ごちうさSS 「意味深なごちうさSS Case1:ココア」

 

――天々座家――

 

ココア「はいリゼちゃん、口あけて?」

 

リゼ「いや、自分で食べられるから」

 

ココア「あーん♪」

 

リゼ「ぅ……あ、あーん…」

 

ココア「どう、おいしい?」

 

リゼ「……ああ」モグモグ

 

ココア「良かった~はやく元気になってね?」

 

リゼ「ありがとう、毎日すまないな」

 

ココア「ううん」ニコッ

 

リゼ「……今日も、雨か」

 

ココア「あと5日間降り続けるんだって」

 

リゼ「ラビットハウスの方は大丈夫か?」

 

ココア「雨のせいでいつも以上にガラガラだよ」

 

リゼ「なら安心だな」

 

ココア「明日はお休みだからチノちゃんと一緒に来るね」

 

リゼ「休みの日くらい二人で遊びに行ってこいよ、わたしのことはいいから」

 

ココア「それじゃあリゼちゃんのおうちに遊びに来る!」

 

リゼ「ココア……」

 

ココア「明日も、明後日も、リゼちゃんが良くなるまで毎日お見舞いに来るから」

 

ココア「だから早く治って、ラビットハウスに戻って来てね」

 

リゼ「……ありがとう」

 

ココア「明日も、きてもいい?」

 

リゼ「もちろんだ、嬉しいよ」

 

ココア「……!」パアァ

 

リゼ「お前のおかげですぐに治りそうな気がする」

 

ココア「リゼちゃんの病気、早く良くなりますよーに」ギュッ

 

リゼ「おっと……」クスッ

 

 

 

―――――――――――――――――――――

 

 

――2週間後――

 

千夜「リゼちゃん、すっかり元気になって良かったわ」

 

ココア「今日からラビットハウスにも復帰するって」

 

千夜「これで何もかも元通りね」

 

ココア「うん♪」

 

千夜「ココアちゃんもお疲れ様、毎日お見舞い大変だったでしょ」

 

ココア「そんなことないよ~リゼちゃんのためだもん」

 

千夜「ふふっ、リゼちゃんが聞いたら喜ぶわ」

 

ココア「チノちゃんとリゼちゃん、ラビットハウスは二人がいないと寂しくて……」アハハ

 

千夜(相変わらず寂しがり屋さんね、ココアちゃんは)クスッ

 

ココア「あ、もう4時半だ、そろそろリゼちゃん来る頃だからいくね」

 

千夜「わたしとシャロちゃんも後で伺うわ」フリフリ

 

ココア「お菓子と飲み物用意して待ってるから!」

 

千夜「リゼちゃん復帰パーティーね」

 

 

 

――――――――――――――――――――――――

 

 

――ラビットハウス 夜――

 

ココア「それじゃあいくよ?せーの――」

 

全「リゼちゃん、おかえりなさいっ!」

 

リゼ「ありがとうみんな……//」ポリポリ

 

チノ「見立てよりずっと早く治って良かったです」

 

シャロ「明日からまたリゼ先輩と一緒に通学……えへへ//

 

千夜「リゼちゃんを3週間も苦しめるなんて、余程凶悪な病原菌だったのね」

 

リゼ「どういう意味だそれ!?」

 

キャッキャッ ワイワイ

 

ココア「りーぜちゃんっ」ギュッ

 

リゼ「ココア、3週間もずっとお見舞いありがとうな。おかげでもう治ったよ」

 

ココア「えへへ~」ニコニコ

 

リゼ「そうだ、お礼に今度昼食でもごちそうしよう。何が食べたい?」

 

ココア「いいよ~そんなの、リゼちゃんに元気になって欲しかっただけだから」

 

リゼ「ココア……」

 

ココア「リゼちゃん、おかえりなさい」ニヘラ

 

リゼ「ああ……ただいま」ナデナデ

 

ココア「んっ……」ギュッ

 

リゼ「…………」――スッ

 

千夜「リゼちゃん、わたしはエビフライが食べたいわ」ダキッ

 

リゼ「わっ!?」

 

シャロ「千夜!リゼ先輩病み上がりなんだから……!」

 

千夜「チノちゃんは何が食べたい?」

 

