ごちうさSS 千夜「リゼちゃんのここあ日記」

 

 

………………。

…………。

……。

 

 

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〇月〇日

 

翌朝。

別れは、来なかった。

幸か不幸かは分からない。

親友だったココアは、戻ってこないのだから。

 

でも。

 

お前を失わずに、済んだ。その事実は、わたしにただ『喜び』と『安心』という人にとって幸福の象徴である二つを与えてくれた。

その僥倖の前には、頭の中で散々引っ掻き回した理屈や精神論は何の意味もなさなかった。

 

 

あの後、どれほどの時間お前を抱きしめていただろうか。

嗚咽を響かせながら、お前の存在を確かめ、温もりを貪り、身体を蹂躙するかのように重ね。

ひたすら目の前の現実が、幻や偽りでないことを五感で感じて。

 

 

落ち着きを取り戻した後、お互いの涙や鼻水でくしゃくしゃになった顔を見合わせて。

喜悦の涙を滲ませ抱き付いてきたお前を受け止めた時。

わたしは、思った。

 

例えこの世が、全ての常識がお前の存在を否定しようとも。

 

例え誰を、世界中を敵に回したとしても。

 

一生、永遠にずっと。

お前と、一緒にいたい。

 

 

ここあ。

 

 

わたしの家族になってくれて、ありがとう。

 

 

 

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〇月〇日

 

わたしが無意識に口ずさんでいた歌が気になったらしい。

教えてほしいと言うので、CDを聞かせてあげた。

 

曲に合わせて膝の上で楽しそうに歌う姿が微笑ましい。

「上手に歌えたな」と褒めてあげると、今度は「一緒に歌おう」とデュエットのお誘い。

 

ずっと頭を撫でていたせいか、しばらくすると可愛い寝息を立てて眠ってしまった。

きっと遊ぶ時も歌う時も、いつも一生懸命なのだろう。

柔らかい頬をこっそりプニプニしたことは、眠っていたので無罪だ。

 

 

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〇月〇日

 

ヘアピンをプレゼントしてくれた。

ガーリーなデザインだが、いわくわたしに似合うらしい。

お前は嘘なんて言わない、きっと本心からだろう。

 

わざわざ早起きしてラビットハウスや甘兎庵、シャロの家を回って自分で働いたお金で買ってくれたそうだ。

みんなにメールでお礼を送っておいた。一日中振り回された使用人に申し訳なかったが、あいつも内緒でなにかプレゼントをもらったらしい。

 

問い詰めても口を割らないので諦めたが、わたしにだけじゃなかったのがちょっぴり悔しいな。

 

ともあれ。お前が、わたしのために頑張ってくれた。

その事実だけで、このプレゼントは世界で一番価値のあるものに違いない。

 

ここあ、ありがとう。

大切にする、わたしの一生の宝物だ。

 

 

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〇月〇日

 

学校から帰ってみたらここあがいなくなっていた。

千夜が午前授業だったらしく、甘兎庵に遊びに行ったらしい、

 

ラビットハウスがオフなので思う存分遊ぼうと思っていた矢先、とんだ誤算だ。

とりあえず課題を終わらせて帰りを待つことに。

 

しかし、6時を過ぎても一向に帰ってくる気配が無いので千夜に連絡してみる。

なんでも、アルバイトからシャロが帰るのを待っているらしい。

 

既に夕飯もおよばれしたらしく、「このままウチにお泊りさせましょうか?」などととんでもない提案をしてきたので断固として拒否。すぐに甘兎庵までここあを迎えに行った。

 

ちょうどタイミングよく帰ってきたシャロと挨拶を交わし、ここあと二人で真っ暗な家路を辿る。

 

シャロと遊べなかったのが残念だったのか、少し寂しそうだったのでコンビニに寄ってここあの好きなデザートを買ってあげた。

 

これを書き終えたら、今日もここあと一緒に同じベッドで就寝だ。

すまないな千夜。ここあと寝るのはわたしの役目だ。

 

 

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〇月〇日

 

ここあがおもらししてしまった。

お手洗いに行くよう起こしてあげなかったわたしの判断ミスだ。

 

使用人たちが洗濯してくれている間も、罪悪感からかずっと涙目だった。

千夜いわく、一番の理由はわたしに嫌われるかもしれないと不安だったのではないかとのこと。

 

もちろんそんな心配は杞憂を通り越している。

わたしがここあを嫌いになるなんてこと、天地がひっくり返ってもありえない。

可能性という問題において、これほど絶無という言葉がぴったりなものは他にない。

 

