ごちうさSS チノ「ここあさんの誕生日」afternoon:チノお姉ちゃん

 

――天々座家 AM10時――

 

リゼ「……………………」

 

千夜「…………」ゴクリ

 

シャロ「……あの」

 

使用人「しっ……お静かに」

 

リゼ父「……さて」

 

リゼ父「いきなりの招集すまない。今日みんなに集まってもらったのは他でもない」

 

リゼ父「――あのことについての作戦会議だ」

 

リゼ「千夜もシャロもわかっているだろう」

 

シャロ「ええっと……」

 

千夜「ええ、まぁ……」

 

リゼ父「……そう」カッ

 

リゼ「世界で一番!」カッ

 

リゼ父&リゼ「大切な日だ!」

 

リゼ「親父」グッ

 

リゼ父「リゼ」グッ

 

シャロ「あの、早く始めませんか……?」

 

使用人「お気持ちは分かります、ですがもう少しお付き合いください……」

 

千夜(だんだんとリゼちゃんが崩壊してきてる)

 

リゼ父「みんなには、この候補の中からどれが良いかを一緒に選んでほしい」

 

使用人「ずいぶん色々ありますね」

 

リゼ「わたしは一番上のやつがいいと思う、使用人やメイドを全員使って街でここあパレード」

 

シャロ「街ぐるみ!?一番ダメなやつですそれっ!」

 

リゼ父「俺はゲバルト学生と機動隊に分かれてのコスプレサバゲーが良いと思うぞ、あの子を最上階に幽閉していち早く辿り着いたほうの勝ちだ」

 

使用人「また屋敷内で撃ち合いするつもりですか!?」

 

リゼ「そうだ親父、そんなのダメに決まってるだろう」

 

リゼ父「むっ……」

 

千夜「リゼちゃん……そうよね、さすがにお祝いでサバゲーは――」

 

リゼ「ここあが寂しい思いをするじゃないか!というよりわたしが寂しい」

 

千夜「そこなの!?」

 

リゼ父「なるほど、確かにな……」

 

使用人「納得しないでください!?」

 

シャロ(これわたしたち招集されて正解だったわね……)

 

リゼ父「ふむ、どうしたものか……」

 

リゼ「サバゲーもパレードもダメとなるとな……」

 

シャロ「あの、みんなで普通にお祝いしませんか?」

 

使用人「その方があの子も喜ぶかと思いますが……」

 

千夜「一番下の、サプライズパーティーが一番良いと思いますよ」

 

リゼ父「パーティーか……仕方ない、少しつまらないがこれにするか」

 

リゼ「ならパーティー中いきなり停電になって赤マントが現れるとかどうだ、親父?」

 

リゼ父「面白いな、ワイヤーアクションで華麗に空中から登場させて――」

 

シャロ&使用人「普通にしてくださいっ!!」

 

リゼ&リゼ父「!?」

 

千夜(ここあちゃんのこと大好きで仕方ないのよね)ニコニコ

 

リゼ父「そうと決まればさっそく準備だ、まずはタカヒロを呼ぼう」ピッ

 

使用人「我々やメイドたちは?」

 

リゼ父「お前を含め、料理ができるやつは厨房に集合させろ。他はパーティー会場の大広間を掃除だ」

 

使用人「へい、ようがす」

 

リゼ父「おっ、もしもし、タカヒロか?」

 

リゼ父「ケーキ作るぞケーキ、早くウチに来い、いまから10分以内だ」

 

リゼ父「――ビュッシュ・ド・ノエル、現役時代クリスマスによく作っただろう」

 

リゼ父「人手が足りないんだ。俺の大事な娘のためだ、来なかったら絶交だぞ」

 

リゼ父「よし」ピッ

 

シャロ「わたしたちはどうしましょう……?」

 

リゼ父「料理は?できるのか?」

 

シャロ「お菓子はクッキーくらいでしたら」

 

千夜も「専門は和菓子ですけど、ベース作りくらいなら手伝えます」

 

リゼ父「そうか、頼もしいな」

 

リゼ父「まずは材料を揃える、それまではゆっくりしててくれ」

 

千夜「準備が出来たらお手伝いしましょうか」

 

リゼ「そういえば、ここあとチノは?」

 

シャロ「お二人でしたらさっき――」

 

 

 

――――――――――――――――――――

 

 

 

チノ「がおー、ここあさん、たべちゃいますよー」

 

ここあ「わぁ!」タタタ

 