チノ「わたしですか?えっと……ではドリアで」

 

千夜「もちろんわたしたちにも奢ってくれるわよね、リゼちゃん?」

 

リゼ「うっ……今月は給料も少ないから、ファミレスくらいだと助かる」

 

千夜「ふふっ、冗談よ。行くならみんなで行きましょう、もちろん自腹で」

 

リゼ「!……ま、またからかったな千夜!//」バッ

 

ココア「あっ……」

 

千夜「きゃー♪」

 

リゼ「こいつめ!」ガシッ

 

千夜「おやめになってー♪」

 

ココア「………………」

 

シャロ「リゼ先輩も安静にしないとダメですよ」アセアセ

 

チノ「早くしないと飲み物が冷めてしまいます」

 

ココア「…………」

 

ココア「」シュン

 

 

 

―――――――――――――――――――――――

 

 

――2週間後――

 

ココア「♪~♪♪」

 

ココア「ん……?」

 

リゼ「…………」

 

ココア(リゼちゃんだ!)

 

ココア「リーゼちゃ――」

 

シャロ「リゼ先輩、お待たせしました」ハァハァ

 

ココア「!」

 

リゼ「おおっ、シャロ」

 

シャロ「遅くなってすいません」

 

リゼ「わたしも今来たところだ、それにまだ五分前だぞ」

 

ココア(シャロちゃんと待ち合わせ……?)サッ

 

リゼ「……?」キョロキョロ

 

シャロ「どうしたんですか?」

 

リゼ「いや、さっき誰かに呼ばれた気がしたんだけど……」

 

シャロ「……?」キョロキョロ

 

リゼ「空耳かな?まぁいい、行こうか」

 

シャロ「はい♪」

 

ココア「………………」

 

ココア(二人きりでどこか行くのかな……)

 

ココア「………………」

 

ココア「……っ」キュッ

 

 

―――――――――――――――――――――――

 

――自室――

 

ココア「………………」

 

ココア「…………」ゴロン

 

ココア(なんで隠れちゃったんだろう……)

 

ココア(二人に声をかけて、一緒に連れて行ってもらえばよかったのに……)

 

ココア「………………」

 

ココア(嫉妬、してたのかな……)

 

ココア「……みんな、友達なのに」

 

ココア「………………」パサッ

 

ココア「シャロちゃん、ごめんね……」

 

 

 

―――――――――――――――――――――――

 

 

――ラビットハウス――

 

ココア「あれ、リゼちゃんは?」

 

チノ「今日は遅れると言っていました、部活の助っ人を頼まれたとかで」

 

ココア「……そっか」

 

チノ「……?リゼさんになにか?」

 

ココア「ううん、なにも。リゼちゃんが駆け付けるまで二人で頑張ろうねチノちゃん」

 

チノ「お客さん、一人でも来るといいんですが」チラッ

 

ガラーン

 

ココア「あはは……」

 

 

 

―――――――――――――――――

 

 

ガチャッ

 

ココア「!」

 

リゼ「すまない、遅くなったな」

 

ココア「リゼちゃん!」

 

チノ「リゼさん、お疲れ様です」

 

リゼ「チノ、この間一緒に行ったあのお店だけどな――」

 

チノ「?」

 

ココア「――!」

 

リゼ「ほら、この前探してたのってこれだろう?」スッ

 

チノ「ストライブのシャーペン……はい、これです…!」

 

リゼ「昨日の帰りに寄ったら偶然入荷されててな、安いもんだしお金はいらないぞ」

 

チノ「覚えてくださってたなんて……リゼさん、ありがとうございます。大切に使いますね」

 

リゼ「ははっ」

 

ココア「……チノちゃんとリゼちゃん、二人ともどこか行ったの?」

 

リゼ「んっ?ああ、1週間前くらいかな。買い物帰りに偶然チノと会ってな」

 

チノ「以前にシャロさんとリゼさんと3人で行った雑貨屋さんに寄ったんです、そこで欲しかったシャーペンが見つからなくて」

 

リゼ「お店は小さいけど結構面白いものがあるんだぞ、良かったら今度ココアも行かないか?」

 

ココア「……うん、行きたいな」

 