しかしお昼を過ぎても一向に元気が無く、ずっとションボリしていたが。

千夜やみんなのおかげで、ここあの笑顔は夕方になる頃には戻っていた。

 

千夜のアイデアで、ここあを一人でおつかいに行かせることになったのだ。

千夜と二人でこっそりストーキングはしていたけど、ここあにとっては買い物かごひとつでの初めてのお買い物だ。

 

わたしに喜んでほしい、そんな理由のために頑張って。

転んでも怪我しても泣かずに、立ち上がって。

 

お前の強さ、優しさ。わたしはちゃんと見ていたぞ。

 

ありがとうここあ、お前は本当に健気で強い子だ。

さすがはわたしの家族だな。

 

サプライズパーティ、はしゃぎすぎて疲れたのかな?

綺麗になったベッドでぐっすり眠ってる。

そろそろわたしも寝るか、いつも通り、お前の隣で。

 

 

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〇月〇日

 

 

今日は久々の雨、結局夕方まで降り止まなかった。

 

インドアにはもってこいの天気なので、ここあと二人でゲームに興じているとあっと言う間にお昼過ぎになった。誰かと一緒にやるとゲームもこんなに楽しいのか。その相手がここあなら尚更だ。

 

お昼ご飯を終えて何となくぼんやりしていると、ここあが窓から興味深そうに外の景色を眺めていたので、一緒に連れて雨の街を散歩することに。

 

しばらくは目新しいことに落ち着きなくはしゃいでいたが、橋に差し掛かる頃にはゆっくりと隣を歩いて、雨の世界を不思議そうに見回していた。

 

雨によって容易に塗り替えられた普段と一線を画す世界は、静寂とも喧噪ともいえる無機質な音だけを響かせ、まるで世界に二人だけのような、そんな錯覚さえも思わせる。

 

「リゼちゃんとわたし、二人だけの世界みたいだね」

 

お前がいきなり、突拍子もなくそんなことを言うものだから。

 

心が、見透かされたみたいで。

 

お互いの心が、通じ合ったようで。

 

ほんの一瞬だけでも、世界でお前と二人だけになりたくて。

 

雨ざらしのなか傘をたたみ、慌てて駆け寄ってきてくれたお前を抱きしめて。

 

小さな傘の下に創られた、雨の降っていない小さな世界に、二人で身を寄せて。

 

お前は、わたしに何も聞いてこなかったな。

 

ただ少し照れた様子で笑顔を浮かべて、身体を預けてきて。

あんなに長い間お互い言葉を失くしたのは、今日が初めてだったかもしれない。

 

家に帰るまでの間、あの小さな空間、ほんのわずか存在した二人だけの世界は。

きっと神様すらも、見落としていたに違いない。

 

少しおかしいことを書きすぎたな。

頭もボーっとするし、そろそろ休もう。

 

 

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〇月〇日

 

早朝、身体が気だるくてベッドから起き上がれなかった。

どうやら風邪を引いてしまったらしい。

 

この前の散歩の時からおかしな感じはしていたが、まさかここあと水族館に行く予定だった今日に発症するとは。

 

解熱剤を飲んで無理にでも行くつもりだったが、ここあと使用人二人に自重を促されたので渋々断念。

本日は大人しく自宅療養だ。

 

風邪がうつらないようここあは別室に向かわせた。

 

約束を守れなかった挙句ここあに気遣われてしまった自分が情けない。

久々の長い一人ぼっちの時間が寂しい。

 

おかしいな、ずっと当たり前だったはずなのに。

人間、一度でも生活基準を高めてしまうとそこから下げることはできない。どうやらあれは本当のようだ。

 

お昼過ぎ、暇を持て余しているとここあが部屋に昼食を持ってきてくれた。

小さい体に不釣り合いな大きいマスクを付けているのがかわいらしい。

 

使用人と一緒に作ってくれたおかゆをフーして食べさせてくれる。

鼻が詰まってろくに味もしないはずなのに、不思議だ。

お前が作ってくれたというだけで、どんな料理よりおいしい。

 

お昼からはずっと側にいてくれた。

マスクを付けているから大丈夫、か。

 

使用人もわたしも、嘘つきだ。

ここあ、マスクはあくまで予防だけで近くにいたら風邪はうつるんだぞ。

同じベッドで横になったりなんてしたら、確実に。

 

なのに。

それでもわたしは、お前に側にいてほしい。

純粋なお前を騙して、自分勝手な気持ちを優先したことを許してくれ。

咳をするたび、心配そうに背中を撫でてくれるここあが愛おしい。

 