チノ「まてー、がおーん」

 

ここあ「にっげろ~!」

 

チノ「ここあさん、あんまり走っちゃダメです。転んでしまいますから」

 

ここあ「あっ……」ピタッ

 

チノ「――捕まえました」ギュッ

 

ここあ「ちのちゃんずるーい!」

 

チノ「捕まったここあさんにはもふもふ攻撃ですよ」

 

チノ「もふもふっ、もふもふっ」スリスリ

 

ここあ「ぁ…えへへ♪」

 

ここあ「こっちももふもふかえしだよ」ギュッ

 

チノ「わたしも更にもふもふ返しです」

 

ここあ「♪」キャッキャッ

 

チノ「ふふっ」ニコッ

 

 

 

千夜(ほほえま~)ポワーン

 

シャロ(可愛い……)

 

リゼ(混ざりたい……)ウズウズ

 

シャロ「チノちゃんに任せて正解だったわね」

 

千夜「ええ、今日一日ここあちゃんのことちゃんと面倒見てくれそう」

 

ここあ「あ――リゼちゃん!」

 

リゼ「ただいま、ここあ」

 

ここあ「りーぜちゃん♪」ギュッ

 

リゼ「チノと遊んでたのか」ナデナデ

 

ここあ「うん、おにごっこしてたの」ニヘラ

 

リゼ「そうか、転ばないように気を付けてな」

 

ここあ「うん!りぜちゃんもいっしょにあそぼっ」

 

リゼ「そうしたいんだけど、ごめんな。今日は用事があるんだ」

 

ここあ「ようじ?ちやちゃんも、しゃろちゃんも?」

 

リゼ「しばらくチノと二人で遊んでてくれるか?」

 

ここあ「わかった、ようじがおわったらみんなであそぼうね」

 

リゼ「ああ、約束だ」ヒョイ

 

ここあ「わわっ……」

 

リゼ「待っていろよ、きっと驚くぞ」スリスリ

 

ここあ「ふぇ?」

 

リゼ「用事まであと少しあるんだ、それまでみんなで遊ぼうか」

 

ここあ「ほんと!じゃあね、おそとであそびたい!」

 

リゼ「いいぞ、おにごっこか?」

 

ここあ「ううん、じてんしゃのれんしゅうするの」

 

リゼ「えっ?」

 

チノ「自転車……?」

 

千夜シャロ「?」

 

 

 

―――――――――――――――――――――

 

 

――裏庭 物置――

 

ここあ「このまえおるすばんしているときに、ゆうしゃさんとみつけたんだよ」

 

リゼ「小さい頃わたしが乗っていた自転車、まだ捨ててなかったのか」

 

ここあ「これにのれるようになりたい」

 

千夜「でもこの自転車、補助輪が付いてないわね」

 

シャロ「初めてでいきなり難しくない?せめてコマ付きとか三輪車とか」

 

チノ「ここあさんにとっては少し大きいようですし……」

 

リゼ「サドルを目一杯下げればなんとかならないか?」

 

千夜「少し錆びてるわ……んっ」クルクル

 

シャロ「これでもやっぱり高いですね」

 

チノ「足がつきにくいとなると、余計難しいでしょうし……」

 

ここあ「だめ?」

 

リゼ「ここあ、今度新しく小さいのを買ってあげるから、それじゃあ嫌か?」

 

ここあ「……ううん」

 

ここあ「…………」シュン

 

千夜「ここあちゃん……」

 

シャロ「……ここあ?」スッ

 

ここあ「しゃろちゃん……?」

 

シャロ「素直に言っていいのよ?ねっ?」ナデナデ

 

ここあ「……でも」

 

チノ「大丈夫です、怒ったりしませんから」

 

ここあ「…………」

 

ここあ「……これが、いい」

 

ここあ「りぜちゃんのじてんしゃに、のりたい……」

 

リゼ「ここあ……」

 

ここあ「とちゅうでやめたりしないから、いっぱいがんばるから、だめ……?」

 

シャロ「……ううん。そんなことないわ」

 

チノ「ここあさんなら必ず乗れるようになります」

 

千夜「一緒に頑張りましょう」ニコッ

 

ここあ「……りぜちゃん?」

 

リゼ「………………」

 

シャロ「リゼ先輩……」

 

リゼ「わたしは、できればここあに、危険な目にあってほしくない」

 

千夜「…………」

 

リゼ「……でも、ここあが頑張りたいのなら、応援する」

 

