチャッ

 

チノ「…………」マッシロ

 

リゼ「」

 

リゼ「チノ……誤解だ、あれはココアがモフモフしたいっていうから仕方なく――」

 

チノ「」サッ

 

リゼ「また人形劇か!?しかもわたしの人形まで!?」

 

チノ「…………」ヒョコヒョコ

 

リゼ「わたしとココアが話してて……」

 

チノ「」ビュッ

 

リゼ「わたしがココアを押し倒してって――おい!?」

 

リゼ「誤解だって言ってるだろう!チノのことをモフモフできないから代わりに――」

 

チノ「」カキカキ

 

リゼ「ん……?」

 

チノ『ウェルカムカモーン』

 

リゼ「……つまり、モフモフされてもいい?」

 

チノ「」コクコク

 

リゼ「分かった……ココアに言っておいてやるよ」

 

チノ「♪」パアァ

 

リゼ「チノ、まだ喉が痛いのか?」

 

チノ「」コクコク

 

リゼ「早く治してくれよ……」

 

チノ「」フンス

 

 

 

―――――――――――――――――――――――

 

 

――翌日――

 

 

ココア「チノちゃんもふもふ!」ギュッ

 

チノ「//

 

リゼ「良かったなぁチノ」

 

チノ「」カキカキ

 

チノ『断れないから仕方なくです』

 

リゼ(すごくうれしそうだ……)

 

ココア「チノちゃんの喉、早く良くならないかな」

 

リゼ「時間治癒だし、もう少しだと思うぞ」

 

チノ「」コクコク

 

ココア「なら今日もリゼちゃんと深夜の長電話だね!」

 

チノ「!?」

 

リゼ「いいのか?昨日も一昨日もたわいもないような話ししかしてないが」

 

ココア「リゼちゃんと話してるだけで楽しいもん」

 

チノ「!?」

 

リゼ「そ、そうか……//

 

ココア「今夜は話したいことがたくさんあるからいっぱい話そうね」

 

リゼ「ああ、お前が眠たくなるまで付き合ってやる」

 

キャッキャッ ワイワイ

 

チノ「……………………」

 

チノ「」

 

 

ココア「リゼちゃんが教えてくれた方法試したよ、寝相がよくなったかも」

 

リゼ「しっかりとした体勢で眠れば大体は良く――んっ?」

 

リゼ「チノ……?」

 

ココア「あれ、チノちゃんは?」

 

リゼ「どこにいったんだ……?」

 

ココア「トイレかな?」

 

 

リゼ(部屋にはいないな……キッチンか?)

 

リゼ「チノ?」ガチャッ

 

 

チノ「」チーン

 

 

リゼ「うわぁあ!!?」

 

リゼ「チノ、しっかりしろ!」

 

リゼ「誰にやられたんだ!まさかゲリラか!?」

 

リゼ「……?これケチャップ……」

 

チノ「」

 

リゼ(ダイイングメッセージ……)

 

『親しい人に裏切られ、愛しい人に見放され、もはや希望を失いました。お母さん、いますぐそちらへ』

 

リゼ「………………」

 

リゼ「チノ?起きろ」

 

チノ「………………」

 

リゼ「チノ、生きてるだろ、おい」ツンッ

 

チノ「」フルフル

 

リゼ「生きてるじゃないか」

 

チノ「………………」

 

チノ「」ガクッ

 

リゼ「わかった!しんでていいから訳を聞かせてくれよ!」

 

チノ「」サッ

 

リゼ「また人形劇か……もはやジェスチャーですらないな」

 

チノ「」スッ スッ

 

リゼ「わたしとココアが、話をしている……」

 

チノ「」サッ ギュッ

 

リゼ「ハグ……?」

 

チノ「」ススッ

 

リゼ「そこへチノが近づいてきて……」

 

チノ「」ドガッ

 

リゼ「チノがわたしに殴られた!?」

 

チノ「」ギュッ

 

リゼ「ココアとわたしが……キス?」

 

チノ「」ポテッ

 