今夜は甘兎庵に泊まりに行ってしまうのか、まぁ仕方ない。

お前や千夜が看病してくれている間に寝るとしよう。

 

風邪が治ったら水族館に行こうな、お前が見たがっていた大きなエイを一緒に見よう。

 

 

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〇月〇日

 

今日は通常通り、ラビットハウスでアルバイトの日。

チノが承諾してくれたので、一旦学校から帰宅してここあをラビットハウスへ連れていくことに。

 

迷惑をかけてしまわないか心配だったが、一生懸命お手伝いをしている姿を見てわたしもチノも思わず顔がほころぶ。

笑顔でおもてなしする様もお客さんに好評だ。

 

チノも普段以上に表情が豊かだったし、わたしも否が応でもモチベーションが上がる。

ここあも、「一人でお留守番よりずっと楽しい」そうだ。

今後はここあが行きたいと言ったらできる限り連れて行ってあげよう、もちろんチノも二つ返事で快諾してくれた。

 

しかし。

やはり疲れたのか、まだ9時半なのにベッドでぐっすりだ。

いつもなら一緒に絵本を読んだりしている頃なのに。

寝る前にここあと話したり遊んだりできないのが寂しい。

 

あちらを立てたらこちらが立たず、たったの24時間なんて一日は短すぎる。

365日、ここあやみんなと過ごせる時間は1日たりとて無駄にできないのに。

 

 

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〇月〇日

 

 

ここあのことがとうとう親父にバレてしまった。

しばらく外国に行っていたとはいえ、今までバレずに隠し通せていたのが奇跡か。

ここあと仲良しの使用人が、親父にかいつまんでここあを預かることになった経緯を説明してくれたらしい。

にわかに信じがたいことだが、親父は納得してくれたのだろうか。

 

ついカッとなってゴム弾を撃ち込んでしまったが、嫌な顔一つせずむしろ歓迎してここあを迎え入れてくれた親父には感謝だ。

今日一日ずっと遊んでくれたみたいだし。遊び方や素行に少々問題はあったものの。

 

ここあも親父を「おとうさん」と呼び慕ってくれている。

きっと新しい家族として上手くやっていけるだろう。

 

ありがとう親父。

今度お礼に、バイト代でワインオープナーでも贈るよ。

 

 

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〇月〇日

 

日曜日。

唐突な親父の提案で、車でショッピングモールまで遊びに行くことに。

ここあがみんなで行きたいと言うので、チノや千夜、シャロも誘って大勢でお出かけだ。

 

初めて来る場所に嬉々としてはしゃぐココアが可愛い。チノも平静を装っているものの遠出はやはり新鮮なんだろうな、いつもよりも幼く見える。

親父がはしゃいでいたのはいい歳して恥ずかしい以外の何物でもないが。

千夜も親父のテンションに合わせなくていいんだ、シャロが付いていけず困っていたぞ。

 

ゲームセンターに雑貨店巡りを終え、フードコートで昼食。

親父の奢りだから好きなものを食べればいいのに、なぜか満場一致でジャンクフードを食べることに。

 

ここあの口に付いたケチャップを拭いてあげるチノを見てると本当の姉妹という気がするな。

姉と妹の立場は以前とは逆だが。

 

隅から隅まで散々遊び終えた頃には既に6時を回っていた。

 

騒がしかった行きとは違い、帰りの車内は水をうったように静かだった。

さすがに遊び疲れたのだろう、起きていたのは運転席の親父とわたしと千夜だけだ。

 

シャロとチノ、二人から肩に頭を預けられている千夜を見ていると正にみんなの保護者といった感じがする。一切動けなくて辛いだろうに優しいな千夜は。

 

わたしの膝の上で眠るここあ、眠たくなったらわざわざわたしの元にやってくるのが愛おしくてたまらない。

 

信号に引っかかった時、ミラー越しに後ろを見て微笑んだだろう親父、一瞬でも見逃さなかったぞ。

言葉はほとんど無かったけど、帰り道すらも充実に満ち足りたかけがえのない時間だった。

 

時々思う。

こんなに幸せで、本当にいいんだろうか。

 

幸福は味わいすぎるとやがては退屈になる、と聞いたことがあるが。

それでもなお、この時間を永遠に失いたくないと思うのは。

わたしの見識が、浅はかなのかな。

 

 

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〇月〇日

 

 

この前のツケが回ってきたのか。

ここあと、初めて喧嘩してしまった。

 