ここあ「!」

 

リゼ「チノ、わたしたちは途中で抜けなきゃいけないが、ここあのことよろしく頼む」

 

チノ「は、はい、わたしも乗れないのであまり役に立てませんが……」

 

リゼ「ここあ、無理して大怪我しないようにな?約束だぞ?」ナデナデ

 

ここあ「うん!」

 

千夜(ここあちゃんの本音が聞けて嬉しかったのよね、リゼちゃん)

 

 

 

チノ「ここあさん、準備はいいですか?」

 

ここあ「んっ!いいよ」

 

チノ「まずは地面を蹴って進んでみてください」

 

ここあ「こう?」

 

チノ「いいですよ、目線は前を見たままです」

 

ここあ「えいっ、ふっ……」

 

千夜「出だし好調ね」

 

シャロ「まずはバランス感覚から身に付けないと」

 

リゼ「うぅ……大丈夫かな……」ハラハラ

 

ここあ「ちのちゃんみてー!」

 

チノ「ここあさん、前を見ないと危ないです。身体でバランスを取って」

 

ここあ「うん――わっ…!あ――」グラッ

 

チノ「!?」

 

ここあ「ひゃうっ!」ガシャッ

 

千夜「ここあちゃん!」

 

シャロ「大丈夫!?」

 

ここあ「んっ、へいきだよ……」ニコッ

 

チノ「やはり足がつきにくいから……」

 

 

リゼ「ここあぁっ!!」

 

 

千夜「!?」ビクッ

 

リゼ「っ!」ガシッ

 

ここあ「きゃっ……」

 

リゼ「大丈夫か!?怪我してないか!?ああ…わたしのここあが!誰か救急箱を!確か玄関の戸棚辺りに!」

 

シャロ「リゼ先輩落ち着いてください!」アセアセ

 

千夜「まずは深呼吸しましょう、ねっ?」

 

リゼ「スー……ハー……」

 

リゼ「……ふぅ……すまない、取り乱した」

 

千夜「ホッ……」

 

チノ「ここあさん、どこも怪我してませんか?」

 

ここあ「ごめんなさいちのちゃん、こんどはよそみしないね」

 

チノ「いえ、ここあさんが無事なら別に……」

 

リゼ「まだやるのか?また転んだら危ないしもう辞めないか?」

 

ここあ「ううん、のれるようになるまでがんばる!」

 

シャロ「偉いわここあ、その意気よ。まずは自転車起こしましょう」

 

千夜「みんなで応援するって約束したでしょ?リゼちゃん」ヒソッ

 

リゼ「うっ……それは……でも……」

 

リゼ「あぁ……ここあ……」オロオロ

 

 

 

チノ「そのまま少しペダルを漕いで、転ぶ前に足をついてください」

 

ここあ「こ、こう?」

 

チノ「足を離してすぐにペダルを漕ぐ感覚です」

 

ここあ「んっしょ……」フラフラ

 

チノ「あっ、無理しないでゆっくり――」

 

ここあ「きゃっ!」ガシャッ

 

チノ「!?」

 

ここあ「いつっ…ぅ……」

 

チノ「ここあさん……!」

 

リゼ「ここあっ!?ダメだ!やっぱり自転車の練習なんてまだ早い!」

 

千夜「リゼちゃん落ち着いて、大丈夫だから」ガシッ

 

リゼ「千夜、離せ!これ以上ここあが苦しむくらいなら、わたしは約束なんて破棄してでも――!」

 

シャロ「転ぶごとにリゼ先輩がこの調子だと、練習が進まないわ……」

 

リゼ「ここあ、もう自転車なんて辞めよう、頼むから危ない真似しないでくれ」

 

ここあ「りぜちゃん……でも、わたし……」

 

使用人「お待たせしました、用意ができましたので集合してください」

 

千夜「ほらリゼちゃん、わたしたちは準備に取り掛かりましょう」ズルズル

 

シャロ「チノちゃん、あとはここあのことお願いね。リゼ先輩行きましょう」ズルズル

 

ハナセ~!ココアー! マタドウサレタンデス オジョウハ……

 

 

チノ「連行されてしまいましたね、リゼさん……」

 

ここあ「………………」シュン

 

チノ「ここあさん……」

 

チノ「…………」グッ

 

チノ「……ここあさん?」スッ

 

ここあ「ちのちゃん……」

 

チノ「自転車、乗れるようになりたいですか?」

 

ここあ「……うん」コクリ

 