リゼ「チノが倒れた…………」

 

チノ「…………」

 

リゼ「おしまいか?」

 

チノ「」コクコク

 

リゼ「………………」

 

チノ「」カキカキ

 

チノ『わたしはココアさんやリゼさんはおろか、もう二度と誰にも口を聞いてもらえないんです』

 

リゼ「いや、いまは話せないからしょうがないだろ?」

 

チノ「」カキカキ

 

チノ『会話を近くで聞くだけでさっきのように厄介払いされます』

 

リゼ「被害妄想だ!?チノを殴ったりするはずないだろ」

 

チノ「」サッ

 

チノ「」ギュッ

 

リゼ「ココアとキスもない!わたしとココアはお前の中でどういう関係なんだ……」

 

チノ「………………」

 

チノ「」バタリ

 

リゼ「わぁ~待て!大丈夫だ!ココアのこと取ったりしないから!」

 

チノ「」ピョコ

 

リゼ「チノ人形が起き上がった!?」

 

チノ「」ドン

 

リゼ「わたしがココアに突き飛ばされた……」

 

チノ「」ギュッ

 

リゼ「ココアとチノがハグ……」

 

チノ「」チラッ

 

リゼ「うん、なんだか妙にイラっとくるがもうそれでいい」

 

チノ「♪」パアァ

 

リゼ「っておい!ハグ以上の行為に及ぼうとするなチノ人形!」

 

チノ「」ポイッ

 

リゼ「わたしが捨てられた!?救いが無さすぎだろ!」

 

チノ「」ギュッ

 

リゼ「ハッピーエンドなのは分かったから早く起きろよ」

 

チノ「」ピョコ

 

リゼ「人形じゃなくてチノ本人がだ!!」

 

チノ「」ムクリ

 

リゼ「ハァ……頼むから早く治ってくれ……」

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――

 

 

――翌日――

 

 

チノ『ありがとうございます。おかげさまで明日には治りそうです』

 

千夜「良かったわねぇチノちゃん」

 

シャロ「声が出せないっていうから心配したわ」

 

ココア「リゼちゃん、最近元気ないけど大丈夫?」

 

リゼ「ああ、ちょっと疲れててな……」ゲッソリ

 

千夜「あら、このぬいぐるみは?」

 

リゼ「チノの会話手段だ、慣れてくると結構分かるぞ」

 

シャロ(リゼ先輩、相変わらず苦労してる……)

 

ココア「チノちゃんとお話できないとやっぱり寂しいもんっ」ギュッ

 

チノ「//

 

シャロ「相変わらず仲良しねぇ」

 

千夜「今ならチノちゃんモフモフし放題ね」

 

ココア「ち~の~ちゃん!」スリスリ

 

チノ「//」カキカキ

 

チノ『ココアさん、あんまり抱き着くと苦しいです』

 

リゼ(やめろとは書かないんだな……)

 

ココア「病気が治ったら、今度はチノちゃんとも一緒にいきたいな」

 

チノ「?」

 

千夜「あのお店のクッキー、おいしかったわ」

 

シャロ「チノちゃんだけ連れて行ってあげられなかったものね」

 

チノ「!?」

 

リゼ「お、おい!お前ら……!」

 

ココア「あっ……!」

 

千夜「そう言えば内緒だったわ!」

 

シャロ「ごめんなさい先輩!つい!」

 

チノ「!?」

 

リゼ「」

 

チノ「……………………」

 

リゼ「ち、チノ、違うんだ、これは……!」

 

ココア「学校の帰り道に偶然オープンしたばかりのお菓子屋さんを見つけて、それで!」

 

千夜「行けなかったチノちゃんがかわいそうだと思ってみんな黙ってただけよ!」

 

シャロ「チノちゃんを仲間外れにしたとかじゃなく……!」

 

リゼ「また明日みんなで行こう!なっ!?」

 

チノ「」プクー

 

チノ「……」プクー!

 

チノ「…………」プクー!!