武器庫に鍵をかけ忘れていたわたしの責任なのに、銃を持ったここあを見たら冷静な判断ができなくなった。

ほんとに何もなくて良かった。お前が怪我したら、動けなくなったりしたら、わたしは、もう。

 

ここあと仲良しの使用人と千夜のおかげで、仲直り自体はすぐにすることが出来た。

やっぱり千夜はすごい、わたしなんかよりずっと大人だ。

 

銃を磨いて真黒になったここあのハンカチは、この前のヘアピンと一緒に宝物として閉まっておいた。

わたしが喜ぶと思って、一生懸命磨いてくれたんだよな。

このハンカチの汚れは、全部お前の優しさだ。

ありがとうここあ、でもこれからは危ないことはやめてくれ。

わたしは、お前が元気でいてくれればそれで十分幸せなんだ、他に何もいらない。

新しく買ったハンカチ、気に入ってくれて良かったよ。

 

 

 

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――

 

 

リゼ「………………」

 

リゼ(さて……今日は――)

 

千夜「甘兎庵でこっそり餡蜜を食べました、とか?」ヒョコ

 

リゼ「わぁあ!?」ビクッ

 

千夜「ふふっ♪」

 

リゼ「ち、千夜、いつの間に……!」

 

千夜「さっきからずっと。リゼちゃん真剣に読んでたから」

 

リゼ「ぅぁ…っ……み、見たのか……?//

 

千夜「ごめんなさい、嬉しいことがたくさん書いてあったからつい」

 

リゼ「!……~~~っ//」プシュー

 

千夜「ここあちゃんと一緒に過ごすようになってからの、日記?」

 

リゼ「……ああ、あったこと、忘れたくないから書き留めておきたくて//

 

千夜「そう、リゼちゃんらしいわ」クスッ

 

リゼ「……っ//

 

千夜「……リゼちゃん?」

 

リゼ「?」

 

千夜「わたしも、リゼちゃんが友達で幸せよ」

 

リゼ「!」

 

千夜「わたしだけじゃない、チノちゃんも、シャロちゃんも、ここあちゃんも」

 

千夜「みーんな、リゼちゃんのこと大好き」

 

リゼ「……千夜」

 

千夜「だから、これからも良い思い出たくさん作りましょう」

 

千夜「その日記帳が、1か月で全部埋まっちゃうくらい」ニコッ

 

リゼ「……!」

 

リゼ「……ああ、そうだな」

 

リゼ「みんなとなら、それも簡単に達成できそうだ」パタン

 

千夜「あら、書かないの?」

 

リゼ「帰ってから書くよ。……千夜?」

 

千夜「?」

 

――ポンッ

 

千夜「!」

 

リゼ「いつも、ありがとう」ナデナデ

 

千夜「……リゼちゃん、今日もここあちゃんとハグした?」

 

リゼ「んっ?ああ、出かける時に。毎日20回以上はしてるからな」

 

千夜「ここあちゃんの匂いがする」スンスン

 

リゼ「そうか?」

 

千夜「最近はずっと。もうこれが『リゼちゃんの匂い』になっちゃってるみたい」スンスン

 

千夜「あっ、でも良い匂いだから気にしないで?」

 

リゼ「……自分だとよく分からない」スンスン

 

千夜「ここあちゃんもね、いつもリゼちゃんの匂いがするの」

 

千夜「ここあちゃんもリゼちゃんも、二人とも同じ匂い……」

 

リゼ「……そうか」

 

千夜「それだけ。ごめんなさい引き留めて。また来てね」フリフリ

 

リゼ「ああ……ごちそうさま」

 

 

――ガチャッ バタン

 

 

千夜「……リゼちゃん」

 

千夜「ここあちゃんと出会えて……」

 

千夜「新しい家族ができて、良かったわね」

 

千夜「……♪」ニコッ

 

 

―――――――――――――――――――――

 

――――――

――――

――

 

リゼ(ここあの匂い、か)

 

リゼ「――ただいま」ガチャッ

 

ここあ「りぜちゃん!」

 

リゼ「!……ここあ」

 

ここあ「おかえりなさい!」

 

リゼ「くすっ、わざわざ待っててくれたのか?」

 

ここあ「早く帰ってきてほしくて」

 

リゼ「そうか……ありがとう」ナデナデ

 

ここあ「えへへ」ギュッ

 

リゼ「よっと」ヒョイ

 

リゼ「……」スンスン

 

ここあ「ふぉぇ?」

 

リゼ「安心するな……お前の匂いは」

 

ここあ「りぜちゃん?」

 

リゼ「なんでもないよ」

 

ここあ「?」

 