チノ「そうですか……なら、まだ二人で頑張りましょう」

 

ここあ「でも、さっきりぜちゃんが……」

 

チノ「大丈夫です、きっとリゼさんだって、本当はここあさんに乗れるようになってもらいたいはずです」

 

チノ「二人でこっそり練習して、サプライズしましょう」シーッ

 

ここあ「!」

 

ここあ「……りぜちゃん、よろこんでくれるかな?」

 

チノ「もちろんです、リゼさんも千夜さんもシャロさんも、みんな笑顔になってくれますよ」

 

ここあ「……!」

 

ここあ「がんばるっ!ちのちゃん、もういっかいおしえて?」

 

チノ「いいですよ。ここあさんが乗れるようになるまで、何度でも」クスッ

 

 

――

――――

――――――

 

――――――――――――――――――――――

 

 

――厨房――

 

シャロ「ベースのスポンジ、できました!」

 

リゼ父「いい焼き上がりだ、なかなか使えるな」

 

シャロ「あ、ありがとうございます」

 

リゼ父「タカヒロ、クリームはできたか?」

 

タカヒロ「ああ、今回は隠し味にレモン果汁を入れてみた」

 

リゼ父「バタークリームは?」

 

タカヒロ「使っていない、日持ちさせる必要も無いから味が優先だ」

 

リゼ父「どれ……」パクッ

 

リゼ父「……なるほど、甘さも控えめでちょうどいいな」

 

リゼ父「デコレーションの際に形が崩れやすいから気を付けろ」

 

タカヒロ「任せろ、そんなミスはしない」

 

リゼ父「おいメイド、デコレーションのメッセージチョコを作っておけ。テンパリングは丁寧にゆっくりだ」

 

千夜「リゼちゃんのお父さん、料理もできるのね」ヒソッ

 

リゼ「ああ、今でも誕生日は手作りケーキを作ってくれたりするしな」

 

千夜「優しいし楽しいし、料理もできて良いお父さんね」ニコッ

 

リゼ「……まぁな//」プイッ

 

千夜「ふふっ……あっ、使用人さん、卵は一気に投入しちゃダメです」

 

使用人「へっ?あっ、す、すいません」

 

千夜「万が一イタんでいたりすると全部ダメになってしまいますから。こうしてお椀に入れて、一つ一つ確認して」

 

使用人「なるほど……勉強になります」

 

千夜「あと、ホイップもこうして少し斜めに傾けて、丁寧に素早く」

 

使用人「こうですか?」シャカシャカ

 

千夜「もう少し、こうです」ギュッ

 

使用人「……!//

 

千夜「これでかき混ぜてみてください?」

 

使用人「……」シャカシャカ

 

千夜「とっても良くなりましたよ」ニコッ

 

使用人「あ、ありがとうごぜぇます……//

 

リゼ「……ここあよりも千夜か?」

 

使用人「っ!?いえ、そんなつもりは……!」

 

千夜「意外と甘えたがりやさんですか?」クスッ

 

使用人「……っ//」シャカシャカ

 

シャロ「チョコスポンジ、焼きあがりました」

 

リゼ父「いま手が離せないな。カット、任せていいか?」

 

シャロ「はい、横3等分ですね」

 

マヤ「リゼー?これもっとかき混ぜる?」

 

メグ「あわあわになっちゃったよぉ」

 

リゼ「かき混ぜすぎだ!?もういい、お前たちは盛り付けのほうをしてくれ」

 

メグ「マヤちゃん、盛り付けだって」

 

マヤ「この丸太みたいなヘンテコなケーキなに?」

 

リゼ「ビュッシュ・ド・ノエルだ。本来はクリスマスケーキなんだがな」

 

メグ「変な名前だねぇ」

 

マヤ「名前はともかく味はいけるよ!」モグモグ

 

リゼ「食べるな!?」

 

千夜「使用人さん、ハチミツありますか?」

 

使用人「確かお砂糖の隣に――」

 

シャロ「イチゴをスライスしてから生クリームを塗って……」

 

 

ガヤガヤ ワイワイ

 

タカヒロ「…………」

 

リゼ父「んっ、タカヒロ、どうした?」

 

タカヒロ「いや……」

 

リゼ父「……?」

 

タカヒロ「……楽しいな」

 

リゼ父「!」

 

リゼ父「……ああ」

 

タカヒロ「これが終わったら、夕食作りか」

 

リゼ父「最後まで手伝ってもらうぞ?」

 