 

ココア「あわわ……!」

 

チノ「」ササッ サッ ポテッ

 

シャロ「チノちゃん人形だけがみんなからつまはじき者に!?」

 

チノ「」スッ

 

千夜「シガレット!?サングラス装備!?」

 

チノ「」カキカキ

 

チノ『明日からこうなります』

 

ココア「チノ゛ぢゃん!!?」

 

チノ「」タタタ!

 

リゼ「チノ!?ジェスチャーでも人形劇でもいいから話しあおう!!チノぉ!!」

 

 

――翌日。

みんなでお菓子屋さんに連れて行ってあげることでブラックチノちゃん化は辛うじて阻止されたそうです。

 

 

――――――――――――――――――――――

 

 

 

チノ「リゼさん、相談したいことがあります」

 

リゼ「ん、どうした?」

 

チノ「喉が治ったせいでココアさんにモフモフされる大義名分が無くなりました」

 

リゼ「?」

 

チノ「他の方法を一緒に考えてください」

 

リゼ「いや……考えるも何も、チノが嫌がらなければ毎日のようにしてくるだろ」

 

チノ「それだとまるでわたしがモフモフされたいみたいじゃないですか」

 

リゼ「されたいんじゃないのか?」

 

チノ「違います、あのウェルカムカモンはされても良いということです。されたいわけではありません」

 

リゼ「どっちも一緒だろ……素直にされたいって言えよ」

 

チノ「されたくないです!」バン!

 

リゼ「うわっ!」

 

チノ「わたしはココアさんにモフモフされたいわけじゃありません!!」

 

リゼ「そ、そうか……」

 

チノ「しかし、されることもやぶさかではないです。ココアさんがそれで喜ぶのでしたら、多少わたしが我慢することくらいは甘んじて受け入れます」

 

チノ「ということでリゼさん、一緒に考えてください」

 

リゼ「余計にめんどくさいな!!?」

 

チノ「?」

 

――おしまい♪

感想

  1. 名有 より:

    段々とチノちゃんが幼稚園児のように… うふふ(意味深)
    素直になれないお年頃なのでしょうか…まあ、いつものことですね(笑)
    私的にはブラックチノちゃんも見てみたいなあ… ココアパワーですぐ浄化されそうですけどね!

    • 砂水クジラ砂水クジラ より:

      名有りさん、お久しぶりです。
      久々のチノちゃん嫉妬シリーズ、気合が入りました。
      ブラックチノちゃんは、恐らくお菓子のシガレットを加えながら更に面倒くさくわがままになるだけでしょうね(笑)
      リゼちゃんの負担がますます増えるだけで、特にこれといった変化はなさそうです。

  2. お魚くわえた地域猫 より:

    いきなり新作から読んでしまいましたが
    とても良かったです。上手い文章だと、読みながらキャラが動きます。
    そのシーンきっとこういう表情や仕草してるんだろうなぁって読みながら妄想出来ます。
    ジェスチャーや人形で伝えるチノちゃんは想像してぴょんぴょんしました。
    すごく読みやすかったです。
    長文失礼しました

    • 砂水クジラ砂水クジラ より:

      わー!ネコさんようこそー!!
      チノちゃん嫉妬シリーズから入門くださるなんて、なんという上級者……!
      イラストではなく本来こちらの小説がメインですので、よろしければまた遊びに来てくださいね。
      ショートストーリーでもツイッターでも、一緒にこころぴょんぴょんしましょうぞ!

  3. Beyond the Average より:

    中学生のかわいい反抗期ですね♪
    リゼは人とのつきあいが得意ではなさそうだからいい経験になるんじゃないんですかね。(楽観的)
    次はチノがどうやってココアに近づくか楽しみですねー!

    • 砂水クジラ砂水クジラ より:

      めんどくさくて可愛いわがままチノちゃんに、リゼちゃんは毎度振り回されております。
      ココアちゃん大好きなチノちゃんは、次回も恐らくその可愛いわがままぶりを遺憾なく発揮してくれることでしょう。

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