リゼ「じゃあ明日の夕方にでも3人でもいこう、チノもいいか?」

 

チノ「はい、もちろんです」

 

リゼ「そういえば新しいジグソーパズルも入荷してたぞ」

 

チノ「それは見逃せませんね」

 

ガヤガヤ ワイワイ

 

ココア「………………」

 

ココア「…………」シュン

 

 

―――――――――――――――――――――――

 

――自室――

 

ココア「……………………」

 

ココア(元に、戻っただけなのに……)

 

ココア「………………」ゴロン

 

ココア(すごく嬉しいはずなのに……)

 

ココア(……どうしてわたし、こんなに落ち込んでるんだろう……)

 

ココア「……リゼちゃん」

 

ココア(病気だった頃は、あんなに必要としてくれたのにな……)

 

ココア「……………………」

 

ココア「…………」ギュッ

 

 

――――――――――――――――――――

 

 

 

――数日後 ラビットハウス――

 

ココア「リゼちゃん遅いね」

 

チノ「連絡もはいっていませんし……なにかあったんでしょうか」

 

ココア「また部活の助っ人とかかな?」

 

チノ「でしたら遅れるくらいの連絡が――」

 

Prrrrrrr――

 

チノ「……?シャロさんからです」

 

ココア「シャロちゃん?」

 

チノ「もしもし」

 

チノ「――はい、ココアさんと一緒にラビットハウスですが」

 

チノ「――っ!?」

 

チノ「リゼさんが……!」

 

ココア「……?」

 

チノ「はい、わかりました。わたしたちも今から行きます……!」

 

ピッ

 

ココア「チノちゃん……?リゼちゃんに何かあったの?」

 

チノ「……ココアさん」

 

チノ「リゼさんが、病院に運ばれました」

 

ココア「えっ!?」

 

チノ「6限目の体育の時、倒れてきたバスケットゴールの下敷きに……重症だそうです」

 

ココア「――――!」

 

チノ「千夜さんとシャロさんは既に病院にいるそうです、わたしたちも行きましょう」

 

ココア「……………………」

 

チノ「……?ココアさん?」

 

ココア「………………」

 

チノ「ココアさん、大丈夫ですか?ココアさん?」

 

ココア「――……!」ハッ

 

チノ「しっかりしてください、きっと大丈夫ですから……!」

 

ココア「……うん」

 

チノ「いきましょう」

 

ココア「……………………」

 

ココア「…………」

 

ココア「……」

 

ココア「」

 

 

――

――――

――――――

 

 

 

―――――――――――――――――――

 

 

――病室――

 

ココア「はいリゼちゃん、あーん?」

 

リゼ「あーん……」

 

ココア「おいしい?」

 

リゼ「……ああ」

 

ココア「次はお魚がいい?それとも切り干し大根?」

 

リゼ「……………………」

 

ココア「リゼちゃん?」

 

リゼ「……ココア、ごめんな」

 

ココア「ん~、なにが?」

 

リゼ「お前のおかげでやっと完治したのに、今度は入院……しかも骨折とは」

 

リゼ「またココアやみんなに迷惑かけて……はは、ほんと何やってるんだろうなわたし」

 

ココア「……そんなこと、ない」

 

ココア「リゼちゃんは、なにも悪くないよ」

 

ココア「……ううん、むしろ悪いのは……本当に悪いのは……」

 

 

ココア「――わたしだから」

 

 

リゼ「え……?」

 

ココア「リゼちゃん……ごめんね」グスッ

 

リゼ「!」

 

ココア「ごめんなさい……」ジワッ

 

リゼ「ココア……?」

 

ココア「わたし……わたし……」ポロポロ

 

リゼ「ココア……!どうしたんだ?どうしてお前が謝るんだ?」

 

ココア「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい……」ブルブル

 

リゼ「しっかりしろ!お前は何もしてないだろ!?ココア……ココア!」

 

ココア「ごめんなさい…ごめんね、リゼちゃん……」ポロポロ

 

リゼ「ココア!?ココア!」

 

ココア「……っ!」ポロポロ

 

……。

…………。

………………。

 

自身が望んだ幸福と結末の相違。

そこに起因する自己嫌悪の記録。

 