タカヒロ「当然だ、ここあくんのためだからな」

 

リゼ父「楽しいからじゃないのか?」

 

タカヒロ「……」フッ

 

 

リゼ「………………」

 

千夜「リゼちゃん、どうしたの?」

 

リゼ「……ここあ、大丈夫かな」

 

千夜「ええ、チノちゃんが付いてるから」

 

 

―――――――――――――――――――――

 

ここあ「……!」

 

チノ(まだ重心がフラフラしてる……)

 

チノ(これでもう7回目……さっき腕も擦りむいたようだし……)

 

チノ(やっぱり……自転車に乗れないわたしでは上手く教えることなんて――)

 

ここあ「ひゃ……!」グラッ

 

――ガシャッ!

 

チノ「っ!?ここあさん……!」

 

ここあ「うっ……いつ……っ」

 

チノ「大丈夫ですか……!」

 

ここあ「…………」ウルッ

 

チノ「あ……」

 

ここあ「っく……うっ……」グスグス

 

チノ「ここあさん……」

 

ここあ「ぐすっ……ぅぐ……」ジワッ

 

チノ(今度は膝から血が出てる……いますぐに止めさせないと……でも)

 

チノ「………………」

 

 

『二人でこっそり練習して、サプライズしましょう』シーッ

 

 

チノ「っ……」

 

チノ(……ココアさん……わたし、お姉ちゃんとして、どうしてあげたら良いですか……?)

 

チノ(ココアさんなら………)

 

チノ「………………」

 

チノ「…………」

 

チノ「……っ」グッ

 

ここあ「うぇ……」ポロポロ

 

チノ「……ここあさん」スッ

 

チノ「痛かったですね……よしよし」ナデナデ

 

ここあ「ちのちゃん……」グスッ

 

チノ「消毒と絆創膏だけでも貼っておきましょう」

 

ここあ「……ごめんね」

 

ここあ「わたし……ぜんぜんできなくて……」ジワッ

 

ここあ「せっかく、ちのちゃんがおしえてくれてるのに……」ポロポロ

 

チノ「いいんですよ、そんなの……」ギュッ

 

チノ「だって、わたしも本当は――」

 

 

シャロ「――チノちゃん?ここあ?」

 

 

チノ「シャロさん……」

 

シャロ「どう、練習の方は?」

 

チノ「シャロさん、ここあさんのことお願いします」

 

シャロ「えっ?」

 

チノ「少し待っててください、すぐに戻りますから」タタタ

 

ここあ「ちのちゃん……?」

 

 

 

チノ「お待たせしました……」ハァハァ

 

シャロ「それ……チノちゃんの自転車……?」

 

チノ「ここあさん……見ていてください」スッ

 

チノ「ふっ……」フラフラ

 

グラッ……――ガシャン!

 

ここあ「!?」

 

シャロ「チノちゃんっ!」

 

チノ「うぅ……」

 

シャロ「大丈夫!?」

 

ここあ「ちのちゃん……!」タタタ

 

チノ「……ここあさん」

 

チノ「実はわたしも……自転車乗れないんです」

 

ここあ「……!」

 

チノ「隠しててごめんなさい、ここあさんに知られるのが嫌で、黙ってました」

 

チノ「……わたしも、ここあさんと同じなんです」

 

チノ「何度練習しても、全然上手く乗れなくて……」

 

ここあ「ちのちゃんも……?」

 

チノ「はい、でもわたしは諦めません」

 

チノ「何度転んでも、乗れるようになるまで」

 

チノ「痛くても、辛くても、みんなでサイクリングに行こうって――お姉ちゃんと、約束したから」

 

ここあ「……!」

 

チノ「わたしもがんばります。でも、一人だと……」

 

チノ「だから……ここあさん。わたしと一緒に、練習してくれませんか?」スッ

 

シャロ「チノちゃん……」

 

ここあ「…………」

 

チノ「…………」

 

ここあ「……っ」

 

――ギュッ

 

チノ「……!」

 

ここあ「うん……」

 

ここあ「ちのちゃん……いっしょにがんばろう」ニコッ

 

チノ「――はい」ニコッ

 

シャロ「…………」クスッ

 

チノ「シャロさん、お願いします」

 

シャロ「ええ、二人が乗れるようになるまで、ずっと見守るわ」

 

チノ「ここあさん、どっちが先に乗れるようになるか競争です」

 

ここあ「まけないよ!」

 

 