リゼ「まずはお風呂に入ろうか、その後一緒にご飯だ」

 

ここあ「ぁ…うん!」

 

リゼ「ここあ……」ギュッ

 

ここあ「んっ……♪」

 

 

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〇月〇日

 

 

イギリスの陸軍で作家であったジョン・ロナルド・ロウエル・トールキンは。

かの有名な『ホビットの冒険』という小説で、こんな言葉を残している。

 

『もしわたしたちがみんな。貯めこまれた黄金以上に。食べ物と喜びの声と、楽しい歌を歌えていたら。なんとこの世は楽しかったのだろう』

 

彼がいかなる邂逅を得てこのような真理に辿り着いたのかは分からない。

 

ただ、わたしに言えるのは。

 

トールキンが求めた幸福は、少なくとも間違いではなかったということだ。

 

 

胸を張って言える。

 

『今』が、幸せだって。

 

 

幸福なんてものは。

 

欲しがるものじゃなくて。

後から気が付いたり、自分で気づくものなんだよな。

 

――FIN

感想

  1. 名有り より:

    これは…今までのお話のまとめ(或いは回想?)…そして、あの長編ssの起こる(飽くまで可能性の話でしょうが)前のお話でしょうか… ここあちゃんとの楽しい日々の中で、少しずつ、さりげなく何かがおかしくなっているような様子がよく伝わってきました。 あのssを観た後というのもありますが、なにか少し切ない気持ちになりました。
    話は変わりますが、今日からココアちゃんのバースディセットの予約が始まりましたね!買わなきゃ…

    • 砂水クジラ砂水クジラ より:

      そうですね、あの長編SSはあくまでパラレルワールドのお話ですが、ここから分岐してしまうことも十分にあり得るでしょう。
      本作に限らず、わたしが地の文を描いてしまうとどうしてもシリアスになってしまうんです……表現技法が暗いせいでしょうか。
      しかし、基本としましてこれはここあちゃんとの幸せな日常を描いたリゼちゃんの日記、という認識をしていただければ幸いです。
      (あの長編SSは、一切妥協せずに描いたせいでどうやら名有りさん含め、他の読者さんにもかなりのインパクトを与えてしまったようでして)
      今後もリゼちゃんとここあちゃんの幸せな物語は続いていきますよ!
      補足:わたしは既に予約済みです!名有りさんもご一緒に!

      • 名有り より:

        予約完了しました〜♪ 確かにあのssはかなりインパクトが強かったですし、なにより砂水さんの作品の中にヤンデレモノが多いからなのか、あまり安心できないことがありまして…(笑)
        でも、みんなが幸せなことは私としては伝わっているので、多分なにも心配はないかと思います。(そもそも周りが求めるものがなんであれ書くのは作者様の自由ですけど) 次のssも、楽しみにしています!

  2. Beyond the Average より:

    最近気になるアニメがあるのですが(入試が終わったらゆっくり見るつもりですが)、「ハッピーシュガーライフ」のあらすじを読む限りここあシリーズに似てるところがあるな~、と思うのです。(『あのSS』も含めて)(ということは砂水クジラさんは流行の最先端!?)
    砂水さんはご存じでしょうか?

    • 砂水クジラ砂水クジラ より:

      職業上アニメの話はよく耳にしますが……実はわたし、ごちうさ以外のアニメを本当に全く知らない人間でして。(実はラブライブすらも知りません)
      ハッピーシュガーライフのあらすじはおろか内容すらも存じ上げません。
      この幼いココアシリーズは、18くらいの頃にわたしが描いてラノベ社にこき下ろされたオリジナル小説、『かぞくごっこ』が元ネタです。
      流行の最先端、とおっしゃられていますが申し訳ありません、それは全くの偶然でしょう;
      Beyondさんは新参さん故ご存知ないのかもしれませんが。
      わたくしは本来、『狂気』をテーマに作品を描いたりストーリーを提供したりする非常に異質な作家です。
      この仕事に着くまでは、ほのぼのした温かいストーリーなど描いたことすらありませんでした。
      つまり、狂気日記やヤンデレリゼとここあなどのシリアスな作品が、わたくしの本来の作風なのです。
      そんな作家がごちうさの温かいお話を描いている……というおかしなサイトがここです。
      いずれは恐らくボロが出てしまいますので、Beyondさんにもあらかじめお伝えしておこうと思い、お話しました。m(__)m
      幼いココアシリーズや、ションボリ千夜ちゃんシリーズなどに時折り意味深な描写が含まれているのは、このせいだったりします。

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