――おしまい。

感想

  1. はなまるびぃ より:

    …なんだこの新感覚。
    凄く意味深ですね…Case2以降がどうなるか予想できませぬ

    • 砂水クジラ砂水クジラ より:

      どうして意味が分からない場合は回答を出しますから、気軽におっしゃってくださいね。

  2. 名有り より:

    他人の不幸と自分の願いが重なる時。ないように思えて意外と起こりうることなので、このような話となると益々皮肉のようにも感じてしまいますね。
    一緒にいれるから幸せとは限らない。そして、一方はそんな相手の心境なんてまず分からないからその子になにもしてあげることはできない。この作品の中の神様はどれだけ意地悪なのでしょうね…
    あっ、決して砂水さんへの文句だとかそういうものじゃないので気にしないでください!

    • 砂水クジラ砂水クジラ より:

      名有りさん、考察としましては100点満点です♪
      ほんとに、意味深シリーズを描いてる執筆者は地獄に落ちて良いレベルです。
      ……それわたしですね;
      日常に起こりうる不条理を描く本シリーズ、今後もお楽しみ頂けますと嬉しいです。

  3. はにすけ より:

    すごい…二律背反による葛藤のお話、とても面白かったです。

    みんな友達だし、リゼちゃんがみんなと仲良くするのは当然だけど、でも自分を必要と
    して欲しい(特別扱いして欲しい)気持ちの同居。加えて、リゼちゃんには健康・
    無事でいて欲しいけど、でも病気や怪我があれば自分を必要としてくれるだろうという
    気持ちの同居。

    こうした葛藤はそう簡単には乗り越えられませんよね。リゼちゃんと特別な関係に
    なるのか、或いはエスカレートして自分を必要とする環境を自分から作り出して
    しまうのか。本当の結末は、そうした葛藤と結果の繰り返しの末にあると思います。

    今回「Case」とされているのは、「葛藤と結果」など、主題の中で起こる出来事の
    うちの1パターンを抽出するお話にあたるからでしょうか?
    読み手としては、読み応えのある長編だけでなく、いろんなCaseを短編的に
    読めるのは、楽しみ方が増えて嬉しいです!

    こんな構成もお作りになるなんて、本当にすごいです!
    今後も楽しみです♪

    • 砂水クジラ砂水クジラ より:

      そうです、本作のテーマは幸福と不幸の二律背反です。
      理由や解説は、はにすけさんの書いていらっしゃることそのままですのでもはや説明は不要ですね。

      この先、ココアちゃんは果たしてどうなってしまうのでしょう。
      はにすけのおっしゃいますような葛藤を繰り返して、また望んでいながらも嫌な気持ちになってしまう不幸な結果を手に入れてしまうのでしょうか。

      本作のそもそものコンセプトは、『日常に起こりうる不条理や残酷な因果律』を淡々と描くというのがテーマでした。
      故に、本シリーズでは物語中で起こる出来事をあえて掘り下げたりは致しません。
      Caseは、『葛藤や結果』などの題ではなく、全体的な日常に起こりうるパターンの一つ、という認識をしていただけますと幸いです。

      意外と好評でしたのでこの短編、今後も続いていくかと思われます。
      少し不思議で残酷、不条理な意味深シリーズを今後もどうかご支援ください。
      (長編にしてしまうと、どうしても掘り下げたくなってしまって……短編なりの魅力を守っていかねばなりませんね)

      ありがとうございます。
      ほのぼのストーリーよりもこのような構成こそが、砂水クジラの本領発揮でございます。
      恐らくはにすけさんが気付いていらっしゃることかと思いますが;
      今後も精進いたします。

  4. Beyond the Average より:

    必要とされることはこの上ない幸福を感じさせてくれます。
    しかし必要としてくれる相手は何かに困っている。
    リゼが日常生活でココアを必要とする場面は、まずないと思います。
    リゼがココアを必要とするとしたら、それはリゼに普通の生活ができないほどの問題が起こったときです。
    つまりココアがリゼに必要とされたいと願うことは、言いかえればリゼに不幸が起こることを願っている。
    何とも悲しい話だなと思いました。
    そして、これは他人ごとではないな~とも思いました。

タイトルとURLをコピーしました