――――――――――――――――――

 

 

千夜「…………」マドノソト チラッ

 

リゼ「シャロ、戻ってこないな。何かあったのか……」

 

千夜「ううん……きっと大丈夫よ」

 

千夜「みんな頑張ってるわ、わたしたちも頑張りましょう」

 

タカヒロ「ローストビーフが焼けた。リゼくん、あとは任せていいかい?」

 

リゼ「スライスですね、刃物の扱いなら」シャキン

 

マヤ「鬼軍曹、これはどこに?」

 

リゼ父「レタスのひいてあるプレートに乗せてくれ」

 

メグ「これは~?」

 

使用人「それはキウイですのでこっちのお皿ですね」

 

タカヒロ「次は揚げ物……これで最後かな」

 

千夜「お疲れ様です、チノちゃんのお父さん」

 

タカヒロ「千夜くん、キッチンペーパーを頼むよ」キラン

 

千夜「はい」ニコッ

 

 

 

―――――――――――――――――――

 

 

 

シャロ「ここあ、その調子よ!」

 

ここあ「んっ……!」

 

シャロ「ハンドルは真っ直ぐに、止まる時はゆっくりとバランスを崩さないように!」

 

ここあ「こう……!」キュ

 

シャロ「上手いわ、乗れるようになったわね」

 

ここあ「ほんと!やったぁ!」

 

チノ「ここあさん……!」

 

ここあ「ちのちゃんみて!もうころばないよ!」

 

ここあ「えいっ」キュ

 

チノ「頑張りましたね、ちゃんと乗れていますよ」ギュッ

 

ここあ「ちのちゃんとしゃろちゃんのおかげだよ」

 

チノ「ここあさんが最後まであきらめずにがんばったからです」ナデナデ

 

ここあ「んっ……♪」

 

ここあ「ちのちゃんは?のれるようになった?」

 

チノ「いえ、わたしはまだ……もう少し練習しないとダメみたいです」

 

ここあ「そっか……」シュン

 

チノ「今度練習するときは、ここあさんがわたしに教えてください」

 

ここあ「いいよ、いっしょにがんばろう♪」

 

シャロ「二人とも傷だらけね、とりあえず先に手当てしましょう」

 

チノ「シャロさん、ありがとうございます。おかげさまで助かりました」

 

シャロ「わたしはなにも。チノちゃんこそ、こんなに擦りむいて」

 

チノ「……もしココアさんだったら……わたしが転んで泣いていたら、こうしてくれる気がして」

 

シャロ「……そう」

 

シャロ「チノちゃんはもう、立派なここあのお姉ちゃんね」

 

チノ「いえ、まだです。わたしの目標は……もっと」

 

シャロ「………………」

 

チノ「自転車……結局ここあさんにも越されてしまいましたね」

 

シャロ「大丈夫、今度の練習も付き合うわ。みんなで頑張りましょう」

 

チノ「はい」クスッ

 

ここあ「りぜちゃん……ほめてくれるかな」

 

千夜「チノちゃん、ここあちゃん、シャロちゃん」スッ

 

シャロ「千夜?」

 

千夜「準備できたわ、ご飯にしましょう」

 

ここあ「千夜ちゃん!」タタタ

 

千夜「ここあちゃん、お疲れ様。お腹すいたでしょ?」

 

ここあ「あのね、じてんしゃ、のれるようになったよ!」

 

千夜「ほんと!すごいわ、よくがんばったわね」ナデナデ

 

ここあ「えへへ……//

 

シャロ「ここあ、先に手当てしないと。千夜、袖巻くって」

 

千夜「こんなにいっぱい……たくさん頑張った証ね」

 

千夜「チノちゃんも、お疲れ様」

 

チノ「あの……」

 

千夜「みんな用意して待ってるわ。シャロちゃんと二人で先に行ってるから、チノちゃんはここあちゃんと後でゆっくりきて?」コソッ

 

チノ「わかりました」

 

シャロ「ここあ、喜んでくれるといいわね」ヒソヒソ

 

千夜「きっと笑顔になってくれるわ」ヒソヒソ

 

 

チノ「さて……ここあさん、行きましょうか」

 

ここあ「りぜちゃん、まってくれてる?」

 

チノ「はい。リゼさんも、父も、リゼさんのお父さんも、使用人さんも、マヤさんもメグさんも」

 

チノ「――みんな、ここあさんのことを待ってます」ニコッ

 

続→ evening:レッツパーティー!

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